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町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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避妊・去勢手術のメリット
2009年12月25日 (金) | 編集 |
4回に分けてと予定外に伸びてしまった避妊・去勢の話題ですが、今回で終わらせます。

いままで避妊・去勢のデメリット・危険性をお話ししてきましたが、今回はそんなデメリット・危険性を上回るメリットについてお話いたします。


1 乳腺腫瘍(乳がんなど)の予防効果
これは女の子限定ですが、一番のメリットといえるのではないでしょうか。
ワンちゃん・ネコちゃんともに、乳腺腫瘍は女の子に発生する腫瘍の中でもトップ3に入るほど発症の多い腫瘍です。
乳腺腫瘍には良性のものと悪性(乳がん)のものがあるのですが、ワンちゃんでは悪性の確率が50%、ネコちゃんでは悪性の確立が80?90%と非常に悪性度が高い腫瘍になります。

乳腺腫瘍は女性ホルモンとのかかわりが深いことがわかっており、早期に避妊手術をおこなうことでかなりの予防効果が期待されます。

たとえば、ワンちゃんで初めての発情が来る前に避妊手術をしておくと乳腺腫瘍の危険性が避妊しない場合にくらべて1/200にまで減少するというデータがございます。
一度発情を経験すると1/12、二度発情を経験すると1/4と、予防効果は発情を重ねるごとに低下していきます。
ですので、繁殖の予定がない場合は、できる限り早期に避妊手術(当院では生後6?10か月くらいをお勧めしています)をおこなうことが望ましいと考えられます。

2 子宮疾患の予防
これも女の子限定です。
老齢のワンちゃんでは「子宮蓄膿症」という子宮に膿がたまる病気が発生することが多いのですが、避妊をしておけば発症することはございません(卵巣と同時に子宮を切除した場合のみ)。

ネコちゃんではワンちゃんほど一般的ではないですが、たまに見かける疾患です。

これは命にかかわる病気で、治療法としては手術で膿がたまってパンパンに膨れ上がった子宮を取り除くことになります。

3 前立腺疾患の予防
男の子の疾患です。とくにワンちゃんです。
老齢のワンちゃんでは人間の男性のように前立腺肥大などの前立腺疾患を発症します。
こういった生殖器官の疾患には性ホルモンのかかわりが強いため、去勢手術で予防をすることができます。

4 会陰ヘルニアの予防
これはまだ不明な点が多いのですが、男の子のワンちゃんに発生する「会陰ヘルニア」(くわしくはこちら)にたいしても予防効果があると考えられています。

5 マーキングの予防

男の子のネコちゃんではマーキングといって縄張りにおしっこをかけて回る習性があるのですが、この行動も性ホルモンとのかかわりが指摘されています。
早期の去勢手術でこういった行動をかなり抑制することができます。
また、すでにマーキングをおこなっている大人のネコちゃんにも改善効果があります。

6 発情のストレスからの解放
人間と違い、発情期というものに支配されているワンちゃん・ネコちゃんにとって、発情期に自由に異性とめぐり合うことができない状況というのは多大なストレスであると考えられます。

「人間の管理下にあり、自由に交配・出産できない状況で迎える発情期」というのは、「愛し合ってやまないカップルが、自分たちにはどうすることもできない事情により引き裂かれた状態」くらい精神的にストレスになっているのではないかと勝手に想像しております。

繁殖させるつもりがあるのならば別ですが、人間の都合で繁殖を制限するならば、いっそのこと避妊・去勢手術によってこういったストレスから解放してあげるのもよいのではないかと思います。


子宮の病気や前立腺の病気、乳がんなど、避妊・去勢をしなかったからといって、皆が病気になるわけではありません。
ですが、獣医師として診療していると、このような病気で来院する症例はあとをたたず、不幸にして命を失う症例も多いのが実情です。
その多くが若い時期に避妊・去勢をおこなっていれば防げたはずです。

避妊手術・去勢手術には、前回までに述べてきたようにデメリット・危険性があるのも事実です。
ですが、病気予防などのメリットとくらべるとデメリット・危険性は十分に許容範囲内ではないかと考えるのです。

いずれにしても避妊手術・去勢手術は「やる」にしても、「やらない」にしても人間の勝手都合です。
手術をうけるワンちゃん・ネコちゃんにとって本当はどっちがよいかなんてことはわかりません。
むしろ病気予防のメリットがあるとはいえ、手術をうけるほうとしては有難迷惑かもしれません。

そもそもペットを飼うということ自体が人間の勝手都合です。
ですので、人間の勝手都合で手術するにせよ、しないにせよ、飼い主様にはその手術の危険性・メリット・デメリットはしっかりと理解したうえで判断していただきたいと思うのです。

そして我々獣医師は、人間の都合に振り回される小さな命に対して責任を持ち、できる限り安全でストレスの少ない手術をおこなわなければならないと思うのです。