町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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無菌性結節性脂肪織炎を疑う症例 3
2013年08月23日 (金) | 編集 |
さて、治療に行き詰っていたワンちゃんの続きであります。


20130820tah01.jpg
2月中旬 治療開始から約1か月半

「湿潤療法」で治療を始めたものの、思ったように皮膚が再生せず、非常に苦慮しておりましたが・・・



丁度、その頃、開催される学会で、外傷治療の講座が開催されるとの情報をキャッチ。



治療情報の収集のため、早速、横浜へ・・・



20130226tah01.jpg



もともと、私の所属学会である、循環器学会がらみで参加スケジュールを組んでいたのですが、スケジュール調整をして外科学会の講座に出席。



講座開始前の会場に早めに入り、講師の専門医をつかまえて、早速情報収集であります。



症例写真、治療経過の説明しながら、何か良い方法はないか相談したのですが・・・




「あ~・・・かかとのところですか~」



と、専門医の先生は暗い表情。



聞けば、その先生も大学で、肘や膝の皮膚欠損の症例を治療中だそうですが、どの症例も半年~1年近くも治療を続けているような症例ばかりだそうで・・・



「私自身も、実際、どういう方法が、一番効果的かわからない状態なんです。Aの症例でうまくいった方法も、Bの症例ではうまくいかなかったりと・・・」



やはり、肘や膝は、体の中でも最も可動が激しい部分なので、皮膚再生が困難なようです。



人間であれば、なるべく動かさないようにと伝えれば済むことなんですがね~・・・

※ちなみに、ギプスなどで固定して治療してみた時期もあったんですが、ギプスをつけたままでも激しく動き回るので、かえって傷口に対する圧迫やこすれが酷いくらいでした。


ただ、そんな中でも、



○通常の受傷部位に比べて、肘や膝の外傷部位は浸出液(外傷部分からしみ出てくる体液)が多い傾向がある。



○そのため、通常通りの湿潤療法では、組織がグジュグジュにふやけてしまい、組織がもろくなってしまい、再生が妨げられるようだ。



○肘や、膝の湿潤療法では、通常よりも、「乾かす」方向で包帯法を見直した方が良いかも知れない。



というアドバイスをいただきました。



病院に戻って、早速、包帯法を練り直します。



通常、「湿潤療法」では、受傷部位に専用のパッド類をあてがい、包帯で密閉します。


受傷部位を適度な「湿潤環境」におき、皮膚の再生を促すわけです。


とはいえ、傷口を「湿潤環境」におくといっても、ベチョベチョのグチョグチョでは困るので、専用のパッドには必要以上の水分を吸収し、蒸発させる機能が備わっているのですが・・・



今回のような症例では、専用パッドの吸水作用を上回る量の浸出液が出てきてしまうようです。



そこで、通常の「湿潤療法」ではあまり使用されることのない、「普通のガーゼ」を使用することにいたしました。



「普通のガーゼ」を使用した包帯法では、傷口が乾燥しすぎるので「湿潤療法」ではあまり使用しないのですが、今回はその逆を行くわけです。



乾燥したガーゼが傷口に張り付いては困るので、傷口に張りつかないような加工をした物を使用します。



さらに、包帯交換の頻度を増やし、1日2回、飼い主様に御自宅での傷洗浄と包帯交換を実施していただくことにいたしました。



そうして・・・包帯法を変更して1週間。



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3月1日 治療開始から約2カ月


今まで、ふやけてぐんにゃりとしていた皮膚が、適度に乾燥してきました。なおかつ、肝心の皮膚再生部分は適度な湿潤状態を維持できています。



傷口も、見るからに小さく収縮してきています。




その後、一時悪化することもありましたが・・・





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4月4日 治療開始から約3カ月
組織の炎症(無菌性結節性脂肪織炎の疑い)の一時的な悪化もあったため、皮膚の再生状況が安定しない時期。




その後は、炎症の経過も落ち着いてきて、皮膚は順調に再生。




20130819tah01.jpg



6月10日の時点でここまで改善しました。



治療開始が1月の初めですから、約5か月もかかってしまいましたが、まずまずの状態まで回復させることができました。



現在、8月23日の時点で、傷口の悪化はなく、「無菌性結節性脂肪織炎」と思われる組織の炎症も、すっかりと静まっているようで、経過は順調のようです。