町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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子宮蓄膿症
2015年10月22日 (木) | 編集 |
御存じの方も多いかと思いますが、ワンちゃんの発情期は春と秋の年2回訪れます。



およそ半年間隔です。



この時期になると我々獣医師が警戒するのが「子宮蓄膿症」。



中高齢の女の子(もちろん避妊手術をしていない)に多い疾患で、発情後の子宮内に細菌感染を起こし、膿がたまってしまう病気です。



この疾患には女性ホルモンの分泌が大きく関与しているため、発情と関連して発症することが特徴です。



症状としては、通常よりも発情の出血が長く続いたり、膿状のオリモノが出てきたり・・・



初期の段階では、元気食欲に影響はないのですが、細菌が増殖するとともに毒素が体内に蓄積し、徐々に食欲が無くなり、最終的には多臓器不全で命を落とす恐ろしい病気です。



20151022tah02.jpg
子宮蓄膿症の症例の超音波検査。
※の部分が膿の溜まった子宮。



この超音波画像は、先日、子宮蓄膿症で緊急手術をおこなったワンちゃんの画像です。



発情が終わったはずなのに、出血が見られたということで来院されました。



この時点ではまだ元気も食欲もあり、一時的にわずかな出血が見られただけ。
普通なら見逃されてもおかしくなかったのですが・・・



たまたま飼い主様が子宮蓄膿症について耳にされたということで、「ひょっとしたら・・・」ということでご来院いただきました。



20151022tah01.jpg
術中の様子。画面右側の子宮が左側に比べて太くなっています。この部分に膿がたまっています。



子宮蓄膿症の治療は、基本的には外科治療。



膿の溜まった子宮を摘出します。



この症例は、飼い主様が初期の段階でお連れ下さったので、膿の貯留はわずかですが・・・



重度の症例では、フランクフルトなみの太さになることも珍しくありません。



20150213tah02.jpg
過去の症例 1

20141003tah01.jpg
過去の症例 2


膿の蓄積が多くなれば、それだけ体内に毒素が吸収されるため、症例の全身状態は悪くなっていきます。



今回の症例では、飼い主様の素早い判断で、体への悪影響も最小限で、翌朝には元気に退院していきましたが、膿の貯留の多い症例では1週間ほどの入院が必要になります。



酷い症例では、手術が成功しても、すでに体内に吸収された毒素によって多臓器不全を起こして亡くなってしまうことも珍しくありません。

停留睾丸
2015年08月10日 (月) | 編集 |
こちらは、ある小型犬の男の子の写真です。


去勢手術前の若いワンちゃんなのですが・・・



20150810tah01.jpg



去勢手術前にもかかわらず、睾丸の所にふくらみが見当たりません。



「毛で見えないだけじゃないの?」と思うかもしれませんが、触診しても睾丸は全く触れることができません。



じゃあ、どこにあるのかというと・・・



20150810tah02.jpg
(超音波で確認した、腹腔内の睾丸の画像)




腹腔内であります。


「停留睾丸」という先天的な異常の一つです。


睾丸は本来、「陰のう」という袋に収まって、股間にぶら下がっているわけでありますが・・・


実は睾丸は、もともとは女の子の卵巣と同一の組織で、胎児のお腹の中で発生します。


腹腔内に発生した睾丸は、赤ちゃんの発育と共に腹腔内から股間の「陰のう」まで移動してくるのであります。


これが、きちんと「陰のう」まで移動せず、腹腔内に残ってしまうことを「停留睾丸」と呼び、小型犬に多い先天性疾患の一つに挙げられています。



腹腔内に停留した睾丸は、正常な睾丸よりも「癌」になりやすいといわれているため、早期の摘出が勧められます。


また、片方だけでも睾丸が下りていれば、繁殖することは可能なのですが、「停留睾丸」は遺伝する可能性があるため、繁殖は勧められません。



20150810tah03.jpg


通常の去勢手術の場合はおちんちんの付け根の皮膚を2cm程切開するだけで摘出することができますが、「停留睾丸」の場合は、開腹手術になります。



開腹した後、腹腔内に紛れ込んだ睾丸を探さなければならないのですが・・・



事前に超音波である程度の位置は確認していますし、睾丸と前立腺をつなぐ「精管」を手繰っていくことが出来れば、腹腔内の精巣を見つけること自体はスムーズ。



ただし、見つけた睾丸がスムーズに摘出できるかどうかはやってみないと解りません。



奇形の一種ですから、睾丸が思ったように腹腔外に引っ張り出せない可能性もあるのです。



20150810tah04.jpg



幸い、今回の症例ではそういった問題はなく、スムーズに手術を終えることができました。




術後の写真を観ると、本来睾丸があるべき位置に、まったくその痕跡が無いのが良くわかりますね。



通常の去勢手術では、睾丸を摘出してもペシャンコになった陰のうが残るのですが、この子の場合は陰のうの痕跡すらありません。








子宮疾患
2015年02月14日 (土) | 編集 |
年に何度かとりあげている疾患ですが・・・



子宮の病気です。



子宮蓄膿症




20150213tah04.jpg
陰部からの膿の排出




発情後1~2カ月の時期におきやすい疾患で、子宮内に感染症を起こし、内部に大量の膿がたまってしまう病気です。



陰部から膿状のオリモノが排出されますが、ワンちゃんによっては自分でなめとってしまうので、飼い主様が膿に気づかないことも少なくありません。



中高齢の未避妊のワンちゃんに多い疾患で、発情期後の子宮は、ホルモンバランス等の影響で感染症を起こしやすくなっており、そのため、発情後の1~2カ月くらいの間に発症することがほとんどです。



