町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
先行投資
2014年02月27日 (木) | 編集 |
病院に新しい機材を導入いたしました。




まずはこちら。



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最新型の麻酔モニターです。


心電図や血圧計、麻酔ガス濃度、酸素飽和度などなど・・・安全な麻酔管理に欠かせない情報を、この一台でモニタリングすることができます。


現在、国内で販売されている動物用麻酔モニタ機器としては、最新・最高スペックのものであります 


今まで使用していたモニタ機器よりも、測定できる項目が増え、さらに一画面ですべてのデータを表示することができるため、よりきめ細やかな麻酔管理をおこなうことができるようになり、当然、麻酔の安全性も 



続いては、こちら。



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CR(コンピューテッドラジオグラフィ)を導入いたしました



人間の病院なんかでは、もうほとんど標準装備なので、ご覧になられた事がある方も多いと思いますが・・・


レントゲン画像をデジタル化するシステムです。



レントゲンフィルムの代わりに、イメージングプレート(下写真の黒いプレート)を使用してレントゲン撮影を行います。



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一緒に写っている大きな機械がイメージングプレートの読み取り機。



こちらで読み取った画像がパソコン上に表示されます。



画像の処理時間は30~60秒程度。



今までは現像に15分程かかっていましたので、格段に検査スピードが速くなります 



さらに、デジタル処理した画像は、拡大や画像調整が自由自在 



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読影診断に役立つだけでなく、飼い主様に病状をご説明する際にも威力を発揮してくれるはずです 



このCRシステムは、10年ほど前から動物病院に普及し始めたもので、私も開業時に導入を検討していたのですが・・・


限られた開業資金の中で、超音波検査機やICU装置の方が優先順位が高かったため断念 



開業から5年たって、ようやく念願かなっての導入です 



これで、今まで以上に自分の理想に近い、質の高い医療を皆様にご提供できるようになります 



とはいえ・・・


当院の規模としては、かなり思い切った投資になりましたので、今まで以上にたくさんの患者様に頼りにしていただき、質の高い医療をご提供しつつ、病院の売り上げも確保、そしてさらにまたより良い病院にするために投資をおこなって・・・


と、患者様と我々病院の双方にとって、WIN-WINな循環を作っていけたらと思っています 

縫合糸反応性肉芽腫と水腎症
2014年02月24日 (月) | 編集 |
先日、縫合糸反応性肉芽腫が原因で、腹部の皮膚が壊死してしまったワンちゃんをご紹介いたしました。



前回もお話ししましたが、手術で血管を止血する際に使用する糸に対して、稀に強い炎症反応を示すことがあります。



最近では、組織に対して低刺激で、数カ月で吸収されて無くなる糸を使用することが多いので、あまり見かけることは無くなってきましたが・・・


今でも、古いタイプの糸(絹糸)を使用された症例で発症がみられることがあります。



前回ご紹介したのは、男の子で去勢手術時に使用した糸(絹糸)に対する反応でしたが・・・



今回ご紹介するのは、女の子。



避妊手術で使用した糸に対して縫合糸反応性肉芽腫を起こした症例です。



※当院で避妊手術をした症例ではありません。



避妊手術の際に、子宮の根元を結紮するのに使用した縫合糸(おそらく絹糸)の周辺が炎症を起こし、腫瘍状の塊を形成しています。



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膀胱の左側(症例にとっては右側にあたる)に21.5mm×17.7mmの腫瘤。



切断された子宮の断端部が、縫合糸反応性肉芽腫を発症し、しこり状になったものです。



腫瘤の内部には、おそらく絹糸と思われる白い塊が二つ。



絹糸は組織に吸収されることはないので、体内に残り続けます。



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円で囲った部分が、絹糸(疑い)。



今回の症例では、被害はこれだけではありませんでした。



炎症によって腫瘤を形成した子宮断端部が、「尿管」を巻き込んでしまったために、「水腎症」を併発してしまったのです。



「水腎症」というのは、何らかの理由で「尿管」が閉塞し、腎臓から尿が排泄されなくなってしまったために発症します。


尿管が閉塞しているにも関わらず、腎臓では尿が分泌され続けるために、腎臓が水風船のように膨らんでしまうのです。



図解するとこんな感じ。



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腫瘍と書いた部分が、縫合糸反応性肉芽腫となった子宮断端部。
それが、尿管を塞いでしまったために、右側の腎臓(絵では左)から分泌された尿の行き場がなくなり、腎臓が水風船のように膨らむのです。


