町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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短頭種気道症候群
2015年10月10日 (土) | 編集 |
以前にもとりあげたことがありますが、「短頭種気道症候群」についてであります。




まずはこちら。



正常犬の気道のレントゲンのご紹介から。



20151010tah01.jpg



鼻からの空気の通り道と、口からの通り道の間に「軟口蓋」があり、その奥で気管へと一つにつながります。



こちらは、あるフレンチブルドッグの気道のレントゲン。



20151010tah03.jpg



正常犬に比べて、「軟口蓋」の部分が分厚く、空気の通り道が明らかに狭まってしまっています。



フレンチブルドッグやパグ犬のような「短頭種」と言われる犬種では、通常のワンちゃんに比べて気道が狭くなっていることがほとんどです。



これを、「短頭種気道症候群」と言います。



ぺちゃんこに潰れた鼻、分厚くなった軟口蓋、通常よりも細い気管など、生まれつき気道に不具合が生じるため、普通の犬種に比べてイビキをかきやすかったり、すぐにゼエゼエと呼吸が荒くなったりしやすいのです。



中でも、気道の閉塞が重度な症例では、何かの拍子に窒息死してしまうこともあるのです。



こちらは、より重度な「短頭種気道症候群」のワンちゃん。


20151010tah02.jpg


気道の狭窄が重度です。



ここまで重度になると、睡眠中等に窒息する危険があります。



ぺちゃんこに潰れたお顔が可愛らしい「短頭種」ですが、その特徴的なお顔の影には、このような疾患が隠れているのであります。

誤嚥性肺炎
2015年08月31日 (月) | 編集 |
まずは正常な胸のレントゲン写真です。



20150831tah01.jpg



真ん中にまるく写っているのが心臓です。


左右の肺は空気を含んでいるので黒く写ります。




続いて、咳と呼吸困難で来院した仔犬ちゃんのレントゲン写真。



20150831tah02.jpg



正常なレントゲン写真に比べると、なんだか心臓の形がハッキリしません。



写真左側の肺の一部も白く曇ってしまっています。



これは「誤嚥性肺炎」を示唆する所見です。


「誤嚥性肺炎」のは、食物や嘔吐物などが間違って気管に入り込んでしまった場合におこる肺炎です。



写真で白くなっているところは右肺の「中肺葉」と言う部分で、気管の位置関係の都合で、「誤嚥性肺炎」を起こしやすい部分とされています。



この症例は、自宅に迎えた翌日から咳の症状があり、「ケンネルコフ」というワンちゃんの風邪を患っていたのですが、夜間に激しくせき込んだあとから急に具合が悪くなってきたということで入院治療となりました。



おそらく、激しくせき込んでいるうちに、食物か何かを誤嚥してしまったものと思われます。




悪化させると命にかかわることもあるので、的確に診断し治療を行わなければなりません。

難治性の咳と気管虚脱
2015年07月24日 (金) | 編集 |
何カ月も咳が治まらないということで来院された症例です。



12歳と高齢の小型犬で、「心臓病から来る咳だろう」ということで治療をうけていたそうなのですが、なかなか良くならず、むしろ悪化してきているということでご来院いただきました。



聴診すると、たしかに心雑音が聴取されます。



高齢の小型犬では、「僧帽弁閉鎖不全症」を発症することが多く、12歳以上の小型犬では2~3割のワンちゃんがこの病気になっているというデータがあるほどです。


「僧帽弁閉鎖不全症」では、心拡大からの気管圧迫による咳や、肺うっ血からの咳など、咳症状を示すことが一般的です。



そのため、小型犬で咳を繰り返す症例では、たしかに鑑別診断のリストに挙げなければならない疾患ではありますが・・・



どうも、今回のワンちゃんでは様子が違います。



実は、高齢の小型犬が咳症状を示す際に注意をしなければならない疾患がもう一つあります。


「気管虚脱」であります。



この疾患も、高齢の小型犬に多く見られる疾患で、遺伝的な問題、加齢による気管組織の脆弱化などにより、呼吸時に気管がつぶれてしまう疾患です。



初期の段階では、ほとんど無症状ですが、進行すると難治性の咳や、呼吸困難を呈します。



この疾患を診断するのに重要なのは、「息を吸ったとき(吸気)」と「息を吐いた時(呼気)」の別々のタイミングでレントゲンを撮影することです。



「気管虚脱」に陥ったワンちゃんでは、気管内圧と胸腔内圧の関係により、呼吸のタイミングに合わせて気管がつぶれたり(虚脱)、拡張したりを繰り返します。


そのため、レントゲン撮影のタイミングによっては、疾患の見逃しにつながってしまうのであります。



20150724tah01.jpg
吸気時(息を吸ったとき)に撮影した胸部気管。
気管は正常なように見えますが・・・




20150724tah02.jpg
呼気時(息を吐いた時)では気管内の圧力が下がるため、気管がペシャンコに潰れてしまっています。
正常な気管では、気管軟骨がしっかりと支えているため、このように気管がつぶれることはありえません。
遺伝的な問題や加齢により、気管の支持構造が脆弱化するため、このように気管が形状を維持することができなくなっていまうのです。




実は、


○高齢の小型犬に気管虚脱が多い事


○気管虚脱では咳の症状が出ること


○気管虚脱の診断には、「吸気」と「呼気」の異なるタイミングでのレントゲン撮影が必要であること



は、獣医学生でも聞いたことがあるくらい基本的な知識であります。




ただし、人間の思い込みというのは怖いもので・・・


先に「心雑音があるから、心臓からの咳かな?」と先入観を持ってしまうと、それなりに経験のある獣医師でも、スッポリとこの気管虚脱を見逃してしまうことも少なくないのです。

気管虚脱
2015年04月17日 (金) | 編集 |
小型犬に多い疾患の一つに、「気管虚脱」というものがあります。


有名な病気ですので、耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか?



