町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
2か月に1度の・・・
2010年08月31日 (火) | 編集 |
2か月に1度の私担当の仕事に現像タンクの洗浄があります

本当は先週の木曜日に予定していたのですが、入院のわんちゃん・ねこちゃんの処置が大変で延び延びになっていました

ようやく時間が作れて本日洗浄です

現像タンク

当院では撮影したレントゲンはすべて手作業で現像しています

レントゲンは通常2枚1セットで撮影することがほとんどなのですが、2枚現像するのに10分から15分くらいかかります。

自動現像機というのもあるのですが、中古でも数十万円かかってしまいます

開業するには多額の費用がかかるのですが、その中でどこにお金をかけて、どこでお金を削るかがなやみどころです。
当院は超音波検査機やICU装置に多額の資金を投入したので、現像機にまでお金が回らなくなってしまいました

開業してから数年の来院数とレントゲンの撮影枚数を考えると手現像でもなんとか対応できますしね

それに、今はレントゲンはデジタルデータ化してパソコンの画面上に表示するのが主流になりつつあるので、下手に中古の自動現像機を買うのはもったいないのです。

来院数やレントゲン撮影枚数がふえて手現像で間に合わなくなるころにはお金もたまってるでしょうから、デジタル方式に入れ替えちゃったほうが経済的なのです

あ?はやくデジタルにしたいな?
デジタルなら撮影したフィルムの保管場所にも困りませんし、パソコン画面上で拡大や縮小、過去画像との比較など自由自在
皆さまへのご説明もよりわかりやすくなること間違いなしなのです

現像室

こんな小さな現像室にこもって現像しています

乾性角結膜炎
2010年08月30日 (月) | 編集 |
これなんだか想像できますか?

STT

二枚セットで目盛がふってあります
LとRと書いてあるので、左右セットということです。




これは、眼科診療で使う検査紙で、涙の量を測定するものです
この用紙の先端を目蓋に挟んで、一分間でどこまで涙が浸透するかを測定します。



わんちゃんに多く見られる目の病気で、「乾性角結膜炎(KCS)」という病気があります。
何らかの原因により、涙の分泌量が減り、それによって角膜炎・結膜炎が発生するのです。

シーズー犬やアメリカンコッカースパニエルなどに多い病気で、初めは眼ヤニが多くなって目が充血する程度の症状なのですが、治療が遅れると・・・

KCS
インターズー社 眼病カラーアトラスより

このように慢性の角膜炎により、角膜(目の表面の透明な部分)に色素沈着をおこし失明してしまいます

涙の分泌が減ると、目の表面が乾燥します。
角膜(目の表面)は涙から栄養をもらっていますので、涙の量が減るということは角膜の新陳代謝に悪影響を及ぼします。
また、目の表面と目蓋の関係は車のフロントガラスとワイパーみたいなものです。
目が潤っていればワイパー(目蓋)はスムーズに動きますが、目が乾いてしまっているとワイパー(目蓋)が目の表面を傷つけてしまいます。

こういった刺激が長く続くことによって、目の表面が変化してしまい、写真のように黒く色素沈着をおこしてしまいます。

この「乾性角結膜炎(KCS)」は初めは眼ヤニが増えたり、目が充血する程度なので、「単なる結膜炎」と誤診されることが多くあります。
そして、診断・治療が遅れたために視覚障害が出るまでに悪化してしまった症例に遭遇することが多々あります

実はこの病気を診断することはあまり難しいことではありません。
丁寧な検診を行い、前述の検査紙で涙の量を測定すれば大抵の症例では診断ができます。

ですが、安易に「たんなる結膜炎」と診断され、涙の量の検査が省かれてしまったために誤診されているケースが多いようです
この検査、すべての眼ヤニ・充血の症例で必ずしもおこなう必要はないと思いますが、治療に対する反応が悪い症例では必ず必要になります。

この病気を治療するには特殊な眼薬で涙の分泌を改善しなければなりません。
早期に診断し治療を開始すれば失明するほど酷くなることはほとんどありません。
ですが、角膜に色素沈着をおこすまでに進行した症例では、元通りに戻すことはできません・・・

「充血しているな・・・」「眼ヤニが多いな・・・」と感じた時に早めに診察を受けていただく事と、我々獣医師は治療に対する反応が悪い場合には涙の量をしっかりと計測することが重要です。

