町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
歯周病治療 Yちゃんのケース
2017年04月28日 (金) | 編集 |
先日行った歯周病治療の症例です。


12歳と高齢のワンちゃんですが、重度の歯周病。


歯茎に強い炎症が起きて、痛みが生じています。


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歯石が大量に付着。歯肉に強い炎症が起きています。




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歯周病は、初期の段階であれば歯石のクリーニングと、炎症を起こした歯肉への処置のみで済みますが・・・



ここまで重度になると抜歯治療が必要になります。



こちらのワンちゃんでは、なんと34本もの抜歯処置となってしまいました・・・



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※臼歯など歯根が分かれている歯はドリルで分割してから抜歯するため、破片が細かくなっているものもあります。



抜歯した歯を見ていただくと、根っこまで歯石が広がっている様子がよくわかると思います。


ちなみに、この歯は抜歯する前にある程度の歯石を取り除いています。


処置前には、重度の歯槽膿漏のため、ひどい腐敗臭がしていましたが・・・処置後にはそれもなくなり、口臭もほとんど感じないレベルになりました。


もちろん、歯肉の強い炎症も収まったため、歯はほとんどなくなってしまいましたが、本人は元気にご飯も食べれている様子です。


ワンちゃん・ネコちゃんの歯科処置では全身麻酔が必要になります。


犬歯や奥歯は歯根がかなり頑強で、抜歯をするには歯肉の切開や歯槽骨をドリルで削るなどの外科処置も必要になってきます。


今回のように大掛かりな歯科処置の場合、麻酔時間も3時間近くになり、本人への負担も大きくなります。


できれば、飼い主様方には、日ごろからブラッシングなどの日常ケアに力を入れていただいて、なるべく早い段階での歯周病治療を行っていただければ幸いです。

猫の歯周病と破歯細胞性吸収病巣
2017年03月13日 (月) | 編集 |
先日行ったネコちゃんの歯科処置の様子です。


まずは左上の臼歯(奥歯)


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黒っぽく見えるのはすべて歯石。



奥歯がほとんど歯石に覆われてしまっています。



この歯石を取り除いてみると・・・



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歯石で覆われていた部分は、すでに歯肉・歯槽骨が広範囲に壊死を起こし、歯根がむき出しの状態になってしまっています。



歯垢や歯石で覆われた部分には細菌が増殖し、炎症が起こります。



これが歯周病と呼ばれる状態。



この炎症が治療されることなく継続すると、周辺の歯肉組織や骨組織が壊死し、溶けて無くなってしまうのです。





一方、こちらは左下の臼歯。




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こちらも歯の付け根の部分が溶けて無くなったように見えますが・・・




こちらは上述の歯周病とは違う疾患で、「破歯細胞性吸収病巣」という猫ちゃん特有の歯科疾患であります。



今までにも何度かとりあげてまいりましたが、「破歯細胞」という本来なら乳歯の脱落に関わる役割を持った細胞が、なんらかの原因により異常をきたし、正常な永久歯を溶かしてしまう疾患です。



原因は明らかになっておらず、進行した歯は抜歯するしか手立てがありません。




ワンちゃん、ネコちゃん共に、3歳以上の80%近くが何らかの歯周病になってしまっているというデータがあります。



高齢になっても、いつまでも美味しくお食事ができるように、ワンちゃんも、猫ちゃんも定期的な歯科検診が大切ですね。



犬と猫に蔓延する歯周病
2016年11月08日 (火) | 編集 |
当ブログでも頻繁にとりあげている「歯周病」。



ペットとして飼育されている3歳以上のワンちゃん・ネコちゃんの80%が歯周病であるといわれております。


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歯の表面に歯石が付着して、薄く黄色~茶色になっていて、歯茎の縁が赤くなっていたら、それはすでに歯周病です。



歯周病の原因は「歯垢」の中に存在する細菌です。


「歯垢」の成分は主に口の粘液細胞の残骸や、血液成分、脂質、唾液由来のタンパク質や細菌であります。


このネバネバした「歯垢」に、唾液中のカルシウムなどのミネラル分が取り込まれて、固い「歯石」になります。


歯に「歯石」が付着すると、ますます食べカスや「歯垢」が溜まりやすくなり、歯周病の進行を加速させていきます。



「歯垢」が「歯石」へと変化するには、人間では3週間程の時間がかかるそうですが・・・



ワンちゃん・猫ちゃんでは約1週間と、人間の3~4倍も早く「歯石」が形成されてしまいます。



これは、人とワンちゃん・猫ちゃんの唾液の性質の違いが原因とされています。



また、人間と違い、自分自身で歯磨きをすることはありませんから、歯周病は放置されどんどんと重症化していってしまうのです。





ところで・・・自分で歯磨きをしないといえば、野生の肉食動物も同様ですが・・・



実は野生の肉食動物では歯周病はまれとされています。



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野生の肉食動物は主に草食動物や小型動物を獲物としてとらえるのですが、その際に皮膚・靱帯・筋肉・内臓などを余さず食いつくします。


最後には骨までしゃぶります。



これらの生の動物の組織は、強靭な線維組織でできていますので、歯で齧ったときに表面の汚れを削ぎ落とす作用が生まれます。


そのため、野生動物では歯周病が起きにくいのです。



一方、ペットとして飼育されているワンちゃん・猫ちゃんでは、ドライフードや缶詰フードを主に食べているため、このような自然の歯磨き作用が期待できません。


むしろ、ベタベタとした汚れが歯に残りやすく歯周病が起きやすくなっているのです。



ですので、そのようなペットのワンちゃん・猫ちゃんの歯の健康を保つには、飼い主様の手による歯磨きが何よりも大切。


また、遊びの一環として、色々なおもちゃを咬ませることで、唾液による洗浄作用や、物理的に汚れをこそぎ落とす作用が期待できます。
※おもちゃを咬ませるときには、歯の破損や、誤嚥に十分にご注意ください。

重度の歯周病 Fちゃん8歳 その2
2016年09月23日 (金) | 編集 |
さて、先日の続きです。


重度の歯周病を患っているワンちゃん。


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残念ながら、ほとんどの歯をぬかなければなりませんでした。


なんと合計31本!!



