町田市 谷口動物病院 犬猫専門の病院です
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縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 3
2014年02月13日 (木) | 編集 |
免疫機能が暴走し、無菌性脂肪織炎を発症したワンちゃんの続きです。


20131222trtah01.jpg


前回お話ししたように、この種の炎症反応は細菌感染などとは無関係に発症しますので、抗生剤を投与しても効果がありません。



暴走した免疫反応を抑えるために、免疫抑制剤を使用します。


動物医療で主に使用されるのは、プレドニゾロンというお薬。


免疫力を抑制する作用があり、様々な免疫疾患に使用するお薬で、アレルギー治療にも使用されます。


ただ、プレドニゾロンは免疫反応を抑制するため、細菌感染を起こしやすくなるという副作用があります。


そのため、感染予防として抗生剤を併用する必要があります。






さて、プレドニゾロンの投与を開始してどうなったかというと・・・





投与開始から二日後の12月24日



20131224trtah01.jpg


たった2日でこの状態です。



まだ所々、皮膚に穴が開いた状態ですが、あんなに激しかった組織の炎症が、すでに下火にななり、皮膚の再生が始まっています。
※この症例の治療には、プレドニゾロンだけでなく、皮膚の修復を助けるジェル剤も使用しています。


穴のところは、縫合して治すのが一番良いのですが、この段階ではまだ皮膚組織が脆弱で、縫合しても皮膚が裂けてしまう可能性が高いので、このまま様子を見ます。



つづいて、12月28日の様子。



20131228trtah01.jpg


穴の部分の皮膚組織もだいぶしっかりしてきました。


そこで、この部分の縫合をおこないます。


とはいえ、まだまだ皮膚組織は弱い状態なので・・・



20131231trtah01.jpg


このように、傷口の修復を助ける作用のあるパットを利用し、皮膚にかかる圧力を分散させてやります。




そうして、年をまたいで2014年1月14日


20140114rtah01.jpg



まだ一か所、抜糸が済んでいないところがありますが、ほとんどの皮膚が再生してくれました。



ただし、ここまで良くなっても安心できないのが免疫異常による疾患です。



炎症が治まったら、免疫抑制薬(プレドニゾロン)を徐々に減量していくのですが、その過程で、また免疫が暴走を始め、症状が再発する可能性があるのです。



時間をかけて、徐々に投薬量を減らし、再発の有無を慎重に見極めなければなりません。



こちらのワンちゃんでは、2月6日の時点では、再発もなく順調に投薬量を減らすことができていますが、まだまだ油断せず、慎重に様子をみている途中であります。

縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 2
2014年02月10日 (月) | 編集 |
さて、先日の続きであります。


「縫合糸反応性肉芽腫」を発症し、手術で原因となる「縫合糸(絹糸)」を摘出、一見落着のはずが、炎症が再発・悪化してしまったイタリアングレーハウンドのワンちゃんであります。
※詳しくは先日のブログをご覧ください→click


20131222trtah01.jpg
2013年12月22日 当院での初診時の様子



先日もお話しした通り、「縫合糸反応性肉芽腫」は、血管の結紮に使用した「縫合糸」に対する過敏反応の一種。
※「絹糸」を使用した場合に発症することが多い。


体内に存在する縫合糸周辺に激しい炎症を起こし、「肉芽腫」と呼ばれる大きな腫瘤を形成します。


治療するには、手術で「肉芽腫」ごと体内に残存する「縫合糸」を摘出しなければなりません。


こちらのワンちゃんも、手術で「縫合糸」を摘出しましたので、問題なく治るはずだったのですが・・・
※今回のケースも「絹糸」が原因でした。



術後2週間ほどたった2013年12月11日頃に、炎症が再発。



抗生剤の再投与などで治療をおこなうも、炎症が治まる様子はなく、日毎どころか、一時間ごとにどんどんと炎症が広がるような様子だったそうです。



見る見るうちに悪化していく傷口に途方にくれた飼い主様が、当院にいらっしゃったのが12月22日。
※初めにしこりを発見してから、当院で4件目の動物病院とのことでした。


その頃には、激しい炎症で皮膚が壊死・脱落し、ところどころ穴があいてしまった状態でした。



さらに、詳しく身体検査をすると、本来の傷口以外にも異常な炎症を起こしている部分が認められました。



20131222trtah02.jpg
鼻の周りに異常な炎症が生じ、茶色いカサブタが付着しています。




20131222trtah03.jpg
足の裏にも炎症とカサブタ。



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肛門周囲にも炎症とカサブタ。



そもそも、「縫合糸反応性肉芽腫」は、体内に存在する「縫合糸」という「異物」に対して体の免疫機能が拒絶反応を示し、過剰な炎症を起こすことで発症すると考えられます。
※手術用に使用する縫合糸は、本来は体内に存在しても大きな問題を起こさないはずなのですが、ごく少数の動物で、このような過剰な炎症反応が起きるのです。



