町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
猫白血病ウイルスと縦隔型リンパ腫
2013年09月30日 (月) | 編集 |
呼吸困難を起こした症例のレントゲン画像です。




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胸を横から見たレントゲンです。

左側が頭の方向。

右側がお尻の方向。


胸の前側に大きな腫瘍(黄色○で囲った部分の白いところすべてが腫瘍)があるせいで、気管が圧迫されています(赤矢印部分)。


正常な猫ちゃんのレントゲンはこちら。

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腫瘍の部分を、超音波で検査すると、こんな具合です。


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「縦隔型リンパ腫」を疑う所見です。
※縦隔:胸の中心部で、食道や気管が通る部分。


「リンパ腫」というのは、リンパ細胞が腫瘍化する「悪性腫瘍」のこと。


発生場所によって、「腎臓型」や「多中心型」、「縦隔型」などに分類されます。


この中でも、「縦隔型」は、1~3歳程度と若い年齢のネコちゃんで発症するのが特徴。


さらに、発症したほとんどのネコちゃんに「猫白血病ウイルス」の感染が関わっています。


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同症例の血液検査結果。「FeLV」というのが「猫白血病ウイルス」のことです。
「FIV」は「猫エイズウイルス」。



つまり、ほとんどの「縦隔型リンパ腫」は、「猫白血病ウイルス」によって引き起こされているということが言えます。



抗がん剤を用いた治療は可能ですが、治癒することは少なく、90%は数カ月~2年で亡くなってしまいます。


抗がん剤を用いない場合は、診断から1~2カ月程度の余命とされています。



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「縦隔型リンパ腫」では、胸の内部に「胸水」が溜まることがあります。
「胸水」に含まれていた腫瘍細胞。



悪性の腫瘍細胞は、盛んに細胞分裂をおこないます。


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赤い矢印の部分が、核分裂を起こした細胞核。


核分裂を起こしている細胞が見つかるということは、これらの細胞が「ガン細胞」で、盛んに増殖していることを示しています。



先ほども述べたとおり、「縦隔型リンパ腫」は「猫白血病ウイルス」に感染した、極めて若い猫ちゃんに発生する致死的な病気です。


「猫白血病ウイルス」は、地域差はありますが、野良ネコちゃんを中心に、外出する家庭猫など世界中のネコちゃんに発生が認められます。


本来、「猫白血病ウイルス」はそれほど強力なウイルスではなく、成猫であればウイルスに接触しても、一時的な感染で済むことがほとんどです。



ですが生後4カ月までの若い猫ちゃんは、「猫白血病ウイルス」に対する感受性が高く、ウイルスに接触すると、70~100%の症例で、「持続感染」に陥ります。
※持続感染:ウイルスが常に体内で増殖している状態。


そして、持続感染を起こした猫ちゃんのほとんどが、ウイルスに関連した疾病で2~3年のうちに亡くなってしまうのです。



近年では、猫ちゃんを自由に外出させるお宅は減ってきていると思いますが、野良ネコちゃんを保護された場合や、「お外に出るネコちゃんが生んだ子猫」を譲り受けた場合などは、ウイルスの感染の有無を確認しておく必要があります。


とはいえ、ウイルスの持続感染が見つかったとしても、残念ながら治療法はありません。


保護して飼い始めた猫ちゃんがウイルスに感染していた場合は、いずれ何らかの問題が起きることを覚悟しつつ、別のネコちゃん(特に仔猫)への感染を広げないように注意して飼育するしかないのです。。。



猫白血病ウイルスに対しては、ワクチンも開発されていますが、一番確実なのは猫ちゃんを外出させないことと、家庭内にウイルス感染した猫ちゃんを入れないこと。


ウイルス感染自体は、血液検査で簡単に調べることができますので、複数の猫ちゃんを飼育する場合や、野良ネコちゃんを保護したりする場合には、事前に調べておくことをお勧めいたします。

歯周ポケット
2013年09月27日 (金) | 編集 |
先日、歯周病治療をおこなったワンちゃんです。



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6歳になったばかりのワンちゃんで、奥歯に歯石が目立つものの、それほど重度の歯周病はなさそうに見えますが・・・



たとえばこの歯。



金属性の器具は歯周プローブといって、「歯周ポケット」を測定する器具になります。



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歯ブラシのCMなどで耳にすることがあると思いますが、「歯周ポケット」は、歯茎と歯の隙間部分。



