2018年02月09日 (金) | 編集 |
「皮膚にデキモノができたんですけど・・・」
腫瘍性疾患の中でも、皮膚腫瘍は発見が容易であり、日常診療でもよく目にする疾患です。
こういった時に、まず行う検査が「針生検」です。
注射針を使用して、デキモノ内部の細胞を採取し、顕微鏡で調べます。
針で細胞を少量取り出すだけなので、「確定診断」を得られるほどの検査ではありませんが・・・
そのデキモノが単なる炎症による腫れなのか?
腫瘍の疑いがあるのか? 良性の可能性が高いのか? 悪性の疑いが高いのか?
ある程度の「傾向」をつかんで
様子を見てよいのか? 早めに切除して詳しい検査をした方がよいのか? 大まかな診療方針を立てるのに役立つ検査です。
採取した細胞が、炎症細胞が主体であれば「炎症によって腫れている」と推察されるので、まずは消炎剤や抗生剤の投与で様子を見ることができます。
一方、「腫瘍」の場合は、血液細胞や炎症細胞のほかに、「単一の細胞の異常増殖」が見られます。

腫瘍細胞。単一の細胞が多数出現しています。
「腫瘍」というのは、細胞が異常を起こして、異常増殖する疾患です。
乳腺細胞が異常を起こして増殖すれば乳腺腫瘍/乳がんということになります。
白血球(血液細胞の一種)が異常増殖すれば「白血病」というわけです。
むかし「マトリックス」という映画がありましたね。あの映画のクライマックスで、敵役のエージェント・スミスがどんどんと分身を増やして増殖していくシーンがありましたが、腫瘍細胞はまさしくあんな感じです。

異常増殖した腫瘍細胞。
色の濃い部分が「細胞核」。色の薄い部分が「細胞質」。
目玉焼きの「黄身」と「白身」の関係です。
腫瘍には「良性」と「悪性」があるわけですが・・・
おなじ異常増殖をするにしても、「悪性」の腫瘍細胞は「良性」の腫瘍細胞に比べて、細胞の増殖が無秩序になります。

細胞の「核」の大きさにバラツキがでたり・・・

一つの細胞の中に複数の「核」が存在していたり・・・
「良性腫瘍」はエージェント・スミスが異常増殖するものの、それぞれのクローンの見た目は整っており、皆そろって秩序をもって行動している感じ。
「悪性腫瘍」は異常増殖したエージェント・スミスが大暴走して、それぞれの見た目にも違いが出てしまい、無秩序に行動している感じ。
映画を見ていない方には通じないかもしれませんが、そんなイメージです。
そんなことを考えながら、採取された細胞を観察し、早急に手術を行うべきか診断していくのです。
町田市 谷口動物病院
腫瘍性疾患の中でも、皮膚腫瘍は発見が容易であり、日常診療でもよく目にする疾患です。
こういった時に、まず行う検査が「針生検」です。
注射針を使用して、デキモノ内部の細胞を採取し、顕微鏡で調べます。
針で細胞を少量取り出すだけなので、「確定診断」を得られるほどの検査ではありませんが・・・
そのデキモノが単なる炎症による腫れなのか?
腫瘍の疑いがあるのか? 良性の可能性が高いのか? 悪性の疑いが高いのか?
ある程度の「傾向」をつかんで
様子を見てよいのか? 早めに切除して詳しい検査をした方がよいのか? 大まかな診療方針を立てるのに役立つ検査です。
採取した細胞が、炎症細胞が主体であれば「炎症によって腫れている」と推察されるので、まずは消炎剤や抗生剤の投与で様子を見ることができます。
一方、「腫瘍」の場合は、血液細胞や炎症細胞のほかに、「単一の細胞の異常増殖」が見られます。

腫瘍細胞。単一の細胞が多数出現しています。
「腫瘍」というのは、細胞が異常を起こして、異常増殖する疾患です。
乳腺細胞が異常を起こして増殖すれば乳腺腫瘍/乳がんということになります。
白血球(血液細胞の一種)が異常増殖すれば「白血病」というわけです。
むかし「マトリックス」という映画がありましたね。あの映画のクライマックスで、敵役のエージェント・スミスがどんどんと分身を増やして増殖していくシーンがありましたが、腫瘍細胞はまさしくあんな感じです。

