町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
市民公開講座 8月31日(土)
2013年08月31日 (土) | 編集 |
お知らせ

※この記事は8月31日まで、常に最上段に表示されます。



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2013年08月19日17時29分07秒

講座へのお申し込み、お問い合わせは、ペットドッグトレーナーズ協会にお願いいたします。
042-786-7549

耳垢
2013年08月29日 (木) | 編集 |
「頭が急に傾いてしまう」



ということで、診察にいらっしゃったワンちゃん。




最近、突然に「右側」に頭が傾くことが何度かあったそうです。




「頭が傾く」症状というのは、平衡感覚に異常が出たときに良く見られるのですが・・・



その場合、脳の中枢に問題が起きている場合と、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる部分(三半規管)に異常がある場合の、2通りが考えられます。



そこで、脳神経系のチェックと同時に、耳の奥の状態を観察する必要があるのですが・・・




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少しピンボケですが、中心部の白っぽい部分が「鼓膜」。



こちらは「左耳」の奥の状態。



特に異常はなく、鼓膜まで奇麗に見えています。



一方、こちらは「右耳」。



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耳の奥に汚れが詰まっていて、鼓膜が全く見えません。



さらには、この汚れからは真菌(カビ)も検出されました。



飼い主様にお話を伺うと、普段から汚れが気になるので、綿棒で耳掃除をしていたとのこと。



おそらく、綿棒で耳掃除をしているつもりで、かえって汚れを奥に押し込んでしまっていたようです。



汚れで鼓膜の状態が見えませんので、ハッキリとは言えませんが、おそらく、この汚れの奥では炎症が起きていると考えられます。



さらには、その炎症が耳の奥にある「三半規管」にも影響を及ぼし、平衡感覚に支障をきたしているのだと思われます。



これを治療するには、まずはこの塊になった耳垢を何とかしなければなりませんが・・・




綿棒でしっかりと押し固められた耳垢は、ちょっとやそっとの耳洗浄ではビクともしません。



仕方がないので、注射器の先端に特殊な器具を装着したものを耳の奥に挿入し、耳垢の塊に直接洗浄液を噴射して耳垢を溶解・洗浄することになりました。





幸い、症例はおとなしいワンちゃんなので麻酔の必要はありませんが、長時間の処置はワンちゃんにとってストレスが大きいので、短時間の処置を何度か繰り返すこととなりました。




耳掃除を嫌がるワンちゃんでは大変危険ですので、全身麻酔が必要になってしまいます。

鼻食道チューブ
2013年08月26日 (月) | 編集 |
急性の肝炎の疑いで入院をしたネコちゃん。



入院治療が必要だったのですが、食欲不振でお食事を全くとってくれません。



そこで・・・




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鼻から流動食用のカテーテルを挿入します。



流動食用のカテーテルを設置するには、喉に穴をあけて食道にチューブを設置する方法や、お腹に穴をあけて直接胃に設置する方法などがありますが、いずれも全身麻酔を必要とする処置になります。



ですが、今回おこなった鼻からチューブを入れる方法は、おとなしい動物なら鼻の粘膜への局所麻酔のみで実施することができます。



食道チューブや、胃チューブに比べて、抜けやすく、長期間の設置には向きませんが、今回の症例のように、肝炎が治まるまでの数日間~1週間程度の使用には十分に耐えることができます。




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挿入したチューブは、鼻のところで糸で縫いつけます。




鼻食道チューブを必要とするような動物は、ぐったりとしていることがほとんどなので、特に暴れることなく、すんなりと挿入することができます。




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さらに、包帯でしっかりと固定。




ピンク色の部分から流動食を流し込むことができます。キャップ付きです。











無菌性結節性脂肪織炎を疑う症例 3
2013年08月23日 (金) | 編集 |
さて、治療に行き詰っていたワンちゃんの続きであります。


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2月中旬 治療開始から約1か月半

「湿潤療法」で治療を始めたものの、思ったように皮膚が再生せず、非常に苦慮しておりましたが・・・



丁度、その頃、開催される学会で、外傷治療の講座が開催されるとの情報をキャッチ。



治療情報の収集のため、早速、横浜へ・・・



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もともと、私の所属学会である、循環器学会がらみで参加スケジュールを組んでいたのですが、スケジュール調整をして外科学会の講座に出席。



