町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
肥大型心筋症と左室流出路の狭窄
2015年03月23日 (月) | 編集 |
循環器疾患のご紹介です。



ここ最近、元気が無く、階段を上るのもヨロヨロとしているということで来院された症例です。



15歳前後と高齢のネコちゃんです。



身体検査で「心雑音」が確認されましたので、精密検査を行うことになりました。




ネコちゃんで「心雑音」が確認された場合、一番に疑われるのは「肥大型心筋症」という心臓病です。



原因はまだハッキリと解っていないのですが、心臓の筋肉が肥大することで、心臓のポンプ機能が低下し、循環不全を起こす病気であります。



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超音波での心筋の厚みの測定。
IVSd=心室中隔壁   LVPWd=左室自由壁



肥大型心筋症の診断は、心筋の厚み(特に「心室中隔壁」と「左室自由壁」)の測定が重要なポイントになります。



正常なネコちゃんの心室壁の厚みは4mm前後。6mmを超えた症例では、肥大型心筋症を疑います。



今回の症例は心筋の厚みが7mmと、「肥大型心筋症」を疑う所見です。
※実際には、その他の「心筋の厚みに影響を及ぼす疾患が無いか?」を確認したうえで最終的な判断をいたします。
たとえば、腎臓疾患や甲状腺疾患なども心筋の厚みに影響を及ぼす可能性がありますので、そういった疾患が無いかを確認しなければいけません。



「肥大型心筋症」では、心臓の筋肉の厚みが分厚くなることで、心臓の拡張機能が障害されます。


分厚い風船が膨らみにくいのと同じですね。心臓はポンプとしての働きを持っていますので、膨らみにくくなるということは、血液を吸い込む動作が上手くいかないということになり、結果的に血液循環不全をおこします。



また、分厚くなった心筋壁は、心臓内で血液の流れを妨げることになります。



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肥大した心室中隔壁が大動脈の基部にせり出しているため、狭窄が起こり、血液の流れに乱流が生じています。
「左室流出路の狭窄」と呼ばれる状態。




今回の症例でも、肥厚した心筋による「左室流出路の狭窄」が生じており、それによって大動脈血流に「乱流」がおこっています。



この「乱流」が「心雑音」の原因になります。



「左室流出路」が狭窄することも、全身の血流に悪影響を及ぼす一因となります。



今回のネコちゃんでは、心筋の肥厚による「拡張不全」と「左室流出路の狭窄」が原因で、循環不全を起こし、元気消失や、階段を上る際のふらつきといった症状を起こしていたものと考えられます。



「肥大型心筋症」の治療は、内服薬による血液循環の改善が中心になります。



残念ながら、肥大した心筋をもとにもどす方法はなく、完治させることができない病気なのであります。