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町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
お腹の中の腫瘍
2010年05月11日 (火) | 編集 |
先日は肝臓腫瘍から腹水がたまったであろう症例のお話をしましたが、ワンちゃんにしてもネコちゃんにしても高齢になるとお腹の中にガン(腫瘍)ができる症例というのは結構多いものです。

お腹の中のガン(腫瘍)をどうやって見つけるかというと、まず基本は触診です。

お腹の中には肝臓・膵臓・腎臓・副腎・脾臓・胃・腸・膀胱・子宮(女の子のみ)などがあるわけですが、腹部全体を丁寧に触診し、それぞれが正常な位置にあるのか? 正常な大きさ・硬さなのか? を診断していきます。

もし異常な「しこり」や「かたまり」を見つけた場合は、そのほかの正常な臓器との位置関係から、大まかにどの臓器に異常があるのかを判断します。

たとえば、脾臓(ひぞう)という臓器は正常では柔らかく触っても明らかな感触がないのですが、腫瘍化すると硬く触るようになります。
つまり、脾臓があるべき位置を触診して、そこに何か固いものが触れば脾臓が腫瘍化している可能性が高いということになるのです。

触診で大体の状態を把握してからレントゲンや超音波検査でさらに詳しく調べていきます。

脾臓腫瘍
こちらは脾臓の腫瘍。
脾臓というのは本来は平べったい形をした臓器なのですが、かなり大きく腫瘍化しています。
正常な脾臓とはかなりかけ離れた構造になってしまっていますが、腫瘍の下に映っている腎臓との位置関係からこれが脾臓であるということがわかります。

脾臓と腎臓
こちらは正常な脾臓と腎臓の超音波画像です。
上の画像と比べると脾臓が平べったい構造をしているのがお分かりいただけると思います。

このようにして、どの臓器が腫瘍化しているかはっきりしたら、今度は他の臓器に転移がないかを詳しく調べます。

腫瘍には様々な種類がありますが、脾臓にできる腫瘍では「血管肉腫」という種類のガンが多いとされています。

「血管肉腫」は心臓に転移することがあるため、お腹の中だけではなく心臓も詳しく調べる必要があります。

心臓転移

調べてみるとやはりありました。
右心房の隣に直径15mmほどの腫瘍です。

脾臓の状態、心臓への転移の様子からすると高い確率で「血管肉腫」であると考えられます。
※腫瘍の種類を確実に診断するには組織検査といって、腫瘍そのものを切り取って調べる必要があります。

このように、触診と超音波を組み合わせればかなり詳しいところまで調べることができます。

ただし、それには正常な臓器の構造や位置関係がしっかりと頭の中に入っていなければなりませんし、超音波で正確な画像が出せるかどうかは、検査をおこなう人間の技術と経験に関わってきますので簡単なことではありません。

常日頃から丁寧な身体検査、超音波検査を心がけて、常に技術を磨く努力を怠らないようにしなければならないのです。