町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
傷とサランラップ
2010年05月31日 (月) | 編集 |
私が子供のころは、「傷は乾かしてなおせ」というのが当たり前でした。
毎日消毒して、ガーゼを交換。そのたびに傷に張り付いたガーゼをはがす痛みに悲鳴をあげる・・・

いまでも、「傷口は乾かしたほうがいい」「傷は毎日消毒したほうがいい」と思っていらっしゃる方が多いと思います。
実は違うのです。

最近ではそういった治療はかえって傷の修復を遅らせると考えられています。

表皮(皮膚の表面)というのは外界から体内を守るために抵抗力を強く持った組織です。

「傷」というのはこの表皮が障害を受けて、本来なら外界に触れるはずのない組織がむき出しになってしまった状態なのです。

出血 3


表皮の下の組織(皮下組織や筋肉)は、外気にさらされて乾燥するだけで障害を受けるほどデリケートです。
こういった繊細な組織に消毒液(細菌を退治するような薬剤は、むき出しになった細胞にも害を与えます)をふりかけ、乾燥したガーゼで覆うと、かえって組織のダメージを深めてしまうことになるのです。

傷口は「消毒」ではなく「洗浄」をおこないます。
生理食塩水や水道水で十分に洗い流します。この時、あまり水流を強くするとかえって組織を傷害したり、汚れを奥に押し込むことになるので注意が必要です。

「洗浄」によって表面の汚れを洗い流した後、傷口に組織修復を促進するゼリー(ハイドロジェルという)などを塗布して、潤いを持たせた状態で包帯・密閉します。

密閉された包帯の下では皮膚組織が再生を始めます。
再生を始めたばかりの細胞は非常にもろく、乾燥や外気の刺激に対して弱いのです。
必要以上に包帯を交換すると、せっかく再生を始めた細胞が外気に触れてしまって障害を受けてしまい、かえって組織の修復に遅れが生じてしまいます。

ましてや、乾燥させたガーゼを毎日替えるなんてことは、せっかく再生しようとしている弱い細胞たちを毎日カピカピに乾燥させ、ガーゼごと引っぺがしてしまっているようなものなのです。

現在の考え方では、細菌感染が起きていない傷なら、数日から1週間程度は包帯交換をせずに密閉しておくこともあります。
※ 傷の状態、感染症の有無などによって管理の方法は変わってきます。
  
昨日お話ししたダックスちゃんも同様に皮膚に組織修復を助けるゼリー(ハイドロジェル)を塗った状態で密閉包帯をしています。

この子の場合は、細菌感染を起こしていないか初めの数日はこまめに様子を見たいので、今のところは毎日包帯交換をしますが、もう少し皮膚の状態が良くなれば包帯交換の間隔を空けていく予定です。

治療を始めて1日でもう再生した皮膚組織が盛り上がってきています。

1日経過した傷
※傷口が広がったように見えるのは、壊死して機能しない部分の皮膚を取り除いたからです。

もし、ここで「消毒」のために刺激の強い消毒薬などをかけてしまうと、むき出しになった弱い細胞たちがダメージを受けてしまいます。
「洗浄」もあまり強く洗い流すと、表面の再生組織まで洗い流してしまうことになるので、必要最小限にとどめます。

傷の状態をチェックし、必要最小限の「洗浄」をすませたら、いよいよ密閉包帯です。
この時、役に立つのが「ラップ」や「三角コーナー用の穴あきビニール」です。

ラップ


傷口を密閉包帯するための素材はさまざまありますが、このように広範囲をカバーするには「ラップ」や「穴あきビニール」が実に使い勝手がよいのです。

今回は「穴あきビニール」にガーゼを組み合わせて使用します。

ハイドロジェルを塗った傷を「穴あきビニール」でカバーし、その上からガーゼをあてがって包帯します。
これならデリケートな再生組織がガーゼにくっついてしまうことを防げます。
そして、ビニールの穴を通して余分な浸出液(傷から出るジュクジュクの水分)をガーゼで吸い取ることができるのです。

こうすれば、乾きすぎることも無いし、傷口が必要以上にグチュグチュになることも防げるのです。

傷から出てくるジュクジュクを浸出液と呼ぶのですが、これは実は傷の修復には欠かせない存在なのです。
浸出液には傷の修復を助ける様々な物質が含まれていますので、完全に取り除いてはいけません。
ガーゼは傷からあふれ出てしまって「汚れ」になってしまう分を吸い取るだけです。
 
包帯


「ラップ」や「穴あきビニール」を治療に使うというとびっくりされるかもしれませんが、人の医療でも使われている方法なのですよ(床ずれの治療などで主に使われるようです)。
※ 傷口の治療法については今も様々な意見が交わされている状況ですので、医療機関によってはラップを使用する治療法を否定するところもあるようです。

さて、「細菌感染が心配」と言っておきながら「消毒」をしなくて大丈夫なのか?

