町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
糖尿病 3
2010年04月30日 (金) | 編集 |
さて、糖尿病の症状、治療についてですが・・・

インスリンが不足することで、細胞内に糖分(エネルギー)を取り込めないというお話を思い出していただいて・・・

まず、いきなりインスリンが0になるわけではありません。
少しづつインスリンの分泌量が減っていきますので、それに合わせて細胞への糖分(エネルギー)取り込みも少しづつ不足します

100430


ですので、糖尿病の初期は明らかな体調不良などは示しません。
逆に、初期は食欲が増すこともあります

ただ、細胞への糖分(エネルギー)が不足している状態ですから、徐々に体は痩せていきます。
そして、高血糖の影響により、尿量・飲水量が増えてきます。

大半の糖尿病のネコちゃんが高齢になってから発症しますので、「なんとなく痩せてきたけど、食欲もあるし大丈夫かな?」 「痩せてきたのも年だからしょうがないかな?」と見過ごされがちです

というか、「元気で食欲もあるのに痩せてくる」のは明らかに異常なのですが・・・(意図して減量していたりするなら別ですが)

インスリンが不足し、糖分(エネルギー)を十分に利用できなくなると、体は脂肪を分解してそこからエネルギーをしぼりだそうとします。

つまり、自分の体を「食っている」のです。そうでもしなければ生きていけないくらいの命の瀬戸際なのです

ただ、脂肪を分解するとエネルギーの他に、「ケトン体」という副産物が産生されてしまいます。

糖尿病が本格的に進行し、脂肪の分解が進むと「ケトン体」が体に蓄積します。
「ケトン体」が蓄積すると、体の水分・電解質(ナトリウムやカリウムなど)のバランスが乱れ、最終的には死に至ります(この合併症をケトアシドーシスといいます)。

「ケトアシドーシス」になると数日のうちに脱水症状が進行し、意識がもうろうとしてきます。当然、ご飯も食べれません。

大抵の飼い主様がこの状況になって初めて病院にいらっしゃいます。
「あと1?2日遅かったら助かりませんでしたよ」というような状況がほとんどです。

大抵の糖尿病は、発症してから(血液検査などで異常がわかるレベルになってから)「ケトアシドーシス」で命が危うくなるまでには、数カ月から半年程度の時間があります。

本当ならば十分に治療開始まで猶予がある病気なのです。
その何カ月かの間にちょっと体重の減り方や、飲水・尿量にご注意いただいたり、もしくは年に1?2回の健康診断(血液検査や尿検査を含む)を受けていただいていれば、十分に早期発見・早期治療できる病気なのです。

どうぞ皆さん「年のせいかしら・・・?」で片付けず、気になることがあったらまずはご相談いただきたいと思います。

といったところで、やはり長くなってしまいました。
治療についてはまた後日なのです・・・

糖尿病 2
2010年04月29日 (木) | 編集 |
なぜ、糖尿病になるのか・・・?

ネコちゃんで一般的なのは肥満が一つの悪化要因になって発生する糖尿病です。

「インスリン抵抗性」という言葉がキーワードになります

血液中のエネルギー(糖分)を細胞に取り込むのにインスリンの働きが重要だということは前回お話ししましたが、「インスリン抵抗性」というのは、このインスリンの働きが鈍くなる現象(=血糖値が下がりにくい)のことをいいます。

肥満、ホルモンバランスの異常、発情、ストレスなど「インスリン抵抗性」を引き起こす要因は様々です。

P1010076 (3)

ただ、中でも多いのが肥満による「インスリン抵抗性」ではないでしょうか

太っているネコちゃんは慢性的に「インスリン抵抗性」の状態になってしまいます。
そうすると細胞内へのエネルギー取り込みが上手くいかない(=血糖値が下がりにくい)ため、通常よりも多くインスリンを分泌する必要が出てきます。
※インスリンは膵臓(すいぞう)という内臓器官から分泌されています。

この状態が長く続くと、膵臓に負担がかかり、インスリンを分泌する働きが低下していきます。
つまり、通常より多くインスリンを分泌しすぎたことで、インスリンが売り切れてしまった状態です。