痛くて・・・
2010年08月28日 (土) | 編集 |
本日、後ろ足にデキモノができてしまったワンちゃんの手術だったのですが・・・

鎮痛剤投与中・・・

人間で言うと足の甲にあたる部分のデキモノを切除したのですが、諸事情あって当初の予定よりも傷口を大きくしなければならなくなってしまいました

足先というのは皮膚にゆとりがないため、傷口が大きくなった場合、皮膚を縫い合わせるのにかなり力がかかってしまいます。

当然、術後の痛みが強く、足先もむくみやすくなってしまいます。

通常通りの鎮痛剤の投与では痛みのコントロールが十分でないため、点滴剤に鎮痛剤を混合し、一晩中流し続ける方法をとることにしました。

鎮痛剤といえども、必要以上に投与することは体にとって悪影響を及ぼします。
痛みを押さえることのメリットと、薬の副作用のデメリットを天秤にかけながら投与量を調節するのですが、この時ばかりはどのくらい痛いのか言葉で教えてほしいな?と心底思うのであります

特にこのワンちゃんはもともと敏感で、ちょっと手を握ったりしただけでビックリしてキャンキャンないたりするので、痛みの判断が難しいのです

本日のわんにゃんドック
2010年08月27日 (金) | 編集 |
今月5件目のわんにゃんドック、予定では今月最後です。
最後を飾るのはノルウェージャン・フォレスト・キャットのサスケ君。

サスケ君

9月で3歳とまだまだ若いのですが、心臓にわずかな雑音があるため、「一度詳しく見ておきましょう」ということで、わんにゃんドックBに心臓超音波検査を組み合わせておこないました。

結果、大きな問題は無しと一安心でした

ところで、サスケ君をお預かりする際に、ベッドとしても使えるタイプのキャリーを一緒にお預かりしたのですが・・・

サスケ君 (2)

お預かりする際に、飼い主様が「キャリー入るの嫌いなので、入らないかも・・・」とおっしゃっていたのですが、やはり入ってくれませんでした

何も無いケージに入るよりも、自宅のにおいがするキャリーのほうが落ち着くかと思ったのですが・・・

理学療法
2010年08月26日 (木) | 編集 |
以前に学会の話題を取り上げた時に、新津さんにリハビリなど理学療法のセミナーに参加してもらうつもりだとお話したのを憶えておいででしょうか?

先週の土日がちょうどそのセミナーだったのですが、今日はそのセミナーの報告会をおこないました

理学療法

小動物の理学療法の分野はまだまだこれからの分野で、アメリカやオーストラリアなどの獣医理学療法先進国でも10?15年くらいの歴史だそうです。

海外では人間の理学療法士と同等の知識・技術を持った専門の獣医理学療法士が活躍しているそうです。

知識・技術ともに高度な分野ですので、1度や2度セミナーに参加した程度でマスターできるような内容ではありません
本格的な理学療法を取り入れるには、設備投資も含めてかなり時間がかかりそうです。

ただ、当院は整形外科を専門にやる病院ではないので、そこまで本格的な理学療法はできなくても、老化による足腰の衰えや、日常的な捻挫や骨折からの回復期のケアなどに取り入れることができればなと考えています

理学療法の分野は私にとってもまだまだ課題の多い分野なので、これからも新津さんと勉強会を重ねて行く予定です



股関節形成不全
2010年08月24日 (火) | 編集 |
「股関節形成不全」をご存知でしょうか?

大型犬の飼い主様なら、一度は耳にしたことがおありなのではないでしょうか?

ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーといった大型犬に多い疾患で「股関節異形成」ともいいます。

遺伝のかかわる疾患で、生まれつき股関節の構造に「緩み」が生じます。

関節に「緩み」があると、関節に異常な負荷がかかってしまいます。
関節への負荷が生涯にわたって続くために、関節軟骨が徐々にダメージを負って関節炎が進行していきます。
この関節炎の進行のことを「変形性関節症」と言います。

つまり、「股関節異形成(関節の緩み)」があることで「変形性関節症(関節のガタつきによる関節炎)」が進行し、それによって痛みがでるのです。

股関節形成不全

写真はまだ2歳と若いバーニーズマウンテンドッグの男の子です。

「どこが痛いのかはっきりしないけど、座ったり立ち上がったりするときに痛がる」
ということで来院された症例です。

左の股関節(写真では右側)に関節の緩みがあり、骨の変形もわずかに始まっています。

股関節形成不全 2

右股関節に比べると矢印で示した関節の隙間が広がっているのがお分かりいただけますでしょうか?
丸で囲んだ部分は、骨の表面がすこしくぼんでしまっています。
拡大した写真のあとに、もう一度一枚目の写真をみていただくと、左右の股関節の違いがわかりやすいと思います。

