町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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呼吸困難と胸腔内腫瘍 ?
2010年03月25日 (木) | 編集 |
さて、呼吸困難でご来院いただいたミシェルちゃん。

当初は心臓病からの「胸水」、それによる呼吸困難と考えていましたが、どうも検査結果からすると心臓に大きな問題はなく、心臓以外の問題が疑われます。

胸腔内腫瘍による胸水

ネコちゃんで「胸水」がたまる原因としては、心臓病が一般的です。
その他には、感染症や胸の中の腫瘍(ガン)などが考えられます。

これらを見分ける方法の一つとして、「細胞診」という方法があります。

「胸水」の中には、水分のほかにもさまざまな物質(タンパク質、細胞など)が含まれます。
これらを分析することで、ある程度原因を絞り込むことができるのです。

胸水細胞診

さっそく、採取した「胸水」を顕微鏡で調べてみると・・・

血液に混ざって、通常であれば出現するはずのない、大きな細胞の塊が観察されます。(中央部の紫色の塊)

このような大きな細胞の塊が観察される場合、腫瘍(ガン)の疑いが強くなります。

「細胞診」を正確に行うには、専門的な知識と経験が必要です。
簡単な症例であれば私でも診断を下すことはできますが、今回のように腫瘍を疑うような症例の場合は、より正確な診断を下すために専門家の意見を聞くようにしています。

今回も、専門の検査所に依頼して診断していただきました。

その結果、やはり「中皮腫(悪性)」(つまりガン)が疑われるとのことでした。

「中皮腫」というと、以前に人間でもアスベストとの関連で話題になっていましたね。

「中皮」というのは、胸の中の表面をおおっている膜のことで、そこが腫瘍化するのが「中皮腫」です。

人間ではアスベストの吸引との関連が立証されているそうですが、動物では今のところそのような確証はないようです。

ワンちゃん・ネコちゃんでは稀な腫瘍で、私もあまり経験がありません。

効果的な治療法は確立されておらず、胸にたまる「胸水」を除去しつつ、呼吸困難に対して対症療法をやっていくしかないのが現状です。

ミシェルちゃんも、毎日のように通院していただき、胸の水をぬいて緩和治療をおこなったのですが、残念ながら、治療開始から11日目に天に召されてしまいました。

実は、ミシェルちゃんは呼吸困難を起こすよりも前から、「せき」をすることがあって、飼い主様も気になっていたそうです。

この「せき」と「中皮腫」に関わりがあったのかどうかはわかりません。
「せき」が気になったときに詳しく検査をすることができていれば、もう少し早く「中皮腫」に気がつくことができたかもしれません。

もちろん、「せき」と「中皮腫」には全く関係がなく、「せき」が気になったときに診察しても「中皮腫」が初期であればまったくわからなかったかもしれません。

ただ、自分で症状を訴えることのできないネコちゃん・ワンちゃんのためには、やはり何か気になることがあれば早めにご相談いただくこと、そして定期的な健康診断を受けていただくというのは重要なことだと思います。

なかなか忙しくて病院に行く時間がなかったり、「ネコちゃんが病院嫌いでなかなか連れて行きにくい・・・」というようなときは、せめてちょっとお電話で「こんな状態だけど、様子見てて平気? 早めに連れてった方がいい?」と、ぜひ気軽に病院に問い合わせていただければと思うのです。

電話で長々とお話しするのは無理ですし、お電話で診断ができるわけではないのですが、それでも「このような様子があったら危険な病気のサインかもしれない」とか、「それなら様子見てても大丈夫だと思いますが、もう1週間その状態が続くなら見せていただいたほうがよいですよ」とかアドバイスはできると思います。
(もちろん直接診させていただくのが一番ですよ!)


そして、我々獣医師は、言葉をしゃべることのできないワンちゃん・ネコちゃんの病気の兆候を見逃さないために、細かな身体検査・聴診などをおろそかにせずに、常に「自分の診断に命がかかっている」ことを忘れずにいなければならないと思うのです・・・

最後に、症例紹介にご協力いただいたミシェルちゃんのご冥福をあらめてお祈り申し上げます・・・