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町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
ドラマ監修裏話 「僕とシッポと神楽坂」 第四話
2018年11月03日 (土) | 編集 |
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院



さて、「僕とシッポと神楽坂」も第四話まで進みましたね。


ナルタウン動物病院で手術は難しいと判断された症例に、コオ先生が挑むものの・・・といったお話でしたが・・・



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心臓に腫瘍ができてしまったゴールデンレトリバーのぐりちゃん。

技術的に摘出は可能かもしれないが・・・

すでに症例の体力は衰え、心臓そのものの状態も悪く、長時間の麻酔・手術の負担に耐えられそうもない。

摘出そのものは成功したとしても、麻酔から目覚めることなく亡くなってしまう可能性が考えられる・・・といった状態です。

田代先生は、リスクの高い手術はおこなわず、対症療法でぐりちゃんを見守ることを飼主様に勧めますが、飼主様には手術に強いこだわりがあるようです。

その様子を見かねた堀川君は、ぐりちゃんを連れて坂の上動物病院へ・・・

コオ先生は飼主様の希望を叶えるべく、そしてぐりちゃんを助けるために1%でも可能性があるなら・・・と難しい手術に挑みます。


しかし・・・摘出は成功したものの、田代先生が危惧した通り、弱ったぐりちゃんの体は手術の負担に耐えられず、残念ながら術後に容態が急変し亡くなってしまいます。


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心臓腫瘍の一例




ここで、監修者として苦労したのが、「ぐりちゃんをどのような病気に設定するか」です。




まず、手術の難易度。

最先端機器をそろえ、スタッフも十分にいるナルタウン動物病院。そして外科のスペシャリストである田代先生が手術をためらうほどの状態です。

それほどの症例を、スタッフも少なく、設備も旧式・不十分な坂の上動物病院で手術しようというのがそもそも「無謀でしょ??」という話になってしまうのです。

かといって、坂の上動物病院の設備・人員で十分に手術可能・・・という症例にしてしまうと、「だったらナルタウンで問題なくできるでしょ??」という話になってしまいます。

原作の方だと、たらさわさんにそのようにお話をすると

「じゃあ、手術は夜間緊急病院の設備を使って・・・助っ人に〇〇先生を呼んで・・・」

という感じで解決してもらうのですが、今回のドラマではそうもいかないのが難しい所であります。







次に問題になるのが、「本当にリスクを冒してまで手術するべきなのか?」という部分。

まず、「手術のリスクが高い」というのはどういった状況でしょう?

例えば・・・

「腫瘍が摘出困難な位置にあり、無理をすると大出血の危険がある」

「技術的に手術は可能だが、症例の状態が非常に悪く、手術の負担そのものに耐えられない可能性がある」

といったケースが考えられますね。

ただし、そういった症例でも

「今危険を冒して手術をしなければ、数日以内に苦しんで死んでいくしかない」

といった状況であれば、これは「リスクを冒してでも手術を行う価値がある」と言えます。

こういった状況で、なおかつ飼主様も手術を希望されているなら、通常は獣医師は手術を勧めるはずです。

もちろん、田代先生であっても手術を勧めるはずです。





一方、「リスクを冒すべきではない」状況というのもあります。

例えば

「無理して手術をしなくても、緩和治療で数週間、数か月の延命が見込める」
※今すぐに苦しんで死んでしまうというわけではない

という場合です。

このパターンだと、何が何でも手術を勧めるということにはなりませんね。

リスクの高さを慎重に判断し、手術するかどうかを飼主様としっかりと相談しなければなりません。

たとえば、手術成功の可能性が50%だったら? 30%だったら? 10%以下なら?

成功の可能性が低ければ、無理にして手術せずに、数週間・数か月でも家族と穏やかに過ごす道を選ぶ飼主様も多いと思います。

今回のぐりちゃんの場合は、このパターンになります。

そうでなければ、田代先生が手術を断るわけがないのです。


それなのに、コオ先生が手術に挑むというのは、無謀すぎるぞ・・・というのが監修者の気持ちなのであります。


初めに田代先生が手術を断った・・・という前提がなければもうちょっと楽だったんですけどねぇ・・・




ところで、今回のエピソードで堀川君が田代先生に叱られるシーンがありますね。

堀川君が「危険があるのはわかっていますが、チャレンジしたいんです!」と訴えるシーンです。

我々獣医師の仕事というのは、自分自身が努力して身につけた知識・技術で動物の命を救うことができる、とても遣り甲斐のある仕事です。

私自身も身に覚えがあることなのですが、知識・技術が身についてくると、「難しい症例だけど、この子を救う事ができるかチャレンジしたい」という気持ちが芽生えてくることがあります。

ですが、「自分がチャレンジしたい」からといって、飼い主様に十分にリスクなどを説明しないままに、難しい治療に誘導することがあってはいけません。

我々獣医師の役目は、飼い主様が納得のいく選択ができるように、様々な状況を想定した治療プランを提示することであって

「自分がチャレンジしたい!」という気持ちが前面に出てきてしまってはいけないのです。

学生でなおかつ研修生の立場でこんな風に治療に口出しをして、あまつさえ患者様を別の病院に連れて行くなんてとんでもないことです。

なので、はじめに脚本を拝見して堀川君のこのセリフを見た時に、「これは田代先生にきつく叱ってもらわなければなりません」というメールを返したのです。



そんなこんなで、「田代先生、もっと二人に言ってやってよ!」と思いながら監修をすすめた第四話でした。




そういえば、ぐりちゃんが息苦しそうにする演技、とても真に迫っていましたね。

毎回思うことですが、病気の演技をするワンちゃん・猫ちゃんたち、素晴らしい演技です。

彼ら「シッポ」ちゃんたちの迫真の演技が、このドラマには欠かせない重要なポイントになっていますね!

そして、独特の魅力を発する田代先生の今後の活躍にも期待です!



町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院