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町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
脾臓の腫瘍
2014年09月23日 (火) | 編集 |
前回は、健康診断で見つかる異常として、胆嚢の異常についてとりあげましたが・・・



本日も、同じように健康診断で見つかることの多い異常です。



こちらは、わんにゃんドックで撮影した腹部レントゲン画像。



元気も食欲も全く問題なく、一般身体検査でも何も異常は見つからなかったワンちゃん。


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ですが、腹部レントゲンで、直径3cm程度のボール状の「しこり」が見つかりました。



位置からすると、「脾臓」にできた腫瘤が疑われます。



超音波検査で詳しく調べると・・・



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やはり、脾臓の先端部分に直径25mm程度の腫瘤が見つかりました。







脾臓は、比較的腫瘍ができやすい臓器です。



しかも、脾臓に発生した腫瘍の1/3~2/3は悪性であるというデータがあります。



脾臓にできる悪性腫瘍としては、「血管肉腫」と呼ばれる腫瘍が多いのですが、この「血管肉腫」は急速な増殖と、広範囲な転移を特徴とするため、慎重な診断・治療が求められます。



脾臓の良性腫瘍としては、「血腫」や「結節性過形成」などが一般的です。







脾臓の腫瘍は、良性・悪性関わらず、ほぼ無症状のまま経過し巨大化していきます。



そして、ある日突然、巨大化した腫瘍が破裂し、大出血を起こすことで急激な虚脱状態に陥り、緊急で病院につれてこられるケースが多いのです。




脾臓腫瘍の恐ろしいところは、良性腫瘍であっても、巨大化した腫瘍が出血し、命にかかわる事態に陥る可能性があるところです。



また、腫瘍の良性・悪性の区別は、レントゲン検査や超音波検査ではできず、切除した腫瘍組織そのものを検査しなければ判別できません。



そのため、脾臓に腫瘤が見つかった場合は、良性・悪性に係わらず、積極的な外科切除が勧められるのです。




20140923tah01.jpg
術中の写真。レントゲン、超音波で観察された通り、3cm弱の腫瘤が脾臓先端部に存在します。
組織検査の結果、「結節性過形成=良性」との診断でした。



出血が起きるまで発見されなかったような脾臓腫瘍では、手術中の死亡率も高く、術後の生存期間も転移等の問題から6か月~1年程度と短くなっていますが・・・




今回のように、無症状のうちに早期発見できた症例では、悪性であったとしても完治が望めます。





我々人間もそうですが、ワンちゃん・ネコちゃんにとっても、定期的な健康診断は非常に大切ですね。

乳腺腫瘍
2014年07月05日 (土) | 編集 |
人間の女性でも、乳腺腫瘍・乳がんというのは、大きな関心ごとかと思いますが・・・



女の子のワンちゃんも同様です。



乳腺腫瘍は、雌犬で最も多く発生する腫瘍で、我々獣医師にとっても、日常で診療する機会の多い腫瘍です。



ワンちゃんの乳腺腫瘍では、「50%ルール」という考え方があります。



1.雌犬の腫瘍発生率の約50%が乳腺腫瘍で


2.乳腺腫瘍の内、約50%が良性、のこりの約50%が悪性(つまり乳癌)である。


3.さらに、悪性の乳腺腫瘍(=乳癌)のうち、約50%で診断時に既に転移が認められる。


というものです。



もちろん、これは極端に単純化した表現で、実際にはこの通りではありません。



当院でのデータでは、乳腺腫瘍のうち、良性がおよそ70%、悪性がおよそ30%といったところで、上述の「50%ルール」よりは良性の件数が多いようです。



とはいえ、女の子のワンちゃんで乳腺腫瘍が多いのは事実。


そのうちの30%程度では悪性の乳癌であることも事実。


そして、乳癌だった症例の約50~60%が1~2年以内に肺転移・肝臓転移等を起こして、亡くなってしまうのも事実であります。



どんな癌でもそうですが、やはり早期発見が大切。


乳癌でも、早期に摘出手術を行うことができれば、完治する可能性もございます。



ワンちゃんの乳腺腫瘍を見つけるのは割と簡単。



ワンちゃんの乳腺は、脇の下あたりから股間まで、お腹側全面にありますが、人間の女性と違って、乳腺組織に厚みが無い為、一般の飼い主様でも慎重になでるように触ったり、つまむように触っていけば、数ミリの大きさのものでも見つけることが可能です。



月に1~2回、5~10分で十分です。



ちょっと注意をして、おっぱいの周りを触ってみてください。


目蓋のデキモノ
2014年04月28日 (月) | 編集 |
年をとったワンちゃんで、このように目蓋に「おでき」ができることが良くあります。





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目蓋にできる「おでき(腫瘍)」は、幸いほとんどが良性。




マイボーム腺という脂分を分泌する分泌腺が腫瘍化するパターンが一般的です。




良性腫瘍ですので、手術せずに様子を見ることも可能ですが、眼球を傷つけたり、感染症をおこしたりする場合は切除しなければなりません。



また、美容上の問題として、見た目が気になる場合は切除します。



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切除すると、多少、目蓋の形が変形しますが、ほとんどは許容範囲内です。




