町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
歯周病治療について・・・
2014年12月22日 (月) | 編集 |
まず初めに、皆様にご覧いただきたいリンク先をのせておきます。


日本獣医学会 Q&A 「無麻酔下の歯石除去について」


「無麻酔で歯石をとる?!」 日本小動物歯科研究会


一部のトリミングショップや、動物病院で「麻酔をかけずに歯石をとります」なんてサービスがおこなわれていますが・・・


そういった安易な処置を警告する文書であります。
もちろん、当院では、特殊な場合を除いて、「無麻酔での歯石除去」は基本的におこなっておりません。






さて、本題です。



先日、歯周病治療を行ったワンちゃんです。



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8月に8歳になったばかりのミニチュアダックスの女の子です。



かなり歯周病が進行しております。



飼い主様も、この歯周病の進行には気がつかれていたのですが・・・今までのかかりつけの獣医さんに相談したところ・・・



「そのうち抜けるから大丈夫」



と言われたそうです・・・


・・・



・・・



まあ・・・ともかくですね・・・



これが自然に抜けちゃう頃には、「今、治療すれば抜けずに済む歯」までダメになってしまいますので、当院ではもちろん抜歯を前提とした歯周病治療をお勧めいたしました。


上の写真で見ると、上顎の歯は結構奇麗に見えますが・・・


20141222tah02.jpg



裏側はかなり危ない状態。



経験上、ダックスフンドは歯の表側に比べて、裏側の歯周病の進行が早いように思います。



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右側


側面の歯も、一見すると奇麗なようですが、ほっぺたをグイッと広げて奥まで見てみると・・・ここも抜歯が必要ですね。




左側も、奥歯が歯周病でダメになっています。



20141222tah042.jpg


左側にうつっている小さな歯に比べて、極端に歯周病が進行しています。



この部位の歯は、唾液線の位置関係や、歯が密集した構造をしていることから、特に歯周病が進行しやすい部分であります。



さらに、この部分は、ほっぺたを大きくめくらないと見えない部分なので、飼い主様が気がつかないままどんどんと酷くなってしまうのです。



この歯の歯周病は、かなり進行しておりまして・・・



20141222tah05.jpg
抜歯をするために歯肉を切開・めくりあげた状態。
左半分は歯槽骨が残っているが、右側は歯槽骨が壊死消失している。
つまり、進行した歯周病によって、顎の骨の一部が溶けてしまったということ。






歯周炎によって、歯根を支える「歯槽骨」が半分溶けてしまっていました。



このワンちゃんでは結局、16本も歯を抜かなければなりませんでした。




犬・猫の歯周病治療では、今までもご紹介してきたとおり、歯肉の切開や、歯槽骨の切削が必要であったり、頑丈な犬歯や臼歯を安全に抜歯するには、それなりの経験と技術が必要になります。



そのため、歯周病治療に対して、消極的な動物病院がまだまだ多いのが現状です。



もちろん、獣医師それぞれに得手不得手がございます。実際、私も整形外科の分野は不得意ですので。


ただ、自分が不得意な分野の治療について飼い主様からご相談を受けた際には、無責任な回答はせず、得意とされている病院や大学病院などを紹介するような対応をしなければならないと思うのです。



獣医療では、診療の対象が非常に幅広く、人のお医者さんのように診療科が分かれているわけではないので、一人の獣医師が様々な症例を診療しなければなりません。



そのため、非常に幅広い知識が要求されるのですが・・・



当然、人間の努力には限界があって、すべての分野についてスペシャリストになれるわけではありません。



ですので、それぞれの獣医師が、「自分がどこまでの治療ができるのか」、「自分の力が及ばない分野についてはどのように対応すればよいのか」を誠実に考え、飼い主様に御提案するようにしなければならないと思うのであります。



とはいえ、これがまた難しいところで、十分に知識が無いと、「自分が何を知らないのか」すらも解らないまま、間違った治療を行ってしまう危険もあったりするのです。




実際、大学に通っていた頃よりも、獣医師になってからの方が勉強が何倍も大変なのであります。