もちろん「細菌感染にたいしての対策」は必要です。
この場合は飲み薬や注射薬を使います。
抗生物質を投与することで、細菌感染を治療・予防するのです。

このワンちゃんの場合は、単純な怪我による傷ではないので、この先の経過は慎重に様子を見なければなりません。
今のところ、治療に対する反応は上々なのでこのままうまくいけばいいのですが・・・

皮膚炎??
2010年05月30日 (日) | 編集 |
「ここ数日間、元気がなく様子がおかしいと思っていたら、急に皮膚が腫れて血が出てきた」という事でいらっしゃった症例。

もうすぐ5歳になるダックスの女の子です。

たしかに、皮膚を見るとところどころ分厚く・硬くなっており、そのうちの何箇所かは出血もしているようです。

特に、肩から背中にかけての皮膚は全体的に分厚く腫れており、かなり痛みもあるようです。

出血 1

よくみると血膿で毛が固まっています。
この周辺の皮膚は、かなり広い範囲で硬く腫れています。

出血 2

このままでは状況がよくわかりませんから、毛を刈って詳しく調べます。

すると・・・

出血 3

思った以上にひどい状態です。

皮膚の表面が壊死して、はがれおちてしまっています。

首の近くも2か所、穴があき始めています。

ちょっとやそっとの皮膚炎ではここまでなりません。

検査の結果と、犬種からすると「無菌性結節性脂肪織炎」が疑われますが・・・
(ダックスに多くみられる、原因不明の皮下組織の炎症。細菌感染など明らかな原因が見当たらず、免疫機能の異常が疑われています)

あまりにもひどい状態なので、もう少し慎重に調べていかなければなりません。

今現在、皮膚に感染症は起きていませんが、写真のようにグチュグチュになった皮膚は細菌が繁殖するには絶好の条件です。

写真以外にも複数の場所で皮膚の脱落が始まっていますので、もしそれらに細菌感染が起きてしまったら命に関わりかねません。

全身状態も悪く、血液検査で肝機能にも異常が認められたため、入院で集中治療することになりました。

なんの薬?
2010年05月28日 (金) | 編集 |
当院では飼い主様に「安心・納得」していただける診療を日々心がけております

その取り組みの一つが「お薬説明書」の作成です

お薬を処方した際に、どのようなお薬なのかを簡単に記載した紙をお渡しするようにしています。

薬説明書


人医療ではもはや当たり前ですが、動物病院にはまだまだ浸透していません

病院さんによっては、「どんなお薬が出ているかわからないよう」に眼薬なのどラベルをはずして処方している病院さんもあるようです。
これには私には理解できないような理由がいろいろとあるようですが・・・

私が飼い主様の立場なら、自分の大切なワンちゃん・ネコちゃんの健康にかかわるお薬ですから、どういった物が処方されているのかは知っておきたいと思うのですが・・・

少なくとも、私自身が飼い主様の立場なら、お薬の作用・副作用はしっかりと知っておきたいと思いますし、獣医師としてもきちんとご説明する責任があると思っていますので、このように説明の紙を準備しています。

このように必要最小限の情報を記載しておけば、看護師や受付のスタッフでもご説明ができますので、私が診療で手がふさがっていても問題はありません

また、このように写真入り・名前入りの紙を用意しておくことで、われわれスタッフの間でもお薬の確認が容易ですし、お薬の出し間違いも防ぐことができます。

新刊
2010年05月25日 (火) | 編集 |
楽しみにしていた本が届きました

新刊

「犬と猫の心エコー検査 自由自在」

我々獣医師は、内科外科問わずオールラウンドに(それこそ眼科・耳鼻科・歯科も含めて)診療をしなければならないのですが、それでも得意分野・興味を持っている分野というのがあります。

私の場合、特に興味を持ち診療に力を入れている分野が「循環器疾患(心臓病)」です。

循環器疾患の診断治療には「超音波検査機(エコー)を使用した心機能の評価」をおこなう技術が必要不可欠です。

ですが、獣医療に本格的に超音波検査機が普及し始めたのはここ10年のことで、特に循環器診断に使用できるような上位機種はまだまだ普及していないのが実情です。

心エコーの勉強をしようにも、しっかりとした技術(人に指導できるほどの)を持った獣医師は限られており、専門書も内容の充実したものは皆無でした。

私が以前勤務していた病院でも、専門的な心エコーの技術を持った獣医師はいませんでしたから、技術を学ぶためには外部の病院に研修に行く必要がありました。

約一年間、川崎市にある日本動物高度医療センターの循環器科で非常勤研修医として学ばせていただいたのですが、まだまだ症例数・診断経験は十分とはいえません。もっともっと勉強をしなければいけません。

「もっと心臓エコー検査の充実した内容の本出ないかな?」といつも思っていたのですが・・・

ようやく内容の充実した専門書が出版されるようになりました

しばらくはマニアックな内容で楽しめそうです

新入り
2010年05月24日 (月) | 編集 |
病院の待合室に新たなマスコットが加わりました

Tプー&ボストン

トイプードルとボストンテリアのぬいぐるみ

なんと 手縫いです

良く特徴をとらえていてかわいらしいですよね

以前私が勤務していた病院で担当させていただいたことのある患者様からいただきました

ミッキーちゃんのお母さん、お嬢様、本当にありがとうございます

この患者様のワンちゃんはもう数年前に亡くなってしまったのですが、私にとっても非常に思い入れのあるワンちゃんです。
この患者様のことについては、以前うけたインタビュー記事の中でもふれていますので、よかったらこちらを御覧ください → クリック

いまだにこうやってお気づかいいただけることがとてもうれしいです

Tプー&ボストン ?