このワンちゃんはまだ2歳という若い年齢なので関節の変化も軽度ですが、このまま進行すると股関節がガタガタになってしまい、脱臼してしまうくらいひどくなることもあります。

この病気は生まれつきの関節の異常ですから治ることはありません。
特殊な外科手術があるにはありますが、基本的には体重管理や運動管理、サプリメントの投与などで進行を和らげながら付き合っていく必要があります。

重要なのは関節の変形が重度になる前に診断を下し、対策をおこなうことです。

本日のわんにゃんドック
2010年08月23日 (月) | 編集 |
おかげさまで「わんにゃんドック」大盛況です

今日はトイプードルのうめちゃん

うめちゃん

とってもフレンドリーでかわいらしいわんちゃんです

まだ2歳と若いのですが、以前から何度か膀胱炎を起こしているのが気になるとのことで、超音波検査をふくめた「わんにゃんドックC」を受けていただきました。

「わんにゃんドック」にはA?Cと3つのコース設定がございます。

どのコースを選ぶかは予算の問題もありますが、通常は1歳?5歳なら「わんにゃんドックA」。
5?10歳なら「わんにゃんドックB」。予算が許せば「わんにゃんドックC」。
10歳以上なら「わんにゃんドックC」をお勧めしています。

病気の早期発見、日常の健康管理のためにも定期的な検診をお勧めいたします

本日のわんにゃんドック
2010年08月21日 (土) | 編集 |
今月はわんにゃんドックが続きます。

今日ご紹介するのは、昨日わんにゃんドックCを受けていただいたアメショーのさくらちゃん

さくらちゃん

とっても人懐っこい子で、診察台の上でもゴロゴロ喉を鳴らしてごきげんです

ただ、心音を聞くときにもゴロゴロ喉を鳴らされるので、聴診が大変でしたが・・・

さくらちゃん (2)

検査が終わった後に毛づくろい

病院という、いつもと違う環境で、ここまで堂々と毛づくろいするネコちゃんは珍しいです

それだけ病院で快適に過ごしてもらえたということでしょうか

口蓋裂
2010年08月20日 (金) | 編集 |
先日診察した症例の写真です。

口蓋裂の猫ちゃん

上顎の黄色で囲んだ部分に裂け目があるのがお分かりいただけますでしょうか?

「口蓋裂」といいます。この裂け目は鼻の奥につながっています。

この子は野良猫ちゃんで、食事をあげて面倒を見ていらっしゃる方がお連れになりました。

「普段から鼻がグズグズしていて、ご飯を食べるときにも苦しそう」とのことでした。

「口蓋裂」があると、異常な部位で口と鼻がつながっているので、鼻炎が起きやすくなります。
また、食事を飲み込む時にも、口の中が密閉されないため飲み込みがうまくいかなくなってしまいます。

「口蓋裂」は生まれつきの奇形として生まれてくる場合と、交通事故などで頭部に衝撃を負ったときに障害を負う場合とがあります。

この子の場合は、おそらく交通事故などかと思われますが、何せ野良猫ちゃんで子猫のころの様子はわからないので確証はありません。

この「口蓋裂」を完治させるには外科手術が必要です。
特に、「口蓋裂」せいで食事が十分に取れない場合などは手術をしなければ命にかかわります。
子猫で生まれつき「口蓋裂」があった場合は、ミルクがうまく飲めないので致命的な問題になりやすいのです。

ただ、このネコちゃんのように、鼻がグズグズするものの、十分に食事がとれる状況であれば手術をせずに様子をみることもできます。
ただ、その場合は常に鼻炎に悩まされるのは覚悟しなければなりませんが・・・




その後のメロディちゃん・・・
2010年08月19日 (木) | 編集 |
先月お話したメロディちゃんをご記憶でしょうか?