膿の排出以外に、元気食欲の低下、感染症の影響から水を良く飲み、おしっこが多く出るといった症状がみられます。



この飲水量の変化や尿量の変化と言うのは、子宮蓄膿症以外にも肝疾患や腎疾患にみられる症状ですので、普段から気をつけていただくと良いと思います。




治療の基本は外科処置です。



20150213tah01.jpg
卵巣につながる卵巣動静脈の結紮。中高齢のワンちゃんでは、動脈周辺に大量の脂肪が蓄積しているため、血管の結紮が困難になります。




膿の溜まった子宮を丸ごと摘出します。(卵巣も同時摘出)




20150213tah02.jpg




膿がたまった子宮はもろく、手術中に破裂し膿が漏れ出す危険があるため、慎重に作業しなければなりません。



体重7kgの小型犬でも、膿がたまって膨らんだ子宮を支えるには両手が必要なほど。




20150213tah03.jpg
ワンちゃんの子宮は、左右に二股に分かれた構造をしています。双角子宮と言います。



早期発見できれば、手術ですっかりなおる病気ですが、治療が遅れると、貯留した膿の影響で、多臓器不全をおこすなど命にかかわることも珍しくない病気です。



避妊手術をしていない女の子では、日頃から発情期の様子や、オリモノの様子に気をつけていただくことが大切です。


子宮蓄膿症 2
2014年10月09日 (木) | 編集 |
さて、先日の続きです。



20141003tah03.jpg



子宮内部に膿がたまってしまう、子宮蓄膿症です。


前回、お話ししたように、中高齢のワンちゃん(♀)は発情期に関連して子宮の病気にかかってしまうことが良くあります。


子宮内部に細菌感染を起こし、膿が貯留する子宮蓄膿症。


子宮内部の病気ですので、見た目にハッキリとした症状が出るわけではありませんが・・・


元気・食欲の低下、水を良く飲み尿が多い(多飲多尿)、膿状のオリモノといった異常が見られることが一般的です。


ただし、オリモノについては、子宮の状態によっては認められないことも多いようです。


治療は、外科的に膿の貯留した子宮を摘出するしかありません。
※内科治療については、再発の危険性が高く、治療に失敗した場合、致命的になるため勧められません。


20141003tah01.jpg



基本的な術式は一般的な「避妊手術」と同じ。卵巣と子宮を摘出するわけですが・・・


ご覧のように、体重10kg弱のワンちゃんのお腹に、パンパンに膿が貯留した子宮が。


乱雑に扱えば、子宮が破れて、大量の膿で腹腔内が汚染される危険があります。


症状の重い症例では、すでに子宮が破れて膿が漏れ出ているようなケースもあります。


20141003tah02.jpg



ほとんどの症例が、手術が成功すれば元通りに回復しますが、診断が遅れた症例では、多臓器不全を起こし、死に至ることも少なくありません。



発情期のホルモンの影響を受けて発症する疾患ですので、避妊手術をしていない中高齢のワンちゃん(♀)で、発情後1~2カ月のタイミングで体調が悪くなった場合は、注意が必要な疾患であります。


子宮蓄膿症
2014年10月03日 (金) | 編集 |
9月半ばころに手術をした症例をご紹介します。



1週間ほど前から、元気・食欲が無くなってきたということで来院された症例です。



6歳8カ月の中型犬の女の子(未避妊)で、少し吐き気もあり、食事は手で与えると一口、二口程度は食べてくれるものの、普段の1/10程度しか食べていないとのこと。


喉が渇くようで、水は普段よりも多く飲んでいるようでした。


身体検査では、やや熱がある(39.1℃)以外は、明らかな異常は見当たりません。



ここで、重要な確認事項が一つ。



症例は、未避妊のワンちゃんですので、最終発情がいつだったかを確認します。



以前にもお話ししたことがありますが、中高齢のワンちゃんでは、発情期に関連して子宮の病気を発症することが良くあるのです。



飼い主様に確認すると、1か月ほど前に発情期が来ていたということ。


これらの問題を、箇条書きすると・・・

○ 中高齢の未避妊のワンちゃん

○ 発情後1カ月

○ 元気・食欲の低下

○ 水を良く飲む

○ 発熱



ここまで出そろうと、子宮の病気の疑いがかなり濃厚になります。



ワンちゃんの子宮の病気と言うと、ほとんどが「子宮蓄膿症」です。



「子宮蓄膿症」は、子宮の粘膜に細菌が感染し、子宮内部に大量の膿がたまる病気です。



発症には、発情後に分泌される黄体ホルモンが関与しています。


そのため、発情後1~2カ月頃に発症することがほとんどです。


また、中高齢のワンちゃんほど、長年にわたって繰り返し黄体ホルモンの影響を受けているため、発症しやすいと考えられています。


子宮内部に膿がたまるため、当然、元気食欲は無くなりますし、も出ます。


感染症の影響で、水を良く飲み、おしっこが多く出るようになります。これを、多飲多尿といいます。


症例によっては、陰部から膿状のオリモノが分泌されることもあります。



診断を確定するには、血液検査・超音波検査をおこなう必要がありますが、私の経験では、上記のような症状が認められたワンちゃんの8~9割は子宮蓄膿症で間違いありませんでした。



20141003tah03.jpg
超音波で確認した子宮。子宮内部に多量の膿が貯留しています(黒く見える部分)。



子宮蓄膿症を放置すると、子宮内に貯留した膿の毒素の影響で、多臓器不全に陥り、間違いなく死に至ります。


自然に治るということは、(ほぼ)ありえませんし、内科治療も通常は勧められません。



基本的には、手術で膿の貯留した子宮を丸ごと摘出するのが唯一の治療法になります。


つづく・・・