歯周病が進行すると、この「歯周ポケット」が深くなっていきます。



小型犬の正常な「歯周ポケッ」は、深さ1mm程度・・・



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こちらのワンちゃんでは、歯周プローブが8mmのところまで深く刺さってしまいました。



歯周ポケットがこれだけ深くなっているということは、歯の根っこがほとんどダメになっているということ。



この歯は抜歯が必要です。




こちらは、別の奥歯。



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こちらも、一見すると奇麗なように見えますが・・・



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歯周プローブが奥までズボッと入ってしまいます。



「歯周ポケット」の深さは1cm以上。



指で触ると若干グラつくくらいの状態です。



もちろん、こちらも抜歯が必要。



このように、見た目にそこそこ奇麗に見えても、歯周病は思いのほか進行していることも珍しくありません。



一見して歯石がそれほど付着していないように見えても、5歳くらいになった頃には一度しっかりとした歯科処置をおこなっておいた方が良いかもしれません。

本日のわんにゃんドック
2013年09月26日 (木) | 編集 |
わんにゃんドックのご紹介です 



アメリカンコッカースパニエルのマギィちゃんです 



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8月で8歳になったばかりの女の子です 



昨年に引き続き、2度目のわんにゃんドックであります。



わんにゃんドックは、毎年受けていただくことで、データが蓄積され、より正確に健康状態を把握することができます。



当院では、継続して検診を受けていただきたいという思いから、毎年受けていただけるワンちゃん・ネコちゃんには継続割引もおこなっています  



大切な、ワンちゃん・ネコちゃんの健康管理に、ぜひわんにゃんドックをご活用くださいませ 

慢性肝炎
2013年09月23日 (月) | 編集 |
食欲不振を訴えて来院されたワンちゃん。




身体検査では、特に異常はみられず、血液検査でも目立った異常はなし。




ですが、レントゲン検査で大きな問題が見つかりました。



まず、こちらは3年前に撮影した、同じワンちゃんのレントゲン画像。



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黄色い矢印で示した部分は肝臓です。



そして、こちらが今回撮影したレントゲン。




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肝臓の大きさが、半分くらいに小さくなってしまっています。



「小肝症」といって、「慢性肝炎」を疑う所見です。



犬の慢性肝炎は、栄養素としての「銅」の蓄積や、自己免疫の関与が示唆されています。




肝炎の正確な原因を確定するには、組織検査が必要です。



肝臓の一部分を切除して、検査をするわけですが、全身麻酔が必要になるために、適切なタイミングで実施することが難しいのが現状です。



初期から中期の慢性肝炎では、血液検査で肝臓の数値の上昇が認められるほかは、元気や食欲には影響がなく、目立った症状がないことがほとんどです。




また、肝臓の数値は、肝炎以外にも、食生活の影響で上昇したり、ホルモンの異常などの影響も受けるため、組織検査をおこなったとしても、必ずしも肝炎の診断が下るわけではありません。



検査してみたけど、「原因不明です」ということもあり得るわけです。



ですので、特に症状のみられないワンちゃんで、全身麻酔をかけてまで肝臓の組織検査に踏み切るかというと、飼い主様のご理解が得られないことがほとんど。



また、慢性肝炎の中には、血液検査に異常が認められないまま、密かに進行していくケースもありますので、さらに早期の診断が難しくなっています。
※今回のワンちゃんがまさしくこのパターンでした。半年に一度ほど、血液検査をおこなっていたにもかかわらず、一度も肝臓の数値に目立った変化は認められませんでした。



ようやく、食欲不振などの症状が出始めたころには、慢性肝炎は末期に差し掛かっており、組織検査をおこなおうとしても、全身麻酔をかけるのが危険な状態で検査不能であったり、組織検査ができたとしても、肝臓の破壊が進行していて、有益な情報が得られないことがほとんどなのです。



「沈黙の臓器」という言葉をご存知でしょうか?