どうやら、このワンちゃんの体内では、原因となった「絹糸(異物)」が取り除かれたにもかかわらず、異常をきたした免疫反応が暴走を続け、全身で激しい炎症反応が続いているものと考えられます
※免疫機能の異常による、「無菌性脂肪織炎」と考えられます。


この炎症には、細菌感染は関与していませんので、いくら抗生物質を投与しても炎症が治まることはありません。



暴走した免疫反応を押さえるような治療が必要になるのです。



つづく・・・






縫合糸反応性肉芽腫と、それに伴う無菌性脂肪織炎 1
2014年02月08日 (土) | 編集 |
昨年末から治療をおこなっていた症例です。


1歳11カ月(初診日時点で)のイタリアングレーハウンドの男の子。



2013年10月初めに、内股に小豆くらいの大きさのしこりが見つかり、抗生物質などで治療していたそうですが、1か月たっても改善する様子がなかったそうです。


いくつかの動物病院で診察を受けたものの、なかなか良くなる様子がなく、11月半ばにはしこりがさらに大きくなり、痛みが強く、食欲もなくなってしまうような状態に。



3件目の病院で、外科手術でしこりを取り除き、詳しく調べることとなり、11月27日に手術。



組織検査の結果、しこりの診断は・・・



「縫合糸に反応して発生した、化膿性肉芽腫性炎症」



一体何の事かと言うと・・・この「縫合糸」というのは、去勢手術の際に、睾丸につながる血管を止血するために使用した糸のことです。


血管をしばった糸は、そのまま内股の皮膚の下に残るのですが、この「縫合糸」に対して過敏反応を起こし、「化膿性炎症」をおこした結果、その部分が腫れあがってしまった状態のことを、「化膿性肉芽腫性炎症」と呼ぶのです。



縫合糸に対する反応なので、「縫合糸反応性肉芽腫」と呼ぶこともあります。



治療するには、手術で体内に残った「縫合糸」を「肉芽腫」ごと摘出しなければいけません。



この「縫合糸反応性肉芽腫」は、血管などを「縫合糸」で結紮する場合には、どうしても付きまとってしまう副作用の一つなのですが・・・



縫合糸の中でも、とくに「絹糸」を使用した際に多くみられます。


「絹糸」はずいぶんと昔から外科手術で使用されており、操作性も良く、結び目も解けにくい優れた糸で、なおかつ非常に安価です。



ですが、組織に対する刺激が強く、「縫合糸反応性肉芽腫」を起こしやすい為、今では血管の結紮に「絹糸」を使うことは避けるべきだとされています。



では、何を使えば良いかというと・・・


近年では、「吸収糸」といって、組織に対して刺激性が少なく、3~6か月程度で溶けてなくなるような糸が開発されていますので、こういった縫合糸を使用することで、「縫合糸反応性肉芽腫」の危険性はずいぶんと低くなるのです。
※最新の医療機器の中には、縫合糸などを一切使用せずに、血管を止血するような器具もあります。


実際に、私は「絹糸」以外の縫合糸でこのような副作用が出た症例は見たことがありません。


当然、当院では「絹糸」は一切使用しておりません。


ですが・・・こういった「吸収糸」は、安価な「絹糸」に比べると、どうしてもコストがかかってしまうことと、慣れ親しんだ操作性の良い「絹糸」からの変更を嫌って、いまだに「絹糸」を使用して手術をおこなう病院さんも多いようです。
※避妊手術や去勢手術の病院ごとの値段の差は、こういったことも関わっています。安易に、「安い病院で・・・」というのは、あまりお勧めできません。


血管の結紮というのは、上手くいかなければ「出血死」につながる大切な手技ですから、どうしても慣れ親しんだ糸を変更するというのは勇気がいるものですからね。



さて、ここで話をもどして・・・



先ほどのイタリアングレーハウンドのワンちゃんは、手術でしこりとともに体内に残った「絹糸」を摘出することができましたので、これで一件落着・・・のはずだったのですが・・・



術後、初めの一週間は順調で、抜糸も無事に済んだそうなのですが・・・


術後約2週間たった12月11日には再び内股の組織の炎症が悪化。


激しい炎症のために、内股周辺の皮膚組織が壊死・脱落してしまうほどの状況になってしまいました。



20131222trtah01.jpg
12月22日 当院での初診時の様子


原因となる「縫合糸」は摘出したはずなのに、いったいどうしてこんなことになってしまったのでしょう??