講座開始前の会場に早めに入り、講師の専門医をつかまえて、早速情報収集であります。



症例写真、治療経過の説明しながら、何か良い方法はないか相談したのですが・・・




「あ~・・・かかとのところですか~」



と、専門医の先生は暗い表情。



聞けば、その先生も大学で、肘や膝の皮膚欠損の症例を治療中だそうですが、どの症例も半年~1年近くも治療を続けているような症例ばかりだそうで・・・



「私自身も、実際、どういう方法が、一番効果的かわからない状態なんです。Aの症例でうまくいった方法も、Bの症例ではうまくいかなかったりと・・・」



やはり、肘や膝は、体の中でも最も可動が激しい部分なので、皮膚再生が困難なようです。



人間であれば、なるべく動かさないようにと伝えれば済むことなんですがね~・・・

※ちなみに、ギプスなどで固定して治療してみた時期もあったんですが、ギプスをつけたままでも激しく動き回るので、かえって傷口に対する圧迫やこすれが酷いくらいでした。


ただ、そんな中でも、



○通常の受傷部位に比べて、肘や膝の外傷部位は浸出液(外傷部分からしみ出てくる体液)が多い傾向がある。



○そのため、通常通りの湿潤療法では、組織がグジュグジュにふやけてしまい、組織がもろくなってしまい、再生が妨げられるようだ。



○肘や、膝の湿潤療法では、通常よりも、「乾かす」方向で包帯法を見直した方が良いかも知れない。



というアドバイスをいただきました。



病院に戻って、早速、包帯法を練り直します。



通常、「湿潤療法」では、受傷部位に専用のパッド類をあてがい、包帯で密閉します。


受傷部位を適度な「湿潤環境」におき、皮膚の再生を促すわけです。


とはいえ、傷口を「湿潤環境」におくといっても、ベチョベチョのグチョグチョでは困るので、専用のパッドには必要以上の水分を吸収し、蒸発させる機能が備わっているのですが・・・



今回のような症例では、専用パッドの吸水作用を上回る量の浸出液が出てきてしまうようです。



そこで、通常の「湿潤療法」ではあまり使用されることのない、「普通のガーゼ」を使用することにいたしました。



「普通のガーゼ」を使用した包帯法では、傷口が乾燥しすぎるので「湿潤療法」ではあまり使用しないのですが、今回はその逆を行くわけです。



乾燥したガーゼが傷口に張り付いては困るので、傷口に張りつかないような加工をした物を使用します。



さらに、包帯交換の頻度を増やし、1日2回、飼い主様に御自宅での傷洗浄と包帯交換を実施していただくことにいたしました。



そうして・・・包帯法を変更して1週間。



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3月1日 治療開始から約2カ月


今まで、ふやけてぐんにゃりとしていた皮膚が、適度に乾燥してきました。なおかつ、肝心の皮膚再生部分は適度な湿潤状態を維持できています。



傷口も、見るからに小さく収縮してきています。




その後、一時悪化することもありましたが・・・





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4月4日 治療開始から約3カ月
組織の炎症(無菌性結節性脂肪織炎の疑い)の一時的な悪化もあったため、皮膚の再生状況が安定しない時期。




その後は、炎症の経過も落ち着いてきて、皮膚は順調に再生。




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6月10日の時点でここまで改善しました。



治療開始が1月の初めですから、約5か月もかかってしまいましたが、まずまずの状態まで回復させることができました。



現在、8月23日の時点で、傷口の悪化はなく、「無菌性結節性脂肪織炎」と思われる組織の炎症も、すっかりと静まっているようで、経過は順調のようです。

無菌性結節性脂肪織炎を疑う症例 2
2013年08月20日 (火) | 編集 |
さて、昨日の続きであります。



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ステロイド剤の使用で、炎症が軽減した病変部。



皮膚組織がもろくなった状態でしたので、縫合しても皮膚が裂けてしまうと判断。



「湿潤療法」で皮膚の再生を待つことといたしました。



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湿潤療法を始めてから4日目。



内部に肉芽組織が盛り上がってきて、組織の再生は順調に見えます。



後は、この上に皮膚が再生すれば良いだけ。



「こりゃ、思ったよりも早く治るかな~」



と、楽観視していたのですが・・・



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湿潤療法開始から3週間たっても、皮膚の再生が始まりません。