これによって糖尿病が発症します。

太っているネコちゃんは要注意なのです。
「ぽっちゃりしてかわいい?」なんて思っていると、体の中では今にもインスリンが売り切れになる直前かもしれません

次は糖尿病の症状と治療についてなのです。
ネコちゃんにとって糖尿病は重要な病気なのでもうしばらくお付き合いくださいませ。

猫の糖尿病 1
2010年04月27日 (火) | 編集 |
先日少し取り上げた糖尿病の続きです。

ようやく入院中のネコちゃんの状態も落ち着いて一安心というところ

現在は自宅での管理に切り替えるためにインスリンの投与量を探っているところです

血糖値曲線

こんな風に、一日の血糖値の変動を確認しながらインスリンの量を検討します。

血糖値は下げすぎてもダメなので、大事な作業になります

手元の資料によると、ネコちゃんはワンちゃんの倍くらい糖尿病になりやすいということです

実際に診療していてもそう感じます。

糖尿病というと血糖値が高くなり、尿に糖分が排泄される病気と理解されている方がほとんどだと思います。

実は、糖尿病で重要なのは血糖値が上がることや尿糖が出ることではありません。

大切なのは血糖値が「下げられない」事なのです

そもそも血糖値とは何か

簡単に説明すると、「血液中に含まれるエネルギー源(糖分)の値」です。

我々の体はエネルギー(糖分)を血液という輸送経路を通じて全身の細胞へ運んでいるのです

糖分の取り込み

このとき、血液中から糖分(エネルギー)を細胞に取り込むためには「インスリン」の働きが必要になります。

「インスリン」というのは膵臓(すいぞう)という臓器から分泌されるホルモンで、このホルモンの働きによってエネルギーは細胞に取り込まれます。

糖尿病というのは、何らかの原因によりこの「インスリン」が不足してしまい、そのために糖分(エネルギー)を細胞に取り込めなくなってしまう病気なのです。

インスリンの不足

細胞に糖分(エネルギー)を取り込めないことで、血液中には糖分(エネルギー)が余ってしまいます(血糖値が下がらない)。
そして、余剰分の糖分(エネルギー)は尿へと排泄されてしまいます。

何よりも問題なのは、糖分(エネルギー)を取り込めない細胞は、血液中に糖分(エネルギー)が有り余っているのにもかかわらず、栄養不足に陥ってしまうのです。

ですので、糖尿病治療で本当に重要なのは、「血糖値を下げること」ではなく、「細胞の中にエネルギーを取り込むこと」なのです。

「細胞にエネルギーを取り込めたかどうか」を知るための指標として「血糖値」の増減を見ているということになるのです。 

注)白内障などの合併症には血糖値そのものが関わっているので、血糖値がどうでもいいわけではないですよ

といったところで、次回は「なんで糖尿病になるのか?」について取り上げてみようと思います。

たべられる?!
2010年04月26日 (月) | 編集 |
大変!! 村田さんがワニに襲われてる?

たべられる?

なわけはありません

村田さんと新津さんと二人で上野の国立科学博物館で開催中の「大哺乳類展」にいってきたそうです。

大哺乳類展

なんで、「大哺乳類展」かというと、病院に割引券があるのです

ずいぶん楽しんできたみたいです

コビトカバ
コビトカバ

受付に割引券が置いてありますので、よかったら皆さまもどうぞ

割引券だけ取りに来ていただくのもです

インスリン
2010年04月24日 (土) | 編集 |
ランタス

こちらはインスリンの注射薬です。
ネコちゃんの糖尿病治療に必要なお薬です。

これは人間の糖尿病患者さんが使うのと同じものです。
ですので、これは本来、ペン型の専用注射器に組み込んで使用するものです。

人間用に作られたものなので、ネコちゃんにそのまま使うには量が多すぎますので、専用注射器は使用せず、中身の注射薬部分のみを取り寄せて使用します。

インスリンに限らず、我々が獣医療で使用する薬剤のほとんどが人間用です。
動物専用薬もあるのですが、ごく一部です。

ですので、どのお薬もワンちゃん・ネコちゃんに使用するには一錠もしくは一本当たりの量が多すぎたりして、なかなか使用に苦労が伴います。

また、人間用のお薬で、古くなってあまり売れなくなった物などは製造が終了してしまいます。
そうすると我々が使い慣れて、データを蓄積してきたお薬が使えなくなってしまうのです。

いくら人間用に新しく良いお薬が出ていても、それはワンちゃん・ネコちゃんように作られたわけではないので、もう一度手探りでデータを蓄積して使用していかなければなりません。

このインスリンにしても、数年前に使い慣れていたものが製造中止になってしまい、獣医業界全体が大慌てで新しいタイプのインスリンに切り替えたという経緯があります。

インスリンというのは注射量が多すぎても少なすぎてもいけません。
そのワンちゃん・ネコちゃんにとって適切な量というのは一頭一頭違います。

新しインスリンになってしまうと、一から適正量を探さなければならないので、せっかく古いタイプのインスリンで症状が落ち着いてた子も、その時はもう一度検査を繰り返して適正量を探さなければならない羽目になってしまいました。

ところで、なぜインスリンの話題かというと、ちょうど今入院しているネコちゃんが糖尿病なのです。

糖尿病はネコちゃんにとってとても重要な病気になります。
ちょと時間がとれるようになったら、一度詳しく取り上げたいと思います。

なんせ、今は入院中のネコちゃんの血糖値管理につきっきりでちょっと時間がなさそうです。




ウンチにゴマ??
2010年04月23日 (金) | 編集 |
顕微鏡の上にのっているもの・・・

ゴマ粒みたいなのが二つ。

ゴマ粒??