こちらが、実際の超音波検査での画像。


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「水腎症」を発症した右腎。水風船のようにパンパンに膨らんでいます。





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正常な左腎。





ここまで進行してしまうと、この腎臓は完全に機能を失ってしまいます。




幸い、左側の腎臓はまだ正常ですので、生命維持についてはさしあたって問題はありません。



ただし、このままですと、炎症反応の進行とともに、肉芽腫が大きくなり、いずれ無事な方の尿管まで巻き込まれる恐れがあります。



そうなる前に、手術で肉芽腫となった子宮断端部と、原因となった糸を摘出しなければなりません。



今回の症例は、周辺組織との癒着が予測され手術が困難な部位であることと、水腎症となった右腎臓の摘出も必要になるため、私一人の手に負えるような手術ではありません。




そこで、手術については川崎にある日本動物高度医療センターに依頼し、連携して治療にあたることとなりました。




このワンちゃんは、まだ4歳と若いワンちゃんなのですが、避妊手術の際に選択した糸一本のために、腎臓摘出という大変な手術をおこなわなければならなくなってしまいました。




絹糸を手術で使用することは、禁止されているわけではありませんが、やはりこういった症例が実際にあるわけですから、できる限りリスクの少ない手術法、手術材料を獣医師が責任もって選択しなければなりません。



もちろん、絹糸を使えば必ず縫合糸反応性肉芽腫になるわけではありませんし、また絹糸以外の糸でも縫合糸反応性肉芽腫の報告はあります。



ただ、その中でも絹糸による縫合糸反応性肉芽腫の発生率が最も高いのです。



前回の男の子の症例といい、今回のワンちゃんといい・・・



この近辺には、いまだに絹糸を使用している獣医さんが少なくないようですねぇ・・・


本日のわんにゃんドック
2014年02月21日 (金) | 編集 |
今日ご紹介するのは、ロシアンブルーの青空(ソラ)ちゃんです 



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今月2歳になったばかりの女の子です 




私の経験上、ロシアンブルーの子たちは、性格がハッキリしているというか・・・「嫌なものはイヤッ!」・・・という子が多いのですが・・・ 



青空ちゃんも、不機嫌そうに唸りながらのわんにゃんドックでした 




とはいえ、「ニャうぅ~」と不満の自己主張をするくらいで、特に大暴れするとか、引っ掻いてくるとかということはなく、検査そのものはスムーズに進行



もっと嫌がって大変な子はたくさんいますので、唸り声以外はむしろ大人しいくらいでしたよ~ 




当院では、大切なワンちゃん・猫ちゃんの健康管理の一助として、年に一度のわんにゃんドックをお勧めしております

本日のわんにゃんドック
2014年02月18日 (火) | 編集 |
わんにゃんドックのご紹介・・・の前に。


意外とご存知ない方が多かったので、雪道での運転のコツを一つ。


今回の大雪で、「チェーンを巻いていてもスリップして困った」なんて方も多かったと思いますが、そんなときに役立つテクニックです。


雪道での発進や、坂道でのスリップの際にはサイドブレーキ(パーキングブレーキ)を使ってみてください。


駐車の時に使うブレーキで、足踏み式や、手で引っぱって使用するブレーキです。


サイドブレーキを使うといっても、最大限にブレーキを効かせるのではなく、半分ブレーキが効いたような状態にしながら、アクセルを踏むと、スリップにつながる余分な回転力がブレーキで吸収されるため、雪道でもスリップしにくくなるのです。