異常増殖した腫瘍細胞。
色の濃い部分が「細胞核」。色の薄い部分が「細胞質」。
目玉焼きの「黄身」と「白身」の関係です。
腫瘍には「良性」と「悪性」があるわけですが・・・
おなじ異常増殖をするにしても、「悪性」の腫瘍細胞は「良性」の腫瘍細胞に比べて、細胞の増殖が無秩序になります。

細胞の「核」の大きさにバラツキがでたり・・・

一つの細胞の中に複数の「核」が存在していたり・・・
「良性腫瘍」はエージェント・スミスが異常増殖するものの、それぞれのクローンの見た目は整っており、皆そろって秩序をもって行動している感じ。
「悪性腫瘍」は異常増殖したエージェント・スミスが大暴走して、それぞれの見た目にも違いが出てしまい、無秩序に行動している感じ。
映画を見ていない方には通じないかもしれませんが、そんなイメージです。
そんなことを考えながら、採取された細胞を観察し、早急に手術を行うべきか診断していくのです。
町田市 谷口動物病院
2015年11月02日 (月) | 編集 |
獣医師が遭遇することの多い腫瘍に、「脾臓腫瘍」がございます。
脾臓と言うのは左の脇腹にある臓器。
造血や免疫にかかわる働きを持っています。

この脾臓に腫瘍ができることが良くあります。
これがなかなか厄介な腫瘍です。
まずは、腹腔内にあるため、身体検査で見つけることが困難です。
よほど巨大化すれば腹部の触診で見つけることも可能ですが、それでは遅すぎます。
レントゲンでもある程度の大きさ(2~3cm)にならなければ見つけることは困難です。
超音波であれば数ミリの大きさのうちに発見することが可能です。

巨大化した脾臓腫瘍。直径6~7cm。テニスボールくらいの大きさ。
脾臓腫瘍で最も怖いのが、腫瘍からの出血であります。
巨大化した脾臓腫瘍は非常に脆く、ちょっとした衝撃などでも大出血をすることがあります。
最悪の場合、そのまま失血死してしまうことも珍しくありません。
上述したように、脾臓腫瘍は超音波検査をおこなわない限り、早期発見が難しい腫瘍です。
超音波検査を含む健康診断を定期的に受けていただくことが大切になります。
脾臓と言うのは左の脇腹にある臓器。
造血や免疫にかかわる働きを持っています。

この脾臓に腫瘍ができることが良くあります。
これがなかなか厄介な腫瘍です。
まずは、腹腔内にあるため、身体検査で見つけることが困難です。
よほど巨大化すれば腹部の触診で見つけることも可能ですが、それでは遅すぎます。
レントゲンでもある程度の大きさ(2~3cm)にならなければ見つけることは困難です。
超音波であれば数ミリの大きさのうちに発見することが可能です。

巨大化した脾臓腫瘍。直径6~7cm。テニスボールくらいの大きさ。
脾臓腫瘍で最も怖いのが、腫瘍からの出血であります。
巨大化した脾臓腫瘍は非常に脆く、ちょっとした衝撃などでも大出血をすることがあります。
最悪の場合、そのまま失血死してしまうことも珍しくありません。
上述したように、脾臓腫瘍は超音波検査をおこなわない限り、早期発見が難しい腫瘍です。
超音波検査を含む健康診断を定期的に受けていただくことが大切になります。
2015年07月17日 (金) | 編集 |
指先に「できもの」ができてしまったネコちゃんです。

右前足の薬指、爪のすぐ横のところにプックリと「できもの」できています。
このように、皮膚にしこりが出来た場合は、まず針を刺して内部の細胞を採取する「針生検」という検査をおこないます。
針をさすといっても、通常のワクチン接種の際などに使う針と同じくらいの太さの針なので、特に麻酔なども必要とせず、簡単にできる検査であります。
もちろん、針で細胞を少量取り出して調べるだけなので、確定診断はできませんが、「早めに手術で摘出したほうが良いのか?」、それとも「もう少し様子を見ることができるのか?」 を、大まかに判断することができます。
そうして採取した細胞がこちら。

