町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
術前検査の重要性 ?
2010年07月30日 (金) | 編集 |
先日、去勢手術のために術前検査をおこなったワンちゃんの心電図です。

心電図正常・異常

左が正常なワンちゃんの心電図。右が問題のワンちゃんの心電図です。

正常な心電図は、P・Q・R・S・Tの5つの波形からなります。
QとSはR波の前後に出る小さな下向きの波形で、ハッキリと見えない場合もあります。
T波は下向・上向きどちらも正常といわれています。

異常な心電図を見ていただくと、QRSの波形が出るはずの部分に異常な波形が出ています。

このワンちゃんはまだ生後一年にならない男の子で、特に元気や食欲に異常はなく、聴診器で心音を聞いても異常はありませんでした。
同時に撮影した胸のレントゲンでも心臓に異常は認められませんでしたが、全身麻酔をかけて手術をするには不安が残ります。

生後一年にならないワンちゃんの場合、先天的に心臓に異常があっても、それがまだ症状やレントゲンでの異常所見が現れていないだけで、今後の成長とともに症状・異常がはっきりしてくる場合もあり得ます。

飼い主様に状況をご説明し、日を改めて再度の心電図計測と心臓超音波検査での精密検査をすすめることとなりました。

つづく・・・





忍び寄るバベシアの影
2010年07月29日 (木) | 編集 |
バベシアという寄生虫をご存知でしょうか?

ワンちゃんの血液細胞に寄生する寄生中で、重度の貧血をおこし、命にかかわる場合もあります。

バベシアは一度感染してしまうと完全に駆除することは難しく、症状が治まっても感染は続き、ワンちゃんの体調によっては再発を繰り返すこともあります。

主に九州・四国など西日本に生息するマダニがバベシアに感染しており、これらのマダニに吸血されることでワンちゃんにバベシアが感染してしまいます。

マダニ
マダニ

主に西日本で発生する病気なのですが、近年、関東にも感染が広がりつつあるといわれています。

そして、どうやら今年に入ってお隣の神奈川県愛甲郡でこのバベシア症を疑う症例が出たとのことです。

まだ、確定したわけではないようですが、症状・検査の結果からすると疑いは濃厚のようです。

愛甲郡というと宮ケ瀬ダムなどの観光地もあり、町田近郊の方も訪れる機会はあるのではないでしょうか?

バベシアの感染を防ぐには、バベシアを媒介するマダニの感染を防ぐことが重要です。

マダニの活動期(春から秋)には確実に予防・駆除薬を使用することをお勧めいたします。

社会化期
2010年07月26日 (月) | 編集 |
無料相談セミナー「どうぶつを飼う前に」開催いたしました

やはり、夏休みに入って最初の日曜日ということもあり、お一人様のみの参加と少し寂しかったですが、そのぶんゆっくりとお話ができました。

その方は、すでにワンちゃんを飼い始めて2週間という方だったのですが、ペットショップで生後5か月のポメラニアンの女の子を購入されたとのことでした。

ペットショップの子犬は大体が生後2?3カ月で販売されるのですが、縁がなければ生後5?6か月までペットショップに残ることもあります。

この時に問題になるのが「社会化期」です。

「社会化期」というのは、子犬が他の動物や人間とうまく付き合うための社会のマナーを学ぶ、発育上の重要な時期のことです。

生後2?5カ月くらいの間が「社会化期」とされており、この時期にたくさんの動物や人とふれあい、様々な経験を積むことで、社会に適応した大人のワンちゃんに成長していくのです。

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逆に、この「社会化期」に十分な経験を積むことができないと、大人になってから過度の人みしりや、外出でのパニック症状など問題が出ることがあります。

ペットショップで生後5?6か月まで過ごした場合、この「社会化期」を上手く過ごせない可能性があるのです。

「社会化期」の重要性を理解していて、ワンちゃんの発育に関心の高いペットショップさんであれば良いのですが、そうでなければ「社会化期」の経験不足から問題行動を起こしやすい可能性があります。

セミナーにご参加いただいた方のお話によると、その方のワンちゃんも人見知りをする傾向にあり、環境の変化にも敏感で、外に散歩に出るのを怖がってしまうとのことでした。

「社会化期」の経験不足はペットショップで売れ残ってしまったワンちゃんだけの問題ではありません。

生後2?3カ月でお家に引き取られたワンちゃんでも、飼い主様が一人暮らしだったり、お仕事が忙しかったりで、「社会化期」の時期に十分に他のワンちゃんとの触れ合いや、見知らぬ人との出会いなどの経験を積ませることができなければ、「社会化」不足からの問題行動が起きることがあります。

