町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
巨大食道
2013年06月29日 (土) | 編集 |
こちら、以前入院していたワンちゃんの食事風景。




20130629tah01.jpg



縦に体を起こした状態で、一口大のダンゴ状にした缶詰フードを少しずつ与えています。




なぜこんなことをしているかというと・・・




実は、このワンちゃんは、食道機能に異常があります。



「巨大食道」という病気です。



食道機能に異常をきたし、正常に水や食事を飲み込め病気で、原因は脳神経の異常や、ホルモン異常、先天性など様々です。



「飲み込み」が上手くいかなくなるということは・・・



普通に食事や飲水をしたときに、食べ物や液体が気管の方に入りやすくなってしまうということです。



これは、ちょっとむせるとかそういうレベルではなく、命にかかわる程の重篤な肺炎を起こします。




動物の食道と気管の位置関係はこのようになっています。


20130629tah02.jpg


気管が食道よりも地面側にあるため、食道が上手く機能しない場合に、食べ物や液体が気管に入りやすい構造になっているのです。




通常、ワンちゃんは4つ足で生活するため、食事をとる際にはさらに頭を下に下げることになり、ますます気管に食物が入りやすい状況になってしまいます。



それを防ぐために、初めの写真のように、体を縦に起こした状態で、飲み込みやすく一口サイズにした食事をゆっくり食べさせる必要があるのです。



さらに、食べ終わった後は、5~10分ほどこの体勢を維持することで、食べ物を確実に胃に収めます。



あまりすぐに歩かせたりしてしまうと、食道の途中に残った食事が、逆流してきて吐き出してしまう事があるからです。



そういった管理を怠らなければ、通常通りの生活を送ることも可能ですが、実際にはワンちゃんが自分自身の唾液を肺の中に吸い込んでしまって肺炎を起こすようなこともあり得るため、なかなか管理が難しいのが実情ではあります。




ところで、このワンちゃん・・・



実は、食道だけではなく、下半身にも問題をかかえています。



それについては次回に続く・・・

フィラリア(犬糸状虫症) 2
2013年06月27日 (木) | 編集 |
さて、体内侵入したフィラリアの幼虫は、筋肉内などで成長・脱皮を繰り返し、およそ4~6か月で成虫になります。




20120109(3).jpg
心臓に寄生したフィラリアの成虫。(ファイザー製薬パンフレットより)




成虫は、心臓のなかでも、「右心房」・「肺動脈」と呼ばれる部分に寄生します。



寄生したフィラリアは最大で16cmにも達します。



この巨大な寄生虫が、心臓内部や肺動脈を物理的に閉塞させたり、血管を刺激・傷害していきます。




これによって、心不全や呼吸障害の症状が発現するのです。



では、これをどうやって治療するか?



選択肢は2つ。



1:外科手術での摘出

重度感染例では、特殊な器具を首の静脈から挿入し、心臓内の寄生虫を物理的に取り出します。
そもそも、重度のフィラリア感染で心不全を起こしている状態ですので、麻酔の危険性も高く、また血管や心臓を損傷する危険も無視できません。



2:成虫駆除薬の投与

メラソルミンという、成虫を駆除するための薬を使用します。



飼い主様の中には、「もしフィラリアに感染しても、駆除する薬があるなら予防薬飲まなくてもいいじゃない」と思われる方もいらっしゃるかも知れません・・・



・・・が、実はこの治療、とっても大変な治療なのです。




まず、治療終了までにおよそ半年間かかります。
※米国犬糸状虫学会の推奨方法での治療。



さらに、フィラリアの成虫を駆除するといっても、心臓内・肺血管内で死んだ虫はどうなるかというと・・・



そのまま、肺血管に流れて行って血管を詰まらせます。



死亡したフィラリア成虫による、肺動脈塞栓です。



軽度の場合は、発熱や軽い発咳程度の症状ですが、重度の場合は呼吸困難で命にかかわる場合もあります。



そのため、駆虫薬を投与した後は、厳密な運動制限が必要とされており、特に、初回投与後の1カ月間はケージ内飼育など徹底した運動制限が必要とされています。



さらに、治療中半年間は、成虫駆除薬以外にも、新たなフィラリア感染を防ぐための通常のフィラリア予防薬の投与や、肺障害の副作用を抑えるための投薬など、費用もバカになりません。




そして、極めつけは、一度、フィラリア感染によって引き起こされた肺血管障害は、成虫を駆除しても回復しないということ。




つまり、一度でもフィラリア成虫が感染した場合、寄生数によって程度に差こそあれ、肺血管障害は一生残ってしまうということなのです。




だからこそ、フィラリア感染は、予防が大切!



