町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
  • 07«
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • »09
脾臓腫瘍
2015年11月02日 (月) | 編集 |
獣医師が遭遇することの多い腫瘍に、「脾臓腫瘍」がございます。




脾臓と言うのは左の脇腹にある臓器。



造血や免疫にかかわる働きを持っています。



20151102tah01.jpg




この脾臓に腫瘍ができることが良くあります。



これがなかなか厄介な腫瘍です。



まずは、腹腔内にあるため、身体検査で見つけることが困難です。



よほど巨大化すれば腹部の触診で見つけることも可能ですが、それでは遅すぎます。



レントゲンでもある程度の大きさ(2~3cm)にならなければ見つけることは困難です。



超音波であれば数ミリの大きさのうちに発見することが可能です。



20151102tah02.jpg
巨大化した脾臓腫瘍。直径6~7cm。テニスボールくらいの大きさ。



脾臓腫瘍で最も怖いのが、腫瘍からの出血であります。



巨大化した脾臓腫瘍は非常に脆く、ちょっとした衝撃などでも大出血をすることがあります。



最悪の場合、そのまま失血死してしまうことも珍しくありません。



上述したように、脾臓腫瘍は超音波検査をおこなわない限り、早期発見が難しい腫瘍です。



超音波検査を含む健康診断を定期的に受けていただくことが大切になります。

指先の腫瘍
2015年07月17日 (金) | 編集 |
指先に「できもの」ができてしまったネコちゃんです。





20150717tah01 (2)




右前足の薬指、爪のすぐ横のところにプックリと「できもの」できています。




このように、皮膚にしこりが出来た場合は、まず針を刺して内部の細胞を採取する「針生検」という検査をおこないます。



針をさすといっても、通常のワクチン接種の際などに使う針と同じくらいの太さの針なので、特に麻酔なども必要とせず、簡単にできる検査であります。



もちろん、針で細胞を少量取り出して調べるだけなので、確定診断はできませんが、「早めに手術で摘出したほうが良いのか?」、それとも「もう少し様子を見ることができるのか?」 を、大まかに判断することができます。



そうして採取した細胞がこちら。


20150717tah01.jpg



赤紫の顆粒をたくさん含んだ細胞が採取されました。



「肥満細胞」という細胞です。



「肥満細胞」自体は、特別な細胞ではなく、皮膚の炎症部分などにも出現することのある細胞ですが、このように多数観察されるのは異常です。



これは、「肥満細胞腫」を疑う所見です。




「肥満細胞腫」は皮膚にできる腫瘍としては一般的で、ワンちゃんでは悪性であることが多く、注意が必要です。



一方ネコちゃんでは、比較的良性で、手術で摘出すれば完治することがほとんど。



とはいえ、今回は出来た場所が厄介です。




腫瘍を切除する場合、なるべく正常な皮膚を含めて切除するようにします。



腫瘍細胞の取り残しを防ぐためです。



ですが、今回のように指先に出来てしまうと、正常部分を含めて切除することが難しくなります。




20150717tah02.jpg



こういったケースでは、指の切断が必要になることもあるのです。
※中途半端な切除では、再発を繰り返すため。



また、指先と言うのは、どうしても歩行の衝撃や、トイレの砂を掘り起こすなど、日常的に刺激が加わりやすい部分であるため、傷の治りも悪くなりやすく、なかなか厄介な部分であります。



ワンちゃんやネコちゃんの皮膚と言うのは、背中や肩、太ももなどであれば、皮膚が良く伸びるので大きめの腫瘍でもゆとりを持って切除することができるのですが、足先、指先や、顔周りなど皮膚を引っ張っても伸びにくいような部分は、切除が困難になることがほとんどです。