ワンちゃんは人間同様に社会生活を営む動物です。
人間だって子供のうちから様々な経験を積んで社会に適応していくのです。

想像してみてください。
小学校に入るまで、両親が共働きで日中は一人で留守番。同じ年頃の子どもと遊ぶ経験もなく、両親以外の大人と接する機会もなかったような子が、いきなり小学校に通って適応できるでしょうか?

一人暮らしの方が一目ぼれでワンちゃんを衝動買いしたものの、日中は仕事があるので一人で留守番、かまってあげるのは夜の数時間だけ。
外に出るのはたまの休日だけ・・・
そのあげくに、「この子、人見知りがすごくてドックランに連れて行っても他のワンちゃんと上手く遊べないんです・・・」なんてことになるのです。

ワンちゃんもネコちゃんも、人間同様「心」を持った生き物なのです。
だからこそ、人のパートナーとして長く愛されてきたのです。

ペットを飼う前に、そして飼い始めた後にも、その「心」のはかなさ、大切さを良く考えていただきたいものです・・・

竜巻パワー!
2010年07月24日 (土) | 編集 |
連日の猛暑で夏バテ気味のワンちゃん・ネコちゃんの来院が増えていますが、皆様のお宅のワンちゃん・ネコちゃんは大丈夫ですか?

日差しが・・・

当院は間口が広く、道路に面した側が広くガラス張りになっていて、とても開放的な作りなのですが、真夏の1?4時頃の時間帯は日差しが強すぎて、エアコンのパワー全開でも十分に室内を冷やし切ることができません。

そこで、秘密兵器登場

ボルネード

竜巻パワーのボルネードくんです

室内の空気を循環させるサーキュレーターというやつですね。

去年の夏から導入しようかどうしようか迷っていたのですが、思い切って購入しました

いろんなメーカーから出ているのですが、インターネットの口コミなどを読むと、値段は高いがこのボルネードが一番評価が高かったので選びました。

竜巻状の空気を送りだすことで、室内の空気を効率よく循環させて、室内の温度差を無くしてくれるそうです。

確かに、使い始めてまだ数時間ですが、受付全体の冷え具合が今までよりも良いように感じます

夏だけでなく、冬場の暖房効率アップにも役立つそうなので期待大です





全部で何針?
2010年07月23日 (金) | 編集 |
先日、電気メスについてお話をしましたが、当院では乳腺腫瘍の摘出手術の際に良く使用します。

ワンちゃんの乳腺腫瘍の摘出手術では、再発の予防などを考え、片側全摘出術をおこなうことが多いのですが、脇から股の付け根まで広範囲にわたって切除しなければなりません。

乳腺切除

これだけ広範囲の皮膚を切除すると、術後に少しづつしみ出てくるような出血に悩まされることがあるのですが、電気メスを使用すればそういった術後のジワジワと出てくる出血をかなり軽減できます。

写真は水曜日に手術をした症例ですが、術後二日で腫れや出血もほとんど無く、痛み止めももう必要ないくらい良い状態です。

麻酔時間は長くなりますが、すべて手縫いで縫合しています。

ホッチキスみたいな機械で「パチン・パチン」とスピーディーに縫合することもできるのですが、それだと微妙な皮膚の合わせ目の調節ができないため、スピードは速いものの、仕上がりが手縫いに比べて雑になってしまいます。

高齢だったり、全身状態が悪い症例では仕上がりよりも手術時間の短縮が大切ですが、ある程度状態の良い症例では、時間と手間がかかっても手縫いで微調節しながら縫ってあげたほうが、術後の傷の治りや仕上がりが良くなります。

ところで、タイトルで「全部で何針?」と書きましたが・・・

全部で52針でした。

無料相談セミナー開催
2010年07月22日 (木) | 編集 |
7月25日(日)
無料相談セミナーを開催いたします。

「どうぶつを飼う前に」

7月25日(日)
14:00?
参加ご希望の方は前日までに電話にてご予約ください!