これは「条虫」というお腹の寄生虫の体の一部です

条虫卵

「片節」といいます。
この「片節」がたくさん連なって一匹の虫を形作ります。

「片節」の中には寄生虫の卵がたくさん詰まっています
条虫というのは卵を一個一個産むのではなくて、体の一部である「片節」の中に卵を詰め込んだまま切り離します。

切り離された「片節」は宿主であるワンちゃん・もしくはネコちゃんのウンチと一緒に排泄されます

一見するとゴマ粒や米粒がウンチにくっついているように見えますので、こういう寄生虫がいるんだってことを知っていればすぐにわかります

または、ワンちゃん・ネコちゃんのお尻に干からびた「片節」がくっついているのでわかることもあります。
あたかも、ゴマ粒の干からびたのがお尻の周りにくっついているように見えます。

抜けちゃった
2010年04月21日 (水) | 編集 |
今日は休診日ですが、新津さんと二人休日出勤です

歯科治療準備1

歯周病治療の手術のためです。

かなりひどい歯周病で、あごの骨を削ったり、歯ぐきの外科処置も必要になるので、通常の診療日に行うのは時間的に厳しいため、休診日の手術となりました。

歯科治療準備2

ところで、このワンちゃん、数日前にオヤツを食べていて歯が抜けてしまったそうです

抜けちゃった

今回手術するなかで、一番ひどい部分だったのですが(事前の診察ですでに根っこがむき出しになってぐらついていました)、ついに抜けてしまったようです

根っこまできれいに抜けているので問題はありませんが、抜けた跡の歯肉をクリーニングしなければなりません。

みての通り根っこまで真っ黒に汚れているので、この周辺の歯ぐきもかなり痛んでいるはずです

歯ぐきの傷んだ部分は除去して、きれいな部分を残して穴をふさいであげます。

この歯以外にもひどい歯がたくさんです

いまから新津さんとカレー(近所のココイチでテイクアウトです)を食べて、気合い入れてガンバリます


フィラリア予防
2010年04月19日 (月) | 編集 |
当院では6月末?11月末までの6ヶ月間のフィラリア予防をお勧めしています。

ダイレクトメール

お知らせのダイレクトメールを準備中

ダイレクトメール準備

4月末から5月半ばにかけて皆さまのお宅に届くはずです

フィラリア予防薬を投与するには事前の血液検査が必要です
フィラリアについて詳しくはこちら → click

フィラリアの血液検査の際に、健康診断として一般的な血液検査を同時に受けていただくと、採血料500円をサービスさせていただいています

この機会に、愛犬の健康管理にお役立てくださいませ

なお、一般血液検査をご希望の方は朝食は抜いて(12時間の絶食)いらしてください

くわしくは、電話にてお問い合わせくださいませ

これはいったい・・・?
2010年04月17日 (土) | 編集 |
まさか4月の半ばになって雪が積もるとは・・・

自宅のマンションから駐車場まで20メートルほど歩くのですが、その途中に止まっていた車です。

これは?

フロントガラスに積もった雪がなんだか変な形になってます。

横から見ると・・・

これは? ?

横から見ると葉巻みたい

薄く積もった雪が少しづつずり落ちた結果こうなったのでしょうが・・・
なんとも不思議な現象です。

昨日は急に体調を崩したワンちゃんの来院が続きました

ここ数日の急激な寒暖の変化はやはり負担になっているようです。

飼い主様も、ワンちゃん・ネコちゃんもお気をつけくださいませ

たんこぶ??
2010年04月16日 (金) | 編集 |
まだ1歳にならないミニチュアダックスちゃん。

しばらく前から「ちょっと風邪気味」とのことで通院していただいています。

お薬を飲んで1週間。
再診に来ていただくと、風邪のような症状は改善してきて経過は良好・・・だったのですが・・・

なんだか頭に違和感が・・・

たんこぶ?