それどころか、内部の肉芽組織が過剰に発達してしまい、皮膚の表面よりも盛りあがった状態になってしまっています。



通常の湿潤療法の治療では、とっくに皮膚の再生が始まっていてもおかしくない時期なのですが・・・



通常、湿潤療法をおこなう際には、皮膚の欠損部に専用のパッド等をあてがって、包帯で密閉して治療いたします。



今回の受傷部は、かかとの部分であるため、歩くたびに皮膚欠損部が包帯でこすられてしまいます。



それによって、再生初期の脆弱な皮膚組織がすべて摩擦で損傷してしまうために、皮膚の再生が遅れてしまうのだと考えられます。



この後も、1か月ほど同様の治療を繰り返しましたが、一進一退。



皮膚の再生が始まったかな~と思った数日後には、また皮膚組織が削り取られてしまうという状態。



さらには、肉芽組織が増大すると、浸出液(傷が治るときにでる体液の一種)が多くなりすぎるため、「浸軟(しんなん)」といって、組織がふやけて脆弱化することも、傷の治りを妨げてしまっていました。



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一番酷いころの状態。



肉芽が過剰に盛り上がり、皮膚は全く再生する気配がありません。



今回の症例では、「無菌性結節性脂肪織炎」の治療のために、ステロイド剤を使用していることも、傷の再生を妨げる要因となっています。
※ステロイド剤は、傷の再生遅延の原因となる薬剤です。



かといって、ステロイド剤を減らそうとすると、炎症反応が悪化するという悪循環。




今まで、いくつもの外傷を「湿潤療法」で治療してきましたが・・・



流石に今回はお手上げといった状況でした・・・




そんな頃、ちょうど2月末に横浜で開催される学会で、外傷治療の専門医による講座が開催されるとの情報をキャッチ。



そこでの情報収集に望みをかけることとなりました・・・



続く。。。


無菌性結節性脂肪織炎を疑う症例 1
2013年08月19日 (月) | 編集 |
今年初めから通院していただいている、ある皮膚疾患の症例をご紹介いたします。



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こちら初診時の写真。


左後肢、かかとの所が赤く腫れあがり、中心部に1cm程度の穴が開いています。



当院にいらっしゃる前に、別の病院さんで治療を続けられていたのですが、何度縫合してもすぐに皮膚がちぎれて穴があいてしまうとのこと。



検査の結果、「無菌性結節性脂肪織炎」が疑われました。



「無菌性結節性脂肪織炎」は、ミニチュアダックスに多い、原因不明の炎症疾患です。



自己免疫機能の異常が関わっていると考えられている病気で、初めは皮膚の下にしこりができるくらいなのですが、進行するとご覧のように皮膚に穴があいてしまいます。



典型的な「無菌性結節性脂肪織炎」は、名前の通り脂肪組織に発生する炎症ですが、こちらのワンちゃんでは、炎症がアキレス腱までも侵しており、アキレス腱は断裂、歩行困難な状態になってしまっています。



この疾患は、自己免疫機能の異常が原因ですので、単に糸で縫い合わせるだけの治療では、炎症が治まらず、またすぐに穴があいてしまいます。




まずは、免疫抑制作用のあるお薬を投薬し、炎症反応を沈めることが最優先。



そこで、プレドニゾロン(ステロイド剤)を投与して、様子をみること4日間・・・



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穴の大きさは変わりませんが、ずいぶんと炎症が治まりました。



この時点で、皮膚を縫合するかどうか悩みましたが、長く炎症が続いた皮膚はフニャフニャに弱り切っており、縫合したとしても、すぐに裂けてしまうと判断し、「湿潤療法」で組織が再生するのを待つことにいたしました。


※湿潤療法を適用した過去の症例はこちら→click




「湿潤療法」では、欠損した皮下組織が盛り上がり、しっかりとした皮膚組織が再生するまでは2~6週間かかります。



特に、今回は単なる外傷ではなく、自己組織そのものが炎症を起こし、自壊してしまう状況。




なおかつ、「かかと」は、体の中でも特に体重の負荷や、皮膚の「つっぱり」といったストレスがかかりやすい部分ですから、通常よりもはるかに治りにくいことが予想されます。