詳しくはこちら→click

これからワンちゃん・もしくはネコちゃんを飼おうと考えていらっしゃる方、ワンちゃんやネコちゃんを飼い始めて1か月以内の方を対象としたセミナーです。

給水装置
2010年07月21日 (水) | 編集 |
谷口考案・新津作製の給水装置です。

給水装置

この黒いマットは電気メスの部品の一つで「対極版」と言います。

電気メスを使用するには、この対極版と動物の体をしっかりと接触させる必要があります。
この「対極版」は電気メスを使用した時に発生する電流を流すために必要なのですが、電流を効率よく流すためにこのマットを湿らしておかなければなりません。

でも、長時間の手術になるとだんだんと乾いてきてしまうので、途中で水分を追加する必要があります。
その時に、動物の体の下敷きになった「対極版」にスムーズに給水するための装置です。

チューブの先端に注射器をつないで給水する仕組みです。

電気メスとは、「高周波電流」を利用した手術器具です。

電気メス ?

プラスチック製の持ち手に金属製の先端がついています。
この金属の先端に組織が触れると「高周波電流」が流れ、接触した細胞内の水分が過熱し蒸発します。
細胞内の水分が蒸発する際に周辺の組織も同時に消滅していくのです。

ですので、電気メスを使うと先端を軽く触れるだけで組織がズバズバッと切れていくのです。
切れるというか、触れた部分が蒸発していく感覚です。

ただ切るだけなら普通のメスでも良いのですが、電気メスの優れているところは、電流を調節することで、組織を切除しつつ、熱により周辺の止血を同時に行えるところです。

つまり、通常のメスよりも出血を少なくすることができるのです。。
もちろん、大きな血管はそうはいきませんが、その際には出力を調節することで、止血をメインにおこなうこともできます。

電気メス ?

こちらが電気メスの本体。
「CUT」と書いてあるダイヤルが「切開モード」の調整ダイヤル。「COAG」と書いてある方は「凝固(止血)モード」の調節ダイヤルです。

日常的な避妊・去勢手術などでは使用しませんが、腫瘍の切除手術などで活躍する装置です。

置き土産
2010年07月18日 (日) | 編集 |
診察したワンちゃんの置き土産です

マダニ

マダニです・・・

診察後に掃除をしていたら床に落ちていました。

マダニはゴマ粒程度の大きさですが、血を吸って小豆くらいの大きさまで膨らみます。

お腹一杯血を吸うと自然にワンちゃんの体から落下して、そこで産卵します。

産卵

ワンちゃんの体から落下して2日目に産卵を始めました。

産卵 (2)

その後、1週間の間に次々と産卵していきます。
最大で3?4千個もの卵を産むそうです

その間、母ダニちゃんは飲まず食わずです。
体いっぱいに吸血した血液をエネルギーに、ひたすら卵を産み続けるのです。

害虫ではありますが、けなげな姿なのです・・・

でもこの何千個という卵が孵化したときのことを考えるとゾッとします

こんなのが家の中で繁殖したら大変です

お外に行くワンちゃん・ネコちゃんではこの季節、ノミ・マダニの予防は忘れずに

「すね」ってどこ?
2010年07月17日 (土) | 編集 |
先日は骨折の症例のお話をしましたが・・・

ところでワンちゃんの「すね」ってどこだかわかりますか?

犬の後肢

ワンちゃん・ネコちゃんなどの後ろ足は、我々人間でいうと「つま先立ち」の状態になっています。
地面についているのは足の指だけで、かかとは浮いた状態です。

右脛骨

正常な状態だと、太い「脛骨(けいこつ)」と、その横の細い「腓骨(ひこつ)」の2本の骨で構成されています。






ポッキリ
2010年07月16日 (金) | 編集 |
まだ3カ月のトイプードルちゃんのレントゲン写真です。

左脛骨
左の脛骨(つまり脛の骨)。ポッキリと折れてしまっています。

この症例は別に交通事故などにあったわけではありません。

自宅で、飼い主様がちょっと目を離したすきに骨折してしまいました。

普段から高いところから飛び降りたり、ピョンピョンとジャンプしたりと活発なワンちゃんだそうです。
飼い主様も現場は見ていないのですが、おそらくは飛び跳ねて遊んでいるうちに骨折してしまったようです。

