町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
胆泥症
2014年09月21日 (日) | 編集 |
わんにゃんドック等で、日常的に健康診断をおこなっていると、一見健康に見える中高齢のワンちゃんで、肝臓の血液検査数値が上昇しているような症例に良く遭遇します。




本人は元気・食欲など問題なく、数値自体も極端に悪いというわけではないのですが、正常値の2~3倍程度の上昇を示します。




肝臓の血液検査数値の上昇の原因は、加齢、肥満、食生活、炎症、ホルモン異常、腫瘍etc 色々な原因が考えられます。



肝臓の血液検査では、肝臓の数値が上がっている(=何らかのダメージが肝臓に加わっている)ことは解っても、「なぜ数値が上がるのか?」は解りません。



肝臓数値の上昇の原因を知るには、レントゲン検査や超音波検査、場合によっては組織検査(肝臓の一部を採取して検査する)を組み合わせなければなりません。



組織検査をおこなうには、肝臓の一部を採取するなど外科的な処置が必要になりますので、まずはレントゲンや超音波など動物への負担の少ない検査から進めていきます。



そうして、検査をしていて、よく遭遇するのが「胆泥症」。



「胆泥」と言うのは、胆嚢(たんのう)と言う消化液を分泌する袋状の器官の内部に、消化液が停留して泥状に濁ってしまった状態です。



この「胆泥」が肝臓数値の上昇の原因になっていることがよくあります。



胆嚢(たんのう)は、肝臓で生産された胆汁(たんじゅう=消化液)を貯蔵・分泌する役割を持っています。



20140921tah01.jpg
正常な胆嚢(たんのう)。黒く空洞に見える部分は、内部に貯留した胆汁(たんじゅう=消化液)。



正常な状態の胆汁は、超音波で濁りの無い透明(=黒)の状態に描出されます。


「胆泥症」の症例では、「白い濁り」が超音波で観察されます。



20140921tah02.jpg
左側の白く濁った部分が胆泥



「胆泥」の貯留は、犬種や体質、加齢、食生活が原因になることもあれば、ホルモン異常、脂質代謝異常、消化器の炎症などの疾患が原因となっていることもあります。



したがって、少量の胆泥貯留であれば、生理的なものであることも多く、治療が必要になることもありません。



しかし、胆泥の貯留が重度になると、胆汁の分泌が妨げられたり、胆嚢炎を起こす場合があります。



また、胆泥症の症例の中には、「胆嚢粘液のう腫」という状態に進行するケースがあります。



20140921tah03.jpg
重度の胆泥症から引き起こされた、「胆嚢粘液のう腫」。固くゼラチン状に固まった胆泥と、炎症を起こした胆嚢が描出されています。




「胆嚢粘液のう腫」になると、胆嚢炎や膵炎などに進行したり、最悪の場合は胆嚢破裂を起こし、致命的な腹膜炎を起こす場合もあります。



すべての「胆泥症」の症例が、「胆嚢粘液のう腫」に進行するわけではありませんが、進行してしまってからでは手遅れです。



したがって、中程度~重度の胆泥症の症例では、生活習慣の改善や、投薬によって、胆泥症の悪化を防ぎ、経過観察をする必要があると考えられます。



胆泥症・胆嚢粘液のう腫は、重症化するまでは目立った症状を起こさないことも珍しくありません。



定期的な健康診断で、早期発見することが大切になります。

急性膵炎
2010年12月13日 (月) | 編集 |
突然の嘔吐と下痢を主訴に来院したワンちゃんの超音波画像です。

101213

中央の楕円形部分が胃(stomach)で、その右側の黒っぽく映ってる部分が炎症を起こした膵臓(pancreas)です。

膵臓は、胃の後部から十二指腸に寄り添うように位置する臓器で、十二指腸と膵管でつながっています。

消化液を分泌して消化吸収を助けるとともに、インスリンを分泌して血糖値をコントロールする働きを持っています。

正常な膵臓は、超音波では観察されないことがほとんどです。
正常な状態では、周辺の脂肪と見分けがつきにくいのです。

ですが、今回のように炎症を起こしていると、膵臓が腫れてくるので超音波で見分けやすくなります。

超音波画像で膵臓がはっきりと見えるということは、何らかの異常があるということなのです。

膵炎は中高齢のワンちゃんに多く見られ、突然の激しい嘔吐・腹痛がみられます。

今回のワンちゃんも、二日ほど前までは普通にしていたのに、急にひどく吐き始め、元気食欲がまったくなくなってしまったということで来院されました。

膵炎が重症化すると、膵臓内の消化酵素が血液を介して全身に影響を及ぼし、全身性炎症反応(SIRS)や播種性血管内凝固(DIC)といった致命的な全身性障害を引き起こすことがあります。

今回の症例は、幸い治療に対する反応が良く、数日で容体は落ち着きました。
重度の症例では2?3週間もの入院が必要になることもあるのです。

強制給餌
2010年09月02日 (木) | 編集 |
黄疸

現在、入院中のネコちゃん。

「黄疸」がでています。

「黄疸」というのは、血液中に「ビリルビン」という色素が増加してしまうことで、全身の粘膜や皮膚が黄色みを帯びることです。
肝臓疾患が原因になることが多いのですが、今回の場合は「肝リピドーシス」という病気が原因になっています。

「肝リピドーシス」というのは、何らかの原因で食欲不振に陥ったネコちゃんが、栄養不良を補うために自分自身の脂肪組織を分解・代謝する過程で肝臓に脂肪が蓄積してしまい、それによって肝障害がおこってしまいます。
くわしくは以前のブログをご覧ください→CLICK

