町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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生死の瀬戸際 ~心タンポナーデ~
2009年03月31日 (火) | 編集 |
2009/03/31

心臓病の症状の一つに「心タンポナーデ」という状態があります。

心臓は、心膜と呼ばれる強い膜構造に包まれています。
この心膜と心臓の間にはごく少量の体液(心膜液)が存在していますが、極めて少量ですので、通常は心臓と心膜は密着しています。

この体液が、何らかの原因で通常よりも多くたまることがあります。
この液体の貯留が極端に多くなると、心臓が押しつぶされてうまく動くことができなくなります。
この状態を「心タンポナーデ」といい、命にかかわる状態です。

心のう水貯留

心臓と心膜の間に心のう水(心膜液)が貯留しています。
本来は心臓と心膜は密着していなければいけません。
この症例は、心膜の外側に「胸水」もたまっています。


この状態では、心臓は液体に圧迫されて正常な機能を発揮することができません。
この症例も、心臓発作を起こして来院されました。

根本的な治療としては、「心膜液」がたまることになった原因を追究し、それを治療しなければなりません。
しかし、それ以前に今現在たまっている液体を何とかしなければ生命を維持することができません。

すぐさま、心臓と心膜の間に針を刺して、液体をぬいていきます。
心臓と心膜の間の空間は1cm程度です。
あやまって針を進めすぎたり、動物が暴れれば心臓を傷つけてしまいます。

また、すでに心臓発作を起こしている状態ですので、いつ心臓が止まるかわからない状況の中、慎重に針を進めていきます。

まさに生死の瀬戸際です。

穿刺後
液体除去後

心臓の周囲の空間が無くなっているのがわかるでしょうか?
右下にわずかに胸水が残っていますが、一番問題となる「心のう水」はほぼ抜き取ることができています。

これで、ひとまず危機的な状況を脱することができました。

しかし、これで安心することはできません。
水がたまる原因そのものを治療することができなければ、また水は溜まってきてしまいます。

残念ながら、この症例は「心筋症」という心臓病と思われます。
この病気は完治することはできないため、今後も水がたまることに対しては対処療法をおこなっていくしかありません。

手術で「心膜」そのものを切除して液体をたまらなくすることもできるのですが、この子の心臓ではとてもではありませんが手術には耐えられません。

なんとか手を尽くして、すこしでも楽に過ごせるようにしてあげなければいけません。