歯磨き
2010年05月22日 (土) | 編集 |
さて、歯周病について昨日お話ししましたが、その予防にはやはり歯磨きが一番重要です

歯の表面に付着したプラーク(歯垢)は2?3日のうちに硬くざらざらした歯石に変わります。

歯石になってしまった汚れは、強固に歯に付着していますのでブラッシング程度ではなかなかとれません

大切なのは歯石になる前、ネバネバしたプラーク(歯垢)のうちにブラッシングで取り除くこと。

理想を言えば人間のように毎食後(一日2?3回)のブラッシングがおこなえれば良いのですが・・・

現実的にはなかなか難しいと思います。

ですので、最低でもプラーク(歯垢)が歯石なる前、2?3日に1度は歯磨きをおこなうことを目標にします。

大切なのは、2?3日に一度でもよいから一生続けること

歯磨き1
我が家の歯磨き風景。黒猫なのでわかりにくいですね?小さいうちから馴らせばネコちゃんでも歯磨きできます。

2?3日に一度のペースでも歯磨きしていても、少しづつ歯石は付着していきます。
ですが、初めの一週間は頑張って毎日歯磨きしていたけど、そのうち力尽きてすっかりサボってる・・・というよりはよっぽどマシです。

少しくらい歯の表面に歯石がついていても、ひどい歯周病さえ防げればよいのです。
そういった意味では2?3日に1度の歯磨きでもそこそこの効果はあるのです。

2?3日に一度より、一日おき、毎日の方が良いですが、まずは続けられるペースで頑張ることです

もちろん、谷口家の愛猫ピノも週に2?3回の歯磨きは欠かしません
さすがに毎日は続けられないのであります・・・

ところで、もうすぐ2歳になる娘が、私がピノの歯磨きするのを真似して自分のぬいぐるみの歯磨きをするのが日課になってます。

教えたわけでもないのにいつの間にかやるようになりました。

あと3?4年もすればピノの歯磨きも手伝ってくれるのでしょうか?

家族何人かで交代しながら歯磨きすれば毎日やるのも大変ではないですね?

歯磨き2

そうそう、よく「歯ブラシはどんなの使えばいいの?」とご質問を受けます。

結論としてはご自身が使い易ければ何でもです

ペット用の歯ブラシも売っていたりしますが、結構使いづらいものがあるようです。

100円ショップで売っているようなものでよいので、使いやすそうなのを選んでみてください。
小型犬やネコちゃんであれば人間の赤ちゃん用、小児用のものが使いやすいと思います。

歯磨き粉については、ペット用のものを使用するか、歯磨き粉なしでブラッシングのみでもよいと思います。

注意しなければいけないのがキシリトール入りの歯磨き粉

ワンちゃん・ネコちゃんではキシリトールで中毒を起こす可能性があります。
人間用のものは使わないほうがよいでしょう。

歯石をとってみると
2010年05月21日 (金) | 編集 |
先日、歯科処置をおこなったワンちゃんの写真です。

こちらは歯石クリーニングをおこなう前。

歯石で覆われているが・・・


臼歯(奥歯)にゴッテリと歯石が付着しています。

付着というよりは完全に表面を覆ってしまっています

口の中にはよく知られているように、正常な状態でも細菌が存在しています

この細菌がプラーク(歯垢)の形成にかかわっています。
プラーク(歯垢)というのは歯の表面の白っぽいネバネバした汚れかすのことです。

このプラークを放置すると、数日のうちに唾液の中のミネラル成分が付着して、歯石に変化します。
はじめは眼に見えないようなわずかな歯石も、徐々に蓄積されて写真のように巨大な歯石に成長していきます。
この歯石は細菌の温床となり、歯石に触れている部分の歯肉(歯ぐき)で歯周病を引き起こします

歯周病によって侵された歯肉(歯ぐき)がこちら↓

歯石をとってみると・・・


歯石を取り除いて歯石に隠れた部分の歯肉(歯ぐき)を見てみると・・・
歯周病によって歯肉(歯ぐき)が溶けてしまっています。
歯周病は歯肉(歯ぐき)だけでなく歯の周りの骨も侵していきます。

歯の根っこの部分まで歯周病に侵された歯は抜かなければなりません

歯周病の怖いところは、問題が歯だけにとどまらないところです。

歯周病に関わる細菌は血液を介して体内に侵入し、肝臓や腎臓などの重要な臓器にも悪影響を及ぼす恐れがあるのです

歯石になった汚れは歯ブラシでこすった程度は落ちませんので、全身麻酔をかけた状態で、専用の器具を使ってクリーニングする必要があります。

よく麻酔をかけない状態で、ペンチみたいなもので歯石をとったりする話をお聞きしますがこれはあまり効果がありません。

歯石で一番問題になるのは、歯と歯肉(歯ぐき)の隙間にある「歯周ポケット」に入り込んだ歯石なのです。

歯周ポケット


歯周ポケット内に入り込んだ歯石が歯肉(歯ぐき)を刺激し歯周病の進行に関わりますので、ここを取り除かなければ何の意味もありません。

歯周ポケット内の歯石をしっかりと取り除くには、やはり専用の器具で、全身麻酔下で処置しなければ困難です。

歯の表面の歯石をカリカリッととって「もう大丈夫ですよ?」というの大間違いなのであります

迷子のハスキー犬探してます
2010年05月20日 (木) | 編集 |
迷子のワンちゃんの捜索願です。

迷子 ハスキー

横浜市を中心に1年半にわたって捜索を続けていらっしゃるそうです。
青葉区での目撃情報もあるそうなので、そちらの方面にお出かけになる方はちょっとご注意いただければと思います。