近年、我々が日常で診察する骨折の症例のほとんどが、このように小型犬(トイプードル、チワワ、ポメラニアンなど)が、自宅で飛び跳ねて遊んでいたり、飼い主様の抱っこから飛び降りたりして発生しています。

交通事故などでの骨折は逆に少ないくらいです。

猫などと違い、人間の手で作り出された極端な小型犬種は、高いところに飛び上がる筋力は持っていても、それに耐える骨格と、ショックを受けとめる能力が欠けているのです。
(猫が高いところから音もなく着地するのは、体重が軽いだけでなく、衝撃をうまく吸収する柔軟な筋力があるからです)

生後3カ月という年齢のため、骨折の治癒力は早いのですが、骨折の回復と同時に骨が成長していくので、一般的なプレートやピンでの固定手術はあまり向いていません。

手術をせずに添え木で固定する方法も、このワンちゃんがかなり活発な性格であることと、骨折が斜めに折れていることを考えると上手くいきそうにありません。
添え木固定では、プレートやピンでの固定に比べると固定力が弱いため、活発に動くワンちゃんや、斜めに折れた骨折(骨折した部分がずれやすい)ではうまくいかないことが多いのです。

一番良いのは皮膚の外からピンを差し込んで固定する創外固定という手術ですが、当院にはそのための機材・設備・経験が不足していますので、大学病院で手術をお願いすることになりました。
創外固定
予約がいっぱいというところを、なんとか時間を作っていただいて手術していただくことができました。

無菌性結節性脂肪織炎 第20~41病日
2010年07月13日 (火) | 編集 |
ようやく皮膚再生の方向に進み始めたメロディちゃん。

見る見るうちに皮膚がふさがっていきます。

第20病日
第20病日


第25病日
第25病日
傷の再生は良好だが、無菌性結節性脂肪織炎による新たな病変は広がっており、そのために腰周辺の毛が抜け落ちてしまっています。


第31病日
第31病日
傷口を乾かさずに治す「湿潤療法」では、傷周辺の皮膚が中央に向かって収縮するようにふさがっていきます。


第41病日
第41病日
大きく開いていた皮膚の欠損部分はほぼふさがりました。
3?4か月はかかるかも・・・と覚悟していたのですが、思った以上に順調な回復です
傷口を乾燥させる旧来の治療法ではこうはいきません。

ただし、メロディちゃんの場合は、根本的な問題は「無菌性結節性脂肪織炎」です。

一番ひどい皮膚欠損を修復することはできましたが、まだメロディちゃんの皮膚では新たな炎症が発生しており、まだ免疫異常による障害がおさまりきっていません。

第41病日 続く炎症
赤くなって皮膚が欠損している部分が、「無菌性結節性脂肪織炎」による炎症部位です。

すでに1カ月近く、ステロイドの投与によって免疫機能の抑制をおこなっているのですが、症状を完全に抑え込むところまではいっていません。

もし、このままステロイドでおさまり切らなければ、さらに免疫抑制力の強いお薬の使用も考えなければなりません。

ま、それでもひとまずあの大きな皮膚欠損をふさぐことができて一安心なのです

無菌性結節性脂肪織炎 第11~18病日
2010年07月12日 (月) | 編集 |
さて、若干の不安を抱えつつステロイド剤の投与を始めたメロディちゃんですが・・・

第11病日
第11病日

まだ病変は拡大しています。しかも、傷周辺の「浸出液」が黄色っぽく濁ってきており、検査をすると細菌が確認されました。

ステロイドを使用した影響なのか、感染症をおこしかけています。

この時点で一時ステロイドの使用を休止しましたが、その後、感染症が十分コントロールできるレベルであったのと、やはりステロイド剤を使用しないと経過が良くないようでしたので数日後には再開しました。

そして第16病日・・・

第16病日

ついに皮膚が落ちるだけ落ちました

写真は洗浄した後なので特にきれいに見えますが、傷周辺の皮膚の状態が非常に良く、「活き活き」としています

これが生き残った組織と、駄目になった組織がきれいに分離した状態です。
ここまで来ると、あとは皮膚の再生を待つのみです。

第18病日
第18病日

第18病日にはすでに傷口が収縮を始めています。

16病日と比べると傷口の範囲が狭まってきているのが良くわかると思います。

このあたりで、ようやく傷の修復にめどが立ち始めました。

ちょっと一安心です。

つづく・・・



無菌性結節性脂肪織炎 第2病日~第8病日
2010年07月10日 (土) | 編集 |
さて集中治療を始めたメロディちゃんですが・・・

案の定、皮膚はふさがるどころか、壊死して脱落する範囲が広がっています。
一部、再生が始まっている部分もありますが、全体としては傷が悪化する方向に向かっているようです。

