町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
軟口蓋過長症
2013年12月13日 (金) | 編集 |
パグ犬やフレンチブルなどの鼻ペチャ(短頭種)のワンちゃんで、ちょっと興奮したり、運動しただけで、ゼェゼェ・ガァガァと息苦しそうに呼吸する様子を見たことありませんか?




ブルドッグ



こういったワンちゃんでは、「軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)」の疑いがあります。



「軟口蓋」というのは、上あごの奥の方の柔らかな部分のこと。



正常より長く垂れ下がった「軟口蓋」が、気管の入り口を塞いでしまうため、呼吸障害がでてしまうのです。



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インターズー社 クリニックノート vol92より
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ブルドッグやパグなどの、鼻ペチャ犬は、鼻と顎の骨は変形して短くなりますが、その内部の軟部組織(舌や軟口蓋など)のボリュームは正常犬と変わりません。



そのために、舌や軟口蓋などの軟部組織が狭い空間で圧迫されるような形になるため、「軟口蓋過長症」のような、解剖学的な呼吸障害が発生しやすくなるのです。



例えて言うと、お弁当のおかずの量(軟部組織の量)は変わらないのに、お弁当箱のサイズ(鼻・顎骨のサイズ)が小さくなった状態であります。



お弁当箱(骨格)が小さくなった分、おかず(軟部組織)がギュッと押しつぶされて、内部の隙間(=空気の通り道)が狭くなってしまうわけです。




こちらが、「軟口蓋過長症」のワンちゃん。


ピンセットでつまんでいるのが、過長した「軟口蓋」です。


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大きな舌や、垂れ下がった軟口蓋のせいで、喉の奥の空間が全く見えません。



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透明の気管チューブが気管に挿入されているのですが・・・


周辺の軟部組織に埋もれてしまっています。



ちなみに、正常犬では、この部分はこう見えます。



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奥に見えるのが気管の入り口。この部分に気管チューブを挿入します。



これと比べていただくと、先ほどのワンちゃんの息苦しさが容易に想像できると思います。



「軟口蓋過長症」のワンちゃんでは、日常的な呼吸困難による精神的・肉体的ストレスも大きな問題ですが・・・



全身麻酔をかけて手術をおこなった際にも大きな問題が生じます。



全身麻酔をおこなうと、体の筋肉が弛緩します。そのため、喉周辺の軟部組織も、普段よりも垂れ下がるようになってしまいます。


麻酔中は気管チューブを挿入して呼吸確保できるから良いのですが、問題は麻酔から醒めて、気管チューブを抜いた直後。



麻酔からある程度醒めたものの、まだ呼吸する力が弱いような段階の時に、自分自身の垂れ下がった「軟口蓋」や軟部組織によって気管が閉鎖されてしまい、窒息死してしまう危険があるのです。



今回のワンちゃんは、膀胱の手術のために全身麻酔を行なったのですが・・・


上述の通り、麻酔後の窒息死の危険があったため、過剰な軟口蓋を切除し、気道を確保する手術を同時におこなうこととなりました。


こちらが、過剰な軟口蓋を切除した後の様子。



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切除前の写真よりは、気管チューブの周りに空間ができているのが解ると思います。



短頭種の呼吸障害は、軟口蓋だけではなく、その他の軟部組織による圧迫も原因になりますので、軟口蓋を切除しただけで正常犬のように呼吸できるようになるわけではありませんが・・・



それでも、この手術で、息苦しさはかなり改善されるはずです。


これが、切除した軟口蓋。


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横幅2cm、縦1cm程度。


軟口蓋は、食べ物や水を飲み込む際に、鼻の方に吸い込まないようにするための壁としての重要な働きがあるため、切除しすぎもいけません。



この手術のおかげで、麻酔後の呼吸状態も問題なく、元気に回復してくれました。




今回の症例では、膀胱の手術の際に同時におこないましたが、呼吸障害の改善だけを目的に切除をおこなうことも、もちろん可能です。




パグちゃんや、フレンチブルちゃんなどで、ガァガァ、ゼェゼェ息苦しさに悩んでいらっしゃる方は、ぜひご相談くださいませ。