それでも、「2~3カ月あれば治せるかな・・・」と判断し、治療を始めたのですが・・・




ところが、実際には、私の当初の予想を大きく上回る、困難な治療となってしまいました。



つづく・・・

本日のわんにゃんドック
2013年08月13日 (火) | 編集 |
お盆休み前の、最後のブログ更新であります。




先日、わんにゃんドックを受けていただいた、ビーグル犬の幸ちゃんです




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8月で7歳になったばかりの女の子です




2011年から毎年ドックを受けていただいており、今回で3回目のわんにゃんドックです




7歳と少し年齢も高くなってきましたので、肝臓の数値などいくつか気になる点も出ていましたが、おおむねは問題なし 




ただ・・・ちょっと体重が・・・ 




ということで、食生活などを一度見直してから、また検診を受けていただくことといたしました 






当院では、ワンちゃん・ネコちゃんの健康管理の一助として、年に一度のわんにゃんドックをお勧めしております

綿棒200本入り
2013年08月10日 (土) | 編集 |
先日ですね・・・





サンダルを食べちゃったワンちゃんの手術・・・というのをご紹介いたしましたが・・・




「こんなサンダル、よく胃がパンパンになるまで食べるもんだな~」と、なかなか理解しがたいものがありましたが・・・



もっと理解しがたいものを食べてしまったワンちゃんが来院されました。




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胃にパンパンに詰まっているのは・・・これ、綿棒。




200本入りのケースの2/3くらいは食べてしまったとのこと。



体重6キロくらいのワンちゃんなのですが、胃がパンパンに膨らんでいます。



こんなに綿棒を食べると、途中でお口の中がパサパサに乾燥しちゃいそうなもんですが・・・よくもまあ、こんなに飲み込めるものです。




少しくらいの量なら、お薬で吐かせてしまえば済むのですが、これだけ胃がパンパンになってしまうと、胃の動き自体が制限されてしまい、うまく吐きだすことができません。




というわけで、開腹手術となります。




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綿棒でガッチガチに詰まってしまった胃。



胃が膨らんでいるのと、ガチガチに固まっているため、腹腔外に引っ張り出すのも一苦労。




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ボロボロになった大量の綿棒と、消化途中のドッグフード。



摘出時に、どうしても細かなフードのカスが術野を汚染してしまいますので、それを防ぐために、胃の周囲を湿らしたガーゼで覆っておきます。



さらに、摘出終了後には、腹腔内を生理食塩水で洗浄しなければなりません。




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胃内異物摘出手術後は、腹膜炎等の合併症を起こす危険がございますので、3~4日ほど入院していただいて経過観察いたします。





綿棒にサンダル、カーテン、河原の石、針、ボール・・・etc




ワンちゃんは、我々が思ってもみないような異物を、平気で飲み込んでしまうことがあります。




このブログを読んでいただいた皆様には、「へ~、こんなことあるんだ~」と驚くだけでなく、「うちの子にも、万が一があるから注意しなくては」とご注意いただければ幸いです。

獣医医療の世界にも再生医療
2013年08月07日 (水) | 編集 |
「再生医療」


昨年、京大の山中教授がips細胞細胞の研究でノーベル賞を受賞されてから、一気に注目を浴びるようになった分野ですね。



私も専門分野ではありませんので、詳しくはないのですが・・・



獣医療界でも、数年前から再生医療導入の試みがなされています。



その中でも、現在注目を集めているのが・・・



自己の脂肪細胞から「幹細胞」を培養し、それを治療に役立てようというもの。



動物の体には、さまざまな器官や臓器などに変化する細胞が存在するのですが、この細胞を幹細胞(かんさいぼう)と呼びます。



この「幹細胞」の、骨や、軟骨、筋肉や心筋細胞、そして血管を形作る細胞に変化する能力を利用することで、自分の細胞から必要な器官や臓器を「再生」させようというのです。



そして、この「幹細胞」を、症例自身の「脂肪細胞」を利用して培養する技術はすでに確立されており、一般的に利用できるようになっているのです。
詳しくはこちら→株式会社J ARM様



「再生医療」といっても、さすがに、ニョキニョキと腕が生えてきたりするわけではありませんが・・・



関節炎の症例や、腎炎の症例に培養した幹細胞を投与することで、炎症を軽減する作用が期待できるようです。



その他、神経疾患において、神経機能の回復を促したり、骨折の治療などにも役立つようです。




海外では、一般の動物病院で症例から採取した脂肪細胞を、培養会社に送付することで、比較的簡単に「幹細胞」を入手できるそうで、すでに多くの動物病院で「再生医療」の導入が試みられているそうです。



ですが、日本においてはちょっと状況が違いまして・・・



現行の「薬事法」では、培養した細胞を医薬品として販売することが禁止されているために、海外のように、培養会社に依頼して「幹細胞」を手に入れることができないのであります。



そこで、先ほどご紹介した株式会社J-ARM様では、細胞培養キットの販売と、培養のトレーニングを獣医師向けにおこなっており、「再生医療」の導入を希望する獣医師が、自分の病院で細胞培養に取り組むことができるようにサポートしてくださっているのです。
※獣医師が、自分の病院内で培養した「幹細胞」を治療に使用することは問題ないということです。