ホームページに目撃情報など経過が詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみてください。

無料相談セミナー開催 5月23日(日)
2010年05月18日 (火) | 編集 |
5月23日(日)
無料相談セミナー開催いたします!


「どうぶつを飼う前に」

5月23日(
14:00?
参加ご希望の方は前日までに電話にてご予約ください!
詳しくはこちら→click


これからワンちゃん・もしくはネコちゃんを飼おうと考えていらっしゃる方、ワンちゃんやネコちゃんを飼い始めて1か月以内の方を対象としたセミナーです。

「どうぶつを飼う前に」、その動物の習性や基本的な「しつけ」の方法をしっかりと理解しておくことがワンちゃん・ネコちゃんとの幸せな生活には欠かせません。

ワンちゃん・ネコちゃんとのハッピーライフを送るために、ぜひご参加ください!



ネコの循環器疾患
2010年05月18日 (火) | 編集 |
ホームページの「診療内容ご案内」のページに「猫の循環器疾患について」という項目が追加されました。

ネコちゃんに多い肥大型心筋症についてのページです。

よかったら御覧ください→こちら

ロンちゃん ③
2010年05月17日 (月) | 編集 |
3月1日 ロンちゃん大学受診の日。

ロンちゃんを担当した先生から電話がありました。

やはり前立腺から尿道全域にわたり腫瘍が発生しており、前立腺がんの再発が疑われるとのこと。

そして、以前の(09年9月)肺転移については誤診であったということでした。
前立腺がんであることについては間違いなかったのですが、肺炎を併発していたのを肺転移と誤診してしまったようだということでした。

ただ、誤診とはいえ、これは致し方ないことだったようです。
当時のロンちゃんは衰弱と呼吸状態の悪化がひどいため、レントゲン検査以上の詳しい検査をおこなえるような状況ではなかったからです。

前立腺がんがあることと、本人の衰弱具合(ガンの末期であるため)、そして肺のレントゲン画像(肺炎と肺転移はレントゲンだけでは確実に区別できません)から考えると・・・という判断だったようです。

これはおそらく私がその担当医の先生の立場でも同じように判断したと思います。

そして、肺転移がなかったにせよ、事実ロンちゃんは前立腺がんの末期であり、あと数カ月ともたないだろうという状況だったのです。

ただ、少しでも症状を改善できればと処方したピロキシカムが想像以上に劇的な効果を示し、ロンちゃんが奇跡的にも回復したことが大学の先生の予想外だったのです。

もし本当に肺転移があればさすがにここまでは回復しなかったでしょう。

そうして飼い主様も、当時ロンちゃんを診察していたホームドクターの先生も「こんなに回復するなんて・・・本当にガンだったの?」とキツネにつままれたような思いをされていたのです。

ロンちゃん闘病記
飼い主様による闘病記録

しかし、残念なことにガンそのものは完治しておらず、一度治まったかに見えたガン細胞は再び増殖を始め、今年の初めになって痛みとして症状が現れ始めたようです。

おそらく当院に初めていらしていただいた1月8日の時点では、明らかな腫瘍として触診や超音波でわかるほどではなくても、爆発的に増殖するガン細胞によって痛みが発生していたのでしょう。

そして、わずか2か月の間に尿道全域を侵すまでになってしまったのです。

大学での手術によって尿道は確保したものの再発したガンの進行を抑える手立てはありませんでした。

その後、ガンは皮膚のあちこちにも次々に転移し始めました。
おそらく内臓にも転移していたことでしょう。

幸い痛みに関しては痛みどめの注射で、日常生活にさし障りのない程度までコントロールすることができました。

しかし、食欲はすっかり落ちてしまい、初診時に10kgあった体重は見る見るうちに減少していきました。

3月1日の大学受診以降は当院で緩和治療をおこなっていたのですが、その間何度か飼い主様と安楽死についてもお話をしました。

いつか痛み止めでも痛みを抑えきれなくなるかもしれない事、今度こそ肺転移を起こしひどい呼吸困難を起こすかもしれない事、様々な可能性を考え、あまりにも苦しみがひどい場合は安楽死という選択肢があることを・・・

その後、ロンちゃんは5月9日に亡くなるまで、2か月にわたって再発した前立腺がんとの闘病を続けました。
ガンによる痛みもなんとか痛み止めでコントロールできる範囲でとどまっており、食欲はないものの激しい吐き気や呼吸困難など耐え難い症状が見られなかったため、安楽死を選択することはありませんでした。