特に酷かったのが上顎の犬歯。


犬歯部分の歯周病が重度の為、歯根と鼻腔を隔てる骨組織が壊死し、鼻腔内に穴があいてしまっていました。



口腔鼻腔瘻という状態です。


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口腔鼻腔瘻。犬歯部分を洗浄すると、病変部を通って鼻腔から洗浄液が流れてきます。
赤丸で囲んだ部分、鼻の穴の中に液が溜まっています。



当然、抜歯治療となるのですが・・・



犬歯の歯根は特に大きく頑丈なため、抜歯を行うには歯肉の切開や、歯を支える歯槽骨の切削が必要になります。



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歯肉を切開した犬歯。この後、歯を支えている歯槽骨を削ります。




歯根は歯根膜とよばれる強力な支持組織で歯槽骨に付着しています。


抜歯を行うには、エレベーターと言う器具を歯根部と歯槽骨の間に挿入し、梃子の作用を利用して歯根膜の付着をはがして行くのですが・・・


梃子の作用を最大限に利用するには、歯根周辺の骨組織が健全な状態でなければなりません。


ですが、今回の症例のように重度の歯周病に陥っていると、歯根周辺の骨組織が壊死してしまっているため、無理な力をかけると弱った骨が骨折してしまう危険があります。


そのため、抜歯の作業には細心の注意を払って作業を進めていきます。




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犬歯を抜歯した後。丸で囲んだ部分が口腔鼻腔瘻。
重度の歯周病の為、歯根周辺の骨組織が壊死、大きな穴があいて鼻腔とつながってしまっています。さらには、その周辺に膿状の汚れが・・・




反対側の犬歯も同様の状態。



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口腔鼻腔瘻ができて、奥に乳白色の膿状の汚れが溜まっています。
これを洗浄すると・・・





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食べカスと壊死を起こした組織が塊になって出てきました。
こんなヘドロ状の汚れが、常に鼻の中に溜まっていたということなのです。どれだけ不快だったことでしょう・・・




抜歯が終わると、歯肉を縫合しなければならないのですが・・・


縫合しようにもすでに歯肉の大半は壊死してしまっており、そのままでは傷をふさぐことができません。



そこで、頬の粘膜を剥離・移植して傷を塞ぐことになります。



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すでに壊死を起こしていたような組織ですから、移植した部分が上手く定着するか心配なところでしたが・・・



術後1週間の時点では上手く治っているようでした。



口の中の汚れや、口臭などは飼主様が気づいていても、どうしても後回しにされ、放置されることが多く


今回の症例のように、取り返しがつかないほどに進行してしまっていることも珍しくありません。



動物の歯周病治療は全身麻酔でおこなわなければならないため、ここまで重度の歯周病になると、麻酔時間も3時間~4時間となり



動物の負担、そして飼主様の金銭的な負担も大きくなってしまいます。



できれば、「歯が汚れてるな・・・」「口臭が気になるな・・・」と思った時点で、なるべく早めに診療を受けていただきたいものです・・・


※今回のワンちゃんは、現在の飼主様が引き取った時点で重度の歯周病に気がついて、急いでお連れいただいた症例です。










重度の歯周病 Fちゃん8歳 その1
2016年09月20日 (火) | 編集 |
先日歯科処置を行った症例です。



極めて重度の歯周病で、合計31本の抜歯処置となりました。


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大量の歯石とヘドロ状の歯垢で覆われています。前歯と犬歯は先端部分に僅かに白く歯が見えていますが、奥歯は完全に覆われて見えません。




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下顎も同様です。




症例は8歳のミニチュア・ダックス。



歯石の付き具合、歯周病の進行度合いには個体差があります。



その症例の食生活や、物を咬む習慣、歯磨きの習慣、犬種、歯並びなど様々な要因があります。



経験上、ダックスフンドは重度の歯周病になりやすいように思います。



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下顎の状態。歯の裏側(舌側)も奥まで歯石に完全に覆われてしまっています。




こういった重度の歯石付着を起こした症例では、歯石を取り除いておしまいというわけにはいきません。



歯石で覆われた歯肉の周辺部では、歯肉炎・歯周炎が発生します。


歯肉炎・歯周炎が起きると、歯を支えている歯肉や歯槽骨(アゴの骨)が壊死を起こします。



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歯石を取り除いた状態。赤い線を引いた部分は、本来歯肉が無ければいけませんが、すでに壊死を起こして消失。
歯肉が無くなった隙間に、大量の汚れが蓄積しています。




残念ながら、ここまで歯周病が進行してしまうと、これらの歯はすべて抜歯しなければなりません。



つづく・・・