縫合する際には、目蓋の変形が最小限になるように、また、縫合糸が眼球を傷つけないように細心の注意を払います。




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術後すぐなので、まだ目蓋が腫れぼったくなっていますが、抜糸の頃には奇麗になっているはずです。

猫白血病ウイルスと縦隔型リンパ腫
2013年09月30日 (月) | 編集 |
呼吸困難を起こした症例のレントゲン画像です。




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胸を横から見たレントゲンです。

左側が頭の方向。

右側がお尻の方向。


胸の前側に大きな腫瘍(黄色○で囲った部分の白いところすべてが腫瘍)があるせいで、気管が圧迫されています(赤矢印部分)。


正常な猫ちゃんのレントゲンはこちら。

20130930tah02.jpg



腫瘍の部分を、超音波で検査すると、こんな具合です。


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「縦隔型リンパ腫」を疑う所見です。
※縦隔:胸の中心部で、食道や気管が通る部分。


「リンパ腫」というのは、リンパ細胞が腫瘍化する「悪性腫瘍」のこと。


発生場所によって、「腎臓型」や「多中心型」、「縦隔型」などに分類されます。


この中でも、「縦隔型」は、1~3歳程度と若い年齢のネコちゃんで発症するのが特徴。


さらに、発症したほとんどのネコちゃんに「猫白血病ウイルス」の感染が関わっています。


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同症例の血液検査結果。「FeLV」というのが「猫白血病ウイルス」のことです。
「FIV」は「猫エイズウイルス」。



つまり、ほとんどの「縦隔型リンパ腫」は、「猫白血病ウイルス」によって引き起こされているということが言えます。



抗がん剤を用いた治療は可能ですが、治癒することは少なく、90%は数カ月~2年で亡くなってしまいます。


抗がん剤を用いない場合は、診断から1~2カ月程度の余命とされています。



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「縦隔型リンパ腫」では、胸の内部に「胸水」が溜まることがあります。
「胸水」に含まれていた腫瘍細胞。



悪性の腫瘍細胞は、盛んに細胞分裂をおこないます。


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赤い矢印の部分が、核分裂を起こした細胞核。


核分裂を起こしている細胞が見つかるということは、これらの細胞が「ガン細胞」で、盛んに増殖していることを示しています。



先ほども述べたとおり、「縦隔型リンパ腫」は「猫白血病ウイルス」に感染した、極めて若い猫ちゃんに発生する致死的な病気です。


「猫白血病ウイルス」は、地域差はありますが、野良ネコちゃんを中心に、外出する家庭猫など世界中のネコちゃんに発生が認められます。


本来、「猫白血病ウイルス」はそれほど強力なウイルスではなく、成猫であればウイルスに接触しても、一時的な感染で済むことがほとんどです。



ですが生後4カ月までの若い猫ちゃんは、「猫白血病ウイルス」に対する感受性が高く、ウイルスに接触すると、70~100%の症例で、「持続感染」に陥ります。
※持続感染:ウイルスが常に体内で増殖している状態。


そして、持続感染を起こした猫ちゃんのほとんどが、ウイルスに関連した疾病で2~3年のうちに亡くなってしまうのです。



近年では、猫ちゃんを自由に外出させるお宅は減ってきていると思いますが、野良ネコちゃんを保護された場合や、「お外に出るネコちゃんが生んだ子猫」を譲り受けた場合などは、ウイルスの感染の有無を確認しておく必要があります。


とはいえ、ウイルスの持続感染が見つかったとしても、残念ながら治療法はありません。


保護して飼い始めた猫ちゃんがウイルスに感染していた場合は、いずれ何らかの問題が起きることを覚悟しつつ、別のネコちゃん(特に仔猫)への感染を広げないように注意して飼育するしかないのです。。。



猫白血病ウイルスに対しては、ワクチンも開発されていますが、一番確実なのは猫ちゃんを外出させないことと、家庭内にウイルス感染した猫ちゃんを入れないこと。


ウイルス感染自体は、血液検査で簡単に調べることができますので、複数の猫ちゃんを飼育する場合や、野良ネコちゃんを保護したりする場合には、事前に調べておくことをお勧めいたします。

皮膚組織球腫
2013年05月21日 (火) | 編集 |
すこし前に手術をした症例です。



まだ一歳にならない、ミニチュアダックスの仔犬ちゃん。



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左前脚に大きな腫瘍ができています。



このように、1歳に満たないような若いワンちゃんの皮膚に腫瘍が発生した場合、「皮膚組織球腫」という腫瘍が一番に疑われます。




良性腫瘍の一種で、今回の症例のように、ごく若いワンちゃんに発生するのが特徴です。




2~3週間のうちに、ぐんぐんと大きくなる腫瘍ですので、ビックリしますが・・・



ほとんどの場合、自然にしぼんで消えてしまうという、ちょっと不思議な腫瘍です。



そのため、この腫瘍を疑う症例では、すぐに手術で摘出したりはせずに、少し様子を見て、自然に消えるのをまつこともあります・・・



が、今回のワンちゃんの場合は、1カ月近く様子を見ましたが、一向に小さくなる様子はなく、むしろ大きくなる一方。



これ以上大きくなると、摘出も困難になるため、手術することになりました。





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摘出した腫瘍は、専門の検査所に送って診断してもらいます。



結果はやはり「皮膚組織球腫」という診断でした。