当初10kgあった体重は6.2kgまで減ってしまっていました。

それでも、最後までご家族に囲まれ、病院に来ればしゃきっとした顔つきで診察を受けていました。

家ではぐったりしていても病院に来ると本人も「人前じゃしっかりしなきゃ」と思うのか顔つきがシャキッとするようでした。

とても生命力が強く、気力の強いワンちゃんでした。
ガンのせいで食欲もなく、体力も失っているだろうに、きりっとした顔で診察を受けるロンちゃんを見る度に、「なんて生命力のつよい子なんだろう」と驚かされました。

最後はご家族にみとられ、ひどく苦しむこともなく安らかに天に召されたということでした。

近年、獣医療の発達と、飼い主様の治療に対する積極性が変化してきたことから、ワンちゃん・ネコちゃんの平均寿命も伸び、死因も人間のようにガンや心臓病が一般的になってきました。

これから先も、末期ガンの終末期医療というデリケートな症例はますます増えてくるでしょう。

治しようのないガンという病気と過ごす最後の数カ月・・・
確実に進む病魔と向き合い、様々な症状をいかにコントロールし、生活の質を維持するか・・・
非常に難しい分野です。

また、我々獣医師には的確な診断・治療の能力だけではなく、ガンに苦しむ愛犬・愛猫を目の前にして、苦しみ悩む飼い主様のお気持ちをケアするコミュニケーション能力も重要になってくるでしょう。

私はいつも末期ガンの症例を見る度に、自分にどこまで飼い主様のお気持ちのケアができているのだろうか?と獣医師としてではなく、一人の人間としてのコミュニケーション能力の重要性を再認識するのです。

そしてこればっかりは教科書通りにはいきませんし、正解は無いのです。
お一人お一人の飼い主様とその都度、誠心誠意向き合っていくしかないのでしょう・・・

最後に、貴重なロンちゃんの闘病記録をご提供くださった飼い主様にお礼を申し上げるとともに、ロンちゃんのご冥福を改めてお祈り申し上げます・・・

ロンちゃん ②
2010年05月15日 (土) | 編集 |
ロンちゃんの状況が変化してきたのは、初めてのご来院から2週間ほどたった1月24日でした。

おしっこが出なくなったということで来院されたのです。

排尿異常

矢印で囲った部分がパンパンにおしっこがたまった膀胱です。
実はこのときの様子を以前のブログでも取り上げています。

当時のブログでも記載しているように、この時点では神経的な問題による排尿困難と考え(腰の神経障害の症状の一つとして排尿困難があり得るため)、排尿に関わる神経・筋肉を調節するお薬を投与して経過を見ることにしました。

ある程度の改善は見られたものの、尿の出方は完全には回復せず、腰周辺・お尻周りの痛みもどうもうまくコントロールできませんでした。
なんとなくこのあたりから嫌な予感がしてきました。
どうも症状の進行や治療に対する反応が予測通りにいきません。


2月16日には再び原因不明の排尿不全が再発。
やはり単純な椎間板ヘルニアなどによる神経障害ではなさそうです。
この時点で、さらなる精密検査の必要性を感じ、飼い主様に大学病院での精密検査についてお考えいただくようにお話をしました。

そんな中、2月21日の再診時にようやく排尿困難の原因が見つかりました。
超音波で膀胱の状態を確認しようとしたところ、ペニス周囲で尿道を囲むように腫瘤が発生しているのが見つかったのです。

尿道周辺の腫瘍
黒い部分が尿道周囲の腫瘤。右側は腫瘤内の血流を示す。

どうやらこの腫瘤が尿道を圧迫するため、排尿困難が発症するようです。

ではこの腫瘤の正体は何なのか?

考えられるのは何かしらの炎症による腫れ、もしくは腫瘍です。
腫瘍だとすれば以前の前立腺がんの再発かもしれません。

腫瘤の内部の細胞を採取し顕微鏡で検査したところ、明らかな腫瘍細胞は観察されず、一般的な炎症細胞のみが観察されました。

実は今回のような排尿異常は以前の「前立腺がん」での闘病中にも見られたそうです。

その当時、ロンちゃんは「ピロキシカム」という消炎・鎮痛剤を服用していたそうです。
この「ピロキシカム」というお薬は、消炎・鎮痛剤であるにもかかわらず、前立腺がんなど一部のガンに対して抗ガン作用を示すことが知られており、そのため服用していたようです。

当時の飼い主様の記録によると、ピロキシカム投与後から排尿状態や食欲などの様子が改善したという事でした。

前回が本当に前立腺がんだったかどうかはともかく、排尿困難という現在(2月21日)と同じような症状が観察され、ピロキシカムという消炎・鎮痛剤で改善がみられたことから、当時(09年9月頃)も尿道に今と同じような炎症や腫れが起きていて、それがピロキシカムの消炎作用で改善したのではないかと考えました。

そこでピロキシカムを再び投与し、それで改善するか様子を見ることにしたのです。
炎症を抑えるためと、もし本当に前立腺がんの再発だったとしても「ピロキシカム」の抗ガン作用が再び効果を発揮してくれることを期待して・・・

