町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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心臓病とジョリーちゃん
2014年02月15日 (土) | 編集 |
こちらの写真は、先日、天に召されていったMIX犬のジョリーちゃんです。



20140215tah01.jpg


左側の、クリアケースにはいった、可愛らしい仔犬ちゃんは・・・


なんと、飼い主様のお知り合いの方が、羊毛フェルトで制作した「チビジョリー」ちゃんです。


クリアケースにはいってるから、「ひょっとしてお人形さんかな・・・?」と思いますが、これが普通にジョリーちゃんの隣に座らされていたら、写真じゃ本物の仔犬ちゃんと区別がつきませんよね!



ジョリーちゃんの色々な角度の写真を参考に制作されたそうで、ジョリーちゃんの体毛も一部使用されているそうです。



趣味でこれだけの物を制作されるなんて、ビックリですよね!




さて、こちらのジョリーちゃん、初めに書いたように、先週の2月7日に、1年9カ月に及ぶ心臓病との闘病生活を経て、静かに天に召されていきました。







ジョリーちゃんが初めて当院にいらっしゃったのは2012年5月11日でした。



もともとボランティア団体で保護されたワンちゃんだったそうで、正確な年齢は不明でしたが、当時でおよそ12歳ということでした。



別の病院さんで腎機能の低下で治療を行っていたところ、3月頃から苦しそうに咳をするようになったということで、循環器疾患を疑い当院に転院されてきました。



早速精密検査をさせていただいたところ・・・



腎機能の低下も問題でしたが、たしかに心臓の状態がかなり悪いようでした。



重度の僧帽弁閉鎖不全症でした。



1.僧帽弁が開放し、血液が「左心房」から「左心室」へ流入する様子。ここまでは正常に血液が流れていますが・・・
20140215tah02.jpg






2.閉鎖した僧帽弁に隙間がある(僧帽弁閉鎖不全)ため、「左心室」から「左心房」に血液が逆流してきてしまいます。
青い血流が逆戻りしてきた血液。
隙間のあいた僧帽弁から逆流する様子が良くわかります。
20140215tah03.jpg



3.逆流した血液は、「左心房」全体に広がっていきます。
20140215tah04.jpg



4.青色で表示された血流を見ていただくと、「僧帽弁」の隙間から「左心房」全体に広がっていくのが良くわかります。
20140215tah05.jpg



「僧帽弁閉鎖不全症」では、血液が逆流することで、全身臓器での血流不足や、肺血管での血液停滞が生じます。



それによって、咳、呼吸困難、失神、不整脈などの心不全症状があらわれるのです。



ジョリーちゃんも、闘病中は咳の症状に悩まされることもありました。



2012年の年末ごろからは、発作を起こして倒れることも増えてきました。



心臓病の進行とともに、腎機能の低下も進み、心臓病治療のための投薬にも制限が必要になる状態でした。
(心不全治療のための利尿剤は、腎機能を悪化させる副作用があるため)



そんな中でも、飼い主様が通院を続け、6種類ものお薬を欠かさず続けてこられたおかげで、ジョリーちゃん自身は御飯もしっかりと食べて、大好きなお散歩も欠かさず続けてこれました。



興奮したり、激しい運動をすると倒れてしまうので、お散歩はほどほどにとお話ししていても、ジョリーちゃん本人はお構いなしで、飼い主様に「もっとお散歩いこう!」とせがむほどだったそうです。



そうして、1年9か月の闘病生活を経て、先週、あの大雪の前日、最後の最後までお散歩を楽しんでいたジョリーちゃんは、明け方に静かに息を引き取ったそうです。



治療開始当初の状態や、その後の失神発作が続いた頃など、飼い主様には「いつ亡くなってもおかしくないですから、覚悟はしておいて下さい。」とお話しをしつづけて・・・なんだかんだで1年と9カ月。



本当に、ジョリーちゃんも飼い主様も、がんばって治療を続けてくださいました。



命あるもの、いつかは最後を迎えるものですが、最後までしっかりと御飯を食べて、最後の最後まで大好きなお散歩にも行き、御自宅で静かにご家族と過ごすことができたジョリーちゃんは、きっと安らかな気持ちで天国へ旅立ったのではないでしょうか・・・


ジョリーちゃんが亡くなった後に、わざわざご挨拶に来て下さった飼い主様も、もちろん悲しい気持ちもおありでしょうし、涙を浮かべていらっしゃいましたが・・・


それでも、「最後まで、大好きなお散歩に行けて本当に良かった」と笑顔でおっしゃっていただけました。



僧帽弁閉鎖不全症は、ワンちゃんに非常に多い心臓病で、12歳以上のワンちゃんの3~4割に発症がみられるほどと言われています。



初期にはほとんど症状は目立ちませんが、末期になると呼吸困難で苦しみながら亡くなっていく子も少なくありません。



私は、獣医師になってから不思議と心不全の子たちに縁がありました。



勤務医時代には、「谷口先生がICU当番になると、呼吸困難ラッシュが来る」



と言われたくらい、不思議と心不全で呼吸困難を起こした子たちを担当することが多かったのです。



酸素室の中で、呼吸困難で苦しみながら亡くなっていく子たち。



飼い主様が病院にいらっしゃるのが間に合わず、ご家族に看取られることもなく、眼の前で寂しくなくなっていく子たち。



そんな子たちを何頭も看取っていく中で、



「心臓病そのものを治すことは難しくても、少しでも症状を和らげ、飼い主様のもとで安らかに過ごさせてあげたい」



という思いが強くなり・・・



獣医師になって3年目の頃だったでしょうか。



循環器学会に所属し、循環器診療に力を入れようと決意したのです。



その後は、学会主催の講習会に参加したり、川崎にある日本動物高度医療センターでの非常勤研修なども経験しました。



そうして、培った知識、経験が、ジョリーちゃんとご家族が共に過ごす安らかな時間に、少しでも力になれたのなら本当に嬉しいことです。



我々獣医師は、たくさんの命を救う、やりがいのある仕事ですが、それと同時に、力及ばずたくさんの命を看取っていく辛い仕事でもあります。



苦しむワンちゃんや猫ちゃん、悲嘆にくれる飼い主様を前にし、力及ばず、悔しい思いをすることも多いですが、それでも、今回のように一生懸命に生きていくワンちゃんや猫ちゃんを目にすると、「我々がやっている治療は、力が及ばないことはあっても、無駄にはならないんだ」と、また頑張れるのです。



大雪で、患者さんが少ないこともあって、ずいぶんと長くなってしまいましたね。



最後に、心よりジョリーちゃんのご冥福をお祈り申し上げます・・・