肝臓には高い再生能力があり、もともとの予備能力が高い為、多少の損傷では病気としての症状がみられません。



人間でも、自覚症状が出る頃には、非常に悪化した状態になっており、手遅れになるケースが多い為、「沈黙の臓器」と呼ばれているのです。



今回のワンちゃんでも、半年に一度の血液検査でも異常が認められないまま、3年の間に肝臓の組織が半分になるまでに進行してしまっていました。



改めて、「沈黙の臓器」の怖さを思い知らされるとともに、「半年に一度の血液検査でも異常に気が付けないなら、一体どうすればいいのか?」という難しさを感じさせられるのです・・・




このように進行した慢性肝炎を完治させる手立てはなく、できることは炎症の進行を抑え、可能な限りの延命を図るのみ。



ご家族と過ごす時間を1日でも長くするため、できる限りの治療を考えていかなければなりません。

乾性角結膜炎
2013年09月19日 (木) | 編集 |
眼の充血と眼脂を主訴にご来院されたワンちゃんです。



もう、数カ月にわたって眼の異常が続いているようで、別の病院さんで治療を受けたものの、あまり改善がみられないそうです。


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白眼に充血があるのはすぐに解ると思いますが・・・


拡大した写真を良く見ていただくと、黄色い矢印の部分に、血管があるのが解ると思います。


白眼の部分から、角膜(黒目)のところに血管が侵入しているのです。


角膜の部分は、正常なら血管は存在せず、完全に透明な状態でなければいけません。



また、拡大写真を注意深く見てもらうと、黒目部分の光の反射が、ガサガサ・ザラザラした感じがするのがお解りいただけるでしょうか?