ですが今回はピロキシカムの効き目も十分ではなかったようです。
一般的に再発したガンには以前と同じ薬は効果が出にくいのです。

ペニス周辺の腫瘤はわずか数日のうちに尿道全域に広がり、2月27日には尿道は完全にふさがってしまい、直径2mm程度の尿道カテーテルを膀胱まで挿入することすらできなくなってしまいました。

信じがたいことでしたが、やはり一度ロンちゃんは前立腺がんから奇跡的に生還し、残念なことにその前立腺がんが再発、爆発的に進行しているようでした。

もはや尿は膀胱に直接針を刺して抜かなければならない状態でした。

尿の排泄のためには外科的に尿道の確保をおこなう必要があることと、これ以上の治療にはもう一度以前と同じ大学の担当医に、以前の詳しい状況と照らし合わせたうえで精密検査をおこなっていただく必要があることを飼い主様にお話しし、急きょ大学病院を受診していただくことになりました。

そして、「以前に前立腺がんと肺転移があったということだけど、実際のところどうだったの?」というニュアンスを行間に込めつつ紹介状をしたためたのでした・・・

つづく・・・



ロンちゃん ①
2010年05月14日 (金) | 編集 |
先日、長く通院中だったワンちゃんが亡くなりました。

ロンちゃんという、ビーグル犬でまだ10歳の男の子でした。

前立腺がんの全身転移による衰弱死でした・・・

ロンちゃんが当院にはじめていらっしゃったのは今年の1月8日でした。
その時は、お尻の周りを触ろうとすると痛がるが原因が分からないとのことで来院されました。
また、おしっこをタラタラと漏らすことがあるというのも気になさっていました。

そもそもロンちゃんが前立腺がんを患ったのは昨年の9月頃だったそうです。

別の動物病院さんで診察を受け、大学病院でも精密検査を受けたそうです。

当時はかなり衰弱し、大学でも肺および肝臓への転移の疑いがあるといわれ、積極的な治療はおこなわず、緩和療法をおこなっていたそうです。

飼い主様も一度は別れを覚悟するくらいの状態だったそうです。

ですが、その後奇跡的に回復し、当院にいらっしゃった時にはまったくガンを患っていた様子など感じられず、私も本当にガンだったの?と疑ってしまいました。

通常、肺転移をおこすような前立腺がんから緩和治療のみで回復するなど考えれられないことです。

ですので、失礼ながら飼い主様と大学の間で話がうまくかみ合わずに、どこかで診断についての話が食い違ってるのかな?と思っていました。

そのくらい奇跡的な回復だったのです。

1月8日の診察ではお尻周りの痛みと尿漏れが主訴でしたので、特に腰・お尻周りの状態に注意して診察させていただきました。

結果、腰骨付近を圧迫すると痛がるような様子が観察されましたので、「椎間板ヘルニアによる腰の痛み」と仮診断し、詳しく検査するためにレントゲン撮影をご提案しました。

同時に、もし本当に前立腺がんが過去にあったのなら、その再発による前立腺周囲の痛みという可能性も考えなければいけません。
前立腺は膀胱の付け根にあるので、痛みがある場合はお尻や腰の痛みと区別がつきにくいのです。

そこで、前立腺および腹部内臓器の超音波検査、胸のレントゲン撮影(本当に転移があったの? 本当に治ったの?という事の確認)をさせていただくことになりました。

前立腺
前立腺の超音波画像

結果、肺のレントゲンには全く異常は認められず、前立腺はもとより、肝臓や腎臓など腹部内臓器にも全く異常は認められませんでした。

本当に前立腺がんと肺転移・肝臓転移があったのなら、奇跡が起こったとしか考えられません。


飼い主様には「過去に何があったかは私には正確に知る術はないですが、少なくとも現在は前立腺がんや肺転移の様子は観察されない」とお話しし、可能であれば当時の大学の担当医の先生に当時の状況を確認していただくようにお話ししました。

そして、お尻周りを痛がることについては、ビーグルという犬種と年齢からすると椎間板ヘルニアなどによる腰部の神経痛が疑われることをお話し、痛み止めと神経保護のためのビタミン剤を投与して経過観察することにしたのです。

また、おしっこについては尿検査で尿石が認められたため、尿石による膀胱炎の可能性を考え、そちらの治療をおこなうこととしました。

・・・で初めの1週間ほどは痛みの様子も改善し治療がうまく進んでいるようでしたが・・・

実はこの後からロンちゃんの壮絶な闘病が始まるのです・・・つづく

口内炎
2010年05月13日 (木) | 編集 |
避妊手術の術前検査にいらしていただいたネコちゃん。
まだ1歳になったばっかりですが、ひどい口内炎が見つかりました

口内炎

写真ではわかりづらいですが、歯ぐきが赤く腫れ、よだれと膿で口の周りが汚れています。

飼い主様も口臭がひどいのは気になっていたそうです。

ネコちゃんで口内炎に遭遇することは多いのですが、今回のようにまだ若いネコちゃんの場合はウィルス感染による口内炎がほとんどです。

このネコちゃんの母猫はもともと野良猫だったそうです。

おそらくその母猫がウィルスを持ち込み、それが感染したのでしょう。

実はこのネコちゃんの飼い主様は、全部で7頭のネコちゃんの面倒を見ていらっしゃいます。

どの子も元野良猫の母ネコちゃんから生まれた子たちで、他の子も何頭か口臭が気になっているそうなので、おそらく兄弟同士でウィルスが蔓延しているようです

ウィルス性の口内炎の場合は治療に抗ウィルス剤の注射を使うのですが、一回数千円と高価な注射を3?4回注射するので費用的に大変なのです

飼い主様に治療にかかる費用と、他のネコちゃんにも感染している可能性をお話しすると、

「一度面倒見たからには仕方ないね?