「感染したって、成虫駆除薬で治療すればいいんでしょ?」



なんて間違った情報を信じないでくださいね!










フィラリア(犬糸状虫症) 1
2013年06月25日 (火) | 編集 |
先日、フィラリア検査をおこなったワンちゃんの検査結果です。



20130625tah01.jpg



こちらは、フィラリア検査の検査キット。



右側の「S」のところに血液を1滴たらすと、5分程度で結果が出るというすぐれもの。



真ん中に「C」と「T」と書いてある場所があります。




よく見ると、「T」のところに、うっすらと赤い線がみえます。



これは、フィラリアの成虫感染「陽性」であるということ。
※「C」のラインは、「陰性」でも「陽性」でも出るライン。



こちらのワンちゃんは、病院の近所にお住まいのワンちゃん。



4年ほど前の検査では「陰性」だったのですが・・・



それ以来、フィラリア予防がきちんとなされていなかったのです。



町田市内でも、フィラリア予防を怠ると、このように感染する危険があるという証拠でございます。



ところで、「フィラリア予防薬」とよく言いますが、正確にはフィラリアの「幼虫駆除薬」です。



フィラリアは、蚊の体内に寄生した幼虫が、吸血時に動物の体内に侵入。その後、筋肉内などで成長・脱皮を繰り返しながら、最終的に心臓内に成虫が寄生します。



そして、心臓内に成虫が寄生すると、心不全や呼吸器障害を発症します。



こういった一連の心不全・呼吸器障害を「犬糸状虫症(フィラリア症)」と呼び、この病気を予防するので「フィラリア(症)予防薬」と呼んでいるのです。




ですので、実際には、どのワンちゃんも、年に数回フィラリア幼虫に感染している可能性があり、その体内に侵入したフィラリア幼虫が、成虫になる前に駆除するために飲んでいるのが、皆さんが「フィラリアの薬」として認識されているお薬なのです。




さて、では、感染したフィラリアが成虫になってしまったら、どうやって治療するのか・・・




それについては後日に続く・・・




本日のわんにゃんドック
2013年06月24日 (月) | 編集 |
こちら、5月に5歳になったばかりのナッツちゃん 



20130624tah01.jpg


ミニチュアダックスの男の子です。



2011年から毎年ドックを受けていただいており、今年で3回目のわんにゃんドックであります 



5歳というと、人間でいうとようやく幼稚園といったところですが、ワンちゃんの5歳は人間の年齢に換算すると20代後半から30代前半と言ったところ。



まだまだ、若いと言えば若いですが・・・



少しずつ、体に変化が出てきてもおかしくない年齢ではあります。



当院では、自分で症状を訴えることのできない、ワンちゃん・ネコちゃんの健康管理に役立てていただくために、年に一回の健康診断「わんにゃんドック」をお勧めしております 

サンダル
2013年06月20日 (木) | 編集 |
6月は、動物病院が最も忙しい季節ですので、なかなかブログまで手が回りません 




いつもご覧いただいている方々には申し訳ありませんが、しばらくはゆっくりペースで更新していきたいと思います。



さて、本日とりあげるのは・・・



スポンジ製のサンダルを食べてしまったというワンちゃん。




もともとワクチン接種のご予約をいただいていたワンちゃんなのですが、夜中のうちにいたずらをしてしまったそうです。



とりあえず、本人は元気にしているそうですが、ワクチン摂取するかどうかはともかく、一度見せていただくことにいたしました。




身体検査では特に問題なく、ワンちゃんも元気いっぱい。



谷:「細かく咬み砕いてれば、少しくらいなら食べちゃってもウンチにでると思うんだけど・・・どのくらい食べました?」





飼い主様:「まるまる片足分です」




・・・う~ん・・・ワンちゃんは中型犬。中型犬に片足分のサンダル・・・どんなもんでしょう?