名前の通り、気管が虚脱(つぶれる)してしまいます。



気管は、環状に連なった軟骨と、それを取り巻く膜で作られています。



掃除機のホースと同じような構造ですね。



この軟骨が脆弱化し、呼吸の際の圧力の変化に対して、筒状の構造を保つことができなくなり、虚脱(つぶれる)してしまうのです。





20150417tah01.jpg
吸気(息を吸う)のタイミング。気管は正常に見えるが・・・




20150417tah02.jpg
呼気(息を吐く)タイミングでは、ぺちゃんこに潰れてしまっています。
呼吸のどのタイミングで虚脱するかは、脆弱化した軟骨の位置によって変わります。



気管は常につぶれているわけではなく、呼吸による気管内圧の変化によってつぶれたり、もとにもどったりを繰り返します。



虚脱が軽度の場合は無症状であることも多いですが、重度の症例では呼吸困難で命にかかわることもあります。



飼い主様が気が付きやすい症状としては咳ですね。



ちょっと興奮したり、首を圧迫するだけでゲホゲホと咳をする場合は、この疾患が疑われます。




チワワやトイプードル、ポメラニアン、マルチーズと言った小型犬の他に、柴犬等でもよく見かけます。



遺伝的な素因があると考えられているため、上記のような犬種では、首輪ではなく胴輪でお散歩に行くようにして、首に必要以上に負担がかからないようにしたり、体重をしっかりと管理して、脂肪による気管の圧迫が起きないように気をつけることも大切です。


気管支拡張症
2014年10月27日 (月) | 編集 |
慢性的な咳と、呼吸困難で来院された症例です。



心不全からの咳・呼吸困難と診断され、1か月ほど治療を続けていたそうですが、なかなか改善が無く、当院に来院された頃には酸素室での入院が必要になるほど、重度の呼吸困難に陥っていました。



ワンちゃんで呼吸困難と言うと、たしかに心不全が原因であることが多く、私も初見では心不全からの肺水腫(肺胞内に水分が貯留して換気不全を起こす)を第一に疑い、酸素室での治療を始めたのですが・・・


入院2日目に実施した精密検査の結果からすると、どうも違うようです。


レントゲン・心電図・血圧測定・超音波検査など詳しく調べましたが、心臓には明らかな異常が認められません。



どうやら、気管支の異常で呼吸困難を起こしているようです。


こちらの写真は、呼吸のタイミングに合わせて撮影したレントゲン画像です。

20141027tah01.jpg
左側は「吸気(息を吸う)」のタイミング。 右側は「呼気(息を吐く)」タイミング。


青い丸で囲った部分に気管支が写っているのですが、左の「吸気」のタイミングでは丸く拡張した気管支が写っています。


一方、右側の「呼気」のタイミングでは、気管支がひしゃげてつぶれている様子が写っています。


20141027tah02.jpg
拡大写真。青丸中心部の黒く円系になっている部分が拡張した気管支。右側の画像では、気管支がひしゃげて狭くなっている様子が観察されます。



「気管支拡張症」という病気です。


慢性的な炎症や感染症などが長期間続くと、気管支の壁構造が脆弱化してしまい、気管支に拡張や歪みが生じます。
※掃除機のホースの骨組やビニール部分が劣化してしまったようなイメージ。


気管支が拡張すると、呼吸ガスの通過障害や、気管支粘液の排出障害などが生じ、さらに病変が進行、悪循環していきます。



気管支壁構造が重度に障害され、脆弱化てしまった症例では、「呼気(息を吐く)」時の気管内圧の低下によって、上記画像の症例のように気管支がつぶれてしまいます。

※動物の呼吸運動は、胸部の筋肉運動により、肺を押し縮める力が働くことで息を吐き出します。
押し縮める力は気管支にも加わりますが、気管支壁が正常であれば、気管支は形状を保つことができます。
しかし、気管支拡張症では気管支の形状を保つことができずにつぶれてしまいます。




こうなると、息を吸うときには気管支が拡張して空気を吸い込むことができるものの、息を吐こうとした瞬間に気管支がペコリとひしゃげてしまって、上手く息を吐くことができなくなってしまいます。


ストローで呼吸をしている所を想像してみてください。息を吸うときは問題ないのに息を吐こうとするとストローがペシャっとつぶれてしまって息を吐き出すことができない状態です。



呼吸と言うのは、新鮮な空気を吸い込み、ガス交換の終わった空気を吐き出すことで成り立っています。



「息を吐くことができない」と言うことは、「息を吸うことができない」のと同じくらいに苦しい事なのです。




気管支拡張症は「不可逆性疾患」、つまり一度なってしまうと治ることが無い疾患です。



そのため、ここまで重度になった症例では、内服薬で症状を緩和することはできても、失われた気管支や肺の機能を取り戻すことはできません。



写真の症例のワンちゃんも、初診時よりは随分と状態は良くなったものの、御自宅での酸素室管理が欠かせない状態になってしまいました。



気管支拡張症は、早期に治療を始めれば、元通りに治ることはなくても、悪化を防ぐ事は可能です。



初期のうちは、「ときおり咳きこむ」、「痰がからむ」といった軽い症状しか見られないため、重症化するまで見逃されてしまうことが多い病気ですので、獣医師としても、飼い主様としても注意が必要な病気であります。