赤紫の顆粒をたくさん含んだ細胞が採取されました。
「肥満細胞」という細胞です。
「肥満細胞」自体は、特別な細胞ではなく、皮膚の炎症部分などにも出現することのある細胞ですが、このように多数観察されるのは異常です。
これは、「肥満細胞腫」を疑う所見です。
「肥満細胞腫」は皮膚にできる腫瘍としては一般的で、ワンちゃんでは悪性であることが多く、注意が必要です。
一方ネコちゃんでは、比較的良性で、手術で摘出すれば完治することがほとんど。
とはいえ、今回は出来た場所が厄介です。
腫瘍を切除する場合、なるべく正常な皮膚を含めて切除するようにします。
腫瘍細胞の取り残しを防ぐためです。
ですが、今回のように指先に出来てしまうと、正常部分を含めて切除することが難しくなります。

こういったケースでは、指の切断が必要になることもあるのです。
※中途半端な切除では、再発を繰り返すため。
また、指先と言うのは、どうしても歩行の衝撃や、トイレの砂を掘り起こすなど、日常的に刺激が加わりやすい部分であるため、傷の治りも悪くなりやすく、なかなか厄介な部分であります。
ワンちゃんやネコちゃんの皮膚と言うのは、背中や肩、太ももなどであれば、皮膚が良く伸びるので大きめの腫瘍でもゆとりを持って切除することができるのですが、足先、指先や、顔周りなど皮膚を引っ張っても伸びにくいような部分は、切除が困難になることがほとんどです。
そういった部分にしこりを見つけた場合は、あまり様子を見ずに、早め早めに獣医師にご相談いただくことをお勧めいたします。

右前足の薬指、爪のすぐ横のところにプックリと「できもの」できています。
このように、皮膚にしこりが出来た場合は、まず針を刺して内部の細胞を採取する「針生検」という検査をおこないます。
針をさすといっても、通常のワクチン接種の際などに使う針と同じくらいの太さの針なので、特に麻酔なども必要とせず、簡単にできる検査であります。
もちろん、針で細胞を少量取り出して調べるだけなので、確定診断はできませんが、「早めに手術で摘出したほうが良いのか?」、それとも「もう少し様子を見ることができるのか?」 を、大まかに判断することができます。
そうして採取した細胞がこちら。

赤紫の顆粒をたくさん含んだ細胞が採取されました。
「肥満細胞」という細胞です。
「肥満細胞」自体は、特別な細胞ではなく、皮膚の炎症部分などにも出現することのある細胞ですが、このように多数観察されるのは異常です。
これは、「肥満細胞腫」を疑う所見です。
「肥満細胞腫」は皮膚にできる腫瘍としては一般的で、ワンちゃんでは悪性であることが多く、注意が必要です。
一方ネコちゃんでは、比較的良性で、手術で摘出すれば完治することがほとんど。
とはいえ、今回は出来た場所が厄介です。
腫瘍を切除する場合、なるべく正常な皮膚を含めて切除するようにします。
腫瘍細胞の取り残しを防ぐためです。
ですが、今回のように指先に出来てしまうと、正常部分を含めて切除することが難しくなります。

こういったケースでは、指の切断が必要になることもあるのです。
※中途半端な切除では、再発を繰り返すため。
また、指先と言うのは、どうしても歩行の衝撃や、トイレの砂を掘り起こすなど、日常的に刺激が加わりやすい部分であるため、傷の治りも悪くなりやすく、なかなか厄介な部分であります。
ワンちゃんやネコちゃんの皮膚と言うのは、背中や肩、太ももなどであれば、皮膚が良く伸びるので大きめの腫瘍でもゆとりを持って切除することができるのですが、足先、指先や、顔周りなど皮膚を引っ張っても伸びにくいような部分は、切除が困難になることがほとんどです。
そういった部分にしこりを見つけた場合は、あまり様子を見ずに、早め早めに獣医師にご相談いただくことをお勧めいたします。
2015年01月26日 (月) | 編集 |
レントゲン画像と臨床症状から、頭蓋内腫瘍を疑ったネコちゃんの続きです。