そういった部分にしこりを見つけた場合は、あまり様子を見ずに、早め早めに獣医師にご相談いただくことをお勧めいたします。


顎が開かないネコちゃん 2
2015年01月26日 (月) | 編集 |
レントゲン画像と臨床症状から、頭蓋内腫瘍を疑ったネコちゃんの続きです。



20150122tah04.jpg
青丸内が、右側に比べると白くぼやけています。腫瘍を疑う所見です。



部位としては、左上顎の付根、左眼球のすぐ下のあたりです。人間でいうと、ちょうど奥歯(おやしらず)のあたりといったところでしょうか。


できれば、お口を開けて中の状況を見たいところですが、このネコちゃんでは腫瘍の影響からか、口が全く開かなくなってしまっています。



そこで、これ以上の詳しい検査の為には、CTでの頭部断層像の撮影が必要と判断し、日本動物高度医療センターの腫瘍科での精密検査を依頼することといたしました。






20150122tah02.jpg
高度医療センターでのCT撮影
仰向けの状態での頭部断層像。鼻先が画面奥にあるような状態の画像。



CT撮影をすると、左顎周辺の組織が右に比べると白っぽくなり、腫れあがっているのが良くわかります。



左眼球も圧迫されて位置が変化してしまっています。右側は、眼球周辺や下顎の骨の周囲に黒く空洞があるのですが、左側(病変側)は、空洞部分が腫瘍組織で埋まってしまっています。



組織検査の結果、この腫瘍は悪性腫瘍(ガン)の可能性が高いということでした。



すでに、頭部の広い範囲にガン組織が広がっており、根治を目指すことは困難でした。



たとえば、腕や足が癌に侵された場合、最悪の場合、腕・足そのものを切断して根治を目指すことも可能ですが、頭部の腫瘍では切除可能な範囲が限られるため、治療が困難なことがほとんどです。



また、仮に切除可能でも、外観が大きく変わってしまったり、採食などの日常の行動にも障害が出ることも少なくないため、積極的な治療が難しい部分であります。



今回のネコちゃんでは、すでにガンによって顎の動きや、頬の神経に麻痺が生じていたため、食事をとることが非常に難しくなっていました。


高度医療センターでは、根治を目指すことは難しいが、採食を補助するための下顎部分切除や、胃瘻チューブの設置による延命治療が飼い主様に提案されましたが、飼い主様は完治することができないのであれば、大きな外科手術は望まれないということでした。



そこで、現在はわずかに開くの口の隙間から流動食を与えつつ、補助的な点滴や鎮痛剤を使った疼痛管理など緩和療法を行って、残された時間をできるだけ御家族のもとで、少しでも気分よく過ごせるようにサポートを続けている状況であります。




動物の医療では、動物自身が症状を言葉で訴えることができないため、病気の診断・発見が困難になることが少なくありません。



今回のように、「口が痛くて開かない」という症状でも、歯牙疾患・口腔疾患だけにとどまらず、様々な診療科にまたがる広い視野を持って、詳細な問診・身体検査を行わなければならないのです。




最後に、大切なネコちゃんが、病気でつらい思いをされている中、「様々な病気の知識を発信し、ワンちゃん・ネコちゃんの病気の早期発見に少しでもつなげたい」という当ブログの趣旨を御理解下さり、今回の症例紹介にご協力くださったネコちゃんの飼い主様に、心よりお礼を申し上げます。

顎が開かないネコちゃん 1
2015年01月22日 (木) | 編集 |
昨年末から診させていただいている症例です。



10歳になったばかりのネコちゃんなのですが、昨年の9月頃から元気や食欲が無くなってきたということでした。


初めはネコ風邪だろうという診断で、抗ウイルス剤を投与して様子を見ていたそうですが、そのうち顎を気にしてひっかくようになり、当院に来院する頃には口が余り開かず、開けようとすると痛がるようになっていました。


抗生物質の投与や、鎮痛剤の投与で治療を続けてきたものの、改善が無いということで当院にいらっしゃいました。



さっそく、身体検査で詳しく調べていくと・・・


たしかに口を開こうとすると痛がる様子があります。そもそも、アゴの関節や筋肉が完全に固まっているようで、無理やり開こうとしてもアゴが開きません。


さらには左側の頬や鼻周辺に知覚麻痺がありました。



「顎が開かない」という症状から考えると、歯科疾患や顎の関節疾患(落下事故で顎をぶつけるなど)、筋肉の異常(咀嚼筋炎)、頭蓋内腫瘍をなどが疑われます。



ただし、歯科疾患や顎の関節疾患では、今回のように顎を開こうとしてもビクともしないというよりは、多少は動くのだけど、完全に開かない・痛みがあるといった症状になります。


今回の症例は、5mm程の隙間が開くだけで、それ以上には全く口が開かない状態です。


このような状態では、ワンちゃんの場合は「咀嚼筋炎(そしゃくきんえん)」を疑います。このブログでも一度ご紹介したことがございます。



ただし、「咀嚼筋炎」はちょっと特殊な病気で、ワンちゃんでは稀に見られるものの、ネコちゃんでの症例というのは聞いたことがありません。それに、「咀嚼筋炎」で知覚麻痺がでるということも普通は考えられません。



そうなると・・・腫瘍の可能性が一番高いか・・・?



