町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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顎が開かないネコちゃん 2
2015年01月26日 (月) | 編集 |
レントゲン画像と臨床症状から、頭蓋内腫瘍を疑ったネコちゃんの続きです。



20150122tah04.jpg
青丸内が、右側に比べると白くぼやけています。腫瘍を疑う所見です。



部位としては、左上顎の付根、左眼球のすぐ下のあたりです。人間でいうと、ちょうど奥歯(おやしらず)のあたりといったところでしょうか。


できれば、お口を開けて中の状況を見たいところですが、このネコちゃんでは腫瘍の影響からか、口が全く開かなくなってしまっています。



そこで、これ以上の詳しい検査の為には、CTでの頭部断層像の撮影が必要と判断し、日本動物高度医療センターの腫瘍科での精密検査を依頼することといたしました。






20150122tah02.jpg
高度医療センターでのCT撮影
仰向けの状態での頭部断層像。鼻先が画面奥にあるような状態の画像。



CT撮影をすると、左顎周辺の組織が右に比べると白っぽくなり、腫れあがっているのが良くわかります。



左眼球も圧迫されて位置が変化してしまっています。右側は、眼球周辺や下顎の骨の周囲に黒く空洞があるのですが、左側(病変側)は、空洞部分が腫瘍組織で埋まってしまっています。



組織検査の結果、この腫瘍は悪性腫瘍(ガン)の可能性が高いということでした。



すでに、頭部の広い範囲にガン組織が広がっており、根治を目指すことは困難でした。



たとえば、腕や足が癌に侵された場合、最悪の場合、腕・足そのものを切断して根治を目指すことも可能ですが、頭部の腫瘍では切除可能な範囲が限られるため、治療が困難なことがほとんどです。



また、仮に切除可能でも、外観が大きく変わってしまったり、採食などの日常の行動にも障害が出ることも少なくないため、積極的な治療が難しい部分であります。



今回のネコちゃんでは、すでにガンによって顎の動きや、頬の神経に麻痺が生じていたため、食事をとることが非常に難しくなっていました。


高度医療センターでは、根治を目指すことは難しいが、採食を補助するための下顎部分切除や、胃瘻チューブの設置による延命治療が飼い主様に提案されましたが、飼い主様は完治することができないのであれば、大きな外科手術は望まれないということでした。



そこで、現在はわずかに開くの口の隙間から流動食を与えつつ、補助的な点滴や鎮痛剤を使った疼痛管理など緩和療法を行って、残された時間をできるだけ御家族のもとで、少しでも気分よく過ごせるようにサポートを続けている状況であります。




動物の医療では、動物自身が症状を言葉で訴えることができないため、病気の診断・発見が困難になることが少なくありません。



今回のように、「口が痛くて開かない」という症状でも、歯牙疾患・口腔疾患だけにとどまらず、様々な診療科にまたがる広い視野を持って、詳細な問診・身体検査を行わなければならないのです。




最後に、大切なネコちゃんが、病気でつらい思いをされている中、「様々な病気の知識を発信し、ワンちゃん・ネコちゃんの病気の早期発見に少しでもつなげたい」という当ブログの趣旨を御理解下さり、今回の症例紹介にご協力くださったネコちゃんの飼い主様に、心よりお礼を申し上げます。