2019年09月19日 (木) | 編集 |
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
今までにも何度かご紹介してきた疾患ですが・・・
「会陰ヘルニア」です。
今回の症例はトイプードルの男の子(未去勢)。
会陰ヘルニアは肛門周囲で直腸を支えている筋肉が虚弱化することで、肛門横に「脱腸」を起こす疾患です。
筋肉が弱体化する理由ははっきりと分かっていませんが、男性ホルモンが関与している可能性が示唆されています。
実際に未去勢のワンちゃんに多い疾患で、去勢手術をおこなうことで予防につながるのではないかと考えられています。
今回のワンちゃんも未去勢の男の子。
しかも、今回は両サイドの会陰ヘルニアです。

矢印で示した部分が会陰ヘルニア。肛門両側に脱腸のふくらみが認められます。

直腸を支える筋肉郡が虚弱化してしまったため、指を入れるとこんなふうに・・・
会陰ヘルニアの治療には外科手術が必要です。
いろいろと手術法が開発されていますが、当院ではシリコン製のプレートを使用した術式を採用しています。

骨盤内の筋肉が虚弱化し、空洞化した部分に・・・

シリコンプレートを挿入してナイロン製縫合糸で固定します。
傷口が修復されるとともに、再生された組織がシリコンプレート内に食い込んできてガッチリと固定されます。
術式そのものは単純ですが、骨盤周囲には、重要な血管・神経が存在するために、慎重な作業が必要です。
さらに、肛門周囲の手術ですので、衛生面の配慮が重要。
シリコンプレートに感染を起こしてしまうと、再手術が必要になります。

無事に手術終了。
左右の会陰ヘルニアに加えて、再発予防として去勢手術も行ったため、3つの手術を連続で行うマラソン手術となりました。
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
今までにも何度かご紹介してきた疾患ですが・・・
「会陰ヘルニア」です。
今回の症例はトイプードルの男の子(未去勢)。
会陰ヘルニアは肛門周囲で直腸を支えている筋肉が虚弱化することで、肛門横に「脱腸」を起こす疾患です。
筋肉が弱体化する理由ははっきりと分かっていませんが、男性ホルモンが関与している可能性が示唆されています。
実際に未去勢のワンちゃんに多い疾患で、去勢手術をおこなうことで予防につながるのではないかと考えられています。
今回のワンちゃんも未去勢の男の子。
しかも、今回は両サイドの会陰ヘルニアです。

矢印で示した部分が会陰ヘルニア。肛門両側に脱腸のふくらみが認められます。

直腸を支える筋肉郡が虚弱化してしまったため、指を入れるとこんなふうに・・・
会陰ヘルニアの治療には外科手術が必要です。
いろいろと手術法が開発されていますが、当院ではシリコン製のプレートを使用した術式を採用しています。

骨盤内の筋肉が虚弱化し、空洞化した部分に・・・

シリコンプレートを挿入してナイロン製縫合糸で固定します。
傷口が修復されるとともに、再生された組織がシリコンプレート内に食い込んできてガッチリと固定されます。
術式そのものは単純ですが、骨盤周囲には、重要な血管・神経が存在するために、慎重な作業が必要です。
さらに、肛門周囲の手術ですので、衛生面の配慮が重要。
シリコンプレートに感染を起こしてしまうと、再手術が必要になります。

無事に手術終了。
左右の会陰ヘルニアに加えて、再発予防として去勢手術も行ったため、3つの手術を連続で行うマラソン手術となりました。
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
2019年06月11日 (火) | 編集 |
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
まだ2歳と若い猫ちゃんですが、急な嘔吐を主訴にご来院です。
もう10回以上吐いていて、元気がなくぐったりしているとのこと。
今まで元気食欲に全く問題がなかった若い動物で、急に頻回の嘔吐が発症した場合は、まず消化管内異物を疑います。
こちらの猫ちゃんも基本的な身体検査と血液検査を終えたら、超音波検査で消化管の状態を確認。
やはり消化管内異物による腸閉塞が疑わしい・・・
飼主様にも心当たりが・・・
どうもミシン糸を、戸棚から引っ張り出してきて遊んでいたらしい。
超音波検査だけでは確定できなかったので、造影検査を行います。
造影剤を経口投与して、それが胃から腸へと流れていく様子を観察します。