後頭部がプックリ膨らんでます
ちなみに写真は二度目の診察時の様子です。初めはもう少し小さかったです。

飼い主様も気づいてらっしゃらなかったので皆ビックリです

触ってみるとぶよぶよと柔らかく、痛みはないようです。

今までも何度かお話してきましたが、デキモノが見つかったら針生検です。

漿液

針を刺してみると、赤く血液の混じった体液が採取されました。
液体が抜けた後には、少し筋張って硬い部分が皮膚の下に残っていました。

液体を顕微鏡で調べてみると・・・

針生検

御覧のような細胞が採取されました。
血液細胞の一種でマクロファージと呼ばれる細胞と思われます。

マクロファージは、体に炎症が起こった時に、病原体や死滅した細胞を処理する働きを持っています。

マクロファージがいるということは、そこに炎症があるということ。
炎症があるということは、そこに何らかの刺激が加わった(細菌が侵入したとか、怪我をしたとか)ということです。

ですが、どうも細菌の感染や、外傷の様子はありません。

こんな時に疑われるのが、「無菌性結節性脂肪織炎」です。

原因不明の脂肪組織の炎症で、何らかの免疫反応が関わっていると考えられていますが、詳しいことはいまだわかっていません。

突然、皮膚の下にしこりができて、進行すればそこから膿が出てきたりします。
針生検をおこなうと、細菌など炎症を起こす原因は見つからないにもかかわらず、マクロファージなどの炎症にかかわる細胞が検出されるのが特徴です。

ミニチュアダックスにみられることが多く、私が今まで経験した症例もすべてミニチュアダックスでした。
でも、こんな後頭部にできるのは初めてですが・・・

治療は免疫反応を抑制し、炎症を抑えるためにステロイド剤というお薬を投与します。
それでうまくいかない場合は手術で切除することもあります。

このワンちゃんは現在のところステロイド剤で経過観察です。
上手くおさまってくれれば良いのですが・・・

腎臓の血流
2010年04月15日 (木) | 編集 |
腎臓の機能低下を疑い、定期健診をしているネコちゃんの超音波像です。

腎臓の血流?
左右ともに同じ画像ですが、右は腎臓に流れる血液をカラードプラという方法で映像化しています。
なんとなく楕円形をした腎臓の形がお分かりいただけますでしょうか?

次は正常なネコちゃん。

腎臓の血流?
同じような画像ですが、先ほどのネコちゃんに比べるとカラーの部分が多いのがわかります。

カラーの部分が多いということは腎臓への血流が豊富であるということ。
逆にカラーの部分が少ないのは腎臓への血流が低下しているということです。

腎臓への血流が低下しているということは、腎臓の機能が低下している可能性があります。


高齢期のネコちゃんには腎臓病が非常に多いのですが、腎臓病というのはある程度進行しなければ目立った症状が出てきません。

そのため、飼い主様が異変に気づいて病院にいらしたときにはすでに致命的であることも少なくありません。
ある程度(5歳以上が理想)の年齢になったら、年に1?2回くらいは血液検査・尿検査・超音波検査などを組み合わせてチェックを入れておくことが肝心です。

腎臓というのは、血液きれいにするろ過フィルターとしての役割を持っています。

血液中に含まれた老廃物をフィルターを通して外部に排泄(尿として)するのが主な役割です。

この腎臓のフィルターは尿細管や糸球体という細かな尿管と血管との集合体からなっています。
これらの構造は、様々な原因で目詰まりをおこしていきます。

浄水器のフィルターが徐々に汚れていくのと同じです。

そして、フィルターの目詰まりがある程度進行すると、血液中の老廃物を除去することができなくなり、症状があらわれてきます。

この明らかな症状が現れるのは、フィルターの3/4が目詰まりした頃だといわれています。
逆に言うと、フィルターの機能が1/4になるまで明らかな症状が出ないということです。
ちなみに症状としては「水を多く飲む・尿が多くなる」といった兆候から始まり、徐々にやせ衰えて元気食欲も無くなっていきます。

浄水器ならフィルターの交換サインが出たということで、フィルターをとりかえれば済むのですが、生き物の体はそうはいきません。

機能の低下した腎臓を保護しながら、うまく病気と付き合っていくしかありません。
そして、最終的には腎不全という形で命を失ってしまいます。

上記のネコちゃんは、現在のところ血液検査などでは異常はありません。
以前にたまたま腹部超音波検査をおこなう機会があったのですが、その時に腎臓の血流低下が認められたため、6か月ごとに定期健診を受けていただいています。

TENDER LOVING CARE
2010年04月13日 (火) | 編集 |
昨日は掃除を例に当院の仕事(診療)に対する心構えについてお話ししましたが、今日はそういった我々の「診療に対する心構え」についてもう少し詳しくお話ししたいと思います。