オートマ車の場合は、わざわざサイドブレーキ使わなくても、普通のブレーキを軽く踏みながらアクセルを踏むのでも同様の効果が得られます。


ブレーキの効かせ具合は、スリップの様子で強弱を調節してみてください。


道路によっては、まだまだ雪や氷の残っている路面も多いですから、困ったときに思い出していただければ幸いです^^



さて、本題のわんにゃんドック。



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柴犬のまるちゃんです 



今月で5歳になったばかりの男の子です 




抱っこ好きの甘えん坊さんのようで、普段の診察の時も、飼い主様にすぐに抱っこをせがむ子なんですが、検査中も看護師さんに抱っこをせがんでいたようです 




検査の結果は、やや体重が理想体重より多かったくらいで、レントゲンや超音波検査も問題なしでした 



当院では、大切なワンちゃん・猫ちゃんの健康管理の一環として、年に一度のわんにゃんドックをお勧めしております 

心臓病とジョリーちゃん
2014年02月15日 (土) | 編集 |
こちらの写真は、先日、天に召されていったMIX犬のジョリーちゃんです。



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左側の、クリアケースにはいった、可愛らしい仔犬ちゃんは・・・


なんと、飼い主様のお知り合いの方が、羊毛フェルトで制作した「チビジョリー」ちゃんです。


クリアケースにはいってるから、「ひょっとしてお人形さんかな・・・?」と思いますが、これが普通にジョリーちゃんの隣に座らされていたら、写真じゃ本物の仔犬ちゃんと区別がつきませんよね!



ジョリーちゃんの色々な角度の写真を参考に制作されたそうで、ジョリーちゃんの体毛も一部使用されているそうです。



趣味でこれだけの物を制作されるなんて、ビックリですよね!




さて、こちらのジョリーちゃん、初めに書いたように、先週の2月7日に、1年9カ月に及ぶ心臓病との闘病生活を経て、静かに天に召されていきました。







ジョリーちゃんが初めて当院にいらっしゃったのは2012年5月11日でした。



もともとボランティア団体で保護されたワンちゃんだったそうで、正確な年齢は不明でしたが、当時でおよそ12歳ということでした。



別の病院さんで腎機能の低下で治療を行っていたところ、3月頃から苦しそうに咳をするようになったということで、循環器疾患を疑い当院に転院されてきました。



早速精密検査をさせていただいたところ・・・



腎機能の低下も問題でしたが、たしかに心臓の状態がかなり悪いようでした。



重度の僧帽弁閉鎖不全症でした。



1.僧帽弁が開放し、血液が「左心房」から「左心室」へ流入する様子。ここまでは正常に血液が流れていますが・・・
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2.閉鎖した僧帽弁に隙間がある(僧帽弁閉鎖不全)ため、「左心室」から「左心房」に血液が逆流してきてしまいます。
青い血流が逆戻りしてきた血液。
隙間のあいた僧帽弁から逆流する様子が良くわかります。
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3.逆流した血液は、「左心房」全体に広がっていきます。
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4.青色で表示された血流を見ていただくと、「僧帽弁」の隙間から「左心房」全体に広がっていくのが良くわかります。
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「僧帽弁閉鎖不全症」では、血液が逆流することで、全身臓器での血流不足や、肺血管での血液停滞が生じます。



それによって、咳、呼吸困難、失神、不整脈などの心不全症状があらわれるのです。



ジョリーちゃんも、闘病中は咳の症状に悩まされることもありました。



2012年の年末ごろからは、発作を起こして倒れることも増えてきました。



心臓病の進行とともに、腎機能の低下も進み、心臓病治療のための投薬にも制限が必要になる状態でした。
(心不全治療のための利尿剤は、腎機能を悪化させる副作用があるため)



そんな中でも、飼い主様が通院を続け、6種類ものお薬を欠かさず続けてこられたおかげで、ジョリーちゃん自身は御飯もしっかりと食べて、大好きなお散歩も欠かさず続けてこれました。



興奮したり、激しい運動をすると倒れてしまうので、お散歩はほどほどにとお話ししていても、ジョリーちゃん本人はお構いなしで、飼い主様に「もっとお散歩いこう!」とせがむほどだったそうです。



そうして、1年9か月の闘病生活を経て、先週、あの大雪の前日、最後の最後までお散歩を楽しんでいたジョリーちゃんは、明け方に静かに息を引き取ったそうです。



治療開始当初の状態や、その後の失神発作が続いた頃など、飼い主様には「いつ亡くなってもおかしくないですから、覚悟はしておいて下さい。」とお話しをしつづけて・・・なんだかんだで1年と9カ月。