第2病日
第2病日

第3病日
第3病日

でも、これは予想していたことなので別に驚きません。
ガッカリはしますが・・・

こういった壊死した皮膚が修復していくには、まずはじめに「駄目になった部分はすべて取り除く」ことが重要なのです。

治療の初めの数日間をかけて、生き残っている組織と、すでに死んでしまってこれから脱落していく組織を選別していくのです。

そして、一通りダメージの深い組織が脱落しきって初めて、生き残った組織が修復に向かうのです。

第8病日
第8病日

まだ皮膚の脱落はおさまりません。

※傷の周辺がジュクジュクしているのは化膿しているわけではありません。
「浸出液」といって、傷の再生に必要な様々な物質を含んでいます。
一昔前は傷口は乾燥させて治すものでしたが、現在はこういった「浸出液」を有効に働かせるために、傷口を乾燥させずに治す方法が取られています。
このあたりの詳しいことはこちらをご覧ください→click

そもそも、今回の皮膚の損傷は単純な怪我ではなく、自己免疫機能の異常による皮膚の壊死です。
そんなに簡単にはおさまらないようです。

本来、無菌性結節性脂肪織炎の治療には免疫細胞の働きを抑えるためにステロイド剤を使用しなければならないのですが、ステロイド剤の副作用で傷の治りが悪くなったり、感染症をおこしやすくなる危険性があります。

かなり広範囲の皮膚欠損であったので、感染症の発生と傷修復の遅れが心配であったため、ステロイドの使用は見合わせていたのですが・・・

どうやらステロイドを使わなければ、どうにもならないようです。
若干の不安はありますが、このままでは改善が望めないのでステロイドの投与を始めます。

この時点では、紆余曲折あったもののメロディちゃんの全身状態もなんとか落ち着いたので(実は一度はあわやという事態に陥ったのですが・・・)、通院に切り替えて治療することになりました。

つづく・・・




無菌性結節性脂肪織炎 第1病日
2010年07月09日 (金) | 編集 |
5月末に入院していた無菌性結節性脂肪織炎のワンちゃんのその後です。

5月29日に「皮膚が腫れて血が出てきた」ということで来院されたのですが・・・

第1病日
第1病日 壊死した皮膚組織がはがれおちてしまいました。

実は当院にいらっしゃる前に、すでに1カ月ほど治療を受けていたそうです。

当院にいらした時点でかなり病状は進行しており、血液検査で肝臓機能の数値なども異常値がみられたため、入院していただいて集中治療を始めました。

皮膚の治療も大切ですが、まずは悪化した全身状態を改善するところから始めなければなりませんでした。

以前にも書きましたが、無菌性結節性脂肪織炎はダックスに多くみられる原因不明の自己免疫異常による皮膚炎です。

本来は外敵から身を守るための免疫細胞が異常をきたし、自分自身の皮下組織を攻撃し、炎症を起こしてしまう疾患です。

ですが、ここまで広範囲に皮膚が欠損する症例は初めてです。
通常は写真で言うと左上に小さめの壊死部分が2か所ほどありますが、このくらいの大きさのものが数ヶ所から10ヶ所程度できるくらいです。(それでも十分大変なことなのですが・・・)

無菌性結節性脂肪織炎の治療は、異常をきたした免疫機能を抑制するお薬を使用するのが基本なのですが、今回のワンちゃんでは、それよりもまず、この大きく欠損した皮膚を何とかしなければなりません。

しかも、単純な怪我とは違い、自らの細胞組織が攻撃を仕掛けた結果、壊死して脱落した状況であり、なおかつ現在進行形でどんどんと広がっている状況です。

「こいつは半年はかかるかも・・・下手したら傷が治らないままになってしまうかも・・・」という状況でした・・・

飼い主様にかなり難しい状況であることをお伝えして、困難な治療を始めることにしたのです・・・

包帯
点滴治療を受けるメロディちゃん。

つづく・・・




わんにゃんドックについて
2010年07月08日 (木) | 編集 |
わんにゃんドックのページに検査項目の一覧を追加いたしました

わんにゃんドックのページはこちら → click!
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大切な愛犬・愛猫の健康管理には定期的な健康診断が欠かせません