「TENDER LOVING CARE」

ホームページや病院紹介のパンフレットにもございますが、当院の診療の根本となる言葉です。
アメリカでは日常的に使う言い回しだそうです。

「思いやりと愛情を持って接する(扱う)」というような意味になります。

パンフレット

我々の仕事は、飼い主様にとってかけがえのない宝物であるワンちゃん・ネコちゃんの「命・健康をあずかる」仕事です。

とても責任ある難しい仕事ですが、やりがいのある仕事、誇りを持てる仕事だと思っています

ですので、日々の診療・仕事を「流れ作業」でこなすのではなく、常に自分たちの振る舞い・仕事の内容が、ワンちゃん・ネコちゃんの「命・健康をあずかる」医療施設としてふさわしいものか意識をしなければならないと思うのです

掃除一つとっても、「仕事として掃除をこなせばよい」のではなく、「大切なワンちゃん・ネコちゃんの命を預かる現場としてふさわしい環境を維持する」ことを大切にしなければなりません。

「TENDER LOVING CARE」という言葉は、ある腫瘍科の先生のセミナーを受講した時に聞いた言葉です。

アメリカの大学で内科学(腫瘍科)専門医の資格を取られた先生なのですが、アメリカ留学中、言葉のハンディキャップに苦労しながら日々の診療に追われているときに、現地の動物看護士さんに、「大切なのはTLC(TENDER LOVING CARE)よ」といわれたそうです。

その当時、病気の治療ばかりに意識が集中し、飼い主様や動物を思いやる気持ちにかけていた先生に、そのことを気付かせるきっかけになった言葉だそうです。

そして私もその話を伺ったときに、

「自分も精いっぱいの努力をして治療にあたってきたつもりだけど、そこには愛情も思いやりも欠けていたのじゃないか

「病気を治療するということばかりに目がいき、病気のペットを抱えて不安になっている飼い主様や、不安な気持ちで治療をうける動物自身の気持ちを真剣に考えたことはないんじゃないか

「思いやりと愛情を持って接することで、もっと動物の不安を取り除き、細かな状態の変化にも気づくことができる、そんな治療を目指すべきなのじゃないか

「大切な動物を預ける飼い主様の不安な気持ちをもっと考えて、安心して治療を受けていただける環境を作ることが大切なのではないか

と目から鱗が落ちる思いでした

それ以来、飼い主様にご説明する時、動物への処置中、院内を掃除する時・・・
いつでも常に「TENDER LOVING CARE」を念頭に置くように心がけているのです。

そして、私も含め当院のスタッフ全員が、この言葉を忘れず、常に「思いやりと愛情をもって」診療業務に臨めるよう、病院の理念としてホームページやパンフレットに掲載することにしたのです。

「TENDER LOVING CARE」

これを日々実践するのは難しいことです。

我々も、努力はしていますが上手くいかないことも多々あります。

それでも、常にこの言葉を診療理念として掲げ、意識することで、よりよい獣医療を目指したいと考えるのです。

雨の日は・・・
2010年04月12日 (月) | 編集 |
昨日は汗ばむくらいの陽気でしたが、今日は冷たい雨

こんな日は患者様の来院数も激減です

やっぱり雨の中ワンちゃんやネコちゃんを連れて出かけるのは気が進まないものです

こんな日こそ普段できないような細かいところのお掃除です

お掃除

新津さん、脚立に乗って壁の高いところを拭いてくれています。

動物病院の汚れ方はちょっと特殊です。

たとえば耳掃除のときなど、洗浄液でクリーニングしているときに頭をブルブルされると、汚れが壁の高い位置や、ひどい時には天井まで飛びちります

また、ワンちゃんは人間の目線よりも低い位置を移動しますので、机の裏側や椅子の足など人の目が届きにくい所が汚れます。

何も考えずに、床やテーブルの上など目につく部分だけを掃除していると、こういった思わぬところの汚れを見逃してしまいます。

どこがどう汚れるのか想像力を働かせながら、背伸びしたりしゃがんだりして汚れを探します

「掃除をすること」が大事なのではなく、「飼い主様が安心して過ごせる病院の環境をつくること」「大切なワンちゃん・ネコちゃんをお預かりするのにふさわしい環境をつくること」が大切なのだという気持ちでいれば、自然と細かい部分まで配慮が行き届くものです。