細かくちぎってくれてればウンチにでるかな~・・・とレントゲンを撮ってみると・・・




20130620tah01.jpg




・・・これは無理そうです。



胃の中がサンダルの破片で一杯です。



それぞれの破片が重なり合って写っているので、大きさもよくわかりません。



大きな破片があった場合は、腸閉塞を起こし、命にかかわる危険もございます。



仕方ありません。緊急手術で摘出する事になりました。




20130620tah02.jpg



開腹し、まずは腸全体を確認します。すでに腸閉塞を起こしている可能性があるからです。



写真は結腸という部分。細かく砕いたサンダルが確認されます。



ですが、通常、結腸まで進んだ物体は、ほぼ問題なく便として排泄されますので、この部分については心配ありません。



腸閉塞を起こす可能性が高いのは、十二指腸・空腸・回腸といった部分なのですが、今回は問題ありませんでした。



一通り、腸の状態を確認したら、今度は胃です。



20130620tah03.jpg
 

案の定、胃の中にはスポンジ製のサンダルと思われる、弾力性のある異物でパンパンです。



あまりに胃が張っているので、切開した部分から胃を露出するのが困難なくらい。




20130620tah04.jpg




胃をひらくと・・・でるわでるわ・・・大量のスポンジの破片。



20130620tah05.jpg



無数の破片を、根気よくピンセットで取り出していきます。



途中で、「誰か変わって~!」って言いたくなるくらい、根気のいる作業・・・



胃を開くといっても、全開にパッカリ開くわけではなく、5cm程度の切開部分から、中を覗き込むようにしての作業です。




胃を丁寧に触診しながら、とり残しがないように・・・なんどもなんども破片をつまみだす作業を繰り返し・・・



20130620tah06.jpg



サンダル片足分って・・・結構なボリュームなんですね~・・・




手術は無事成功。ワンちゃんも無事に退院していきました。



人間からすると、スポンジ製のサンダルなんて美味くも何ともないでしょうに・・・よくこれだけの量を飲み込むもんです。



ワンちゃんは、人間からすると、「これは無理でしょう??」というような「大きさ」、「量」、「味」の異物でも、平気で丸のみしてしまうことがあります。



こういった事故を防ぐためにも、皆さん普段からご注意くださいませ。

本日のわんにゃんドック
2013年06月14日 (金) | 編集 |
こちらもわんにゃんドックの症例です。



20130614tah02.jpg


なんとも凛々しい男前のネコちゃん 



7月に5歳になるノルウェージャン・フォレストキャットのシエル君です 



2009年から、毎年わんにゃんドックを受けていただいております 



今年も、特に問題なく、結果良好だったのですが・・・



一つ気になることが・・・




それは・・・




体重です 



特に、昨年からの1年での増加が著しく・・・



毎年のお腹のレントゲンを並べてご覧になった飼い主様も、そのお腹周りの肉のそだちっぷりには絶句されておりました 



人間で5歳というと、ようやく幼稚園といったところですが・・・ネコちゃんの5歳は人間の年齢に換算すると30~35歳といったところ。



そろそろ、食生活や運動習慣など生活習慣を見直さなければならないような年齢になってまいります。



シエル君も、最近はほとんど一日中動かずに寝て過ごしているそうで・・・



これからは、ちょっと食事内容と運動習慣を見直さなければいけませんね 



本日のわんにゃんドック
2013年06月11日 (火) | 編集 |
昨日、わんにゃんドックをおこなったベスちゃんです 




20130611tah01.jpg



今月4歳になる、アメリカン・コッカー・スパニエルの女の子です 



今回が初めてのわんにゃんドックでしたが、「わんにゃんドックC」でしっかりと検診させていただきました 



近年では、飼育されているワンちゃんのほとんどが純血種。



純血種のワンちゃんでは、どうしても遺伝的な偏りが生じるため、犬種ごとに発生しやすい病気というのもでてきます。




たとえば、今回検診を受けていただいたベスちゃん達、アメリカン・コッカー・スパニエルでは、肝臓病や眼、皮膚の病気が多いことが知られています。



そういった、犬種特有の病気を早期発見するためにも、わんにゃんドックはお勧めです 

食道閉塞 2
2013年06月10日 (月) | 編集 |
さて、先日の続きです。



20130606tah03.jpg



食道に、なにやら異物が詰まってしまったワンちゃん。



食道と言っても、胸部食道といって、心臓のすぐ近くの部分。この部分を、手術で開くとなると大ごとです。



そこで、まずは内視鏡で摘出を試みます。



・・・といっても、動物病院において、内視鏡の普及率は低く、当院にも準備はございません。


じゃ、どうするかというと・・・私の以前の勤め先の動物病院(相模原市)に内視鏡があるので、そちらをご紹介するようにしております。


食道に異物が詰まった状態が長く続くと、食道に負担がかかり、後々大きな問題になる可能性があります。


すぐに連絡を取って、内視鏡の準備をお願いしつつ、再度のレントゲン撮影で、食道閉塞の状態を確認します。



なぜ、再度確認するかというと・・・食道内異物は時間の経過とともに移動することがあります。



初めにレントゲンで異物を確認していても、実際に別の病院に移送するころには流れてしまっていたってことも考えられるからです。



そこで、再びレントゲンで食道の状態を確認すると・・・



20130610tah01.jpg



おっと、やっぱり・・・なんだかんだとやっているうちに、異物は胃の方に流れてくれたようです。



20130606tah01.jpg
初めの写真。丸で囲った部分に、黒い楕円形のカゲがあり、気管も蛇行しています。



どうやら、バリウムが潤滑剤の役割を果たしてくれたか? それとも、もともと飲み込んだ物が食品で、時間と共にふやけて柔らかくなり、流れやすくなったのか?