青丸内が、右側に比べると白くぼやけています。腫瘍を疑う所見です。
部位としては、左上顎の付根、左眼球のすぐ下のあたりです。人間でいうと、ちょうど奥歯(おやしらず)のあたりといったところでしょうか。
できれば、お口を開けて中の状況を見たいところですが、このネコちゃんでは腫瘍の影響からか、口が全く開かなくなってしまっています。
そこで、これ以上の詳しい検査の為には、CTでの頭部断層像の撮影が必要と判断し、日本動物高度医療センターの腫瘍科での精密検査を依頼することといたしました。

高度医療センターでのCT撮影
仰向けの状態での頭部断層像。鼻先が画面奥にあるような状態の画像。
CT撮影をすると、左顎周辺の組織が右に比べると白っぽくなり、腫れあがっているのが良くわかります。
左眼球も圧迫されて位置が変化してしまっています。右側は、眼球周辺や下顎の骨の周囲に黒く空洞があるのですが、左側(病変側)は、空洞部分が腫瘍組織で埋まってしまっています。
組織検査の結果、この腫瘍は悪性腫瘍(ガン)の可能性が高いということでした。
すでに、頭部の広い範囲にガン組織が広がっており、根治を目指すことは困難でした。
たとえば、腕や足が癌に侵された場合、最悪の場合、腕・足そのものを切断して根治を目指すことも可能ですが、頭部の腫瘍では切除可能な範囲が限られるため、治療が困難なことがほとんどです。
また、仮に切除可能でも、外観が大きく変わってしまったり、採食などの日常の行動にも障害が出ることも少なくないため、積極的な治療が難しい部分であります。
今回のネコちゃんでは、すでにガンによって顎の動きや、頬の神経に麻痺が生じていたため、食事をとることが非常に難しくなっていました。
高度医療センターでは、根治を目指すことは難しいが、採食を補助するための下顎部分切除や、胃瘻チューブの設置による延命治療が飼い主様に提案されましたが、飼い主様は完治することができないのであれば、大きな外科手術は望まれないということでした。
そこで、現在はわずかに開くの口の隙間から流動食を与えつつ、補助的な点滴や鎮痛剤を使った疼痛管理など緩和療法を行って、残された時間をできるだけ御家族のもとで、少しでも気分よく過ごせるようにサポートを続けている状況であります。
動物の医療では、動物自身が症状を言葉で訴えることができないため、病気の診断・発見が困難になることが少なくありません。
今回のように、「口が痛くて開かない」という症状でも、歯牙疾患・口腔疾患だけにとどまらず、様々な診療科にまたがる広い視野を持って、詳細な問診・身体検査を行わなければならないのです。
最後に、大切なネコちゃんが、病気でつらい思いをされている中、「様々な病気の知識を発信し、ワンちゃん・ネコちゃんの病気の早期発見に少しでもつなげたい」という当ブログの趣旨を御理解下さり、今回の症例紹介にご協力くださったネコちゃんの飼い主様に、心よりお礼を申し上げます。

青丸内が、右側に比べると白くぼやけています。腫瘍を疑う所見です。
部位としては、左上顎の付根、左眼球のすぐ下のあたりです。人間でいうと、ちょうど奥歯(おやしらず)のあたりといったところでしょうか。
できれば、お口を開けて中の状況を見たいところですが、このネコちゃんでは腫瘍の影響からか、口が全く開かなくなってしまっています。
そこで、これ以上の詳しい検査の為には、CTでの頭部断層像の撮影が必要と判断し、日本動物高度医療センターの腫瘍科での精密検査を依頼することといたしました。