こういった姿勢というのは他のすべての業務においても重要です

意外な事実
2010年04月10日 (土) | 編集 |
獣医学雑誌にアメリカでの動物医療保険の加入率についての記載があったのですが、ちょっと意外でした

アメリカにペット保険が導入されてから30年以上経つそうなのですが、いまだ加入率が1パーセント程度だそうです。

ペット保険

動物医療の先進国ですので、10パーセント程度はいっているかと思っていたので、ちょっとビックリです

ちなみに当院の患者様では7?8パーセント程度の患者様がペット保険に加入されています

日本全体でも10パーセント程度の加入率のようです。

近年、獣医療は飛躍的に発展し、日本国内でも「ペット=番犬的」な飼い方から、「ペット=家族の一員」というスタイルに変化してきています。

そんな中で、我々獣医師に対する期待も大きく、大切なワンちゃん・ネコちゃんに対しての的確かつ高度な医療が求められています。

ただ、的確な診断・高度な医療をご提供するには、人および設備に対する投資が必要になり、一つ一つの検査・治療費も高額にならざるを得ません

なかには、治療費が高額になるため治療を断念せざるを得ない時もあります

我々にとっても、治療費が高額になってしまい、治療に制約がかかる時というのは、やはり精神的にストレスになります

飼い主様も、我々もできる限りの治療をしてあげたい・・・、でも現実的に費用を考えると難しい・・・
だからと言って我々も皆さまにお支払いいただく診療費で病院を経営し、設備投資、人件費をまかなっていますので、かかった治療に対してのご請求はしないわけにはいきません・・・

こんな時にペット保険に加入していただいていると、治療費のおよそ半額(保険プランによって違うようですが)負担で済むので、だいぶ治療費の心配が減ります

保険金も月々2?3000円程度(種類、年齢によって違います)と現実的な金額です

当院はアニコム損保のペット保険対応病院ですので、面倒な手続きは一切なくお会計ができますよ

フィラリア検査
2010年04月09日 (金) | 編集 |
以前にもふれましたが、当院では6月末?11月末までのフィラリア予防をお勧めしています。

フィラリア予防薬を投与する前には、フィラリアに感染していないことを確認する必要があります。

万が一フィラリアに感染している場合は、予防薬をそのまま投与すると副作用の危険があるからです

ですので、念のために毎年予防前には検査をうけていただくことになります
前年度に予防薬を投与していても、知らない間にワンちゃんがお薬を吐きだしたりしてしまうことで感染してしまう可能性は0ではないですからね

こちらはフィラリア検査のための検査キットです。

フィラリア検査

薄っぺらなプラスチック製の検査キットに血液を垂らすだけの簡単操作
5?10分で結果が出ます

一昔前は特殊なフィルターで血液を濾過して、フィルターの上に残ったフィラリア幼虫(目に見えないくらい小さい)を顕微鏡で観察するという方法が取られていました

安価な検査法なのですが、フィラリアの感染数が少ない場合など、血液中に十分に幼虫がいない場合は、見落とす危険があります

上述の検査キットは、血液中のフィラリア成虫抗原(フィラリアの成分みたいなもの)を検出するため、幼虫の数に左右されず、より感度の高い検査をおこなうことができます

顕微鏡での観察など手間が省けるため、皆様をお待たせする時間が少ないのも

当院に通院中のワンちゃんには、4月末?5月中旬にかけて「フィラリア予防のお知らせ」をお送りする予定です

フィラリアの血液検査と同時に、一般的な血液検査(健康診断として)を受けていただくと、採血料500円をサービスさせていただくようなキャンペーンも予定しています

どうぞこの機会に健康診断をご検討くださいませ

「おりもの」が続く
2010年04月08日 (木) | 編集 |
少し前の症例なのですが、発情が終わって1ヶ月ぐらい経ってから、膿のような「おりもの」が出てきたということで来院されたワンちゃんです(女の子)。

9歳とやや高齢のワンちゃんです。

「中高齢の女の子(避妊手術をしていない)」「発情が終わって1カ月程度」「陰部からおりもの」

この3つのキーワードがそろった時点で獣医師は診断リストのトップに「子宮蓄膿症」を上げます。

読んで字のごとし、子宮に膿がたまる病気です。

超音波で子宮を確認してみると・・・

子宮蓄膿

黒く映っているのが膀胱です。(おしっこは超音波で黒く映ります)
黄色の▽で示した部分が子宮で、その内側に膿がたまっています。

超音波画像では尿や血液などの液体は基本的に黒く映るのですが、「膿」の場合は液体だけでなく炎症細胞などがたくさん含まれてドロドロしているため、黒い部分と白?グレーの部分が混在して映ります。

「膿」の原因になるのは細菌です。
発情期には子宮の入口が部分的に開くため外部から細菌が侵入しやすくなり、侵入した細菌が子宮内に感染することで「子宮蓄膿症」が発症し、「膿」がたまります。