とはいえ、これにもそれなりにハードルがございまして・・・



細胞を培養するには、培養のための設備が必要ですから、私としても興味はあっても、「じゃあ今すぐ導入」というわけにはいきません。



はやく、日本でも手軽に培養会社に依頼できるような日が来てほしいものです。



胃拡張胃捻転症候群 2
2013年08月06日 (火) | 編集 |
さて、胃拡張胃捻転症候群で、虚脱状態で担ぎ込まれたワンちゃん。




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膨らんだ胃は、バレーボールくらいの大きさまでに・・・
症例は9kg弱の中型犬です。



前回お話ししたように、拡張した胃は周辺臓器や血管を圧迫、さらには胃が捻転(ねじれる)することも、血流障害を悪化させます。



この血流障害は、致命的であるため、まずは早急に胃のガスを排出しなければなりません。



そこで、どうするかというと・・・



太めの針を、皮膚の上から胃に向けてブスッと刺して、大きな注射ポンプでひたすらガスを抜くのであります。



胃が捻転していると、思わぬ位置に脾臓などの重要臓器が移動していることがあるので、超音波検査で念のために臓器の位置を確認したほうが安全。



注射器でシュポシュポとガスを抜いていると、胃がしぼんでいきます。それと同時に、ワンちゃんの血流状態も改善していくのがよくわかります。



血流が悪く、虚脱状態の時には舌が紫色に変色しているのですが、ガスが抜けるのにしたがって、だんだんと血色がよくなっていくのです。



さて、注射器である程度ガスを排出したとしても、胃のねじれを何とかしないことには、またすぐにガスがたまってきてしまいます。





そこで、開腹手術をおこない、胃のねじれを解消しなければならないのですが・・・



今回のワンちゃんでは、もともとの持病が問題で、麻酔がかけられるような体調では無い為、手術は断念。



皮膚の上から胃をマッサージし、胃のねじれを解消できないか試みました。



胃がねじれているであろう方向をイメージしながら、グイグイとマッサージを続けること数分・・・



何とか胃のねじれは解消できたようです。



20130805tah02.jpg
胃のねじれが取れた状態のレントゲン
胃がねじれた状態と幽門部の位置が違うのにご注目。



20130805tah01.jpg
こちらはねじれた状態。




今回の症例は、諸事情により、手術は選択せず、ダメもとを覚悟でのマッサージ治療が幸いにも功を奏しましたが・・・


本来、胃拡張胃捻転症候群を起こした症例では、可能な限り開腹手術をおこない、胃のねじれを解消するとともに、胃の固定手術をおこない、症状の再発を防ぐことが望ましいとされています。

胃拡張胃捻転症候群 ①
2013年08月05日 (月) | 編集 |
「突然お腹が膨れてきた!苦しそうにして、吐こうとするんだけど、なにも出てこない!」




ということで、急遽来院されたワンちゃん。



来院された時には、ショック症状で虚脱状態。



お腹はパンパンに膨れ上がっています。



この症状・・・「胃拡張胃捻転症候群」が疑われる症状です。



すぐさまレントゲン撮影。



20130805tah01.jpg



胃にガスがパンパンにたまって、とんでもない大きさに膨れ上がっています。



これが「胃拡張」。



さらには、本来なら黄色○の部分にあるはずの「幽門部(胃の出口)」の位置が移動してしまっています。



これが「胃捻転(胃がねじれた状態)」。



あわせて、「胃拡張胃捻転症候群」であります。



なぜこういったことが起こるのか、原因はハッキリと解っていません。



「急激に大量の食物を食べた後になる」「食後に激しい運動をするとなる」などと言われたりもしますが、実際には、そういったことと全く関係なしに起こることもございます。



今回のワンちゃんは、もともと食道機能に異常があり、胃内にガスが溜まりやすい状態でしたので、おそらくそれが原因と思われます。




パンパンに膨れ上がった胃は周囲の臓器を圧迫します。



また、胃がねじれることによって、周囲の血管もねじれてしまうことになります。



結果、腹部の血流が阻害され、多数の内臓器に大きな障害をもたらします。



血流が阻害されることで、動物はショック状態に陥ります。




胃はパンパンに膨らんでいるのですが、食道まで一緒にねじれてしまうため、吐こうとしてもなにも出てこないということになります。




これは、一刻を争う状態。



急いで胃のガスを排出し、ねじれを解消してあげなければ命にかかわります。




つづく・・・