町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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高齢大型犬の馬尾症候群
2017年06月08日 (木) | 編集 |
先日診察させていただいた高齢大型犬。


年とともに後ろ足が弱ってきていたのですが、最近は特にふらつきがひどく、尿漏れなどの症状もあるとのこと。



高齢大型犬で後肢にトラブルが出る場合は、股関節の問題であることが多いのですが・・・


尿漏れを起こしているということが少し引っ掛かります・・・



そこで、骨盤部のレントゲンを撮影して確認です。



20170608tah01.jpg



上段の写真が、今回の症例。下段は正常犬のレントゲンです。


青丸で囲ったところが問題の部分。


7番目の腰椎~仙椎が大きく変形してしまっています。


これだけ背骨が変形してしまうと、当然内部にある脊髄神経に圧迫がかかります。


そのため、後肢のふらつきや尿漏れなどの神経症状が出てしまっていたのです。


「馬尾症候群」という病気で、高齢の大型犬に多い病気です。


第七腰椎~仙椎の周辺の背骨は最も力がかかる関節であり、繰り返し力がかかることで、靭帯や椎間板、背骨に変形が生じます。


それによって、内部の脊髄神経(馬尾:ばび)が圧迫されることで、主に後肢・便・排尿にかかわる神経症状を発症するのです。



重症例では外科治療を行う場合もありますが、高齢になってから患うことの多い病気なので、実際には鎮痛剤の投与などで対症療法的に管理せざるを得ないことも多い疾患です。

椎間板ヘルニアを疑った症例
2017年01月10日 (火) | 編集 |
昨年末に、突然の腰痛を主訴に来院したワンちゃんのレントゲン写真です。



初診日には触診で腰のあたりに痛みを訴える様子があるものの、レントゲンで明らかな異常が無い為、鎮痛剤の投与で経過観察することとなったのですが・・・



翌日に症状が悪化したために再検査を行いました。



20170110tah01.jpg
上の画像が初診日
下の画像が翌日のレントゲン



上の初診日の画像では、第4腰椎と第5腰椎の間の椎間板に石灰化が認められたものの、それ以外に大きな異常はありませんでした。
(椎間板の石灰化は老犬や、一部の犬種で日常的に見られる現象。正常な状態ではありませんが、必ずしも疾患と結び付くわけではありません。)



それが、翌日のレントゲンを見てみると・・・


第4腰椎と第5腰椎の間にあった石灰化病変が消失し、さらには前後の椎間にくらべて第4・第5腰椎椎間が狭窄を起こしています。



これは、椎間板ヘルニアを疑う所見です。



椎間板ヘルニアと言うのは、脊椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が脊髄神経側に飛び出して神経を圧迫し、痛みや麻痺などの症状を起こす疾患です。



石灰化した椎間板が消失して見えるのは、椎間板が本当に消えてなくなったわけではなく、脊髄神経側に飛び出したためにレントゲン上で写りにくくなっているためと考えられます。(下図参照)




20170110tah02.jpg




確定診断にはMRI検査やCT検査が必要になりますが、今回の症例では痛みだけでなく後肢の神経症状も発現していた為、ほぼ間違いないでしょう。




椎間板ヘルニアは重症例では下半身麻痺を起すこともあり、手術が必要になることもありますが、軽症例では2~3週間から1か月程度の安静と消炎鎮痛剤の投与で十分です。



今回の症例も、幸いこれ以上悪化することなく回復してくれました。

ナックリング
2014年11月14日 (金) | 編集 |
こちらの写真・・・


突然の痙攣発作で、入院治療をおこなっていたワンちゃんの後ろ足の写真です。



20141113tah01.jpg



手前に写っているのが右後肢。




奥に左後肢が写っていますが、それと比べると、なんだかおかしいですね。




足がひっくり返って、足の甲の側が地面についてしまっています。




「ナックリング」という症状で、神経疾患に伴う症状の一つです。



動物の体には、「固有位置感覚」という感覚があります。



自分の手足がどのような位置にあるのか? どのような角度になっているのか? を脳に知らせる役割を持っています。



この「固有位置感覚」が障害されると、写真のように、足をひっくり返されても気がつかなくなってしまいます。



「固有位置感覚」を障害された動物では、歩くときに爪先を引きずるように歩くので、一歩進むごとに「ジャッ・ジャッ」と爪が地面を擦る音が聞こえるので、飼い主様にも解りやすい症状です。



この「固有位置感覚の異常」は様々な神経疾患に伴って発症します。



したがって、この症状だけで「どこそこの神経が悪い」と詳細に診断することはできませんが・・・



「固有位置感覚に異常があるということは、どこかの神経に異常がある」事はほぼ間違いないといえます。



脳腫瘍や脊髄腫瘍の初期症状であったりすることも多いですので、お散歩中に「なんか足引きずるな?」「なんだか、爪を擦って歩いているような・・・?」なんて思ったときは、上の写真のように足をひっくり返してみてください。



正常なワンちゃんであれば、すぐに元に戻そうとしますが、「固有位置感覚」に異常が生じている場合は、写真のように足がひっくり返っていても平然としています。



そんな時には、すぐに獣医師にご相談くださいませ。

三叉神経麻痺
2014年09月15日 (月) | 編集 |
「口が閉じなくなってしまった」ということで、ご来院いただいたワンちゃんです。



20140915tah01.jpg


ご覧のように、お口が半開きになったままです。



口が半開きのままなので、鼻の周りや下唇によだれが付着しています。



お食事は何とかとれるようですが、水を上手く飲むことができないようです。



来院前日に突然発症したそうです。



このような症状の時に、まずチェックしなければならないのは、


お口が閉まらないのが神経的な問題なのか?

