町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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胸腔穿刺
2012年03月17日 (土) | 編集 |
さて、前回は「胸に水がたまる」という題名で、「肺水腫」と「胸水」の違いについてお話ししましたが・・・



本日は、そのうちの「胸水」について・・・


「胸水」が溜まると、肺が圧迫されて空気を取り込むことができなくなるため、呼吸困難をおこします。



診断には、まずは視診。


呼吸状態を観察して、呼吸困難の様子をチェックします。


呼吸困難の症例では、必要以上に胸を大きく動かして呼吸しようとする様子が観察されます。


次に、聴診器で肺音のチェック。


「胸水」では、肺が圧迫されて、空気を取り込むことができなくなっているため、一生懸命呼吸している割には、肺の音があまり聞こえてきません。



続いて、レントゲンや超音波検査で確定診断を下していきますが・・・



超音波検査が可能であれば、レントゲンを撮影するよりは、まず先に超音波検査をおこなう方が良いと考えます。


レントゲンを撮影するには、体を横に倒して押さえたり、必要に応じてうつ伏せや仰向けの姿勢に固定して撮影しなければならないのですが、呼吸困難を起こしている動物にとって、このような姿勢は非常にストレスがかかります。


重度の呼吸困難の症例では、仰向けにしてレントゲンを撮ろうとしているうちに心肺停止に陥ることも。



その点、超音波検査では、動物にとって一番楽な姿勢のままで検査をおこなうことができますし、さらに、後述しますが、超音波検査からそのまま「胸水」を抜きとる「胸腔穿刺」にスムーズに進めることができます。




20120316.jpg


超音波画像。
黒く写っている部分が、胸の中にたまった液体。


超音波で液体の貯留を確認したら、細かい診断は後回しにして、まずはこの液体を除去しなければなりません。


先日お話した「肺水腫」の場合は、肺の内部に液体が溜まっているため、物理的に液体を除去することは不可能なのですが、「胸水」の場合は、皮膚の上から胸の中に針を刺して、吸い取ってあげることができます。


胸の中の液体さえ除去してあげれば、肺そのものの働きは通常は問題ないため、劇的に呼吸状態が改善されます。


とはいえ、「胸水」が溜まってしまう原因となる疾患を治療しない限りは、再び溜まってきてしまうのですが・・・


20120316 (2)


やや太めの注射針を、肋骨の間から胸の中に刺し込み、注射器で内部の液体を吸い取っていきます。


針を刺す時に「チクッ」と痛みはありますが、ほとんどの症例で特に麻酔など必要なく処置することができます。
必要になるとしても、針を刺す部位に軽く局所麻酔をかけるくらいです。


20120316 (3)


この症例では約150mlの液体が溜まっていました。
血液成分を少し含むので、御覧のように薄いピンク色をしています。


この液体を分析したり、レントゲン検査や心電図検査、血液検査などのデータから、「胸水」が溜まってしまう原因になる疾患を探していきます。


心臓病が原因になって「胸水」が貯留することが一番多いようですが、その他には胸腔内腫瘍や肺腫瘍などもありえますので、慎重に診断しなければいけません。


写真の症例は、ネコちゃんなのですが、色々と検査・治療と手を尽くしたにもかかわらず、残念ながら救うことができなかった症例です。


おそらく、何らかの悪性腫瘍であった可能性が高いのですが、診断の決め手を欠くまま、病状が悪化して亡くなってしまい、非常に悔しい思いをした症例です。


横浜から毎日のように面会に通ってくださる飼い主様のためにも、なんとかお家にお返しできる状態までもっていきたかったのですが・・・


改めて、ご冥福をお祈りいたします・・・