造影剤投与後、6時間程経過していますが、造影剤の大部分が胃内に残ってしまっています。
やはり腸閉塞のようです。
直ぐに緊急手術の準備をして、試験開腹。
すると・・・やはり腸閉塞です。
おそらく飼主様が心配した通り、ミシン糸でしょう。
糸が腸内で絡まって、腸がアコーディオン状に捩れてしまっています。

このように腸がアコーディオン状に捩れるのは「糸状異物」に特徴的な所見です。

胃壁に絡まった糸を懸命に送り出そうとしているうちに、腸がどんどんと手繰り寄せられてアコーディオン状に捩れてしまいます。
この「糸状異物」の摘出がとっても大変。
腸壁に糸が食い込んでいるので、無理やりに引っ張り出そうとすると腸が裂けてしまう恐れがあります。

腸壁を損傷しないように、慎重に引っ張り出しますが・・・
ある程度引っ張ったところで、完全にひっかかってそれ以上引っ張れなくなります。
これを無理に引っ張り続けると腸が裂けてしまうので・・・
いったん糸を切断。
また別の場所を切開してそこから糸を取り出します。

そんなこんなで合計3か所の腸切開と1か所の胃切開をおこなって異物を除去しました。

これ、糸を伸ばしたら2~3mもしくはそれ以上の長さがあるかもしれませんね・・・
ミシン糸なので、くるくるくるくるくるくる・・・
延々と伸びてくる糸を飲みこんでしまったんでしょうね・・・
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
まだ2歳と若い猫ちゃんですが、急な嘔吐を主訴にご来院です。
もう10回以上吐いていて、元気がなくぐったりしているとのこと。
今まで元気食欲に全く問題がなかった若い動物で、急に頻回の嘔吐が発症した場合は、まず消化管内異物を疑います。
こちらの猫ちゃんも基本的な身体検査と血液検査を終えたら、超音波検査で消化管の状態を確認。
やはり消化管内異物による腸閉塞が疑わしい・・・
飼主様にも心当たりが・・・
どうもミシン糸を、戸棚から引っ張り出してきて遊んでいたらしい。
超音波検査だけでは確定できなかったので、造影検査を行います。
造影剤を経口投与して、それが胃から腸へと流れていく様子を観察します。

造影剤投与後、6時間程経過していますが、造影剤の大部分が胃内に残ってしまっています。
やはり腸閉塞のようです。
直ぐに緊急手術の準備をして、試験開腹。
すると・・・やはり腸閉塞です。
おそらく飼主様が心配した通り、ミシン糸でしょう。
糸が腸内で絡まって、腸がアコーディオン状に捩れてしまっています。

このように腸がアコーディオン状に捩れるのは「糸状異物」に特徴的な所見です。

胃壁に絡まった糸を懸命に送り出そうとしているうちに、腸がどんどんと手繰り寄せられてアコーディオン状に捩れてしまいます。
この「糸状異物」の摘出がとっても大変。
腸壁に糸が食い込んでいるので、無理やりに引っ張り出そうとすると腸が裂けてしまう恐れがあります。

腸壁を損傷しないように、慎重に引っ張り出しますが・・・
ある程度引っ張ったところで、完全にひっかかってそれ以上引っ張れなくなります。
これを無理に引っ張り続けると腸が裂けてしまうので・・・
いったん糸を切断。
また別の場所を切開してそこから糸を取り出します。

そんなこんなで合計3か所の腸切開と1か所の胃切開をおこなって異物を除去しました。

これ、糸を伸ばしたら2~3mもしくはそれ以上の長さがあるかもしれませんね・・・
ミシン糸なので、くるくるくるくるくるくる・・・
延々と伸びてくる糸を飲みこんでしまったんでしょうね・・・
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
2019年05月18日 (土) | 編集 |
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
会陰ヘルニアの症例です。
ウェルシュコーギーの未去勢犬。
会陰ヘルニアは肛門周囲で直腸を支えている筋肉が虚弱化することで、肛門横に「脱腸」を起こす疾患です。
詳しくはこちら
↓
過去の症例
過去の症例2