こんなふうに病気で皮膚が大きく欠損してしまっていたワンちゃんです。

第16病日

詳しい治療経過は7月初めごろのブログをみていただくとして・・・

前回はここまで改善したという写真を載せましたが・・・

第41病日

そこから約1カ月。
本日の再診ではここまで良くなりました

メロディちゃん再診

メロディちゃん再診 2

だいぶ毛が生えそろってきたので傷跡が目立たなくなってきましたね

まだお薬も投与中で、再発の可能性もあるので慎重に経過はみなければなりませんが、ずいぶん良くなって一安心です

本日のわんにゃんドック
2010年08月17日 (火) | 編集 |
昨日わんにゃんドックを受けていただいたハイパーちゃん

今年五歳になったばかりのネコちゃんです。

ハイパーちゃん

わんにゃんドックAをうけていただきました。(わんにゃんドックの項目についてはこちら→Click

検査の結果はまったく異常なし

結果報告書も「特に異常ありませんでした」のオンパレードでした

飼い主様にも「異常がないことがわかって一安心」と大変ご満足いただくことができました

修了証
2010年08月16日 (月) | 編集 |
新津さんと村田さんがペットフードメーカーのHill's様から修了証をいただきました

修了証

何の修了証かというと、昨年から月1回でおこなっていた栄養学セミナーの修了証です。

基礎的な栄養学だけでなく、腎臓病や肝臓病、関節疾患など動物の各病状に合わせた食事管理などについての院内セミナーをHill's社様のご協力で開催していただいていたのですが、先日ようやくすべてのセミナーが終了いたしました。

当院では一般食だけでなく、さまざまな病状に合わせた治療食を取り扱っていますので、入院動物の看護をするにも、食事を販売するにしても最低限の治療食・栄養学の知識が必要です

セミナーが終了したとはいえ、二人にはこれからも常に勉強・情報収集を怠らず、努力を続けていただきたいものです

もちろん、私も二人に負けていられません



大動脈逆流
2010年08月14日 (土) | 編集 |
さて、心不全で急きょ入院したネコちゃんですが・・・

なんとが体調が安定してきたので、超音波検査で詳しく心臓の状態を調べました。

心膜液貯留の経過確認と、心臓の正確な状況確認です。

心臓を超音波検査で詳しく調べるには、最低でも30?40分かかります。
麻酔などは必要ないのですが、検査の間、ずっと横に寝かせて押さえていなければなりません。
そのため、心不全で状態の悪い動物では、かえってストレスをかけて病状を悪化させる恐れがあるために、ある程度状態が落ち着いてからでなければ危険なのです。

ネコちゃんの状態が急変しないか注意深く観察しながら検査を進めます。

大動脈逆流

「心膜液」のあらたな貯留はありませんでしたが・・・

大動脈での血液逆流が見つかりました。
「大動脈逆流」です。

黄色い矢印で示した青い色が、大動脈から逆流する血液の流れです。

本来は、血液は「左心室」から「大動脈」に一方通行で流れます。
「大動脈」に流れた血流は、全身の動脈に行き渡り、体中に血液を運ぶことになります。

「大動脈逆流」が起きてしまうと、全身に行き渡るはずの血液が逆流してしまうため、全身の様々な部位で血液が不足してしまい、心不全症状がでてしまいます。

このネコちゃんの場合は、慢性腎臓病に併発した高血圧が「大動脈逆流」の原因です。

腎臓はたくさんの血管が網目のように張り巡らされた臓器なのですが、慢性腎臓病になるとこの血管網での血流が悪くなってしまいます。
結果、腎臓の血管網の血圧が上がり、最終的には全身の血圧まで高くなっていきます。

そして、心臓内部の圧力よりも高血圧の圧力が大きくなると、心臓から送り出したはずの血液が、圧力に負けて心臓にもどってきてしまうのです。

慢性腎臓病は完治させる方法はありませんので、心不全の治療をおこないつつ、血圧をコントロールし、なおかつ腎臓病の治療もしていかなければなりません。

このまま落ち着いていれば、あと数日でお家にお返しできそうです。
ただ、今回の急激な「心膜液」の貯留については「大動脈逆流」だけではちょっと腑に落ちない部分もあるのですが・・・
ちょっと完全に解明するのは難しそうです・・・

動物医療で難しいのは、大抵の検査・治療が後手に回ることです。

このネコちゃんも当院に来た時にはすでに慢性腎臓病が進行した状態でしたので、腎臓にしても心臓にしてもすでに病気になってから時間が経過しているため、原因を探るのが難しいのです。

人間ではだいぶ人間ドックが定着してきましたが、ワンちゃん・ネコちゃんでも元気なうちから定期的に検診を受けていただいておくことが大切です。


心タンポナーデ
2010年08月11日 (水) | 編集 |
今日から3連休させていただき、心身ともにリフレッシュ!・・・と思っていたのですが・・・

昨日、通院中のネコちゃんの状態が急変したため入院治療となりました。
病院は休診ですが、のんびり休暇というわけにはいかなくなってしまいました。

慢性腎臓病で、以前から点滴に通院していただいていたネコちゃんなのですが、昨日、点滴中に突然、脱力してしまい虚脱状態に

病院に来るまでまったくいつもと変わらない状態で、点滴をはじめたときにも特別に問題はなかったのですが、点滴中に突然倒れてしまいました。

すぐさま状態を確認すると、どうやら何らかの理由で血液循環に異常をきたし、ショック症状におちいっているようでした。
(ショック:何らかの原因で血液循環が滞り、全身の血流不足から虚脱状態に陥ること。長時間この状態が続けば、肝臓や腎臓などの内臓に重大なダメージが蓄積し、命にかかわる)