細菌が侵入するのは発情期ですが、侵入した細菌が増殖し、「膿」が「おりもの」として陰部から排出されるにはある程度時間がかかります。

それが「発情が終わって1カ月程度してからおりものがでる」という現象につながるわけです。

初期には無症状ですが、進行すると食欲不振・水を良く飲む・おしっこが多くなる・おりものがでるなどの症状がでてきます。

治療としては、感染を起こした子宮(卵巣も含めて)を切除することが一般的です。

放置したり、治療が遅れると命にかかわる病気ですから、避妊手術をされていないワンちゃんは注意が必要です。

日ごろから発情期(生理)が来たらカレンダーにしるしをつけておき、その後数カ月の陰部の状態や食欲の状態を細かく観察しておけば、早期発見につながります。

赤ちゃんを産む予定のないワンちゃんであれば、早いうちに避妊手術をしておくことをお勧めします。
乳がんの予防にも効果的ですしね。



よかった、よかった!
2010年04月07日 (水) | 編集 |
迷子になっていたネコちゃんが見つかったそうです

2010年02月12日16時02分31秒

2月ごろから探されていたのですが、最近になってひょっこり戻ってきたそうです

少し痩せてしまったそうですが、大きな病気やけがなどなさそうとのこと。

よかった、よかった

高脂血症
2010年04月06日 (火) | 編集 |
この前は、「黄疸」という血液(の水分)が黄色くなるお話をしましたが、今回は血液(の水分)がミルク色になる現象です。

高脂血症
下側の黒っぽい部分が血液の細胞部分で、上半分が水分です。
いちごミルクのような色になっています。こちらが今回お話しする「高脂血症」をおこした血液です。

黄疸
こちらは前も使用した、黄疸をおこした血液と正常な血液。
右側が正常な血液。左は黄疸をおこした血液です。

「高脂血症」とは読んで字のごとし、血液に脂肪分(コレステロール、トリグリセリドなど)が多く含まれた状態です。

白っぽく見えるのが脂肪分です。

正常な動物でも、食後すぐの血液だと、腸から吸収された脂肪分で白っぽく濁ることがあります。
なので、正確な判断をするためには、12時間以上の絶食が必要です。

この現象が見られた場合、糖尿病や肝臓病、副腎皮質機能亢進症といった体内での脂肪代謝のバランスが崩れる病気などが疑われます。

この写真の症例は12時間以上食事をしていないのに、これだけ血液が白濁しています。
今のところ本人に自覚症状はないようですが、追加で精密検査をさせていただいたほうがよさそうです。

こういった血液の異常というのは、本人にまったく自覚症状が見られない、初期の病気のころから観察されることがあります。

人間もそうですけど、定期的な健康診断というのは重要です。

おしっこが出なくて悩んでます
2010年04月05日 (月) | 編集 |
尿石症で治療中のネコちゃんの超音波画像です。

黄色い点線で囲った部分が膀胱で、黒い部分は膀胱内にたまった尿です。

そして、膀胱の底に白くたまっているのが、細かい砂状になった尿石

大量です

砂状の尿石

この砂状の尿石、一粒一粒は1mm以下と小さいので、普通ならば問題なくおしっこに出てきます。
ですが、この粒が塊になるとおちんちんの先っぽで詰まってしまい、尿が出なくなってしまいます。

この子もここしばらくで2回ほど詰まってしまい、尿道に管を通して治療をしなければなりませんでした。

尿石にはいくつか種類があり、ネコちゃんで多いのはストルバイトというマグネシウム系の尿石です。
このタイプの尿石は食事療法で溶かすことができます。
このネコちゃんの尿石も、顕微鏡で観察したところ、このストルバイトのようです。
ですので、食事療法でうまく尿石が溶けないか様子を見ているところです。

ですが、あまり何度も尿道が詰まってしまったり、食事療法をしてもうまく尿石が溶けない場合は、手術で尿道を広げなければならなくなります。

今のところ順調に治療食を食べてくれているようなので、うまくいってくれるとよいのですが・・・



卒業
2010年04月04日 (日) | 編集 |
昨年の五月から当院に通院していただいていた盲導犬候補犬のウララちゃん

ねむい・・・

いよいよパピーウォーカーさんのもとを卒業して、訓練所に入るそうです

最後の一日に、ご家族皆さんでお花見に行かれたそうです
その帰りに、わざわざ病院によってくださいました

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これから1年から1年半の訓練が待っているそうです。

訓練をおこなってもすべての候補犬が盲導犬になれるわけではありません。

訓練の過程で適性がないと判断されてしまい、盲導犬になれないワンちゃんもいます。

誰に対してもフレンドリーで明るい性格のウララちゃん

きっと、難関を突破し、立派な盲導犬になって、目の不自由な方の行き先を照らす光になってくれることでしょう

ホームページ更新
2010年04月03日 (土) | 編集 |
ホームページの「診療内容ご案内」の循環器疾患の項目に「犬の循環器疾患について」という項目を追加しました。