と苦笑いされていました

野良猫を拾ってくるのは簡単なことですが、このように拾ったら妊娠していて次々に子猫が生まれたり、拾ってみたらウィルス性の病気を持っていて、その後の治療に思わぬ費用がかかったりと結構大変なことも多いのです。

「毒を食らわば皿まで」じゃないですが、「何があっても最後まで責任もって面倒みるぞ」という覚悟がなければ、安易に野良猫を保護したり、餌をあげて面倒を見ないほうがよいかもしれません。

お腹の中の腫瘍
2010年05月11日 (火) | 編集 |
先日は肝臓腫瘍から腹水がたまったであろう症例のお話をしましたが、ワンちゃんにしてもネコちゃんにしても高齢になるとお腹の中にガン(腫瘍)ができる症例というのは結構多いものです。

お腹の中のガン(腫瘍)をどうやって見つけるかというと、まず基本は触診です。

お腹の中には肝臓・膵臓・腎臓・副腎・脾臓・胃・腸・膀胱・子宮(女の子のみ)などがあるわけですが、腹部全体を丁寧に触診し、それぞれが正常な位置にあるのか? 正常な大きさ・硬さなのか? を診断していきます。

もし異常な「しこり」や「かたまり」を見つけた場合は、そのほかの正常な臓器との位置関係から、大まかにどの臓器に異常があるのかを判断します。

たとえば、脾臓(ひぞう)という臓器は正常では柔らかく触っても明らかな感触がないのですが、腫瘍化すると硬く触るようになります。
つまり、脾臓があるべき位置を触診して、そこに何か固いものが触れば脾臓が腫瘍化している可能性が高いということになるのです。

触診で大体の状態を把握してからレントゲンや超音波検査でさらに詳しく調べていきます。

脾臓腫瘍
こちらは脾臓の腫瘍。
脾臓というのは本来は平べったい形をした臓器なのですが、かなり大きく腫瘍化しています。
正常な脾臓とはかなりかけ離れた構造になってしまっていますが、腫瘍の下に映っている腎臓との位置関係からこれが脾臓であるということがわかります。

脾臓と腎臓
こちらは正常な脾臓と腎臓の超音波画像です。
上の画像と比べると脾臓が平べったい構造をしているのがお分かりいただけると思います。

このようにして、どの臓器が腫瘍化しているかはっきりしたら、今度は他の臓器に転移がないかを詳しく調べます。

腫瘍には様々な種類がありますが、脾臓にできる腫瘍では「血管肉腫」という種類のガンが多いとされています。

「血管肉腫」は心臓に転移することがあるため、お腹の中だけではなく心臓も詳しく調べる必要があります。

心臓転移

調べてみるとやはりありました。
右心房の隣に直径15mmほどの腫瘍です。

脾臓の状態、心臓への転移の様子からすると高い確率で「血管肉腫」であると考えられます。
※腫瘍の種類を確実に診断するには組織検査といって、腫瘍そのものを切り取って調べる必要があります。

このように、触診と超音波を組み合わせればかなり詳しいところまで調べることができます。

ただし、それには正常な臓器の構造や位置関係がしっかりと頭の中に入っていなければなりませんし、超音波で正確な画像が出せるかどうかは、検査をおこなう人間の技術と経験に関わってきますので簡単なことではありません。

常日頃から丁寧な身体検査、超音波検査を心がけて、常に技術を磨く努力を怠らないようにしなければならないのです。

ねこ展
2010年05月10日 (月) | 編集 |
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ねこ展というのが開催されるそうです
5月29日(土)30日(日)の二日間。

ねこちゃんをテーマにしたアート展で、当院の患者様でもあるネコの首輪<Rin-Rin-Ring>のオーナーさんも出展されるそうです

病院待合室に案内ハガキがございます。ネコの首輪<Rin-Rin-Ring>さんのご紹介カードも置いてありますので、ご自由にお持ちください

ねこ展ブログはこちら → CLICK

腹水除去
2010年05月08日 (土) | 編集 |
腹水を抜いている様子です。

腹水除去

腹水というのは読んで字のごとし、お腹にたまる水です。

腹水がたまる原因は、心臓病・肝臓病・腹腔内腫瘍など様々です。

この症例は肝臓にできた腫瘍(おそらく悪性)が原因で腹水がたまっていました。

お腹に太い針を刺して、そこから腹水を抜きます。

合計で1リットルも抜けました。

回虫
2010年05月07日 (金) | 編集 |
入院していたネコちゃんの吐物に含まれていたものです。

回虫

回虫というお腹の中の寄生虫です。
野良ネコちゃんや、外に出かけるネコちゃんに多くみられる寄生虫です。

回虫は、糞便に排泄された虫卵を摂食して感染する場合と、すでに感染している母ネコから胎盤やお乳を介して感染するパターンがあります。

体内に取り込まれた虫卵は、ネコちゃんの体内でふ化した後、肝臓や肺組織内で成長し、一定の段階にまで成長すると、気管から喉、胃、腸へと到達して、最終的に腸に住み着きます。

