町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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ノミ予防薬の副作用?
2012年06月08日 (金) | 編集 |
先日、ある飼い主様から、



「ノミ予防薬のフロントラインの副作用で、死亡した事例があるってネットでみたんです。それが心配なんだけど・・・」



というお話があったそうです。




その副作用報告というのがこちらのことかと思います→農林水産省 動物医薬品検査所 副作用情報データベース
検索の品名に「フロントライン」と入れて「go」をクリックすると表示されます。



さて、調べてみると11件の副作用報告がございます。



11件のうち死亡した事例は7例。



これだけを見てしまうと、「怖い薬だ!」と思うかもしれませんが・・・


さらに報告を詳しく読むとこの7例の死亡事例のうち、フロントライン投与との「因果関係が認められる」のは1例のみ。


しかも、その1例というのが・・・


生後1カ月の猫ちゃんで、重度の疥癬症(ダニの一種による皮膚病)を患い、皮膚状態が極めて悪く、その他の寄生虫感染や、ウイルス性鼻気管炎などの病気も併発し、極めて健康状態の悪い状態の仔ネコちゃん。


その症例に、通常投与量の数倍を投与してしまったために、製品に含まれるアルコール成分によるアルコール中毒を起こしてしまい、結果としてさらなる体力の低下を引き起こして死亡につながったと考えられるということです。



つまり、そもそも健康状態自体が薬剤を使用するうえで慎重にならなければいけない状態であり、なおかつ使用量自体も適切でなかったわけです。


さらに、副作用自体も、フロントラインに含まれる殺虫成分そのものによるものではなく、液体状のお薬にするための基材として含まれるアルコール成分によるものだったということであります。



このケースの場合、そもそも疥癬(ヒゼンダニ)の駆除目的にフロントラインを使用するというのは「効能・効果の適用外」ですし、「用量・用法」も正しくなかったということも問題になります。




その他の死亡事例を見ても、7例中4例は死亡と製品との「因果関係なし」と判断されています。


たとえば、ワクチンを同時に接種していたため、フロントラインの副作用ではなく、ワクチンアレルギーによる死亡が疑われる事例や、すでに別の病気で全身状態が悪かった症例など・・・



「因果関係がないとはいえない」という症例も2例ありますが、そのうちの一頭は別の病気が疑われる状況であったようです。

ただ、もう一例は健康状態などまったく問題ない猫ちゃんが死亡しており、これは診察を担当した獣医師も、製薬会社も「科学的な因果関係は不明だが、死亡になんらかの関わりがあった可能性は否定できない」という見解のようです。

私がこの11件の報告を読んだ中で、一番フロントラインの使用について心にとめておこうと思ったのはこの一件です。
こういう、「よくわからないけど死亡してしまった」という副作用が獣医師としては一番気になるところであります。





さて、死亡以外の副作用報告がどんなものかというと・・・



フロントライン使用後にヨダレが出た、ふらついた等の症状が報告されているのですが・・・



因果関係の認められないものや、因果関係があったとしても、製品に含まれるアルコール分を舐めてしまったために発症した等のように、本来の殺虫成分とは関わりのないことがわかります。

(フロントラインは舐めると基材のアルコール分によってアルコール中毒を起こす可能性があるため、舐めさせないようにとの注意書きがあります)



もちろん、副作用報告というのは氷山の一角のようなものですから、この11件以外にもたくさんの副作用事例はあるものと思われます。

ですが、少なくともこの11件の副作用報告を客観的に分析する限りでは、フロントラインの使用を必要以上に心配することはないと思います。
(もちろん、薬品は薬品ですから、正しい知識のもとに使用する必要があります)



大切なわんちゃん・ねこちゃんの健康管理のために、インターネットで色々と情報収集を心がけているという飼い主様は多くいらっしゃると思います。



よく言われることですが、インターネットで情報を得る際には、その情報の真偽や、その情報を正しく読み取る知識が必要だと思います。



同時に、情報を発信する側も、自身の発言を不特定多数の人が目にするということをよく考え、慎重に発言する姿勢が求められます。



前述のように、「フロントラインの使用で死亡事例が7例も!」なんて情報だけをネットで見かけてしまうと、「フロントラインって危ないんじゃないの?」って思ってしまいがちですが、正しく副作用情報を読み解くと、そうではないことがわかってきます。




私自身もこのようにインターネットを介して獣医療に関わる情報を発信する立場として、「間違いのない情報を的確に、わかりやすく伝える」ということに、今まで以上に慎重にならなければいけませんね。