この病気を治療するには、まず食欲不振の原因となった疾患を治療しつつ、肝臓の保護治療をおこないます。
そして、一番重要なのは、無理やりにでも食事をあたえて、体内の栄養障害を早急に改善することです。

強制給餌

このように流動食を専用のポンプで強制的に与えます。
場合によっては食道にチューブを入れてあたえることもあります。

高脂血症
2010年04月06日 (火) | 編集 |
この前は、「黄疸」という血液(の水分)が黄色くなるお話をしましたが、今回は血液(の水分)がミルク色になる現象です。

高脂血症
下側の黒っぽい部分が血液の細胞部分で、上半分が水分です。
いちごミルクのような色になっています。こちらが今回お話しする「高脂血症」をおこした血液です。

黄疸
こちらは前も使用した、黄疸をおこした血液と正常な血液。
右側が正常な血液。左は黄疸をおこした血液です。

「高脂血症」とは読んで字のごとし、血液に脂肪分(コレステロール、トリグリセリドなど)が多く含まれた状態です。

白っぽく見えるのが脂肪分です。

正常な動物でも、食後すぐの血液だと、腸から吸収された脂肪分で白っぽく濁ることがあります。
なので、正確な判断をするためには、12時間以上の絶食が必要です。

この現象が見られた場合、糖尿病や肝臓病、副腎皮質機能亢進症といった体内での脂肪代謝のバランスが崩れる病気などが疑われます。

この写真の症例は12時間以上食事をしていないのに、これだけ血液が白濁しています。
今のところ本人に自覚症状はないようですが、追加で精密検査をさせていただいたほうがよさそうです。

こういった血液の異常というのは、本人にまったく自覚症状が見られない、初期の病気のころから観察されることがあります。

人間もそうですけど、定期的な健康診断というのは重要です。

脂肪肝
2010年04月02日 (金) | 編集 |
昨日とりあげた肝臓病のネコちゃんですが、病名は「肝リピドーシス」といいます。

「肝リピドーシス」というと聞きなれない言葉ですが、わかりやすく言うと「脂肪肝」のことです。

人間で「脂肪肝」というと、肥満とお酒の飲みすぎが原因だということです。
エネルギーの過剰摂取や、運動不足が原因で肝臓に脂肪が蓄積してしまうそうです。

今回のネコちゃんの「肝リピドーシス」はちょっと発生の仕方が異なります。

「肝リピドーシス」のキーワードは2つ。
「肥満」と「食欲不振」です。

「肝リピドーシス」は、もともと肥満傾向にあったネコちゃんが、何らかの原因で数日間の食欲不振に陥った時に発生することが多いのです。

食欲不振が続くと、外部からエネルギー供給が途絶えたネコちゃんの体内では、体に蓄積した内臓脂肪や皮下脂肪を分解してエネルギーに変えようとします。
体内の脂肪分は分解されて肝臓に集まってくるのですが、肥満傾向のネコちゃんではこの脂肪分が大量に集中することになります。
あまりに大量に集まった脂肪を、肝臓が処理しきれずに悲鳴をあげている状態が「肝リピドーシス」なのです。

脂肪が蓄積して膨れ上がった肝臓の内部では、細かな血管や構造が圧迫されてしまいます。
それによって肝障害が発生します。

急激に肝臓の機能が落ちるため、数日のうちに容体は悪化し、昨日お話したような「黄疸」も発生します。

黄疸 2

「肝リピドーシス」の治療法は、とにかく早急に体内のエネルギー不足を改善し、それ以上の肝臓へのダメージを防ぐこと。

「エネルギー不足からくる体内での脂肪代謝の異常」が原因ですので、まずは強制的に食物を与えて、体内のエネルギー不足を改善しなければなりません。

とはいっても、今回のネコちゃんは重度の歯周病から来る食欲不振(口が痛くて食べられない)がきっかけで「肝リピドーシス」に陥ってしまっているので、食べろと言って食べるわけがありません。

基本的に「肝リピドーシス」に陥ってしまった症例は、エネルギー不足を補えるほどの十分な食欲があることはほとんどありません。
ですので、胃にチューブを送り込んで、強制的に食事を与える必要があります。

チューブ

胃にチューブを挿入する方法はいくつかあるのですが、今回は鼻から挿入する方法を選択しました。

この方法ですと、全身麻酔を使用せずに挿入できるという利点があるのですが(おとなしい子なら)、細いチューブしか入れられないため、一度に与えられる食事の量が限られてしまいます。

重度の「肝リピドーシス」で、長期間の集中的な管理が必要な症例ではもっと太いチューブを挿入する必要があります。
その場合は全身麻酔をかけて、外科手術をおこなってチューブを挿入します。

今回のネコちゃんの症状なら、数日間チューブでサポートしてあげれば十分に回復するだろうと判断し、一番簡単な方法でチューブを設置しました。
ただ、これでも思うように回復しない場合は麻酔をかけて太いチューブを設置しなければなりません。

ダメージを負った肝臓そのものを劇的に回復させる治療法というのはありません。
ですので、肝臓を保護しつつ、十分な栄養を与え、あとは肝臓自身の自然の回復力に任せるしかありません。

幸い、今回のネコちゃんでは1週間程度の集中治療で無事に回復し、お家にお返しすることができました。
ただ、心配なのは食欲不振の原因となった歯周病は完治していないので、油断するとまた同じ症状を繰り返す危険があることです。