ぜひ、年に一度の「わんにゃんドック」をご検討ください

マイクロチップ
2010年07月06日 (火) | 編集 |
ワンちゃん・ネコちゃんの個体識別のためのマイクロチップの取り扱いを始めました。

マイクロチップのデータは動物ID普及推進会議(AIPO)が管理するデータベースに登録され、万が一、ワンちゃん・ネコちゃんが迷子になってしまった場合の個体識別・飼い主様検索に役立てられます。

マイクロチップリーダー
マイクロチップの読み取り機。番号はテスト番号です。


マイクロチップと挿入器具

直径数mm、長さ約1.5cmのマイクロチップを専用の挿入器具で背中の皮膚の下に埋め込みます。

メーカー曰く、「挿入に際して痛みはほとんどありません」とのことで、局所麻酔なしで挿入する病院さんもあるようですが・・・

挿入器具

こんなにぶっとい針ですよ

少なくとも私は「痛くないですよ?」といわれても、局所麻酔なしでこんな針を刺されたくはありません

「痛みはほとんどない」といっても、それはあくまで「我慢できるレベル」ということであって、まったく痛くないわけありません。

普段ワクチンや採血に使用する注射針はもっともっと細いのですが、それですら痛がる子は半狂乱になるのですから・・・

実際、過去に何度か麻酔なしで挿入した経験があるのですが、皆なんとか我慢してくれるものの、やっぱりつらそうでした

挿入にかかる費用を安くするには麻酔なしのほうが良いのですが、それよりはワンちゃん・ネコちゃんの苦痛を減らすことのほうが重要です。
だいたい、自分が局所麻酔なしで刺されたくない注射を、動物に麻酔なしで刺すってのはいかがなものでしょう?

ということで、当院では挿入前に局所麻酔薬を少量注射いたします

マイクロチップの挿入手順としては・・・

? 挿入する部位を5円玉程度の大きさで毛刈りします。(局所麻酔した部分に正確に挿入するため)
? 局所麻酔薬の注射。
? マイクロチップの挿入
? 挿入した傷口を一針縫合。
? 1週間後に抜糸およびマイクロチップが確実に挿入されているかリーダーで読取りチェック
  (ごく稀に挿入した穴から脱落することもあるため)

という手順になります。

挿入したマイクロチップ
挿入したマイクロチップ

データベースへの登録は、飼い主様に記入していただいた用紙を当院が送付することでおこないます。

費用は8000円(データベースへの登録費用1000円を含む)です。
※別途診察料が必要です。初診1200円、すでにカルテのある方は1000円。

マイクロチップはその都度メーカーから取り寄せになりますので、挿入をご希望の方は電話にてご予約くださいませ

狂犬病ワクチンを接種していなくて・・・
2010年07月05日 (月) | 編集 |
先日のことです・・・

「飼い犬が人を咬んでしまった。その人が狂犬病に感染してしまってないか調べたいんだけど・・・? うちの犬は狂犬病ワクチン打ってなくて・・・。でも、狂犬病って日本に無いんですよね?」

というお問い合わせがありました。

飼い犬が人を咬んでしまって、その相手の方が大変お怒りになっているそうです。

どうやらこのワンちゃんは狂犬病ワクチンの接種をここ数年おこなっていないそうで、それで余計に問題になってしまっているようでした。

RV.jpg


狂犬病に感染したかどうかは、発症前に調べることはできないようです。
狂犬病は発症した場合、致死率がほぼ100パーセントという恐ろしい病気です。
ですので、狂犬病に感染した疑いがある場合は、暴露後ワクチン接種といって、発症を予防するためのワクチン接種をおこなう必要があります。

幸い現在の日本国内では狂犬病は存在しない(はず)ですので、日本国内のワンちゃんに咬まれても狂犬病に感染する心配はほとんどありませんが・・・

狂犬病ワクチンの接種は法律で義務付けられています。
狂犬病ワクチンの接種を怠ると20万円以下の罰金の対象になることもあるのです。

飼い犬が他人を傷つけてしまっただけでも問題なのに、そのワンちゃんが狂犬病ワクチン接種をおこなっていないとますます大きなトラブルに発展しがちです。

少なくとも社会のルールで定められたワクチン接種はきちんと済ませておくのが愛犬家の義務であり、責任です。
それに、今回のような事故が起きた時に、必要以上にトラブルにならずに済みますしね・・・