ショックには心不全や、アレルギー性、外傷性など様々な原因が考えられるのですが、このネコちゃんで考えられるのは心臓発作によるショックでした。

実は、2週間ほど前の定期健診の際に、レントゲンで心臓肥大が見つかっており、「少し慎重に経過をみましょう」とお話したばかりだったのです。

慢性腎臓病のネコちゃんでは、高血圧を併発することが多く、高血圧から心臓への負担がかかることがあるのです。

ショック症状の治療を進めつつ、急いで超音波で心臓の状態を確認すると・・・

心タンポナーデ
心膜液の貯留

やはり心臓に異常がありました。
矢印で示した少し黒っぽい部分は、心臓と心臓の周りを囲む心膜との間に貯留した液体です。
本来は心臓と心膜はほぼ密着しているため、このように間に液体が見えることはありません。

これは「心膜液貯留」という状態で、液体が貯留する原因は様々ですが、今回は急激な心不全が原因で貯留したと考えられます。

心膜液が貯留すると、心臓が圧迫されるため、心臓の動きが制限され、それによって血液循環が滞りショック症状に陥ります。
心膜液の貯留により、ショック状態に陥ることを「心タンポナーデ」と呼びます。

これを治療するには、早急に液体を抜くしか手立てがありません。

抜くといっても、心臓からわずか数ミリの部位に手先の感覚だけで針を刺して、注射器で貯留液を抜くという作業です。

全神経を指先に集中して慎重に・・・

穿刺後の心臓
心膜液除去後

なんとか抜けました。
わずか1.2mlの心膜液でした。

心膜液は貯留するスピードによって症状が大きく変わります。
何日もかけて少しづつ貯留する場合は、10?20mlくらい貯留しても割とネコちゃんは耐えることができます。

ただ、今回のように急激に貯留した場合は、わずか1.2ml(小さじ1杯は5ml)でもあっという間にショック状態に陥ります。

このネコちゃん、なんとか最悪の状態からは脱したものの、ショック症状の後遺症から回復し、心臓の状態がある程度安定するまで入院となりました。

それにしても、病院にいる間に症状が出たのは不幸中の幸いでした。
いつも自転車で来院される患者様なのですが、もし帰り道に症状が出ていたとしたら・・・

本日のわんにゃんドック
2010年08月10日 (火) | 編集 |
アイリッシュセッターのチャーリー君です。

チャーリー君

顔が新津さんより大きい・・・

もう高齢なので足腰などだいぶ筋肉が落ちてきているのですが、それでも36kgの立派な体格です

さすがにこの大きさになると、レントゲンや超音波検査のために体を横に向けたり、仰向けにしたりするのが大変です

ただ、とっても大人しいワンちゃんなので助かりました

このサイズで暴れられると男性が本気で押さえても抑えきれません

チャーリー君は、「外耳炎がなかなか治らない」ということで先月初めてご来院いただいたのですが、その時に「肝臓の血液検査の数値も以前から高いまま下がらない」というご相談を受けました。

血液検査は何度かおこなったようですが、レントゲンや超音波での精密検査はおこなったことが無いということでしたので、わんにゃんドックで一度詳しく診させていただくことになったのです。

結果的には肝臓に深刻なトラブルはなさそうなので、お薬を飲んでいただきながら少し経過をみることになりました。

笑う門には・・・
2010年08月09日 (月) | 編集 |
通院中の患者様から素敵なお菓子をいただきました

笑う門には・・・

「笑う門には 幸が来る 福が来る」 と書かれたオリジナルのチョコレート菓子 

ホームページでオリジナルのパッケージが作れるそうです

ビーグルの幸(さち)ちゃんとMIX犬の福ちゃん、二人合わせて「幸福」です

二人ともいい笑顔ですね

口腔内腫瘍 ②
2010年08月08日 (日) | 編集 |
さて、セイシェルちゃんの口腔内腫瘍。
検査の結果・・・

エナメル上皮腫=棘細胞性エプリス

エナメル上皮腫(=棘細胞性エプリス)ということでした。

昨日も書きましたが、ワンちゃんの口腔内腫瘍では悪性のものが多いのですが、今回のエナメル上皮腫(=棘細胞性エプリス)は良性腫瘍に分類されます。

ただし、この腫瘍は良性とはいえ、歯の根元から発生し、周辺の骨組織に浸潤するようにして増殖する性質があります。
ですので、盛り上がった歯ぐきの部分を切り取っただけでは治らず、高い確率で再発がみられます。
そのため完治を望む場合、悪性腫瘍同様に顎の骨ごと大きく切除する必要があると考えられています。

