町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
  • 07«
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • »09
突然の症状悪化 ~僧帽弁閉鎖不全症の一例~
2013年11月30日 (土) | 編集 |
老齢の小型犬に多くみられる病気に、「僧帽弁閉鎖不全症」という心臓病があります。



12歳以上の小型犬の2~3割で発病が認められる、とても多い心疾患です。




初期の僧帽弁閉鎖不全症では、「心雑音」以外の目立った症状は認められませんが、病状が進行するとともに、咳や呼吸困難、不整脈などの症状が認められ、突然死を起こすこともあります。



僧帽弁閉鎖不全症の重症度を正確に把握するには、超音波検査が力を発揮します。



こちらは、2011年から治療をおこなっていた、あるワンちゃんの超音波画像。



20131130tah01.jpg


「左室流入血流速波形」といって、僧帽弁閉鎖不全症の重症度を調べるための測定値の一つです。



「左心房」から「左心室」に流入する血液の流速を測定しています。


左側の黄色でアンダーラインを引いている部分がそれ。



正常では1.0m/s未満とされています。このワンちゃんでは、1.08m/s(秒速1.08m)となっています。



このくらいであれば、まだまだ病状は軽く、投薬なども最小限で済みます。



この数字が、高くなれば高くなるほど、心不全の危険が高まっていきます。



続いて、同じ症例の3年後の数値。



20131130tah03.jpg



数値が1.21m/sまで上昇しています。



この数値が1.2m/sを超えると、肺水腫(心不全の症状の一つで、肺に水分が溜まり、呼吸困難を起こす)を起こす危険性があるとされています。



ワンちゃんの「僧帽弁閉鎖不全症」では、内科治療で症状をコントロールするのが一般的です。



内科治療で完治するわけではないので、心臓病の状況は徐々に悪くなっていきます。



このワンちゃんも、定期検診をしっかりと受けていただき、投薬も欠かさず続けていましたが、3年でずいぶんと進行してしまいました。



そして、こちらが、このワンちゃんが亡くなる数日前の検査数値。



20131130tah06.jpg



数値は1.5m/sを超えています。



いつ致命的な肺水腫を起こしてもおかしくない状況です。



このワンちゃんでは、まだ肺水腫は起きていませんでしたが、不整脈が頻発する危険な状態でした。



その後、いろいろと手を尽くしましたが、検査の二日後、残念ながらこちらのワンちゃんは重度の肺水腫を起こしてしまい、天に召されていきました・・・


このワンちゃんの飼い主様は、治療に大変積極的で、数カ月毎の定期検診も欠かさず受けていただき、毎日の投薬もしっかりと続けていただいていました。



それにも関らず、11歳と比較的若い年齢で別れの日を迎えることとなってしまいました。



初めにお話しした通り、「僧帽弁閉鎖不全症」は高齢犬では良く見かける病気であり、治療を続けながら15歳~18歳と長く生存する症例も多いのですが、中には今回ご紹介したワンちゃんのように、数年で病状が悪化し、若くして命を落とすケースもあるのです。




定期的な検診を受け、早期に治療を開始すれば、前述の通り長生きすることも可能な疾患です。




一見元気に見えても、定期検診を欠かさず、大切なワンちゃんの健康管理にご注意いただければと思います。



最後に、治療の力およばず、若くして天に召されたRちゃんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます・・・