ところで「日本では狂犬病はここ数十年発生していないからワクチンなんか打たなくていいんだ」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、それは我々獣医師としては非常に悲しいことです。

60年程前までは当たり前のように存在していた狂犬病がなぜ現在の日本には無いのか?
(狂犬病清浄国というのは日本・イギリスなど世界ではごく一部の地域だけなのです。)

それは、この数十年にわたる国の機関と獣医師の予防・撲滅の努力があったからなのです。
そして、なんとか国内から撲滅した狂犬病を、2度と発生させないためにも継続して予防の努力を続ける必要があるのです。



ふくふくじん
2010年07月03日 (土) | 編集 |
「ふくふくじん」というと何だかおめでたい神様のお名前に聞こえますが、漢字で書くと「副副腎」と書きます。

副腎というのは左右の腎臓の側にある臓器です。大きさ数mmから1cm弱の小さな臓器です。
その副腎が正常とは違う場所にも発生することがあります。
胎児が成長する過程でたまたま起こるのですが、この異所性に発生する副腎組織の事を「副 副腎」と呼ぶのです。

なんで「副副腎」のお話をするかというと・・・

副副腎

先日、子宮蓄膿症で手術したネコちゃんでこの「副副腎」が認められたのです。

写真のように、卵巣につながる血管(卵巣動静脈)の表面にクリーム色をした楕円形の組織が発生しています。
これが「副副腎」です。

実は、手術の時点ではこれが「副副腎」だとはわかりません。

このような組織は、正常な卵巣動静脈の表面にはありませんので、何かしらの異常・奇形であることはわかりますが、その正体を知るには検査所での精密検査が必要です。

はじめは卵巣のすぐそばであることから、卵巣が異所性(正常とは違う場所)に発生したのでは? と疑いました。
先日も書いたように、一歳にならないネコちゃんでの子宮蓄膿症が非常に珍しいため、「異所性に発生した卵巣組織が何か関係しているのでは?」と考えたのです。

ですが、結果的には異所性の副腎で、子宮蓄膿症との関連はないだろうということでした。

いずれにせよ珍しいことには変わりありません。

ちなみに、この異所性に発生した「副副腎」は切除してしまっても問題はありません。
そのまま残しておいても問題になることはないと思われます。

異所性の卵巣の場合は、取り残すと「避妊手術をしたのに発情する」ということが起きます。
正常な位置にある卵巣を取り除いても異所性の卵巣が機能するために発情期が来てしまうのです。
もちろん子宮は取ってあるので妊娠はしませんが・・・

ただ、今回のようにわかりやすい場所にあればいいですが、そうでなければ通常の避妊手術の時に見つけるのは困難です。

歯石の下は・・・
2010年07月02日 (金) | 編集 |
歯周病治療のワンちゃんです。

まだ5歳のチワワちゃんなのですが・・・

奥歯にたっぷりと歯石が付着しています

右上顎臼歯処置前

この歯石を取り除くと・・・

右上顎臼歯

歯槽膿漏で歯の根っこがむき出しになっています。

この歯はもうグラグラになっていたので抜歯しなければなりませんでした。

しかも、このワンちゃんの歯槽膿漏はかなり進行しており、眼球を包み込む部位の骨にまで影響が出ていました。

奥歯の根っこのすぐ上には眼窩(がんか)といって眼球を納める部分があります。
歯槽膿漏が進行すると、この部位の骨まで溶けてしまって、口の中と眼窩がつながってしまうことがあります。

歯槽膿漏と眼窩

このワンちゃんもすでにそこまで進行しており、歯を抜いた穴に器具を差し込むと目玉までつながっていました。

抜歯をして歯槽膿漏の治療をおこなえばこれ以上ひどくなることはないのですが、無治療のままですと眼球周辺の炎症にまで発展してしまいます。

あと、もっと怖いのは、抜歯に使う器具というのはかなり鋭利なものなので、抜歯処置の際に誤って眼球を突き刺してしまう危険があります

幸いそんな失敗を犯したことはないですが、今回の症例も乱暴な処置をすればその危険性はありました