では、セイシェルちゃんの場合はどうするのか?
改めて手術をおこなうのか?(ちなみに、下顎の骨を取り除くような手術をおこなう場合は大学病院にお願いします)

ポイントになるのはセイシェルちゃんの年齢(寿命)と、腫瘍の再発までの期間、そして再発した腫瘍が進行するスピードです。

エナメル上皮腫(=棘細胞性エプリス)は分類上は良性腫瘍なので転移したり、急速に増大することはないと考えられます。
ただし、顎の骨を侵すまでに増大すると、食事がうまくできなくなったりなどの問題がでてきます。
そうなってからでは手術で切り取ること難しくなります。

セイシェルちゃんはすでに11歳と、ラブラドールではかなり高齢になります。
一般的なラブラドールの寿命が12?15歳程度であることを考えると、腫瘍が再発したとしても、天寿を全うするまでに大きな問題が起きる可能性は低いと考えられます。
ただ、少しづつではあるけども再び増大していく可能性は高いので、ある程度大きくなったらまた部分的に切除して、ご飯の飲み込みなどに問題が出ないようにしていく必要はあります。
この辺りの判断は、私ひとりでは不安だったので、検査所の先生にも電話で相談しました。
こういったときに、組織検査の専門家に相談できるというのはとても心強いことです。

腫瘍を完治させることのみを目標にすれば、顎の骨ごと切除したほうが良いのですが、そうするとセイシェルちゃんへの負担も大きいですし、見た目の変化などのデメリットが大きすぎます。

これがもっと若いワンちゃんであれば、後々の再発・増大の問題を避けるために積極的な手術が勧められるかもしれませんが、セイシェルちゃんの場合は、飼い主様とのご相談して、これ以上の拡大手術はおこなわないこととしました。

口腔内の腫瘍は、悪性であることが多く、また頭部という位置から完全切除が難しく、再発や転移が問題になります。
ですので、できる限り早い段階で診断し、治療を開始したいのですが・・・
口の中というのは早期発見が難しい場所でもあります。

口の中の腫瘍だけでなく、皮膚にできた腫瘍でも、脇の下とか内股などの腫瘍は見過ごされることが多くあります。

少なくとも月に一度くらいは、口の中をみたり、入念に体を触っていただくと良いと思います。

口腔内腫瘍 ①
2010年08月07日 (土) | 編集 |
黒ラブのセイシェルちゃん。
11歳になる女の子です。

お口の中に「できもの」ができたとのことでご来院いただきました。
左下の奥歯の内側に腫瘍があります。

舌の陰に隠れていて、普通に口の中を見ただけではわかりませんでした。
飼い主様も、たまたまセイシェルちゃんが大あくびした時に気がつかれたそうです。
実際にどのくらいの大きさの腫瘍なのかは、麻酔をかけるまで正確に把握することはできませんでした。

口腔内腫瘤

犬の口腔内にできる腫瘍は悪性のものが多く、「メラノーマ」「扁平上皮癌」「線維肉腫」といった腫瘍が一般的です。
いずれも局所浸潤性(周辺の組織を破壊しながら増殖する)が強かったり、転移する可能性が高かったりと、発生すると命にかかわる可能性の高い腫瘍です。

良性の腫瘍はエプリスと呼ばれ、「線維性エプリス」「骨形成性エプリス」「棘細胞性エプリス」といった3つの種類に分類されます。

口の中に悪性腫瘍ができた場合、見た目に盛り上がっている部分だけを切除して治ることはほとんどありません。
局所浸潤性といって、周辺の組織にしみ込むように広がる性質が強いため、顎の骨ごとごっそりと取り除くような手術が必要になることがほとんどです。
もしくは、放射線治療などを組み合わせる必要があります。

今回のセイシェルちゃんの場合も、悪性だった場合は左下顎の骨を取り除く手術が必要になるかもしれません。

そこで、まずは腫瘍が良性か悪性か? 悪性だとしたらどういうタイプの腫瘍か? 顎の骨を切除するような治療が必要なのか? そういったことを調べるために、とりあえず見た目でわかる範囲の腫瘍を切除し、検査所に送ることにしました。