本当に、ジョリーちゃんも飼い主様も、がんばって治療を続けてくださいました。



命あるもの、いつかは最後を迎えるものですが、最後までしっかりと御飯を食べて、最後の最後まで大好きなお散歩にも行き、御自宅で静かにご家族と過ごすことができたジョリーちゃんは、きっと安らかな気持ちで天国へ旅立ったのではないでしょうか・・・


ジョリーちゃんが亡くなった後に、わざわざご挨拶に来て下さった飼い主様も、もちろん悲しい気持ちもおありでしょうし、涙を浮かべていらっしゃいましたが・・・


それでも、「最後まで、大好きなお散歩に行けて本当に良かった」と笑顔でおっしゃっていただけました。



僧帽弁閉鎖不全症は、ワンちゃんに非常に多い心臓病で、12歳以上のワンちゃんの3~4割に発症がみられるほどと言われています。



初期にはほとんど症状は目立ちませんが、末期になると呼吸困難で苦しみながら亡くなっていく子も少なくありません。



私は、獣医師になってから不思議と心不全の子たちに縁がありました。



勤務医時代には、「谷口先生がICU当番になると、呼吸困難ラッシュが来る」



と言われたくらい、不思議と心不全で呼吸困難を起こした子たちを担当することが多かったのです。



酸素室の中で、呼吸困難で苦しみながら亡くなっていく子たち。



飼い主様が病院にいらっしゃるのが間に合わず、ご家族に看取られることもなく、眼の前で寂しくなくなっていく子たち。



そんな子たちを何頭も看取っていく中で、



「心臓病そのものを治すことは難しくても、少しでも症状を和らげ、飼い主様のもとで安らかに過ごさせてあげたい」



という思いが強くなり・・・



獣医師になって3年目の頃だったでしょうか。



循環器学会に所属し、循環器診療に力を入れようと決意したのです。



その後は、学会主催の講習会に参加したり、川崎にある日本動物高度医療センターでの非常勤研修なども経験しました。



そうして、培った知識、経験が、ジョリーちゃんとご家族が共に過ごす安らかな時間に、少しでも力になれたのなら本当に嬉しいことです。



我々獣医師は、たくさんの命を救う、やりがいのある仕事ですが、それと同時に、力及ばずたくさんの命を看取っていく辛い仕事でもあります。



苦しむワンちゃんや猫ちゃん、悲嘆にくれる飼い主様を前にし、力及ばず、悔しい思いをすることも多いですが、それでも、今回のように一生懸命に生きていくワンちゃんや猫ちゃんを目にすると、「我々がやっている治療は、力が及ばないことはあっても、無駄にはならないんだ」と、また頑張れるのです。



大雪で、患者さんが少ないこともあって、ずいぶんと長くなってしまいましたね。



最後に、心よりジョリーちゃんのご冥福をお祈り申し上げます・・・

縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 3
2014年02月13日 (木) | 編集 |
免疫機能が暴走し、無菌性脂肪織炎を発症したワンちゃんの続きです。


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前回お話ししたように、この種の炎症反応は細菌感染などとは無関係に発症しますので、抗生剤を投与しても効果がありません。



暴走した免疫反応を抑えるために、免疫抑制剤を使用します。


動物医療で主に使用されるのは、プレドニゾロンというお薬。


免疫力を抑制する作用があり、様々な免疫疾患に使用するお薬で、アレルギー治療にも使用されます。


ただ、プレドニゾロンは免疫反応を抑制するため、細菌感染を起こしやすくなるという副作用があります。


そのため、感染予防として抗生剤を併用する必要があります。






さて、プレドニゾロンの投与を開始してどうなったかというと・・・





投与開始から二日後の12月24日



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たった2日でこの状態です。



まだ所々、皮膚に穴が開いた状態ですが、あんなに激しかった組織の炎症が、すでに下火にななり、皮膚の再生が始まっています。
※この症例の治療には、プレドニゾロンだけでなく、皮膚の修復を助けるジェル剤も使用しています。


穴のところは、縫合して治すのが一番良いのですが、この段階ではまだ皮膚組織が脆弱で、縫合しても皮膚が裂けてしまう可能性が高いので、このまま様子を見ます。



つづいて、12月28日の様子。



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穴の部分の皮膚組織もだいぶしっかりしてきました。


そこで、この部分の縫合をおこないます。


とはいえ、まだまだ皮膚組織は弱い状態なので・・・



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このように、傷口の修復を助ける作用のあるパットを利用し、皮膚にかかる圧力を分散させてやります。




