町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
発作性疾患 3
2013年03月04日 (月) | 編集 |
さて、続きです。



「てんかんと思われる発作」を起こした動物では、まず一般身体検査や血液検査をおこなって「脳以外の病気による発作」を除外しなければなりません。




「脳以外の病気による発作」を除外したら、今度は脳の問題について考えるわけですが・・・



獣医療では、「てんかん」を、「症候性てんかん」と「特発性てんかん」の2つに分けて考えます。
※例外あり



「症候性てんかん」というのは、脳腫瘍や脳の奇形、脳の外傷など、脳内に明らかな異常が認められる場合の「てんかん」です。

この場合、脳に明らかな障害があるので、てんかん発作以外にも、神経症状が認められます。
(運動障害、顔面神経の異常などなど・・・)




「特発性てんかん」というのは、CT検査やMRI検査をおこなっても、脳に明らかな異常が認められない場合の「てんかん」です。唯一、脳波検査では異常な波形が出るそうです。

この場合は、脳に明らかな異常はない為、てんかん発作以外の症状は出ません。
解りやすく言えば、生まれつき脳の回路のどこかに不具合があり、時々ショートを起こすが、普段の生活には全く支障がない状態です。





一般的に獣医師が「この子はてんかんですね」と言った場合は、この「特発性てんかん」をさすことが多いと思います。



「症候性てんかん」の場合は、「この子は脳腫瘍からの発作です」「脳奇形からの発作です」と表現するのが一般的ではないでしょうか。





さて、実際に「てんかん」と思われる症例が来たら、どう診断を進めるのでしょうか?



ちょうど、先日「てんかん発作」でご相談を受けた症例があるので、その子を例にお話ししてみます。



症例は3歳8カ月のワンちゃん。もともとは皮膚病や尿石症で2012年5月から通院していただいているワンちゃんです。



カルテの記載によると、2011年11月、2012年7月、2013年2月にてんかん発作が見られた症例です。
※その他にも、数回起きているそうです。





まずここで確認するのは、発作以外の症状があるかどうか?



このワンちゃんについては、皮膚病で通院中でしたので、すでに一般身体検査は済ませており、明らかな神経異常もなければ、元気食欲も問題なく、内臓疾患の疑いも非常に低い状態です。
(本来は血液検査までおこなうのが理想ですが、とりあえずは「脳疾患以外からの発作の可能性」は極めて低いと判断します。)



次に考えるのは、てんかんが「症候性てんかん」なのか? それとも「特発性てんかん」なのか?




「症候性てんかん」だったとすると、脳腫瘍や脳の奇形、脳の外傷などが考えられます。



ただ、症例の年齢からすると脳腫瘍の可能性は低そうです。



では、脳奇形はどうでしょう? 脳奇形は生まれつきの問題ですので、若いうちから発生します。


ただ、てんかん発作を起こすほどの脳奇形であれば、普段から何らかの神経症状が見られていると考えるのが妥当ですので、これもこのワンちゃんには当てはまりません。




一方、「特発性てんかん」の場合は、生まれつきの脳内の回路の問題ですので、症例の様にごく若いうちから発作が認められます。(むしろ、高齢になってから突然発作を起こすのはまれで、このようなケースは、脳腫瘍を疑います。)


さらに、てんかん発作以外の神経症状などは認められません。





となると、このワンちゃんは「特発性てんかん」である可能性が高くなります。




実は、「特発性てんかん」を正確に診断するためには、CTやMRI検査で確実に脳に異常がないことを確認し、さらに脳波検査をおこなって、特徴的な脳波を検出しなければなりません。





ですが、ワンちゃんの場合はMRI検査には全身麻酔が必要になりますし、脳波測定は限られた施設でしか実施できません。



さらに、「特発性てんかん」の場合、発作の頻度が年に2~3回程度の場合は、治療を必要としないことがほとんどなのです。



その様なことを考えると、今すぐ治療の必要性がない病気を確定するために、全身麻酔をかけてMRI検査をする必要があるのか?



費用対効果を考えると、ちょっとそこまでは・・・というのが実際のところではないでしょうか?

※ただし、てんかん発作以外の症状がみられた場合は、脳腫瘍などの可能性が高くなるので、MRIなどで脳内を正確に調べる必要があるのは言うまでもありません。





そんなこんなで、このワンちゃんの飼い主様には、



「おそらく、てんかん(正確には特発性てんかん)でしょう。」


「発作の回数が年に数回程度でしたら治療の必要性はないので、経過観察で十分です。」


「ただし、発作の回数が増えてきたり、年に数回の発作だとしても、一回一回の発作の時間が長くなるようでしたら治療が必要です。」



とお話しさせていただきました。



あとは、今後、経過観察中に神経症状などが出てこないかを注意しておけばいいわけです。





さて、「特発性てんかん」をいつから・どうやって治療するか・・・ですが



それについては、また続きます。