高度医療センターでのCT撮影
仰向けの状態での頭部断層像。鼻先が画面奥にあるような状態の画像。
CT撮影をすると、左顎周辺の組織が右に比べると白っぽくなり、腫れあがっているのが良くわかります。
左眼球も圧迫されて位置が変化してしまっています。右側は、眼球周辺や下顎の骨の周囲に黒く空洞があるのですが、左側(病変側)は、空洞部分が腫瘍組織で埋まってしまっています。
組織検査の結果、この腫瘍は悪性腫瘍(ガン)の可能性が高いということでした。
すでに、頭部の広い範囲にガン組織が広がっており、根治を目指すことは困難でした。
たとえば、腕や足が癌に侵された場合、最悪の場合、腕・足そのものを切断して根治を目指すことも可能ですが、頭部の腫瘍では切除可能な範囲が限られるため、治療が困難なことがほとんどです。
また、仮に切除可能でも、外観が大きく変わってしまったり、採食などの日常の行動にも障害が出ることも少なくないため、積極的な治療が難しい部分であります。
今回のネコちゃんでは、すでにガンによって顎の動きや、頬の神経に麻痺が生じていたため、食事をとることが非常に難しくなっていました。
高度医療センターでは、根治を目指すことは難しいが、採食を補助するための下顎部分切除や、胃瘻チューブの設置による延命治療が飼い主様に提案されましたが、飼い主様は完治することができないのであれば、大きな外科手術は望まれないということでした。
そこで、現在はわずかに開くの口の隙間から流動食を与えつつ、補助的な点滴や鎮痛剤を使った疼痛管理など緩和療法を行って、残された時間をできるだけ御家族のもとで、少しでも気分よく過ごせるようにサポートを続けている状況であります。
動物の医療では、動物自身が症状を言葉で訴えることができないため、病気の診断・発見が困難になることが少なくありません。
今回のように、「口が痛くて開かない」という症状でも、歯牙疾患・口腔疾患だけにとどまらず、様々な診療科にまたがる広い視野を持って、詳細な問診・身体検査を行わなければならないのです。
最後に、大切なネコちゃんが、病気でつらい思いをされている中、「様々な病気の知識を発信し、ワンちゃん・ネコちゃんの病気の早期発見に少しでもつなげたい」という当ブログの趣旨を御理解下さり、今回の症例紹介にご協力くださったネコちゃんの飼い主様に、心よりお礼を申し上げます。
2015年01月22日 (木) | 編集 |
昨年末から診させていただいている症例です。
10歳になったばかりのネコちゃんなのですが、昨年の9月頃から元気や食欲が無くなってきたということでした。
初めはネコ風邪だろうという診断で、抗ウイルス剤を投与して様子を見ていたそうですが、そのうち顎を気にしてひっかくようになり、当院に来院する頃には口が余り開かず、開けようとすると痛がるようになっていました。
抗生物質の投与や、鎮痛剤の投与で治療を続けてきたものの、改善が無いということで当院にいらっしゃいました。
さっそく、身体検査で詳しく調べていくと・・・
たしかに口を開こうとすると痛がる様子があります。そもそも、アゴの関節や筋肉が完全に固まっているようで、無理やり開こうとしてもアゴが開きません。
さらには左側の頬や鼻周辺に知覚麻痺がありました。
「顎が開かない」という症状から考えると、歯科疾患や顎の関節疾患(落下事故で顎をぶつけるなど)、筋肉の異常(咀嚼筋炎)、頭蓋内腫瘍をなどが疑われます。
ただし、歯科疾患や顎の関節疾患では、今回のように顎を開こうとしてもビクともしないというよりは、多少は動くのだけど、完全に開かない・痛みがあるといった症状になります。
今回の症例は、5mm程の隙間が開くだけで、それ以上には全く口が開かない状態です。
このような状態では、ワンちゃんの場合は「咀嚼筋炎(そしゃくきんえん)」を疑います。このブログでも一度ご紹介したことがございます。
ただし、「咀嚼筋炎」はちょっと特殊な病気で、ワンちゃんでは稀に見られるものの、ネコちゃんでの症例というのは聞いたことがありません。それに、「咀嚼筋炎」で知覚麻痺がでるということも普通は考えられません。
そうなると・・・腫瘍の可能性が一番高いか・・・?
とはいえ、身体検査だけではまだ解りませんから、頭部のレントゲンを撮影してみます。

頭部レントゲン。画像の上が鼻の先。頭を上から見下ろす角度での撮影。
一見すると特に異常が無いように見えますが・・・
頭の構造と言うのは、基本的に左右対称であるということを念頭において観察すると、ある違いに気が付きます。
どうでしょう?
お解りになりますか?