特に、蛍光灯の反射部分をみると、蛍光灯がガタガタと歪んでいるのが解りやすいと思います。



これは、「乾性角結膜炎」という状態。



解りやすく言えば「ドライアイ」。



涙の量が少ない為に、角膜表面が乾燥し、炎症を起こしてしまうのです。



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涙の量を測定するための試験紙。



この試験紙を目蓋に挟んで、1分間でどこまで涙が伝わるかを調べます。



涙が伝わったところは、青く着色します。



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正常は1分間で15mm以上になるはずですが・・・



症例のワンちゃんは5~10mmと、完全なドライアイであります。



涙の分泌量が減少する原因は、いくつか考えられますが・・・


ワンちゃんでは免疫異常によって涙腺組織が障害されて発生するパターンが多いようです。



そのため、一度ドライアイになると、涙の分泌が自然に回復することはなく、生涯にわたっての点眼治療が必要になります。



ドライアイになりやすい犬種というのもございまして、シーズー・パグ・キャバリアなどは要注意であります。



たかが「ドライアイ」と思うかもしれませんが、長期間放置してしまうと、角膜の障害が進行し、失明する場合もあるので油断大敵。



治りの悪い結膜炎や、眼脂の症状がみられるワンちゃんでは、「乾性角結膜炎」が潜んでいることが良くありますので、しっかりと涙の量を測定して診断することが大切です。

本日のわんにゃんドック
2013年09月16日 (月) | 編集 |
ここ最近、入院症例の治療で忙しく、更新が滞っておりました 




まだ入院は続きそうですが、少し元気が出てきたようで一安心 




さて、先週おこなったわんにゃんドックのご紹介です。



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9月で6歳になったばかりのマルクちゃんです 




歯石の付着が目立ち始めたのと、下顎の前歯が歯槽膿漏を起こしていたので、歯周病治療を予定しています。




今回は、歯周病治療の為の麻酔前検査も兼ねてのわんにゃんドックでした。



特に健康上の問題はなく、後日、予定通り歯周病治療をおこなうことになりました 

胃炎
2013年09月10日 (火) | 編集 |
先月初めにご来院いただいた症例です。



まだ3歳になったばかりのワンちゃんなのですが、1か月ほど続く慢性の嘔吐を主訴にご来院。



すでに、別の病院さんで胃薬等の処方は受けていたようですが、なかなか改善されないということで、当院にいらっしゃいました。




「嘔吐」の原因は様々ですが、長期にわたる嘔吐の場合は、肝臓や腎臓と言った内臓器の異常、胃内異物、消化管腫瘍など様々な可能性が考えられます。




血液検査・レントゲン検査・消化管造影検査・超音波検査等、一通りの検査で、幅広く調べる必要がございます。




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超音波検査の画像。



黄色い△で示した部分。まるで「タラコ唇」のようになった胃の断面図が写っています。



胃壁(胃の粘膜)がずいぶんと分厚くなっています。「胃壁の肥厚」です。



「胃壁の肥厚」がみられた場合、「単純な胃炎」による「胃壁の肥厚」と、「腫瘍性疾患」による「胃壁の肥厚」を見極めなければなりません。



正確に両者を区別するには、開腹手術や内視鏡手術で胃壁の一部を切除して調べなければなりませんが・・・




超音波検査でもある程度の判別は可能です。



胃壁は、外側の表面から、内部の粘膜まで五層構造になっています。



単純な胃炎では、この「五層構造を保ったまま胃壁が肥厚」するのに対し、腫瘍性疾患では「五層構造が破壊された状態で胃壁が肥厚」するのが特徴です。



増殖した腫瘍細胞が、胃壁を破壊していくわけです。




さて、そういったわけで、今回のワンちゃんの超音波検査でも、胃壁の構造に注目して慎重に観察。




腫瘍性疾患の可能性は低いと判断し、慢性胃炎に対する投薬を重点的におこないました。




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そうして投薬を続けること約一カ月。



胃の粘膜はほぼ正常に戻りました。



吐き気の症状も、ほとんど気にならなくなったそうです。






肘関節形成不全
2013年09月07日 (土) | 編集 |
こちら、成長期の大型犬のレントゲン写真です。




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まだ生後3カ月のワンちゃんなのですが、1週間で体重が1kgも増えるようなハイペースで成長中。




そんなワンちゃんが、前脚を痛がるということでご来院。



特に、足を挫いたりしたような覚えはないということですが・・・



触診をおこなうと、どうやら左前脚の肘関節に痛みがある様子です。



そこで撮影したのが上のレントゲン写真。




一見、骨が割れているように見える部分がありますが、これは「成長板」と言って、成長期の骨の特徴ですので特に異常ではありません。




さて、レントゲン上では明らかな異常がないようですが・・・何が原因で足を痛がるのでしょう?




大型犬・成長期・肘関節の痛み



この3つがそろったときに、一番に疑われるのが・・・「肘関節形成不全」であります。
※もちろん、単純な怪我や捻挫について十分に調べた上で、です。





「肘関節形成不全」は大型犬の前足の痛みの原因としては、最も多い疾患です。




肘関節は、上腕骨・橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)の三本の骨が形成する関節です。




「肘関節形成不全」は、これらの骨の成長異常、骨の癒合不全などが原因になります。




正常に形成されなかった肘関節では、時間の経過とともに、関節炎や関節軟骨の変形・摩耗が進行していきます。




ゴールデンレトリバーや、ロットワイラー、バーニーズマウンテンドッグといった大型犬に発生しやすく、特に急激に体重が増える症例で発生しやすいとも言われています。




典型的な「肘関節形成不全」では、生後4~6カ月の成長期に痛みや跛行(はこう:足を引きずること)の症状が出始めます。




その後、一時的に改善したり、悪化したりを繰り返しながら、関節炎が徐々に進行し、年齢とともに痛みや跛行の症状が悪化していきます。




治療は、外科治療と内科治療があります。



成長期の早いうち診断が下った場合には、骨の矯正手術をおこなうことで、関節の状態を正常化し、根本的な解決を図ることができます。



ただ、ある程度年齢を重ね、関節炎が進行した症例では手術での根本的な解決は望めません。



痛み止めやサプリメント、リハビリなどで痛みのコントロール、症状の緩和を図ります。



この疾患では、なるべく早期に診断し、治療を始めることが重要です。




初期症状では、「時々足を痛がるけど、数日で治ってしまう」ということで、その重要性が見逃されがちです。



診断・治療が遅れると、関節の痛みで満足に歩くことができなくなり、特に老齢期の生活の質が著しく阻害される疾患です。




一度、関節炎が進行し、関節軟骨が変形・摩耗してしまうと、元通りには戻せないのです。



大型犬に発生しやすい疾患なだけに、高齢期の歩行困難は大きな問題ですので、成長期の足の痛みには特に注意をして、飼育・観察をしなければなりません。



今回診察したワンちゃんも、まずは痛み止めで症状を緩和しながら、慎重に経過観察し、外科治療の必要性を見極めていかなければなりません。

免疫介在性溶血性貧血 2
2013年09月03日 (火) | 編集 |
さて、前回の続きです。




「免疫介在性溶血性貧血」。




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「貧血」とだけ聞くと、それほど重症のイメージはわかないかもしれませんが・・・



