町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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拡張型心筋症 2
2015年03月02日 (月) | 編集 |
少し間があきましたが、先日のつづきです。



1週間ほど前から元気・食欲が無くなってきたというワンちゃん。



身体検査で呼吸困難が疑われたため、検査を進めると「胸水」が溜まっていました。



20150226TAH01.jpg
胸水が溜まって、心臓の陰影が見えなくなっています。




「胸水」が溜まる原因としては、循環器疾患(心臓病)や腫瘍性疾患などが考えられますが、そういった詳しい原因究明の前に、まずは胸水を取り除き、呼吸状態を改善しなければなりません。




胸水が溜まって呼吸困難が続いていると、全身の臓器が低酸素症に陥ります。



このような時に大きなストレスを加えると、そのまま心停止を起こす危険性があるのです。



さて、こちらのワンちゃんも、胸水を除去し、酸素室で少し状態を改善させてから詳しい検査となりました。



まずは循環器疾患を疑い、超音波検査で心臓の状態を詳しく調べていきます。



腫瘍性疾患かどうかは、抜き取った「胸水」のサンプルを検査所に送り、腫瘍性の細胞が含まれていないかを検査いたします。


超音波で心臓を調べていくと・・・



小型犬としては珍しい病気が見つかりました。



20150302tah01.jpg
心臓の収縮機能の検査。FS(左心室内径短縮率)という数値は、ポンプとしての心臓がどれだけ収縮しているかという指標になります。
小型犬の正常値は40%前後が一般的です。




心臓の収縮機能を示すFS(左心室内径短縮率)が、正常値の半分以下の14.8%と極めて低い値になっています。



つまり、心臓の収縮機能が低下している状態。



心臓の収縮機能が低下すると、血液が十分に送り出せないため、心不全に陥ります。



どうやら、「胸水」貯留の原因はここにありそうです。



20150302tah02.jpg
正常な小型犬の心臓。やや緊張気味なので、FSは50%とやや高め。ドキドキが強くなっている状態ですね。




こちらの正常犬の心臓超音波の画像と比べると、今回のワンちゃんでは「左心室内腔」がずいぶんと拡張しているのが解ると思います。




このように、心臓の内腔が拡張し、収縮機能が低下する心臓病は・・・「拡張型心筋症」です。




「拡張型心筋症」は、原因不明の心臓病で、一般的には大型犬に多いとされています。



特に、ドーベルマンに多く発症がみられることで有名です。



「拡張型心筋症」では、心筋の収縮能力が低下し、内腔が拡張することで、心臓のポンプ機能が低下し、血液の循環不全が生じます。


それによって、今回の症例のように胸水がたまったり、腹水がたまる場合もあります。典型的な症例では、「肺水腫」をおこし、呼吸困難を呈することが多いとされています。



突然死も一般的で、まったく他の症状を示すことないまま、ある日突然亡くなってしまうケースも珍しくありません。



拡張型心筋症では、末期になるまで症状がみられないことが一般的です。


症状がみられ、診断がついてからの1年生存率は約17%と非常に低く、ほとんどの症例が診断後まもなく亡くなってしまいます。



治療は、心臓の収縮力を助けるお薬や、血管拡張薬、降圧剤、利尿薬などを症状に合わせて処方します。



内科治療で上手くいかない場合、人間では心臓移植や、人工心臓、バチスタ手術(小説・映画・ドラマにでてきましたね)がおこなわれますが、獣医療では今のところ現実的ではありません。




今回のわんちゃんは、今のところ、内科療法で上手く安定しておりますが・・・



飼い主様には残された時間はそれほど長くないということはご理解いただいてた上での治療となっております。