とはいえ、身体検査だけではまだ解りませんから、頭部のレントゲンを撮影してみます。



20150122tah03.jpg
頭部レントゲン。画像の上が鼻の先。頭を上から見下ろす角度での撮影。



一見すると特に異常が無いように見えますが・・・



頭の構造と言うのは、基本的に左右対称であるということを念頭において観察すると、ある違いに気が付きます。




どうでしょう?


お解りになりますか?








20150122tah04.jpg


左側の鼻の穴の奥、眼窩周辺(眼球を支える構造)が白く影になっています(青丸で囲んだ部分)。


右側の同じ部分を見ると、三角形に黒い空洞があるのが解ります。これが正常な状態。



この所見から、やはり左の鼻、口、眼の奥に何らかの腫瘍性疾患が存在することが疑われます。



この腫瘍と思われる部分のせいで、顎の動きが妨げられ、また左頬に分布する神経にも障害が出ているのだと考えられます。



ですが、これ以上詳しく調べるには、CT撮影と、腫瘍と思われる部分の組織検査が必要です。



そこで、高度医療センターでの精密検査を依頼することとなりました。


つづく・・・


脾臓の腫瘍
2014年09月23日 (火) | 編集 |
前回は、健康診断で見つかる異常として、胆嚢の異常についてとりあげましたが・・・



本日も、同じように健康診断で見つかることの多い異常です。



こちらは、わんにゃんドックで撮影した腹部レントゲン画像。



元気も食欲も全く問題なく、一般身体検査でも何も異常は見つからなかったワンちゃん。


20140923tah04.jpg


ですが、腹部レントゲンで、直径3cm程度のボール状の「しこり」が見つかりました。



位置からすると、「脾臓」にできた腫瘤が疑われます。



超音波検査で詳しく調べると・・・



20140923tah03.jpg



やはり、脾臓の先端部分に直径25mm程度の腫瘤が見つかりました。







脾臓は、比較的腫瘍ができやすい臓器です。



しかも、脾臓に発生した腫瘍の1/3~2/3は悪性であるというデータがあります。



脾臓にできる悪性腫瘍としては、「血管肉腫」と呼ばれる腫瘍が多いのですが、この「血管肉腫」は急速な増殖と、広範囲な転移を特徴とするため、慎重な診断・治療が求められます。



脾臓の良性腫瘍としては、「血腫」や「結節性過形成」などが一般的です。







脾臓の腫瘍は、良性・悪性関わらず、ほぼ無症状のまま経過し巨大化していきます。



そして、ある日突然、巨大化した腫瘍が破裂し、大出血を起こすことで急激な虚脱状態に陥り、緊急で病院につれてこられるケースが多いのです。




脾臓腫瘍の恐ろしいところは、良性腫瘍であっても、巨大化した腫瘍が出血し、命にかかわる事態に陥る可能性があるところです。



また、腫瘍の良性・悪性の区別は、レントゲン検査や超音波検査ではできず、切除した腫瘍組織そのものを検査しなければ判別できません。



そのため、脾臓に腫瘤が見つかった場合は、良性・悪性に係わらず、積極的な外科切除が勧められるのです。




20140923tah01.jpg
術中の写真。レントゲン、超音波で観察された通り、3cm弱の腫瘤が脾臓先端部に存在します。
組織検査の結果、「結節性過形成=良性」との診断でした。



出血が起きるまで発見されなかったような脾臓腫瘍では、手術中の死亡率も高く、術後の生存期間も転移等の問題から6か月~1年程度と短くなっていますが・・・




今回のように、無症状のうちに早期発見できた症例では、悪性であったとしても完治が望めます。





我々人間もそうですが、ワンちゃん・ネコちゃんにとっても、定期的な健康診断は非常に大切ですね。