「免疫介在性溶血性貧血」は、極めて進行が早く、死亡率も高い病気です。



「免疫」というのは、動物が生まれながらに持った防御機構の一つで、本来は、細菌やウイルスの感染から体を守るための機能です。


この「免疫」に異常が生じ、自分自身の血液細胞を破壊してしまうのが「免疫介在性溶血性貧血」です。



上の写真にある3番の小さな赤血球は、破壊作用を受けた赤血球で、「球状赤血球」と呼びます。


「免疫介在性溶血性貧血」では、急激に血液細胞が破壊されるのですが、体はそれに対応し、大急ぎで新たな血液細胞を作り出そうとします。



この時に発生するのが、1番の大型の赤血球、「多染性赤血球」です。



つまり、上の写真は、「血液の急激な破壊」と、それに対抗した「急激な再生」を示しているわけです。



「再生」を上回るスピードで「破壊=溶血」が進行すれば、致死的な貧血に陥ります。



また、「免疫介在性溶血性貧血」に陥った動物の血液は、「血栓」ができやすくなります。



これらの「血栓」が、重要な臓器の血管を詰まらせてしまうことも、この病気の高い致死率に関係しています。



治療には、ステロイド剤を中心とした、「免疫抑制剤」を使用します。



異常を起こした「免疫」の働きを抑制することで、血液破壊の進行を抑えるわけです。



ただし、「免疫抑制剤」は、異常な免疫を抑制するだけで、完全に正常に戻すわけではありません。



そのため、一生投薬が必要になることもありますし、いったんは治ったように見えても、またいつ再発するか解らないということもあるのです。



それほど多い疾患では無いですが、前回も記載したように、ダックスフンドやマルチーズ、ラブラドールなど、人気犬種に多い病気ですので、ちょっと注意が必要な病気であります。

免疫介在性溶血性貧血 1
2013年09月02日 (月) | 編集 |
こちらは、ある貧血症例の、血液細胞の顕微鏡写真です。



突然のふらつきと、血尿を主訴に来院されました。



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ピンク~紫色の丸いのは、すべて「赤血球」です。



1~3の番号をふってありますが・・・



2番が正常な「赤血球」です。



1番も「赤血球」なのですが、こちらは「多染性赤血球」と呼んで区別します。正常なものよりも大型で、青っぽく染まるのが特徴です。




3番も「赤血球」ですが、こちらは「球状赤血球」と呼んで区別されます。
正常のものよりも、小さいのが特徴。




正常な「赤血球」以外に、多数の「球状赤血球」や「多染性赤血球」がみられた時は、「免疫介在性溶血性貧血(めんえきかいざいせいようけつせいひんけつ)」が疑われます。



「免疫介在性溶血性貧血」は、名前の通り、免疫機能の異常が関わって発生する、血液の病気です。



免疫機能の異常により、「赤血球」が血管内や血管外(脾臓など)で破壊される疾患で、この血液の破壊を「溶血(ようけつ)」と言います。



血液が急激に「溶血」し、重度の貧血を生じるため、ワンちゃんは急性の元気消失・食欲不振・ふらつきなどがみられます。



また、「溶血」した血液の色素が尿に排泄されるため、「血尿(血色素尿)」がみられることもあります。




「免疫介在性溶血性貧血」には「原発性」と「続発性」の二つのパターンがあります。



「原発性」は特定の犬種や血統に多く発生することから、遺伝の関与が示唆されています。



ちなみに、ダックスフンドやアメリカン・コッカー・スパニエル、ラブラドール、マルチーズなどなど、日本でも人気の犬種の多くが、「免疫介在性溶血性貧血」の好発品種として知られています。




「続発性」は、腫瘍疾患や寄生虫感染、薬物投与などによって誘発されると考えられています。




「免疫介在性溶血性貧血」は、症状の進行が非常に早く、また死亡率も高い疾患です。



手元の資料では、治療成功率は30~70%となっています。言い方を変えれば、30~70%の症例で治療が上手くいかない=死亡するということ。



別の報告では、約40%の症例が、診断から2カ月以内に死亡したというデータもあります。




治療には、ステロイド剤を中心とした免疫抑制剤を使用します。



つづく・・・