長くなってしまったので、続きます・・・



ギプス固定による皮膚損傷 1
2014年01月06日 (月) | 編集 |
皆様、明けましておめでとうございます 



当院も、本日から完全に通常通りの診療が始まっております 



今年も一年、スタッフ皆で力を合わせて、皆様の大切なワンちゃん・猫ちゃんの病気治療・健康管理に努めていきたいと思います 



さて、新年最初のブログの更新ですが・・・



まずは、昨年の3月に初めてご来院いただいた症例です。



こちらは、左前足の肘の部分なのですが・・・



皮膚が大きく欠損してしまっています。


20130311a.jpg



こちらのワンちゃんは、当院にご来院いただく2カ月ほど前に、骨にヒビが入ったということで別の病院さんでギプス固定で治療をしていたそうです。



骨のヒビの方は上手く治ったようですが、ギプスで圧迫されていた肘の皮膚が大きく欠損してしまったようです。




肘や膝などの関節部分は、ギプス固定や包帯治療をした際に、圧迫されたり、擦れたりすることで、このような皮膚欠損を起こすことがあります。




動物の場合、人間とは違って、自分自身(動物自身)で「包帯がキツイ、皮膚が擦れて痛い」と訴えてくれるわけでは無いですし、包帯やギプスをしたままでも激しく動き回ってしまうため、ある程度の皮膚炎や褥瘡(じょくそう=床ずれのような傷)は避け難いものです。




そこで、獣医師はそれを踏まえたうえで、こまめに包帯の具合、ギプスの固定具合を調節しなければなりません。




ここまでひどく欠損させてしまうというのは、ちょっと困ったものです・・・




これだけ広範囲に皮膚欠損してしまうと、縫合して治癒させるのはちょっと無理そうです。



肘や膝などの関節部分は、曲げ伸ばしをした際に皮膚が突っ張ってしまうため、もともと傷の治癒が難しい部分なのです。



だからこそ、こういった部分に包帯やギプスをする際には、細心の注意を払って、皮膚欠損を起こさないようにしなければいけないのですが・・・





まあ、理由はどうあれ、あいちゃったものは閉じなければいけません。





そこで、今までもたびたび登場している、湿潤療法で皮膚の再生治療をおこなうことといたしました。




ちょっと長くなったので、次回に続く・・・

感電??
2012年11月19日 (月) | 編集 |
御近所の方が保護して連れてこられた子猫ちゃん。





20121120tah01.jpg




顔の左半分がひどく腫れあがり、頬の皮膚が壊死し、そこから膿が大量に排出されているような状態。




まだ生後2カ月程度の子猫ちゃんですが、ケンカ傷でしょうか??




それにしてはどうも様子がおかしい・・・



詳しく調べていくと・・・




20121120tah02.jpg




左側の奥歯の部分。歯茎の肉が大きく欠損し、白くアゴの骨が露出しています。




ケンカ傷でこんなふうになることはちょっと考えにくいですね。




もしかしたら、「感電」かもしれません。




私も、自分自身で診療したことはないのですが・・・



教科書によると、ネコちゃんやワンちゃんが電気のコードをかじって感電した際には、奥歯や頬周辺がひどく傷害を受けるそうです。




「感電」すると、体内を通過した電流によって組織がダメージを受けます。




この子猫ちゃんでは、おそらく奥歯で電線を齧り、電流が左顔面を通過したものと思われます。



電流によって障害を受けた組織が壊死し、それが膿となって排出されていると考えられます。




もし「感電」であれば、眼球や視神経にもダメージが及ぶはずですが、このネコちゃんでは幸い、眼球や視神経に目立った障害は出ていないようでした。




このネコちゃんは、1週間以上も大量の膿が排出される状態が続き、一時は骨組織もダメージを受けているのではないかと心配される状態でしたが・・・




保護された方が毎日包帯交換に通って下さったおかげで、すっかり元気に回復いたしました。




電気コードをかじっての感電事故。




ありそうでなかなかお目にかからない症例です。





今回のネコちゃんも、野良ネコちゃんなので、本当に感電事故だったかどうかは不明ですが、何にせよ眼球や視神経が無事で何より。




ネコちゃんはひも状のものをかじって遊ぶのがとっても大好き。




谷口家の愛猫ピノも電気コードを齧る癖があるので、我が家では電化製品のコード類はすべて家具の裏に隠したり、プラスチックのカバーを取り付けて対策済みであります。



あらためて、皆さんもご注意くださいませ。