町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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そこかよ~
2012年07月23日 (月) | 編集 |
ちょっと反省が必要な症例です。




先日手術をおこなった、消化管内異物の症例。




皮膚病の治療で通院していただいていたワンちゃんなのですが・・・




元気も食欲もバッチリで、特に食事の量や種類も変えていないのに・・・なぜか急激に体重が減少。



そこそこ高齢のワンちゃんですので、「これは何か内臓に異常があるかも??」





と、精密検査をおこなったところ・・・





20120721tah01.jpg





胃の中に金属製の異物が・・・





さらに、最後に食事をとってから8時間以上経過しているにもかかわらず、胃の中に食物か異物を疑う内容物が存在します。





これは、おそらく胃内異物によって、消化管内の通過障害が生じており、それによって正常な消化吸収ができなくなっているものと考えられます。





通常、通過障害を起こすほどの異物があれば、吐き気などの症状が出るものなのですが、このワンちゃんは、この状態でも吐き気や下痢などの症状は一切なく、今回レントゲンを撮らなければ全くわかりませんでした。





諸事情あって即手術というわけにはいかず、2週間ほど時間をおいてからの手術でしたが、その間も一切吐き気などはなく、本人は元気いっぱいの状態でした。





手術当日、再度のレントゲン撮影でも同じ部位に異物が確認されたため、試験開腹をおこないます。




レントゲンでは異物は胃の中に写っていますが、ワンちゃんが何を食べたか分からない以上、その他の部位も調べていきます。





通常、消化管内異物がつまりやすい場所というのは決まっておりまして・・・




○胃の出口

○小腸

○小腸から盲腸への移行部


となっております。




盲腸より先は大腸とよばれ、あとはウンチとなって出るのみ。普通はここまで流れたものが詰まることは考えられません。




ですので、胃を開く前に、小腸から盲腸にかけてをくまなく調べていきます。





20120721tah02.jpg




そうすると・・・やはり、小腸の中にも異物が・・・




20120721tah03.jpg




こんなビニールの塊です。



ビニールは基本的にレントゲンには写りませんので、胃の中だけ探していたのでは見逃すところでした。





前回の症例が大変だっただけに、「今日はすんなり終わるかな~」とあらためて胃の中を確認・・・




レントゲンに写っていた金属製の異物を探してみるのですが・・・




これが、まったく見つからない!




胃に穴をあける前に、触診で異物の存在を確認してからメスを入れるのですが、いくら手でさわっても異物が触れません。




レントゲンを見直しても、どう見ても胃の中に金属製の異物があるはず。




それほど大きな物ではないので、胃の下の方に落っこちて触れないのだろうと、やむを得ずメスで切り開いて探してみても・・・




全く見つかりません Σ( ̄ロ ̄lll)





いくら探しても胃の中に異物が見つけられません。

注)胃を開くといっても、パッカリと大きく開くわけではなく、2~3cm程度の切開部から、器具を使ったり、歯医者さんで使うような小さな鏡を使って探します。





「ひょっとして、手術前にレントゲンを撮ってから数時間の間に胃の中から小腸へ移動したのか?」と思い、あらためて胃の出口から盲腸まで何度も消化管を手繰り寄せて確認しましたが・・・





やはり、小腸から盲腸には全く見当たりません。だいたい、初めに発見してから2週間動かなかったものが、手術直前になって急に動くとは考えにくいことであります。




いつまでも、お腹をあけたまんまむやみに探し回るわけにもいかず、一度手術を中断して、レントゲンで再確認をした方がいいかと考え始めたころに・・・




ふと、「まさか大腸には詰まんないよな~・・・でも、手術を中断する前に念のため・・・」と思い大腸の部分を探ってみると・・・





ありました。ゴリッとした金属製異物の感触・・・




「なんだよ、ここかよ~ ヾ(。`Д´。)ノ」




まったくの盲点でありました。





「大腸まで進んだ異物は排泄される」という今まで教わったことと、経験したことを頭っから信じ込んでおりました。





今まで見てきた症例で大腸に異物が詰まっていたなんてことは皆無でしたし、教科書を見ても「小腸の異物除去」という項目はあっても、「大腸の異物除去」なんて項目一切ありません。



まったく油断しておりました。




実は、レントゲンで胃の位置と横行結腸(今回異物が詰まっていた大腸の部位)は重なりあって映ることがあります。




つまり、今回の症例では、胃の中にあると思っていたものが、実は重なって映っていた大腸の中にあったというオチであります。




胃の中に異物が見つからなければ、一番に横行結腸を疑うべきだったのですが・・・




「結腸に異物は詰まらない」という今までの経験を信じ切ってしまったため発見が遅れてしまいました。





話を整理しますと、この症例は・・・


①金属製異物は大腸の中に詰まっておりそこで通過障害をおこしていた(飼い主様の話では、少し前からウンチの出が悪かったそうです)


②小腸の中にもビニール製の異物(レントゲンには写らない)があり、胃の通過障害はこれが問題であった



という二つの消化管内異物が同時発生していたのであります。






結果的には異物を発見し、無事摘出することができたので手術としては成功ですが、もっと柔軟に考え、早くに大腸の確認をしておけば、手術時間を短縮することができたはずです。




手術時間が長くなれば長くなっただけ、動物にかかる負担は増えるわけですから、その点は大いに反省すべき点です。




これからは、消化管内異物の症例は大腸まで確実にチェック! (*`д´)b








・・・で、結局何が詰まってたかというと・・・





20120721tah04.jpg





「四葉のクローバーのピンバッジ」であります。




レントゲンに写っていたのは、バッジの金属部分。




何とも皮肉なモノが詰まっていたもんです・・・