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町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
外歯ろう(眼窩下膿瘍) 2
2011年08月29日 (月) | 編集 |
さて、前回の続き。



重度の歯槽膿漏のため、頬骨に穴があいてしまい、膿が目の下から出てきてしまったワンちゃん


これを治療するには、まずは元凶となっている奥歯の歯槽膿漏治療が必要です。


ただ、このワンちゃんは、他の歯も重度の歯石付着と歯槽膿漏で大変な状況。


これらすべてのクリーニングと、他の部分も骨が溶けてしまったりして異常をおこしていないがチェックをしなければいけません。



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前歯もひどい状態。


下の前歯は、歯石で全部の歯がおおわれてしまって「一枚板」のようになっています。


この部分の歯石を除去すると・・・


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歯根の炎症がひどく、周囲の歯茎がグジュグジュに溶けてしまった状態。


これ、そうとう痛いはずです。


ここまでなってしまうと、もう抜歯するしかありません。






こちらは膿が出てきたのとは反対側の奥歯。



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こちらもひどい歯石だったのですが、歯石を取り除くと奥歯の根元に大きな穴が。



どうやら、ここに大穴があいて膿の逃げ場ができたため、こちら側は目の下の骨に影響が出ずに済んだようです。
そうでなければ、こちら側の頬にも穴があいてしまうところでした。





極めつけはこれ。



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今回の処置よりも以前に、自然に抜け落ちてしまっていた部分に穴が開いていたのですが、そこから水を流すと・・・


写真のように鼻からその水が出てきてしまう状態。


「口腔鼻腔ろう(こうくうびくうろう)」という状態。


ワンちゃんの上顎の歯根の部分は、鼻の穴を構成する骨と非常に近くなっています。


そのため、歯槽膿漏がひどい場合、鼻の穴とを隔てる骨が壊死・融解してしまい、口の中と鼻の中がつながってしまうことがあります。


こういった歯は、すべて抜歯。

炎症で壊死した骨は削り取り、穴があいてしまった歯茎の周囲は整形し縫い合わせてと、なかなか神経も使うし、技術も必要な作業になります。


特に、穴があいた部分をふさぐには、歯茎が溶けてしまっているので単純に縫い合わせることができません。
そのため、周辺の歯肉を整形して引っ張り寄せる必要があるのです。そのためには歯槽骨の一部を露出し、ドリルで削ったりという作業も必要。
周辺の骨は、炎症のせいで脆くなっているため、骨折の危険もあり、かなり神経を使います。


歯の治療というと皆さん軽くお考えの方が多いですが、ここまでの歯周病になると、立派な外科手術です。


さらに、御覧のように骨や歯茎の肉が壊死し、内部に膿がたまったような状態というのは、壊死組織や膿の中の細菌などの毒素が体内に常時吸収されており、全身に対する負担も大きなものがあります。


こういう症例を治療するたびに、「自宅での歯磨きの重要性」「早期の歯石クリーニングの重要性」を改めて認識させられます。


前回も書きましたが、口の中の異常というのは、飼い主様の目には触れにくいため、どうしても治療が後手に回りがちです。


ちょっと面倒くさく思うかもしれませんが、日常的な歯磨きにぜひ取り組んでいただき、こういった歯周病で苦しむワンちゃん・ネコちゃんが一頭でも減っていただきたいものです。


こればっかりは、飼い主様にやっていただくしかないことです。