左側の鼻の穴の奥、眼窩周辺(眼球を支える構造)が白く影になっています(青丸で囲んだ部分)。
右側の同じ部分を見ると、三角形に黒い空洞があるのが解ります。これが正常な状態。
この所見から、やはり左の鼻、口、眼の奥に何らかの腫瘍性疾患が存在することが疑われます。
この腫瘍と思われる部分のせいで、顎の動きが妨げられ、また左頬に分布する神経にも障害が出ているのだと考えられます。
ですが、これ以上詳しく調べるには、CT撮影と、腫瘍と思われる部分の組織検査が必要です。
そこで、高度医療センターでの精密検査を依頼することとなりました。
つづく・・・
10歳になったばかりのネコちゃんなのですが、昨年の9月頃から元気や食欲が無くなってきたということでした。
初めはネコ風邪だろうという診断で、抗ウイルス剤を投与して様子を見ていたそうですが、そのうち顎を気にしてひっかくようになり、当院に来院する頃には口が余り開かず、開けようとすると痛がるようになっていました。
抗生物質の投与や、鎮痛剤の投与で治療を続けてきたものの、改善が無いということで当院にいらっしゃいました。
さっそく、身体検査で詳しく調べていくと・・・
たしかに口を開こうとすると痛がる様子があります。そもそも、アゴの関節や筋肉が完全に固まっているようで、無理やり開こうとしてもアゴが開きません。
さらには左側の頬や鼻周辺に知覚麻痺がありました。
「顎が開かない」という症状から考えると、歯科疾患や顎の関節疾患(落下事故で顎をぶつけるなど)、筋肉の異常(咀嚼筋炎)、頭蓋内腫瘍をなどが疑われます。
ただし、歯科疾患や顎の関節疾患では、今回のように顎を開こうとしてもビクともしないというよりは、多少は動くのだけど、完全に開かない・痛みがあるといった症状になります。
今回の症例は、5mm程の隙間が開くだけで、それ以上には全く口が開かない状態です。
このような状態では、ワンちゃんの場合は「咀嚼筋炎(そしゃくきんえん)」を疑います。このブログでも一度ご紹介したことがございます。
ただし、「咀嚼筋炎」はちょっと特殊な病気で、ワンちゃんでは稀に見られるものの、ネコちゃんでの症例というのは聞いたことがありません。それに、「咀嚼筋炎」で知覚麻痺がでるということも普通は考えられません。
そうなると・・・腫瘍の可能性が一番高いか・・・?
とはいえ、身体検査だけではまだ解りませんから、頭部のレントゲンを撮影してみます。

頭部レントゲン。画像の上が鼻の先。頭を上から見下ろす角度での撮影。
一見すると特に異常が無いように見えますが・・・
頭の構造と言うのは、基本的に左右対称であるということを念頭において観察すると、ある違いに気が付きます。
どうでしょう?
お解りになりますか?

左側の鼻の穴の奥、眼窩周辺(眼球を支える構造)が白く影になっています(青丸で囲んだ部分)。
右側の同じ部分を見ると、三角形に黒い空洞があるのが解ります。これが正常な状態。
この所見から、やはり左の鼻、口、眼の奥に何らかの腫瘍性疾患が存在することが疑われます。
この腫瘍と思われる部分のせいで、顎の動きが妨げられ、また左頬に分布する神経にも障害が出ているのだと考えられます。
ですが、これ以上詳しく調べるには、CT撮影と、腫瘍と思われる部分の組織検査が必要です。
そこで、高度医療センターでの精密検査を依頼することとなりました。
つづく・・・