切除後

盛り上がった腫瘍の部分を切除しました。
事前のレントゲン検査などでは顎の骨に腫瘍が広がっている様子は観察されませんでしたので、良性の腫瘍であればこれで治療終了ということになります。

ただ、腫瘍が骨にまで広がっているかどうかは、レントゲン検査で100%わかるわけではないので、検査の結果が待たれます。

つづく・・・

8月休診のお知らせ
2010年08月06日 (金) | 編集 |
ペインコントロール
2010年08月06日 (金) | 編集 |
先日の学会でも取り上げられていましたが、近年、獣医療ではペインコントロール(痛みのコントロール)が重要視されています。

二十年?十年くらい前までは、獣医療では動物の痛みに対して無頓着なところがあり、「動物は痛みをあまり感じない」なんて言われることもありました。

骨折の症例などは、「痛み止めを使うとかえって動き回って治りが悪くなるから、痛み止めは使わない方がいい」なんてことも言われたりしていました。

私が獣医師になったばかりの頃にもそのような風潮は残っていました。
鎮痛薬のメリットよりも、副作用などのデメリットばかりが強調されていたように思います。

ですが近年ではそのような考えは間違っているとされており、動物も人間同様に痛みを感じるし(当たり前ですが・・・)、痛みはストレスになるので、かえって病気の治りを悪くすると考えられています。

ペインコントロール
鎮痛薬

動物は人間のように、言葉で「痛い!痛い!」と訴えることはできません。

動物が痛がっているかどうか、どのように判断するのか?

もちろん、キャンキャン鳴いて訴えることもあります。
それ以外に、動物の痛みを察知するにはまず元気・食欲があるかどうか。

痛みがあれば当然、活動性は落ちますし、食欲も落ちます。
その他に、息遣いが早くなっていないか? 体がこわばって振るえている様子がないか? 体に触れようとすると怒ったりしないか? 

痛みにじっと耐える動物の様子を良く観察して、どこが痛いのかを良く考えることが必要です。


痛みは外科手術の時にも問題になります。

痛みをコントロールしなければ、麻酔管理が難しくなります。
痛み止め無しで麻酔をかけて手術をすると、痛みのせいで麻酔の効きが悪くなり、どうしても麻酔薬を多く使わなければなりません。

また、痛みはストレスになります。
ストレスは動物の回復を妨げます。
痛みのストレスは生体の神経・ホルモンのバランスにも悪影響を及ぼし、最悪の場合は命にかかわるようなケースもあるのです。

避妊手術や去勢手術のような日常的な手術でも、痛みのコントロールが上手くいっている症例は術後もスヤスヤと眠って落ち着いて過ごしています。
一方、痛みのコントロールが上手くいっていない症例は痛みのせいで振るえていたり、落ち着きなく、体の向きを何度もかえたりしています。

まだ獣医師になったばかりで、痛みのコントロールが今ほど重要視されていなかった頃は、麻酔が覚めた後にワンちゃん・ネコちゃんが不安そうに振るえていたり、麻酔が覚めた直後にパニックになってキャンキャンないたりしているのが当たり前の光景でした。

それを、「麻酔から覚めたんでちょっとびっくりしたり不安になっているのかな?」なんて思っていました。

ここ数年、痛みのコントロールをしっかりとおこなうようになってからは、手術中の麻酔薬の量も少なくて済むので、どの症例も穏やかに目を覚まし、麻酔から覚めた後も、痛み止めと鎮静剤の作用で落ち着いて過ごしてもらえるようになりました。

先日は動物医療が人間の医療のレベルに近づいてきているというお話をしましたが、一方で、痛みのコントロールのように、ずいぶんと遅れているんだな?と思うこともたくさんあるのです。

今になって思うと、痛みのコントロールが不十分だった頃に担当したワンちゃん・ネコちゃんたちに申し訳のしようがないな?と思うのです。

学会へ ?
2010年08月03日 (火) | 編集 |
7月31日、8月1日と臨時休診させていただき、学会へ行ってきました

埼玉県の大宮まで行ってまいりました


お祭り

大宮駅周辺はお祭りのようです

めったに着ないスーツを着て、電車で出かけると、普段の仕事以上に疲れます

何人かの大学の同級生とも久々に再開

だいたい学会に来るメンバーは決まっていて、いつも同じ顔触れが集まります

皆勉強熱心ですし、大学病院や、高度医療センターに勤務しているメンバーもいるので、良い刺激になります

大学を卒業して10年近くたつと、大学に残った同級生が学会で講演をする立場になっていたりします

皆それぞれのフィールドでがんばってます

展示

企業の展示で面白いものがありました。

手前が動物の重心のバランスを見るための装置。
整形外科疾患のリハビリの効果を見たりするのに使用するそうです。
パソコンの画面に四本の足それぞれにかかっている体重が表示されます。