この時、喉から胃へと侵入する際にネコちゃんが虫を吐き出すことがあります。

そうすると今回のように、吐物に虫が出てくるのです。

この回虫は人間に感染することがあります。

感染した回虫が、ごく稀に人間の肝臓や眼、脳に迷い込み障害を起こすことがあります。
公園の砂場にネコちゃんがウンチをすることが問題になったりしますが、その問題の一つがこの回虫感染なのです。

もともと野良ネコちゃんだったり、頻繁に外へ出かけるようなネコちゃんでは定期的に検便をおこなっておくことが大切です。

もちろん、ネコちゃんだけでなくワンちゃんにも回虫は感染しますので、ワンちゃんでも定期的な検便は重要です。



供血犬
2010年05月06日 (木) | 編集 |
先日狂犬病のワクチン接種にいらしていただいたビビちゃん

ビビちゃん1

カルテをみるとビーグル×ラブラドール×セッターのミックス犬となっています。

ずいぶん珍しい組み合わせだな?と思いながら身体検査をしていると・・・

刺青

耳に刺青を発見

飼い主様に詳しくお話を伺うと、ビビちゃんもともとは獣医大学の付属動物病院で「供血犬」として飼育されていたそうです

「供血犬」というのは輸血のための血液を確保するために飼育されているワンちゃんのことです。

人間医療のように献血 → 輸血というシステムのない動物医療では、各病院が輸血用の血液を独自に確保する必要があります。

そのため、ある程度の規模を有する病院では、輸血時の血液確保のために「供血犬」「供血猫」という名目でワンちゃん・ネコちゃんを飼育する事があります。

輸血のために動物を飼育するというと、抵抗を感じる方もいらっしゃるかとは思いますが、そうしなければ治療のための血液を確保することができないのが現状です。

大学病院のように、輸血を必要とする高度な手術、治療を頻繁に行う施設では「供血犬」は必要不可欠なのです。

「供血犬」はある程度の年齢に達するとビビちゃんのように一般家庭に引き取られいくそうです。


ところでビビちゃん、ビーグル×ラブラドール×セッターという組み合わせにはきちんと理由があるそうです。

その理由とは「採血」のしやすさ。
輸血のための採血は首の静脈から行うのですが、性格の穏やかさ、血管の太さや、血管の見やすさなど採血の行いやすさを追求した結果の組み合わせだそうです。

確かに、ビビちゃん診察台の上でも非常におとなしく、人懐っこいワンちゃんでした

輸血のために飼育されていたというと「かわいそう」というイメージがあるかもしれませんが、少なくともビビちゃんは「供血犬」時代もたっぷりと愛情を受けて育ててもらっていたように感じました。

というのも、診察台にのせてもまったく緊張することもなく、非常に穏やかで、ワクチン注射の時も極めて平然としていたからです。

これは、「供血犬」時代、採血する時など常に研修医さんや学生さんから愛情をもって接してもらっていたからなんだろうな?と思うのです。

愛情も受けず、ただ採血のためだけに飼育されていたのでは、こんなに人懐っこく、診察台で落ち着いてふるまえるワンちゃんには育ちませんものね

糖尿病 4
2010年05月03日 (月) | 編集 |
糖尿病についても今回が最後です。

さて、糖尿病の治療ですが、人間と同じようにインスリンの注射が必要になります。

本来は膵臓から分泌されるはずのインスリンが不足していますので、それを体外から注射で補ってあげるわけです

ネコちゃんの一生を通じて、自宅で飼い主様が毎日行わなければなりません。
これはなかなか大変なことです。

家族で出かけるにも、常にインスリン注射を行う時間を気にかけてなければいけません。
私の以前の勤務先の看護師さんで、飼いネコちゃんが糖尿病でインスリン治療を行っていた方がいましたが、職場の皆で飲み会をやるにも常にネコちゃんのインスリンの時間を気にかけながらの参加でした。

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そして、もうひとつ重要になるのが適切な食事管理です

以前お話ししたように、ネコちゃんの糖尿病の発症には肥満による「インスリン抵抗性」が大きくかかわっています。

適切な食事管理・体重管理を行うことで、「インスリン抵抗性」の状態を改善してあげることが一番重要になります。

いくらインスリンを注射しても、「インスリン抵抗性」の状態では十分な治療効果は望めないのです

初期の糖尿病であれば肥満を改善し、適切な食事管理を行えば、インスリン治療を行わなくても済む場合があります。

「インスリン抵抗性」によって相対的に不足していたインスリンの分泌が改善するためです。

適切な食事・体重管理は糖尿病の予防にも治療にも大変重要なのです

皆様も普段からご注意くださいね