肛門左側に会陰ヘルニアが発症。
支えとなる骨盤周囲の筋肉が虚弱化し、支えを失った直腸が肛門横にボコッと飛び出ています。

脱腸のせいで、肛門が横を向いてしまっていますね。
これを治療するには手術が必要です。
いろいろな方法が報告されていますが、当院ではシリコンプレートを使った整復法を採用しています。
ヘルニア部を切開すると・・・

本来ならこの部分に筋肉があって直腸をしっかりと支えているはずなのですが・・・
それら筋肉が虚弱化し、ぽっかりと空洞になってしまっています。
この空洞部分に支えを失った直腸が飛び出てきてしまうのです。
ここに専用のシリコンプレートを固定して、空洞を塞ぎます。

シリコンプレートを使用した会陰ヘルニアの手術では、術後の感染症に注意しなければなりません。
術前の消毒、洗浄を徹底し、手術中も術野の汚染に細心の注意を払います。
手術直後の様子。

お尻のでっぱりが無くなり、肛門がまっすぐになりましたね。
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
会陰ヘルニアの症例です。
ウェルシュコーギーの未去勢犬。
会陰ヘルニアは肛門周囲で直腸を支えている筋肉が虚弱化することで、肛門横に「脱腸」を起こす疾患です。
詳しくはこちら
↓
過去の症例
過去の症例2

肛門左側に会陰ヘルニアが発症。
支えとなる骨盤周囲の筋肉が虚弱化し、支えを失った直腸が肛門横にボコッと飛び出ています。

脱腸のせいで、肛門が横を向いてしまっていますね。
これを治療するには手術が必要です。
いろいろな方法が報告されていますが、当院ではシリコンプレートを使った整復法を採用しています。
ヘルニア部を切開すると・・・

本来ならこの部分に筋肉があって直腸をしっかりと支えているはずなのですが・・・
それら筋肉が虚弱化し、ぽっかりと空洞になってしまっています。
この空洞部分に支えを失った直腸が飛び出てきてしまうのです。
ここに専用のシリコンプレートを固定して、空洞を塞ぎます。

シリコンプレートを使用した会陰ヘルニアの手術では、術後の感染症に注意しなければなりません。
術前の消毒、洗浄を徹底し、手術中も術野の汚染に細心の注意を払います。
手術直後の様子。

お尻のでっぱりが無くなり、肛門がまっすぐになりましたね。
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
2019年05月10日 (金) | 編集 |
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
嘔吐と元気食欲不振を主訴に来院した症例。
「くつ下」を飲みこんでしまったとのことです。
こちらのワンちゃん。
くつ下を食べてしまってから、何度か吐いたそうですが、そのたびに出てきた靴下を再び飲みこんでしまったとのこと・・・
飼主様が吐き出した靴下を奪い取ろうとしても、咬みついてきてとりあげることができなかったそうです・・・
異物(くつ下)による消化管閉塞ということで緊急手術となりました。

赤黒く変色した部分は、くつ下が通過した部分。
強い圧迫の為、重度の炎症が起きています。
術中の所見。
「くつ下」が通過した小腸に強い炎症が起きています。
異物による圧迫、血行不良がもとで消化管が壊死したり、切除しなければいけない場合もありますが・・・
今回は何とか大丈夫そうです。

閉塞部で腸を切開し、中に詰まった「くつ下」を引っ張り出します。
ギチギチに詰まっているので、かなり強い力で引っ張らなければ取り出せませんでした。

町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
嘔吐と元気食欲不振を主訴に来院した症例。
「くつ下」を飲みこんでしまったとのことです。
こちらのワンちゃん。
くつ下を食べてしまってから、何度か吐いたそうですが、そのたびに出てきた靴下を再び飲みこんでしまったとのこと・・・
飼主様が吐き出した靴下を奪い取ろうとしても、咬みついてきてとりあげることができなかったそうです・・・
異物(くつ下)による消化管閉塞ということで緊急手術となりました。

赤黒く変色した部分は、くつ下が通過した部分。
強い圧迫の為、重度の炎症が起きています。
術中の所見。
「くつ下」が通過した小腸に強い炎症が起きています。
異物による圧迫、血行不良がもとで消化管が壊死したり、切除しなければいけない場合もありますが・・・
今回は何とか大丈夫そうです。