そうして、年をまたいで2014年1月14日


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まだ一か所、抜糸が済んでいないところがありますが、ほとんどの皮膚が再生してくれました。



ただし、ここまで良くなっても安心できないのが免疫異常による疾患です。



炎症が治まったら、免疫抑制薬(プレドニゾロン)を徐々に減量していくのですが、その過程で、また免疫が暴走を始め、症状が再発する可能性があるのです。



時間をかけて、徐々に投薬量を減らし、再発の有無を慎重に見極めなければなりません。



こちらのワンちゃんでは、2月6日の時点では、再発もなく順調に投薬量を減らすことができていますが、まだまだ油断せず、慎重に様子をみている途中であります。

縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 2
2014年02月10日 (月) | 編集 |
さて、先日の続きであります。


「縫合糸反応性肉芽腫」を発症し、手術で原因となる「縫合糸(絹糸)」を摘出、一見落着のはずが、炎症が再発・悪化してしまったイタリアングレーハウンドのワンちゃんであります。
※詳しくは先日のブログをご覧ください→click


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2013年12月22日 当院での初診時の様子



先日もお話しした通り、「縫合糸反応性肉芽腫」は、血管の結紮に使用した「縫合糸」に対する過敏反応の一種。
※「絹糸」を使用した場合に発症することが多い。


体内に存在する縫合糸周辺に激しい炎症を起こし、「肉芽腫」と呼ばれる大きな腫瘤を形成します。


治療するには、手術で「肉芽腫」ごと体内に残存する「縫合糸」を摘出しなければなりません。


こちらのワンちゃんも、手術で「縫合糸」を摘出しましたので、問題なく治るはずだったのですが・・・
※今回のケースも「絹糸」が原因でした。



術後2週間ほどたった2013年12月11日頃に、炎症が再発。



抗生剤の再投与などで治療をおこなうも、炎症が治まる様子はなく、日毎どころか、一時間ごとにどんどんと炎症が広がるような様子だったそうです。



見る見るうちに悪化していく傷口に途方にくれた飼い主様が、当院にいらっしゃったのが12月22日。
※初めにしこりを発見してから、当院で4件目の動物病院とのことでした。


その頃には、激しい炎症で皮膚が壊死・脱落し、ところどころ穴があいてしまった状態でした。



さらに、詳しく身体検査をすると、本来の傷口以外にも異常な炎症を起こしている部分が認められました。



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鼻の周りに異常な炎症が生じ、茶色いカサブタが付着しています。




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足の裏にも炎症とカサブタ。



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肛門周囲にも炎症とカサブタ。



そもそも、「縫合糸反応性肉芽腫」は、体内に存在する「縫合糸」という「異物」に対して体の免疫機能が拒絶反応を示し、過剰な炎症を起こすことで発症すると考えられます。
※手術用に使用する縫合糸は、本来は体内に存在しても大きな問題を起こさないはずなのですが、ごく少数の動物で、このような過剰な炎症反応が起きるのです。



どうやら、このワンちゃんの体内では、原因となった「絹糸(異物)」が取り除かれたにもかかわらず、異常をきたした免疫反応が暴走を続け、全身で激しい炎症反応が続いているものと考えられます
※免疫機能の異常による、「無菌性脂肪織炎」と考えられます。


この炎症には、細菌感染は関与していませんので、いくら抗生物質を投与しても炎症が治まることはありません。



暴走した免疫反応を押さえるような治療が必要になるのです。



つづく・・・






縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 1
2014年02月08日 (土) | 編集 |
昨年末から治療をおこなっていた症例です。


1歳11カ月(初診日時点で)のイタリアングレーハウンドの男の子。



2013年10月初めに、内股に小豆くらいの大きさのしこりが見つかり、抗生物質などで治療していたそうですが、1か月たっても改善する様子がなかったそうです。


いくつかの動物病院で診察を受けたものの、なかなか良くなる様子がなく、11月半ばにはしこりがさらに大きくなり、痛みが強く、食欲もなくなってしまうような状態に。



3件目の病院で、外科手術でしこりを取り除き、詳しく調べることとなり、11月27日に手術。



組織検査の結果、しこりの診断は・・・



「縫合糸に反応して発生した、化膿性肉芽腫性炎症」



一体何の事かと言うと・・・この「縫合糸」というのは、去勢手術の際に、睾丸につながる血管を止血するために使用した糸のことです。


血管をしばった糸は、そのまま内股の皮膚の下に残るのですが、この「縫合糸」に対して過敏反応を起こし、「化膿性炎症」をおこした結果、その部分が腫れあがってしまった状態のことを、「化膿性肉芽腫性炎症」と呼ぶのです。