奥にあるのは、動物の体をつるした状態で地面が前後左右に傾くというもの。
リハビリのための装置です。

近年は動物の整形外科疾患でもリハビリの重要性がクローズアップされていますので、整形外科を専門にやる施設ではこういった機材が必要になってきます。

当院でもさすがにこういった設備の導入は無理ですが、8月半ばにリハビリについての勉強会に新津さんに行ってもらって、最新の情報を仕入れてくる予定です

術前検査の重要性 ?
2010年08月02日 (月) | 編集 |
さて、術前検査で心電図に異常が見つかったワンちゃん。

日を改めて精密検査です。

まずは心電図の再測定・・・
再測定
異常1が前回測定した心電図。
異常2が再測定した心電図です。

ずいぶん、今回と前回と心電図の波形が異なります。
今回は一見正常なように見えますが・・・

R波の後ろに出る下向きのS波が正常よりも深く出ています。
(心電図波形の記号については前回をご覧ください

S波が正常よりも深く出る場合、右心室と呼ばれる部分の異常が疑われます。

前回の心電図(異常1)と今回の心電図(異常2)の波形が異なる理由はわかりませんが、今回の心電図も十分に異常ですので、予定通り超音波検査で精密検査を進めます。

すると・・・

やはり異常がありました。

超音波画像

僧帽弁と呼ばれる弁構造の部位で血液の逆流が起きています。

ただ、この超音波で発見された異常と、心電図から予測される異常は一致しません。
通常は僧帽弁で逆流が起きていてもS波に異常がでることはありません。

S波に異常が出る場合は、肺動脈や肺動脈弁と呼ばれる部位に異常がみられることが一般的です。
ですが、今回の検査では肺動脈周辺には異常は認められませんでした。

その他、一通りの心臓内部の構造や血液の流れを確認しましたが、僧帽弁でのわずかな逆流以外には明らかな異常は認められませんでした。

これをどう解釈するか・・・

僧帽弁での逆流はごくわずかで、聴診でも雑音が認められないくらいですから、心臓への負担は最小限と考えられます。
その他の心臓全体の状況、血液検査などでの肝臓や腎臓の数値など総合的に判断すると、全身麻酔をかけての去勢手術は問題ないと判断しました。

ただ、まだ成長途中のワンちゃんであることを考えると、今後、心臓の異常が進行したり、新たな異常が見つかることも考えられますので、手術後も定期的な検診が必要だと考えられます。
特に心電図で異常が予測される右心室・肺動脈系については慎重な経過観察が必要です。

このように、まだ若くて、見た目にはまったく健康なワンちゃんでもレントゲンや心電図で異常が見つかる場合があります。

避妊手術や去勢手術をおこなう際に、「若くて元気も食欲もあるから」と手術前の心電図やレントゲンが省略されるケースもあるようですが、今回のように一見して分からない異常があった場合はどうするのでしょうか?

今回のケースのように、異常は見られるものの、体への影響が最小限であった場合は異常に気付かないまま手術をしても大きな問題になることはないでしょう。

ですが、もっと大きな異常があった場合は命にかかわるかもしれません。

「命にかかわるくらいの異常なら身体検査でわかる!」

そうでしょうか?
生き物の体というのはそんなに単純なものではないと思います。

心電図やレントゲンなど慎重におこなったとしても、すべての異常を確実に見つけられる保証はありません。

大切な皆さまのワンちゃん・ネコちゃんの命を預かる以上は、わずかな異変も見落とさないように努力しなければならないのでしょうか?

術前検査を省略すれば、飼い主様への経済的な負担は軽くなります。
安くなればその分、皆さまが避妊手術・去勢手術を受けやすくなるかもしれません。
それも一つの病院経営・診療サービスの方法かもしれません。

ですが、皆さまの大切なワンちゃん・ネコちゃんの命を預かる立場としては、費用を安くするために安全性を削るというのは、私の性分としてどうしても納得がいかないのです。

ですので、当院では多少費用がかかってしまったとしても、すべての症例での術前の血液検査・レントゲン・心電図検査は必ずおこなわせていただいています。