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町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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黒猫クーちゃん
2010年02月18日 (木) | 編集 |
何度かブログで取り上げた、下アゴの骨にガンができてしまった黒猫ちゃん。

黒猫クーちゃん


そのクーチャンが2月8日に天に召されました・・・

クーちゃんが亡くなったということは、当日に飼い主様からお伺いしていたのですが、その時はブログにこのことをとりあげるつもりはございませんでした。

ですが、先日、改めて飼い主様がお見えになり、

「クーちゃんが亡くなってからの1週間、書きためた短歌をブログに載せてもらえないかしら?」

とおっしゃったのです。

”病院にこなければ、原因も分からないまま顎が腫れあがり、ご飯が食べれないまま衰弱して亡くなっていただろう。
病院に来ることで、治療は大変だったが、原因もわかり、一度は元気・食欲を取り戻せた。
亡くなる直前まで、生きよう・食べようという気持ちを持ってもらうことができた。
悲しいことだけど、満足しています。”

そうおっしゃって、短歌を私に託していかれました。

短歌


そもそもの始まりは、昨年の10月初めでした。

「1ヶ月くらい前から舌なめずりをしたりして様子がおかしかったが、ここしばらくは口が痛くてご飯も食べられないみたい」
と当院にいらっしゃいました。

当初は重度の歯周病と判断し、飲み薬で痛みを抑え、1カ月ほどかけて体調を整えて(1ヶ月間の食欲不振でかなり体力は衰えていました)から歯科処置をおこなうつもりでした。

ですが、初診から2週間ほどたつと、左下アゴの骨が腫れ初め、レントゲンを撮ると骨の構造が崩壊し始めていました。
この時点で、ガンの可能性がたかまってきました。
(詳しいことは、以前の記載を御覧ください。→click

ある程度の危険を承知で手術をおこなったのが昨年の11月1日。
手術の結果、やはり扁平上皮ガン(へんぺいじょうひがん)という、組織浸潤性(ガン組織が周辺の正常組織を傷害する性質)が強い悪性のガンであることが判明しました。

今回の手術でガン組織をすべて切除することは不可能であったため、今後間違いなくガンは再発し、ふたたびアゴの骨の変形が進行し、早ければ術後1?2か月で命を落とすかもしれないという結果でした。

術後、一度はかなり体調を崩しましたが、12月になるころには元気も食欲もすっかり元通りになりました。

しかし、その間も残存したガン組織は着実に増殖を続けていました。

1月の半ばには再びアゴが腫れあがり、見た目にわかるくらいにアゴの形が変形してきました。
また、腫瘍に圧迫され、舌と口の動きが制限されることで、ヨダレも目立ち始めました。
それでも、痛みはうまくコントロールできており、食欲・元気も十分維持している状態でした。

末期のガン治療で重要になるのがQOL(Quality of Life 生活の質)をどれだけ維持できているかということです。

アゴは腫れあがり、口の動きも妨げられるものの、痛みや食欲不振に悩まされることなく、病気になる前に近い状態でご飯も食べることができ、お家の中も自由に動き回れる状態でした。
QOLは十分に維持されていると判断しました。

ですが、1月も終わりにさしかかると、アゴの変形は重度になり、食欲はあるものの、うまく食事を飲み込むことができなくなりました。
体重が急激に落ち始めたのです。
また、限界まで巨大化したガン組織は、巨大化しすぎたために栄養が行き渡らずに、組織が崩壊し始めました。
アゴの表面の皮膚の一部が崩れ、崩壊した組織は膿と血液が混ざりあったドロドロの液体となって流れ出てきました。
なんとか崩れた皮膚を縫い合わせたものの、またしばらくすれば穴が開くのは目に見えています。

痛みのコントロールはうまくいっているようでしたが、ここまでくるとQOLを十分に維持しているとは言えません。

この時点で、このまま徐々に食べれなくなり衰弱していくのを待つか、それともギリギリQOLを保っていられる今の段階で「安楽死」という手段を選ぶのか・・・

飼い主様と何度もご相談させていただいた結果、よほどの激しい痛みなどがない限りは、このまま介護をつづけようという結論に達しました。

それから1週間・・・

2月8日にクーちゃんは天に召されました。
心配していた激しい痛みや、ひどい組織の崩壊は免れ、最後までご家族と一緒に過ごされ、静かに息を引き取ったとのことでした。

今回の治療法が100点満点の治療法だったとは言えないでしょう・・・
ですが、術後の約3ヵ月間はQOLを改善することができ、最後の一週間も、ギリギリではあるけどもQOLを保って過ごしてもらうことができました。

そして、何よりも重要なのは、最後のひと時を、家族とともに、慣れ親しんだ家で過ごすことができたということではないでしょうか・・・

「我が腕で ゴロゴロいいつつ しっぽふる
         一六才のクーは いきているよと」

クーちゃんのご冥福をお祈り申し上げます・・・