縫合糸に対する反応なので、「縫合糸反応性肉芽腫」と呼ぶこともあります。



治療するには、手術で体内に残った「縫合糸」を「肉芽腫」ごと摘出しなければいけません。



この「縫合糸反応性肉芽腫」は、血管などを「縫合糸」で結紮する場合には、どうしても付きまとってしまう副作用の一つなのですが・・・



縫合糸の中でも、とくに「絹糸」を使用した際に多くみられます。


「絹糸」はずいぶんと昔から外科手術で使用されており、操作性も良く、結び目も解けにくい優れた糸で、なおかつ非常に安価です。



ですが、組織に対する刺激が強く、「縫合糸反応性肉芽腫」を起こしやすい為、今では血管の結紮に「絹糸」を使うことは避けるべきだとされています。



では、何を使えば良いかというと・・・


近年では、「吸収糸」といって、組織に対して刺激性が少なく、3~6か月程度で溶けてなくなるような糸が開発されていますので、こういった縫合糸を使用することで、「縫合糸反応性肉芽腫」の危険性はずいぶんと低くなるのです。
※最新の医療機器の中には、縫合糸などを一切使用せずに、血管を止血するような器具もあります。


実際に、私は「絹糸」以外の縫合糸でこのような副作用が出た症例は見たことがありません。


当然、当院では「絹糸」は一切使用しておりません。


ですが・・・こういった「吸収糸」は、安価な「絹糸」に比べると、どうしてもコストがかかってしまうことと、慣れ親しんだ操作性の良い「絹糸」からの変更を嫌って、いまだに「絹糸」を使用して手術をおこなう病院さんも多いようです。
※避妊手術や去勢手術の病院ごとの値段の差は、こういったことも関わっています。安易に、「安い病院で・・・」というのは、あまりお勧めできません。


血管の結紮というのは、上手くいかなければ「出血死」につながる大切な手技ですから、どうしても慣れ親しんだ糸を変更するというのは勇気がいるものですからね。



さて、ここで話をもどして・・・



先ほどのイタリアングレーハウンドのワンちゃんは、手術でしこりとともに体内に残った「絹糸」を摘出することができましたので、これで一件落着・・・のはずだったのですが・・・



術後、初めの一週間は順調で、抜糸も無事に済んだそうなのですが・・・


術後約2週間たった12月11日には再び内股の組織の炎症が悪化。


激しい炎症のために、内股周辺の皮膚組織が壊死・脱落してしまうほどの状況になってしまいました。



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12月22日 当院での初診時の様子


原因となる「縫合糸」は摘出したはずなのに、いったいどうしてこんなことになってしまったのでしょう??



長くなってしまったので、続きます・・・



歯石クリーニングと歯周病
2014年02月06日 (木) | 編集 |
先月行った、歯石クリーニングの様子です。



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まだ3歳のトイプードルの男の子です。


全体に軽度~中程度の歯石付着が認められます。


歯肉の様子は、見たところそれほど炎症も起きてません。



一見すると、歯石のクリーニングだけで済むように見えますが・・・





こちらの写真は、左上の一番奥の歯。

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目盛のついた器具が一緒に写っていますが、こちらは「歯周プローブ」といって、歯周ポケットの深さ(=歯周病の進行度)を調べる器具であります。



こいつで、この奥歯の歯周ポケットを計測すると・・・




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ズボッと奥まで入ってしまいました。



正常なワンちゃんの歯周ポケットの深さは1~2mm。



このワンちゃんでは、歯周ポケットが9mmまで達していました。



歯石の具合はそれほどでもなかったのに、この部分だけ極端に歯周病が進行していました。



おそらく普段の食生活や、食べ方の癖などが影響するのでしょうが、このように局所的に歯周病が進行していることが時々あります。



残念ながら、この歯は抜歯治療となりました。



クリーニング・治療後はこんなにピカピカです。



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人間と違い、自分で歯を磨くことができないワンちゃん・猫ちゃんでは、歯周病の進行は思いの他早く、今回のように、わずか3歳のワンちゃんでも、抜歯治療が必要になることも珍しくありません。