なんにせよ、まずは一番の緊急事態は脱しました。


ただ、問題はまだ残ります。


今回、飼い主様が見ていないところで食道閉塞が発生したため、食道に何が詰まっていたかが解りません。



食べ物(大きなジャーキーの塊や、クッキーなど)であれば、胃に流れてくれればあとは消化されるので問題ないですが・・・


消化されないような異物(ボール、プラスチックなど)だった場合、今度は腸閉塞を起こす危険があるわけです。



とはいえ、こればっかりは確認のしようがありません。


念のために、夕方までお預かりして、腸閉塞の兆候がないか経過観察、問題がないことを確認してから、いったんお家にお返ししました。



その後も、特に吐き気などの異常はないようですので、おそらくは可消化性の異物だったようですね。

食道閉塞 1
2013年06月06日 (木) | 編集 |
「朝から急に咳が止まらなくなったんです!」



ということで来院されたワンちゃん。



待合室でも、何度も苦しそうに咳をしています。




見ると、中年齢のマルチーズちゃん。



中高齢の小型犬で、咳が酷いときは、一番に心不全を疑うのですが・・・



どうも今回は様子が違います。



飼い主様にお話を伺うと、昨夜まではまったくいつもと同じ様子だったのですが、明け方から急に咳をし始め、時々白っぽい唾液のようなものを吐き出すとのこと。



まずは入念に心音・肺音をチェックしますが、特に異常はないようです。



心不全でなさそうだとすると・・・次に疑うのは食道閉塞。



ワンちゃんは、食べ物でもなんでも丸のみをしてしまう習性があります。いたずらしてボールを飲み込んだり、歯磨きガムを大きな塊のまま丸のみして喉に詰まらせたり・・・



そんな時には、今回のように、急な咳きこみや、はき戻しがみられます。



ですが、入念に喉を触っても特に問題はないようです。



そこで、レントゲン撮影で確認。



20130606tah01.jpg



ありました。心臓の少し手前の部分。食道内に楕円形の異物と思われる所見です。



黄色い丸で囲んだ部分に、横に長い楕円形の黒い影があるのですが・・・わかりますか?



ついでに、その部分の気管が、異物に圧迫されて蛇行している様子も観察されます。



20130606tah02.jpg
黄色が異物。オレンジのラインが気管のラインです。





さらに明確にするために、バリウムを投与して撮影。



20130606tah03.jpg



楕円形の異物の形がハッキリと解りますね。




さて、これは困りました。



今回異物が詰まっているのは、胸の奥深く、心臓のすぐそばの部分です。



まずは内視鏡で摘出を試みますが・・・



内視鏡で摘出できない場合は、胸を開く大がかりな手術になってしまいます。




特に、今回は、何を詰まらせたのか飼い主様も全く心当たりがない為、予測が困難。



食べ物なのか? それとも何か異物なのか?



もたもたしていると、食道に深刻なダメージが加わる恐れがあります。




つづく













ナイスアイディア!
2013年06月04日 (火) | 編集 |
ある急患のワンちゃんを診察した時のお話です・・・




早朝のお散歩中に、うっかりリードを放してしまって、どこかに逸走してしまったワンちゃん。




数分後、飼い主様が見つけたときには、全身に傷を負い、前脚は骨折という変わり果てた姿に。




傷の様子から、交通事故というよりは、どこかのワンちゃんの縄張りに入り込んでしまい、攻撃されてしまったようです。



咬み傷自体は、一部縫合が必要だったものの、それほど重症ではなかったのですが・・・




おそらくビックリして逃げるときに、どこかからか落ちたかしたのでしょう。腕を骨折していました。




その腕に、飼い主様が施した応急処置がこちら・・・





20130604tah01.jpg
包帯は病院で巻きなおしたもの




アルミホイルかなにかの紙の芯に切れ目をいれて、それを添え木にして包帯を巻いていらっしゃいました。




これはナイスアイディア!



下手に割りばしなどで添え木するよりも、簡単に固定できますし、全体から包み込むように骨折部を支えてくれますので、安定感抜群。



大型犬にはちょっと無理ですが、体重5kgくらいまでの小型犬には、非常に有効な手段です。




朝の出勤前にのお忙しい時間だったでしょうに、冷静で的確な判断をされた飼い主様に脱帽です!



この応急処置の方法は、早速当院でも取り入れさせていただこうと思います。