町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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ブドウ中毒?
2015年04月24日 (金) | 編集 |
ワンちゃん・ネコちゃんが、ブドウで中毒をおこすって御存知でしたか?


「たまねぎ中毒」「チョコレート中毒」など、身近な食品でワンちゃん・ネコちゃんが中毒を起こすことはご存知の方も多いと思いますが、「ブドウ中毒」は、獣医師の間でも知られるようになったのはここ10年くらいですから、まだまだ飼い主様の中には御存じない方も多いかと思います。



ブドウで中毒を起こすと、まず嘔吐や下痢、食欲不振を呈し、摂取後48時間以内に急性腎不全を起こすといわれています。


ただ、まだまだ詳しい事はわかっておらず、どのくらいの量を食べれば中毒を起こすのか? ブドウの中の何の成分に中毒を起こしているのか? など、不明な点がまだ多いようです。



症例数はそれほど多くなく、私も実際に診療したことはなかったのですが、今回、初めて「ブドウ中毒」と思われる症例に遭遇いたしました。



症例は、体重10キロ前後の柴犬。


来院の前日に、レーズン入りのパンを食べてしまったとのこと。


その後、特に様子は変わりなかったそうですが、翌朝(来院当日の朝)になって吐き気がみられたとのことで来院されました。



身体検査では目立った異常は見られませんでしたが、「ブドウ中毒」が疑われたので、すぐに血液検査を行いました。



結果、腎臓の数値に関しては異常は認められませんでしたが、肝臓の数値が上昇。



レントゲン、超音波検査でも急性肝炎を示唆する所見が得られました。



口から摂取された中毒物質と言うのは、まず肝臓を通過してから、全身の血液循環にとりこまれます。



そのため、中毒を起こした時に、まず最初に負担がかかるのが肝臓なのであります。
過去のブドウ中毒の報告でも、急性腎不全だけではなく、肝臓の数値上昇も報告されています。




おそらく、この症例の場合は、このまま治療をしないで放置すれば、次に腎臓の数値の上昇がみられたはずです。




ブドウ中毒では、解毒薬のようなものはありません。




点滴治療を行い、できるだけ中毒物質が体内から排泄されるのを助けつつ、吐き気や下痢などの症状に対して対症療法を行うしかないのです。



そのため、ブドウを食べた量が余りに大量であった場合や、ブドウ摂取後から治療を開始するまでの時間が長く経ってしまった場合は、どんなに治療を行っても救命できないこともあるのです。



幸い、今回の症例では早い段階で治療を始めることができたので、腎臓の数値が上昇することなく、翌日には元気に退院することができましたが、来院されるのが後一日遅れていれば、急性腎不全を起こし、命にかかわっていた可能性もあります。




今回の症例を治療して思ったのは、ブドウ中毒の症例報告が少ないのは、珍しい病気だからではなく、飼い主様がブドウ中毒について御存じない為、急性腎不全に至るほどではない軽度の中毒(下痢と嘔吐のみの症状であるなど)の場合は、病院に来ないまま回復していたり・・・


もしくは病院に来意されたとしても、ブドウ(またはレーズン)を食べてしまったことに飼い主様が気が付いておらず、単なる急性胃炎・腸炎として治療されている場合が多いのかもしれません。


中には、病院に来るのが間に合わないまま亡くなってしまい、原因不明のままということもあるかも知れませんね。



ワンちゃん・ネコちゃんは人間とは全く別種の生物です。


食性や、薬物に対する反応など人間とは異なる点も多く、人間が食べて平気な食物でも中毒を起こすこともあれば、人間用のお薬を与えて中毒を起こす場合もあります。



飼い主様の心情としては、ワンちゃん・ネコちゃんも「家族の一員」というお気持ちだとは思いますが・・・



「そうはいっても別種の動物」であることは、決して忘れてはならないのです。



ブドウの他にも、身近な食品でキシリトール中毒なんてのもあります。


与えるつもりはなくても、「テーブルの上に置いてあったのを盗み食いした」「ゴミ箱をあさって食べてしまった」「カバンの中に入れていたら、顔を突っ込んで食べてしまった」なんて事故も頻発しておりますので、皆様どうぞご注意くださいませ。