老齢期の小型犬に多い、「僧帽弁閉鎖不全症」についてのページです。

ホームページも少しづつ更新して、内容を充実させていきますので、ときどき覗いてみてくださいね



脂肪肝
2010年04月02日 (金) | 編集 |
昨日とりあげた肝臓病のネコちゃんですが、病名は「肝リピドーシス」といいます。

「肝リピドーシス」というと聞きなれない言葉ですが、わかりやすく言うと「脂肪肝」のことです。

人間で「脂肪肝」というと、肥満とお酒の飲みすぎが原因だということです。
エネルギーの過剰摂取や、運動不足が原因で肝臓に脂肪が蓄積してしまうそうです。

今回のネコちゃんの「肝リピドーシス」はちょっと発生の仕方が異なります。

「肝リピドーシス」のキーワードは2つ。
「肥満」と「食欲不振」です。

「肝リピドーシス」は、もともと肥満傾向にあったネコちゃんが、何らかの原因で数日間の食欲不振に陥った時に発生することが多いのです。

食欲不振が続くと、外部からエネルギー供給が途絶えたネコちゃんの体内では、体に蓄積した内臓脂肪や皮下脂肪を分解してエネルギーに変えようとします。
体内の脂肪分は分解されて肝臓に集まってくるのですが、肥満傾向のネコちゃんではこの脂肪分が大量に集中することになります。
あまりに大量に集まった脂肪を、肝臓が処理しきれずに悲鳴をあげている状態が「肝リピドーシス」なのです。

脂肪が蓄積して膨れ上がった肝臓の内部では、細かな血管や構造が圧迫されてしまいます。
それによって肝障害が発生します。

急激に肝臓の機能が落ちるため、数日のうちに容体は悪化し、昨日お話したような「黄疸」も発生します。

黄疸 2

「肝リピドーシス」の治療法は、とにかく早急に体内のエネルギー不足を改善し、それ以上の肝臓へのダメージを防ぐこと。

「エネルギー不足からくる体内での脂肪代謝の異常」が原因ですので、まずは強制的に食物を与えて、体内のエネルギー不足を改善しなければなりません。

とはいっても、今回のネコちゃんは重度の歯周病から来る食欲不振(口が痛くて食べられない)がきっかけで「肝リピドーシス」に陥ってしまっているので、食べろと言って食べるわけがありません。

基本的に「肝リピドーシス」に陥ってしまった症例は、エネルギー不足を補えるほどの十分な食欲があることはほとんどありません。
ですので、胃にチューブを送り込んで、強制的に食事を与える必要があります。

チューブ

胃にチューブを挿入する方法はいくつかあるのですが、今回は鼻から挿入する方法を選択しました。

この方法ですと、全身麻酔を使用せずに挿入できるという利点があるのですが(おとなしい子なら)、細いチューブしか入れられないため、一度に与えられる食事の量が限られてしまいます。

重度の「肝リピドーシス」で、長期間の集中的な管理が必要な症例ではもっと太いチューブを挿入する必要があります。
その場合は全身麻酔をかけて、外科手術をおこなってチューブを挿入します。

今回のネコちゃんの症状なら、数日間チューブでサポートしてあげれば十分に回復するだろうと判断し、一番簡単な方法でチューブを設置しました。
ただ、これでも思うように回復しない場合は麻酔をかけて太いチューブを設置しなければなりません。

ダメージを負った肝臓そのものを劇的に回復させる治療法というのはありません。
ですので、肝臓を保護しつつ、十分な栄養を与え、あとは肝臓自身の自然の回復力に任せるしかありません。

幸い、今回のネコちゃんでは1週間程度の集中治療で無事に回復し、お家にお返しすることができました。
ただ、心配なのは食欲不振の原因となった歯周病は完治していないので、油断するとまた同じ症状を繰り返す危険があることです。

肝臓が悪いと・・・
2010年04月01日 (木) | 編集 |
肝臓が悪いと皮膚や白眼が黄色くなるって聞いたことありませんか?

黄疸(おうだん)という症状です。

黄疸 2

肝臓病で入院したネコちゃんですが、お腹の皮膚がうっすらと黄色く染まっているのがわかるでしょうか?

血液に含まれるビリルビンという色素によって黄色く染まります。

このビリルビンは、通常でも血液の中に含まれています。
ビリルビンの濃度は肝臓の働きによってコントロールされています。
肝臓が正常であれば、ビリルビンの量はごくわずかなので皮膚が黄色くなるようなことはありません。

ですが、肝臓病で肝臓の機能が低下すると、血液中のビリルビンが増加し、このように皮膚まで黄色くなってしまいます。

黄疸

左が肝臓病のネコちゃんの血液。右は正常なネコちゃんの血液です。

血液に含まれる水分が黄色く染まっています。(下半分の黒っぽい部分は血液細胞です)
この色素によって、皮膚や白眼などが黄色く染まるのです。

また、この色素はおしっこにも含まれるので、肝臓が悪いときには、真っ黄色のおしっこが出ることもあります。