歯周病を予防するには、まず御自宅での歯磨きが重要なのは言うまでもありません。



それに加えて、定期的に動物病院で検診を受けていただき、適切なタイミングで、麻酔下の歯石クリーニングを受けていただくことが大切です。




トリミングショップや動物病院でも麻酔をかけない状態でカリカリと歯石を取ってくれるところもあるようですが、そういった処置では歯周病を予防することはできません。


今回の症例を見ていただいて解るように、一番奥の歯や、歯の裏側までしっかりとクリーニングするには全身麻酔が不可欠です。



当院でも、応急的な処置や、歯石クリーニング後の歯周病管理の目的で、麻酔なしで簡単な歯石除去をおこなうこともございますが、それはあくまでその場しのぎの処置だとご理解ください。


しっかりとした歯周病ケアには、全身麻酔下での歯石クリーニングは欠かせません。

猫伝染性腹膜炎
2014年02月03日 (月) | 編集 |
猫伝染性腹膜炎(FIP)という病気をご存知でしょうか?




猫ちゃんのウイルス性疾患の一つで、死亡率が非常に高く、有効な治療の手立てもありません。




猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因ウイルスは「コロナウイルス」であります。



ですが、すべてのコロナウイルスが猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症するわけではありません。



本来、コロナウイルス自体は病原性は低く、多数の猫ちゃんが無症状のまま感染をしていると考えられています。
(コロナウイルスは感染猫の糞便を介して容易に感染していきます)



しかし、何らかのきっかけで、コロナウイルスが猫ちゃんの体内で突然変異を起こし、より毒性の強いウイルスへと変化した際に、猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症すると考えられています。



したがって、同じようにコロナウイルスに感染しても、全く症状がない子もいれば、運悪く猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状を発症し、命を落とす子もいるのです。





猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状には、胸水や腹水がたまるウエットタイプといわれる症状と、化膿性肉芽腫と呼ばれる炎症性の「おでき」が内臓に形成されるドライタイプという症状がみられます。



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ドライタイプの猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した猫ちゃんの腹腔内に形成された「化膿性肉芽腫」。



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試験開腹の様子。




胸水や腹水がたまるウエットタイプは比較的診断しやすいのですが、ドライタイプの場合は、眼に見える症状がないまま衰弱し、死亡していくことも多い為、診断が難しい疾患でもあります。



数年前までは、そもそも猫伝染性腹膜炎(FIP)を正確に診断できる検査そのものが存在しませんでしたが、近年ではウイルスの遺伝子を検出する検査が利用できるようになり、以前よりはだいぶ診断精度が上がってきました。



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初めにも書きましたが、この猫伝染性腹膜炎(FIP)は致命的な病気ですが、いまだ有効な治療法がございません。



ステロイド剤や、インターフェロンと呼ばれる抗ウイルス薬の使用などが報告されていますが、いずれも延命効果はあるようですが、完治は難しいのが現状です。




ですので、この病気に関しては、治療よりも、まずコロナウイルスそのものに感染しないようにすることと、もし感染してしまっていたとしたら、ウイルスが突然変異を起こすことを予防することが大切です。



コロナウイルスそのものは、野良ネコちゃん、家庭猫問わず多くが無症状のまま感染していることが多いので、不用意に野良ネコを引き取ったりしないことが大切。



また、コロナウイルスが体内で突然変異するきっかけの一つに、猫ちゃんの免疫力の低下があげられているため、普段から健康状態に気をつけ、万全の体調を維持するように心がけることが大切。



猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した多くのネコちゃんが、発症前に引っ越しや避妊・去勢手術などストレスになるようなことを経験していたり、多頭飼育で日常的にストレスがかかるような環境で飼われているケースが多いことから、ストレスによって免疫力が低下したことをきっかけになるのではないかと考えられているのです。



とはいえ、眼には見えないウイルスという相手ですから、なかなか予防と言っても有効な手だてがないのが現状ではあります。