町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
短頭種気道症候群 2
2013年07月11日 (木) | 編集 |
さて・・・



非心原性肺水腫による呼吸困難のワンちゃんの続きです。



呼吸困難で急遽ご来院いただいたワンちゃん。



前回お話しした通り、非心原性肺水腫による呼吸困難と診断。



となると、今度は「非心原性肺水腫」になった原因をさらに調べなければなりません。




・・・で、その原因がこちら↓



20130709tah06.jpg
上の写真は正常犬の気道のレントゲン写真。
黒く空洞になっている部分が気道。
上下に空洞が2本ありますが、上側が鼻から喉への気道。下が口から喉への気道。


下の写真が今回のワンちゃんのレントゲン写真。
喉のところで気道がふさがっています。鼻と口の2本の気道も、細くなってしまい、ほとんど見えません。



このように、気道が正常犬に比べて狭くなっているため、窒息してしまったのです。



気道が閉塞した状態のまま、無理に呼吸したため、胸腔内の圧力が変化し、肺水腫を発症したものと考えられます。



では、なぜこのワンちゃんの気道が閉塞したのか??




この閉塞の正体は・・・ワンちゃん自身の喉周りの肉です。




実は、これは「正常な短頭種で、ごく普通にみられる現象」なのです。



「短頭種」というのは、ブルドックやパグといった、鼻ペチャ犬種の事なのですが・・・




これらの犬種は、人為的な品種改良によって、変形した頭蓋骨を持った犬種として作り出されました。




鼻ペチャの顔が愛嬌があって人気がある犬種なのですが、自然ではありえない鼻の形から、これらの犬種では呼吸障害を起こすことが多いのです。



短頭種では、鼻や顎回りの骨は、正常犬に比べて短く変形していますが、舌や喉周りの肉などの「軟部組織」のボリュームは変化しません。



どういうことか、解りやすく例えると・・・



100グラムのお肉をいれたタッパーをイメージしてください。
※100グラムの肉=軟部組織 タッパー=頭蓋骨



正常犬のタッパーは大きさにゆとりがあり、内部の肉もスカスカで空気が良く通ります。



一方、短頭種では、内部の肉は100グラムのまま、入れ物となるタッパー(頭蓋骨)が小さくなっています。



内部の肉はミッチリと圧迫されて、空気が通りにくくなります。



ここで、もう一度、上のレントゲン写真を見ていただけると、喉周りの肉がムチッとなっているのがお解りいただけると思います。




これらの肉は、気道を圧迫し、呼吸に大きな負担をかけます。



そして、睡眠時のように喉周りの筋肉が緩んだときには、気道の圧迫はさらに悪化し、酷い場合には、今回のワンちゃんのように睡眠中の窒息し、致命的な肺水腫を起こす危険まであるのです。



さらに、短頭種では、喉の圧迫だけではなく、変形した鼻のために、鼻から空気を吸うことすら困難な状態に陥っています。
※試しに、自分の鼻を指で軽くつまんで、鼻の穴を狭めて呼吸してみてください。すごく苦しくないですか?



これら、鼻や喉の変形によって生じる呼吸障害を、「短頭種気道症候群」と呼ぶのです。



程度に差こそあれ、すべての短頭種のワンちゃんで、この「短頭種気道症候群」が認められます。



そして、この「短頭種気道症候群」を持ったワンちゃん達は皆、「生きているだけで苦しい」生活を強いられているのです。



ブルドックやパグ犬がブヒブヒ・ゼイゼイ呼吸しているのは、あれは呼吸が上手くできなくて「息苦しい」からなのです。




今回のワンちゃんでは、幸い、治療によって一命は取り留め、1週間ほどで元気に退院していきましたが・・・




原因となる気道の圧迫が治るわけではないので、今後も窒息の危険は常につきまとうのです。