町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
  • 07«
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • »09
難治性の咳と気管虚脱
2015年07月24日 (金) | 編集 |
何カ月も咳が治まらないということで来院された症例です。



12歳と高齢の小型犬で、「心臓病から来る咳だろう」ということで治療をうけていたそうなのですが、なかなか良くならず、むしろ悪化してきているということでご来院いただきました。



聴診すると、たしかに心雑音が聴取されます。



高齢の小型犬では、「僧帽弁閉鎖不全症」を発症することが多く、12歳以上の小型犬では2~3割のワンちゃんがこの病気になっているというデータがあるほどです。


「僧帽弁閉鎖不全症」では、心拡大からの気管圧迫による咳や、肺うっ血からの咳など、咳症状を示すことが一般的です。



そのため、小型犬で咳を繰り返す症例では、たしかに鑑別診断のリストに挙げなければならない疾患ではありますが・・・



どうも、今回のワンちゃんでは様子が違います。



実は、高齢の小型犬が咳症状を示す際に注意をしなければならない疾患がもう一つあります。


「気管虚脱」であります。



この疾患も、高齢の小型犬に多く見られる疾患で、遺伝的な問題、加齢による気管組織の脆弱化などにより、呼吸時に気管がつぶれてしまう疾患です。



初期の段階では、ほとんど無症状ですが、進行すると難治性の咳や、呼吸困難を呈します。



この疾患を診断するのに重要なのは、「息を吸ったとき(吸気)」と「息を吐いた時(呼気)」の別々のタイミングでレントゲンを撮影することです。



「気管虚脱」に陥ったワンちゃんでは、気管内圧と胸腔内圧の関係により、呼吸のタイミングに合わせて気管がつぶれたり(虚脱)、拡張したりを繰り返します。


そのため、レントゲン撮影のタイミングによっては、疾患の見逃しにつながってしまうのであります。



20150724tah01.jpg
吸気時(息を吸ったとき)に撮影した胸部気管。
気管は正常なように見えますが・・・




20150724tah02.jpg
呼気時(息を吐いた時)では気管内の圧力が下がるため、気管がペシャンコに潰れてしまっています。
正常な気管では、気管軟骨がしっかりと支えているため、このように気管がつぶれることはありえません。
遺伝的な問題や加齢により、気管の支持構造が脆弱化するため、このように気管が形状を維持することができなくなっていまうのです。




実は、


○高齢の小型犬に気管虚脱が多い事


○気管虚脱では咳の症状が出ること


○気管虚脱の診断には、「吸気」と「呼気」の異なるタイミングでのレントゲン撮影が必要であること



は、獣医学生でも聞いたことがあるくらい基本的な知識であります。




ただし、人間の思い込みというのは怖いもので・・・


先に「心雑音があるから、心臓からの咳かな?」と先入観を持ってしまうと、それなりに経験のある獣医師でも、スッポリとこの気管虚脱を見逃してしまうことも少なくないのです。