町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 1
2014年02月08日 (土) | 編集 |
昨年末から治療をおこなっていた症例です。


1歳11カ月(初診日時点で)のイタリアングレーハウンドの男の子。



2013年10月初めに、内股に小豆くらいの大きさのしこりが見つかり、抗生物質などで治療していたそうですが、1か月たっても改善する様子がなかったそうです。


いくつかの動物病院で診察を受けたものの、なかなか良くなる様子がなく、11月半ばにはしこりがさらに大きくなり、痛みが強く、食欲もなくなってしまうような状態に。



3件目の病院で、外科手術でしこりを取り除き、詳しく調べることとなり、11月27日に手術。



組織検査の結果、しこりの診断は・・・



「縫合糸に反応して発生した、化膿性肉芽腫性炎症」



一体何の事かと言うと・・・この「縫合糸」というのは、去勢手術の際に、睾丸につながる血管を止血するために使用した糸のことです。


血管をしばった糸は、そのまま内股の皮膚の下に残るのですが、この「縫合糸」に対して過敏反応を起こし、「化膿性炎症」をおこした結果、その部分が腫れあがってしまった状態のことを、「化膿性肉芽腫性炎症」と呼ぶのです。



縫合糸に対する反応なので、「縫合糸反応性肉芽腫」と呼ぶこともあります。



治療するには、手術で体内に残った「縫合糸」を「肉芽腫」ごと摘出しなければいけません。



この「縫合糸反応性肉芽腫」は、血管などを「縫合糸」で結紮する場合には、どうしても付きまとってしまう副作用の一つなのですが・・・



縫合糸の中でも、とくに「絹糸」を使用した際に多くみられます。


「絹糸」はずいぶんと昔から外科手術で使用されており、操作性も良く、結び目も解けにくい優れた糸で、なおかつ非常に安価です。



ですが、組織に対する刺激が強く、「縫合糸反応性肉芽腫」を起こしやすい為、今では血管の結紮に「絹糸」を使うことは避けるべきだとされています。



では、何を使えば良いかというと・・・


近年では、「吸収糸」といって、組織に対して刺激性が少なく、3~6か月程度で溶けてなくなるような糸が開発されていますので、こういった縫合糸を使用することで、「縫合糸反応性肉芽腫」の危険性はずいぶんと低くなるのです。
※最新の医療機器の中には、縫合糸などを一切使用せずに、血管を止血するような器具もあります。


実際に、私は「絹糸」以外の縫合糸でこのような副作用が出た症例は見たことがありません。


当然、当院では「絹糸」は一切使用しておりません。


ですが・・・こういった「吸収糸」は、安価な「絹糸」に比べると、どうしてもコストがかかってしまうことと、慣れ親しんだ操作性の良い「絹糸」からの変更を嫌って、いまだに「絹糸」を使用して手術をおこなう病院さんも多いようです。
※避妊手術や去勢手術の病院ごとの値段の差は、こういったことも関わっています。安易に、「安い病院で・・・」というのは、あまりお勧めできません。


血管の結紮というのは、上手くいかなければ「出血死」につながる大切な手技ですから、どうしても慣れ親しんだ糸を変更するというのは勇気がいるものですからね。



さて、ここで話をもどして・・・



先ほどのイタリアングレーハウンドのワンちゃんは、手術でしこりとともに体内に残った「絹糸」を摘出することができましたので、これで一件落着・・・のはずだったのですが・・・



術後、初めの一週間は順調で、抜糸も無事に済んだそうなのですが・・・


術後約2週間たった12月11日には再び内股の組織の炎症が悪化。


激しい炎症のために、内股周辺の皮膚組織が壊死・脱落してしまうほどの状況になってしまいました。



20131222trtah01.jpg
12月22日 当院での初診時の様子


原因となる「縫合糸」は摘出したはずなのに、いったいどうしてこんなことになってしまったのでしょう??



長くなってしまったので、続きます・・・