町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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前立腺腫瘍
2011年01月08日 (土) | 編集 |
昨日お話したワンちゃんの続きです。

尿検査で異常な細胞が検出されたというお話をしましたが・・・

実際には、尿検査以前にレントゲン撮影をおこなっています。

もともと、別の病院さんで診察を受けており、「おそらく過去に発生した腫瘍が再発したか、転移したのではないか。それが尿道を圧迫しているので、尿が出にくいのだろう」と言われたそうです。

「毎日尿道にカテーテル(管)を通して排尿させなければならず、そのために病院に通っていただくか、自宅でカテーテルを通すしかない」といわれ、何か他に方法はないだろうかと当院にご相談にいらっしゃいました。

過去の腫瘍などについては、飼い主様の手元にデータが残っておらず、飼い主様も詳しくはわからないそうです。

触診すると、確かに異常に拡張した膀胱と、腫瘍化した前立腺が確認されました。
腫瘍化した前立腺が尿道を圧迫したため、尿がうまく出なくなっています。

201012

点線で囲んだ部分が前立腺です。
この部分で尿道が圧迫されているのです。(レントゲンには写りませんが)

そして、お腹の中央に大きく膨らんだ膀胱が観察されます。

人間だったら苦しくて動けないと思いますが、この状態でもこのワンちゃんはある程度は食事もし、散歩もいっていたようです。

この状態でも尿が全く出てないわけではありません。
ポタポタと少しづつはでていたので、飼い主様もここまで多量に溜まっているとは想像していなかったようです。

この症例はレントゲンと超音波検査で状況を把握したのち、即座に尿道にカテーテルを通して排尿させました。
体重6kgのワンちゃんから、約500mlの尿が採取されました。

60kgの人間で考えると、5Lもの尿が溜まっていたことになります。
人間の膀胱が、そこまで破裂せずに耐えられるのかどうかわかりませんが、半分の2.5Lでも大変な苦しみになりそうです。

この症例は、飼い主様とご相談の結果、特殊なカテーテル(管)を尿道に挿入したまま固定し、その管を通して常時排尿する方法をとりました。

これだと、毎日病院に通う必要もないし、自宅では出てくる尿をオムツや、ペットシーツを利用して吸収するだけで済みます。

ただし、この方法では膀胱への感染症などのリスクがあるのですが、様々な条件を考え合わせた結果、感染症の危険を承知したうえでの決定となりました。


このワンちゃんを診察させていただいて、改めて感じたのが、動物たちは、驚くほど痛みや苦しみに耐えるということ。

ただし、それは、「耐えることができる」のではなくて、「耐えるしかない」のだと思います。

人間のように痛みを言葉で訴えるすべをもたない彼らは、ただ黙って苦しみに耐えつづけるのです。

それが誤解されて、「動物はあまり痛みを感じない」と、過去には言われていましたが、近年はそういった考えは否定されています。

なんとなく元気がないな・・・ 食欲がないな・・・ という時には、どこかに痛みや苦しみを抱えているものです。

「ちょっと様子をみよう・・・」 ではなくて「ちょっと獣医師に相談してみよう」とお考えいただければ幸いです。