閉塞部で腸を切開し、中に詰まった「くつ下」を引っ張り出します。
ギチギチに詰まっているので、かなり強い力で引っ張らなければ取り出せませんでした。

町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
2019年04月06日 (土) | 編集 |
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
ボタン電池の誤飲事故です。
興奮して呼吸が荒い状態だったので、レントゲンがブレていますが、胃の中にはっきりとボタン電池が。

症例は体重28kgの大型犬。
このくらいの大きさの電池ならウンチにでてくるから平気かな?・・・と思ってしまいますが・・・
ボタン電池は危険なんです!
インターネットやTVのニュースなどでも度々話題になっているようなので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
アルカリ電池は胃の中に入ると放電し,胃の中の胃酸で被覆されている金属が腐食され,電池の中にあるアルカリ性の物質が流れ出て胃の壁を損傷することが警告されてきました.
最近多用されているリチウム電池は放電能力が高く,電池の寿命がきれるまで一定の電圧を維持する特性があります.このため誤って飲み込んだ時は消化管の中で放電し,電気分解によりマイナス側にアルカリ性の液体を作ってしまいます.
アルカリ電池のように金属被膜の腐食によって電池の内容が流出するのではなく,電池の外側にアルカリ性液が生成されるわけです.金属被膜の腐食には時間がかかりますが,放電によって危険な液体ができるため,リチウム電池では30分から1時間という非常に短時間でも消化管の壁に潰瘍を作ってしまうことが報告されています.
日本小児外科学会HPより抜粋
こんな実験も・・・

国民生活センター資料より
今回の症例が誤飲したのは、リチウム電池でしたので、急いで処置を行わなければなりません。
早速、催吐処置を行います。


催吐処置で吐かせたボタン電池。
誤飲からおよそ2時間経過ですが・・・新品の電池がすでに腐食しています。
リチウム電池の誤飲の怖いところは、「吐かせておしまい」とはいかないところ。
電池がこれだけ腐食しているということは、胃内の粘膜にもかなりのダメージがあるはずです。
最悪、重度の胃潰瘍から胃穿孔を起こし、致命的な腹膜炎を併発する可能性もあるのです。
しばらくは慎重な経過観察が必要です。
町田市 相模原市 動物病院 谷口動物病院
ボタン電池の誤飲事故です。
興奮して呼吸が荒い状態だったので、レントゲンがブレていますが、胃の中にはっきりとボタン電池が。

症例は体重28kgの大型犬。
このくらいの大きさの電池ならウンチにでてくるから平気かな?・・・と思ってしまいますが・・・
ボタン電池は危険なんです!
インターネットやTVのニュースなどでも度々話題になっているようなので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
アルカリ電池は胃の中に入ると放電し,胃の中の胃酸で被覆されている金属が腐食され,電池の中にあるアルカリ性の物質が流れ出て胃の壁を損傷することが警告されてきました.
最近多用されているリチウム電池は放電能力が高く,電池の寿命がきれるまで一定の電圧を維持する特性があります.このため誤って飲み込んだ時は消化管の中で放電し,電気分解によりマイナス側にアルカリ性の液体を作ってしまいます.
アルカリ電池のように金属被膜の腐食によって電池の内容が流出するのではなく,電池の外側にアルカリ性液が生成されるわけです.金属被膜の腐食には時間がかかりますが,放電によって危険な液体ができるため,リチウム電池では30分から1時間という非常に短時間でも消化管の壁に潰瘍を作ってしまうことが報告されています.
日本小児外科学会HPより抜粋
こんな実験も・・・

国民生活センター資料より
今回の症例が誤飲したのは、リチウム電池でしたので、急いで処置を行わなければなりません。
早速、催吐処置を行います。


催吐処置で吐かせたボタン電池。
誤飲からおよそ2時間経過ですが・・・新品の電池がすでに腐食しています。
リチウム電池の誤飲の怖いところは、「吐かせておしまい」とはいかないところ。
電池がこれだけ腐食しているということは、胃内の粘膜にもかなりのダメージがあるはずです。
最悪、重度の胃潰瘍から胃穿孔を起こし、致命的な腹膜炎を併発する可能性もあるのです。
しばらくは慎重な経過観察が必要です。
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