筋・骨格系の問題なのか?

それとも物理的な問題なのか?


・・・ということ。


「オヤツあげたジャーキーが顎に挟まって口が閉じれなくなってしまった」とか、「竹串(焼き鳥等の)が挟まっていた」など、物理的な問題でお口が閉じれなくなる症例が一番多いように思います。



そこで、まずはお口を開いて、奥まで詳細に観察します。


物理的な問題が無いようであれば、次は筋・骨格系の問題か、神経系の問題かを判別します。


筋・骨格系の問題の場合、痛みが生じていたり、アゴや頭部の筋肉の強張りが認められることが多いのですが、今回はその様な事はありませんでした。


お口周辺を触っても、痛がる様子はなく、顎を開け閉めすると、完全にアゴ周辺の筋肉が脱力してしまったような感じでした。


20140915tah03.jpg


このような時には、神経系の異常である可能性が高くなります。


「三叉神経」という顎回りの感覚や運動をつかさどる脳神経の異常が疑われます。


「三叉神経麻痺」という病気で、中高齢のワンちゃんに時折みられる病気です。


今回の症例は、まだ1歳と若く、このような年齢で三叉神経麻痺が発症するというのは珍しいことです。


三叉神経炎とも呼ばれており、神経に炎症が起きることで、このような症状が出るのですが、「なぜ神経炎が起きるのか?」ということについては、あまりハッキリとしたことは解っていないようです。



脳腫瘍などでも、同じような症状が出ることがあるので、そこは慎重に判断しなければいけませんが、今回の症例では、その様な問題はないようです。


「三叉神経麻痺」は、ほとんどが2~4週間ほどかけて、徐々に回復するといわれています。


今回の症例も、神経保護のためのビタミン剤を投与しつつ、経過観察をしていますが、順調に回復してきているようです。


変性性脊髄症
2013年07月01日 (月) | 編集 |
さて、先日ご紹介したこちらのワンちゃん・・・




20130629tah01.jpg



前回は食道の機能不全ということでご紹介いたしましたが・・・




実は、このワンちゃんにはもう一つの神経異常がございます。




「変性性脊髄症」という、脊髄神経の病気です。

※変性性脊髄症について、くわしくはこちら⇒岐阜大学動物病院


数カ月から数年かけて、後ろ足の麻痺が徐々に進行していく病気で、ジャーマン・シェパード・ドッグに好発する疾患として1970年代に報告された病気です。




写真のワンちゃんでも、後ろ足が力なく伸ばされているのがお解りいただけると思います。




近年、日本ではウェルシュ・コーギーでこの「変性性脊髄症」と思われる症例が増えており、神経病学会でも注目されている病気であります。



写真のワンちゃんが、当院に初めていらっしゃったのは昨年の4月。




「2011年頃から、後ろ足を引きずって歩いている」ということで診察にいらっしゃいました。




当院にいらっしゃるまでは、「椎間板ヘルニア」の疑いということで、内科治療を続けていらしたのですが・・・



「椎間板ヘルニア」と「変性性脊髄症」は、とても似通った症状を示すので、診断が難しいことがあります。



この二つを鑑別するために役立つのが、痛みの症状が見られるかどうかと、麻痺が生じるまでの経過時間です。



「椎間板ヘルニア」では、突出した椎間板物質が脊髄神経を急激に「圧迫」するため、神経麻痺と共に、痛みの症状が認められるのが一般的。さらに、後ろ足が麻痺するほどの椎間板ヘルニアの場合は、症状の進行が早く、それこそ数時間から数日で後肢麻痺に陥ることがほとんどです。

脊髄神経を「電気コード」に例えると、「電気コード」がドアや家具にいきなり挟まれて、コードが物理的に傷んでしまった状態が「椎間板ヘルニア」だと想像してください。



一方、「変性性脊髄症」は、神経組織が徐々に「変性」していくため、痛みなどの目立った症状がないまま、初めは歩いているときに爪先を地面にするようになり、その後、徐々に足を引きずる、ふらつくようになるといった具合に麻痺が進行してくるのが特徴です。

これを「電気コード」に例えると、「電気コード」内の金属繊維が、徐々に劣化して電気を上手く通せなくなった状態が「変性性脊髄症」ということになります。





この病気の原因はよく解っておらず、一部の遺伝子の異常が関わっている可能性も示唆されていますが、いまだ決め手はないようです。




そのため、残念なことに、有効な治療法も見つかっていないのです。





神経の麻痺は、数年かけて前足や首の部分まで進行し、最終的には呼吸不全を起こし亡くなってしまうといわれています。



そのため、最終的には安楽死を選択せざるを得ないことも少なくないようです・・・